氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?

皇城咲依

56.赤い巨龍

「うぎゃぁぁぁ!」
男は誘拐した赤髪の少女の泣き声を聞いて舌打ちをした。

「うっせえな、このガキが…。」

呟いた男が本気でイライラしている模様。
そんな男に女性の声がかかる。

「こら、ルイ。仕方ないのよ。この国じゃ、赤毛の子供が高く売れるから。それが赤子なら尚更ね。」

すると、ルイと呼ばれた男はまたも舌打ちをした。

「ったく、仕事だから仕方ないが…。いつもギャンギャン騒いで、これだから赤ん坊ってのは嫌いだ。あんたもそう思わないか、アリス。」
「…別に。あと、あんたは自分にも赤子の時代があった事を忘れるない方がいいと思う。」

アリスと言う名の女性は大きくため息をつく。
ルイはそれを聞くと、気分を損ねたように顔をしかめる。

「あーぁ。なんでこんなクソみたいな仕事選んだんだろ俺のバカ。仕事が不法で上司が悪人って、最悪だろ。」
「って言いながらを一番楽しんでるのお前だから。」

極悪人同士の会話が場違いにのほほんと響く。
赤毛の赤ん坊の泣き声が更にキーが高くなった。

「がぁぁぁっ!うっせえよ、このクソガキが!」

怒りのマグマを大爆発させたルイは自分が座っていたソファを軽々と持ち上げ、赤ん坊の遥か上の方に投げる。
しかし、当てていなくても大きい音に赤ん坊は敏感なので、ボリュームもキーも更にレベルアップしたのであった。

「ルイ。商品を手荒に扱わないの。壊れやすいのよ。」

アリスの呆れたように発せられた言葉にルイは本気で不満そうな顔をし、またも舌打ちをする。

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「みぃ、次の角を右に。あと、紅蓮をこちらに飛ばして。ティナはみぃと合流して。」
『うん。そちらに向かわせるわ。』
『分かった。ミイロは俺が守る。』
「ユウはそのまま進行方向真っ直ぐだ。アーシとダーシャ…ラムとミスト、だった…まぁいいや。二人は風水広場で合流して。そしたらまた連絡を。」
『分かった。』
『『はぁい!』』
「メハナ…ユユリアは僕の所へ。白と赤のチェック柄の屋根の上に居るから。ジュリバークさん、あなたはそのまま後ろを向いたあと直進3つ目の角を左へ曲がり、待機を。」
『『了解!』』

エレミヤは仲間たちに指示を飛ばす。
その向かってもらう先はもちろん敵かもしれない可能性がある人間の居る場所だ。

不謹慎だが司令を出すことはなんかどこかの軍の司令官のようでワクワクする。

そして待つこと数分。

『パパー!ダリアと再会したよ!』
『はい。5分ぶりの再会です。』

遂にアーシリアとダリアがエレミヤの指示どおりに風水広場で再会したようだ。

「よし。二人とも、広場の中に今、八百屋で果物を眺めている子連れの女性がいるだろう?」
『うん。』
「その横にいる子供の様子を伝えてくれ。」
『分かりました。えっと…年は4歳ほど。男の子で、金髪です。母親が店員と話してますね。子供は果物を獲物を見つめるような鷹の目で眺めています。…あ!母親と店員が話しているスキに今果物を盗みました!そして母親は見ていたにもかかわらず素知らぬ顔…。どうやらこの親子は常習犯のようですね。手慣れてます。』
「へ、へぇー。」

ダリアって本当に実況上手いよな…。
あと、誘拐犯ではなかったのか…。
なんか残念。

「よし、あまり関わらないようにしろ。見つからないようにな。」
『はい。』

すると、たたたっと軽快な足音が聞こえた。
ユユリアだ。

「お兄ちゃん!来ーたよぉー!」

すると、ユユリアはひらりと屋根の上に飛び上がった。
幼いが、獣人には朝飯前だろう。

しかし、人間にとっては異常なので周りの通行人が驚きに目を見開いている。

尻尾をフリフリさせて走ってくるユユリア。

「よし、メハナ。お前はここから何が見える?」

獣人は脚力も異常だが、視力、聴力、嗅覚も異常なのだ。
それはエレミヤも遠く及ばないのだ。
まさに暗殺にはもってこいな種族だ。
ユユリアはその中でも相当強いほうなので、更に良いのだろう。

あえてジュリバークを呼ばなかったのは、理由がある。

ガタイが大きすぎるので、この屋根に乗れても壊してしまうだ。
この家はこの国の中心部だ。
更に王宮を除いてはこの建物が一番高かったのだ。

もちろんこの家より高い家もあったが、それはというよりなので、乗りたくても乗れなかったのだ。

さて、話を戻そう。

「何あの子!可愛いのにすげー脚力!」

人が集まり始めた。
エレミヤは彼らをちらりと見る。

「うーん…。あ、あそこ怪しいかも。」

それを見て見ぬふりをしてまじまじと辺りを見ていたユユリアが指したのは、一軒の小屋。

「あの中からまだ生まれたばかりの赤ちゃんと、男性一人、女性一人の匂いがする。あと、あの小屋の前に積もったホコリに男性の足跡がある。それが、あの住宅地から続いているよ。」

ユユリアはその場所を指差しながら伝える。
エレミヤは薄っすらと笑う。

「あそこは…みぃ達が向かっている場所か…。」

そして、全員にこう声をかけた。

「全員、みぃ達と合流して。みぃ達の向かっている所におそらく犯人がいる。」
『『『了解!』』』

全員が短い返事をしたその時だ。
暗い影がエレミヤを覆う。

その場にいた野次馬も顔を上げる。
太陽の光を遮っているのは赤い龍。

この国の守護獣にて神の使いである炎龍だった。

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