氷花の鬼神って誰のことですか?え、僕のことってどういうこと?

皇城咲依

2.転生後

うう…。ここは…どこ?
僕は…。心臓病で…痛くなって…。
みぃと話して…。
あれ?死んだ…よね?
なのに、なんで意識があるのさ?
訳がわからない。
あれれれ?
なんだか目を開けなくないな。
体中が痛いし。特に足。

しかし、その欲求に逆らって目を開ける。

「あれ?」

言葉が出た。なんか異様にかん高い声だな。
タイルが敷き詰められた道路の上に寝ているのか?僕は。
そりゃ体中が痛くなるはずだ…って、
いや、違うだろ!まず感じる疑問は…

「ここ どこぉ?」

これだろ!
周りを見渡してもただ道路。
当たり前か。
真龍は冷静に周りを観察する。
ドレス。中生ヨーロッパ的な建物。
タイムスリップ?
いやいや。だってここが地球なら…相当おかしいよ。だって…。
なんでって、