氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?

皇城咲依

10.楽しい学校生活と同僚

チュンチュン。
鳥のさえずりが聞こえる。
エレミヤは身じろぎをした。
起きたくない…。起きたくない…。
昨日はなんか疲れたからまだその疲れが残ってるんだ…。
…あれ?横から花の香りがする。
香水ではないな…。
なんというか、女の子の香り…っていうか。なんていうか。
うん…?女の子?
あぁ。そういえば昨日みぃが来たな。
そういえばみぃはどこで眠ったんだっけ?
あれ?
彼女、自分の部屋に帰ったっけ?
帰ってないよね?
あれ、これやばくない?
え…待てよ待てよ…。

エレミヤはゆっくり目を開けると同時に横を見てみた。
そこには、美人な幼馴染が寝ていた。

「わ、わぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

エレミヤはパニックを起こした。
いくら幼馴染でも、これは流石にやばい!
ロンガットさん来ないでね!
そして勝手に開けないでね!
開けたら流石のロンガットさんでも容赦なく氷投げつけるから!
そう誓ったエレミヤは急いでミイロを起こそうとする。

「みぃ、みぃ!起きて!」
「う…ん…。まっくん…。どこぉ…」
「ここにいるよ!というか、寝ぼけてないで早く起きて!」

ミイロは必死なエレミヤの声を聞いてゆっくり目を開けた。
そしてエレミヤを見た瞬間、朝に弱い深色が珍しくパッチリ目を開けた。

「そうだった!私、まっくんと昨日会ってたんだった!わーい!っていうか、目がなんかおかしい感じがするけどどうでもいいや!」

急に目が覚めたのか、ミイロは嬉しそうに飛び跳ね、飛びついてきた。

「…あれ?」
そこでミイロは違和感の正体に気付く。

「私…左目しか使ってない…?」

エレミヤはそこでミイロに全てを伝えた。
昨日のこと…。
ガーフマインのこと…。
それと、自分の異世界での体験談…。
しかし、ルティーエスの事は彼と約束したため、言わなかった。
ミイロは流石に自分が壊れていたことを聞くと驚いたのだが、すぐ状況を飲み込み、真剣な顔で頷いた。

「ごめんね。まっくん。私があんなことしちゃって…。」

エレミヤはにっこり笑い、

「戻ってくれたのならそれでいいよ…。僕はやっぱりいつものみぃが好きだなぁ。」

それを聞いた瞬間、ミイロの顔がボン!と赤くなった。
最初、エレミヤはキョトンとしていたが、自分の発言考え直してみると、告白のようなものになっていることに気づいた。

「え、えとね、そんなんじゃないからね!あ、いや、好きか嫌いかっていったら断然好きだけど…ってわぁ!みぃ、みぃ?!なんで急に倒れたのー?ってそれよりも頭、熱!やばいやばい、救急車…なんてないから医者行かないと!」

慌て始めたエレミヤにミイロは石像のように固まって顔をリンゴのように赤くにするしかでいる行動はなかった。
そして何かに気づいたエレミヤが頭を抱えて叫ぶ。

「あーっ!今日も学校じゃん!急げ、急げ。えと…頭熱いから僕の氷で…。よし、これで良い。みぃー!はやく熱、治してね!僕は学校の準備しなきゃ!」

バタバタといつも騒がないこの家の居候が普段よりも騒がしいことから周りの住人たちは微笑ましく思っていた。
そのことをもちろんエレミヤは知らなかった。

❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅

その30分後、トゥーリス学園1年9組にて。

「はぁ…朝から疲れた…。」

ぐでーっとしているエレミヤ。

(本当にみぃどうしちゃったんだろう?あんな熱…。)

エレミヤはちょっと心配そうに眉を下げる。
そしてため息をつく。

「「はぁぁぁ〜…。」」

そのため息が二重に聞こえた。
あれ?
とエレミヤは後ろを見る。
その人もこちらを見て、弱々しく右手を上げた。

「ん?うぃーっす。お前、エレミヤっていうんだろ?朝っぱらからどうしたんだ?」
「それはそっちにも言えるだろ。僕のことは気にしないでくれ。」
「でもよぉ…。あ、そーだ。俺、バラック。バラック・ラーノルド。ラックって呼んでくれ。」

ぼーっとしてるバラックにエレミヤも自己紹介をする。

「エレミヤ・ローガツ。なんとでも呼んでくれ。」

バラックは弱々しく頷き、 

「じゃ、エレな。よろしくな〜、エレ。」
「うん…。よろしくぅ…。」

グダグダ二人組の自己紹介はそこで終わった。

「で?エレ。なんでこんなに疲れてんの?」

エレミヤは正直に答えた。

「幼馴染が高熱でさ…。心配なんだよ…。」
「ふーん…。」 
「で、ラックは?なんで疲れてるの?」
「んー?昨日、弟たちのチャンバラに巻き込まれて花瓶割っちゃって、何故か俺が怒られた。」
「それはそれは…。」

そして二人は机に顔を伏せながらまたも大きなため息をつく。

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜…。」」  

 するとそこに一人の女生徒がやってきた。

「二人揃ってため息なんて仲いいのね。」

エレミヤは少し顔を上げ少女を見る。
バラックは横目で少女を見る。
そしてエレミヤはこの少女の顔を見た瞬間、
大きく目を見開き、飛び起きる。
バラックはそれに驚いて飛び起きる。

「え?!君は!」
「わっ!」

エレミヤはバラックに構わず少女を指差しながら彼女の名を呼ぶ。

「ティナ?!」

彼女はティナ・ラウサーク。 
そう、エレミヤの同僚だったはずだ。
それに…。この口調…。シノハナにいる時と全然女の子っぽい!

「やっほ、エレミヤ。」

エレミヤは唖然としてティナの顔面を眺め、バラックは美人であるティナに見惚れている。
そしてエレミヤが思わず口に出した一言が惨劇を呼ぶ。

「ティナ…。本当に女の子だったんだな。」

それを聞いたティナは無言で拳を振りかざす。

「わーっ!ご、ごめん。もっと可愛くなったね!」
「うるさい。今頃遅いぞ。」
「あ、口調戻ってる。」
「殴るわよ?エレミヤ。」
「うわ!拳振り下ろしながら言うなよ!美人が台無し!」
「そんなお世辞はいらない。」

ぶんぶんとティナが拳を振り回し、机が凹んだり椅子の足が折れたりした。
それを避けまくっているエレミヤは相当すごいのだが。

「うわーっ!ティナ、ごめんって!」

生徒達が唖然とし、バラックはどうしよう、といった様子でおろおろしていた。
その日は朝から騒がしい日となった。

❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅

「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」
「はぁ…はぁ…」

エレミヤとティナは朝から肩で息をしていた。
普段、ふたりはこんな事で疲れたりしないのだが、やはりシノハナとバレないように演技をしているのだ。

「エレミヤ!早く殴られなさいよ!」
「嫌だよ!だって痛いもん!」
「男でしょ!」
「君の中の男の定義は一体どうなってるのかな!?」

ギャンギャン騒いでいると、先生が来た。
「…ローガツ、ラウサーク。うるさい。職員室まで聞こえていたぞ。あとラウサーク、この悲惨な光景見て攻撃やめようとか思わなかったのか?これからやるなよ。ローガン、…お前も避けずに受け止めろよ。この光景見て受け止めねぇやつなんてどうにかしてるぞ。」
「はぁーい…」

とティナが不貞腐れたように言い、
「あの先生、ティナの攻撃あたったら、僕、死にますよ?本当に。」

とエレミヤは説得を試みる。

「いいからみんな座れー。朝礼を始める。」
「「「はぁい」」」

すると皆は空いている席から机やら椅子やらを取ってきて新しいのにしたあと、座った。

「全員居るなー?…オノハラは休みか。ふむふむ。はい、朝礼終わり。」
「「「はい…。」」」

先生は本当に去っていった。
後ろのバラックがぼそっと言った。

「…本当に 行ってしまった あの先生。」

なんか懐かしいリズムがあったのでエレミヤはぷっ、と吹き出した。
バロックはキョトンとしたがつられて笑い出した。
ティナも笑い始め、そこから伝染していった。
異能力者育成クラスの1年9組はやはり朝から賑やかなのであった。


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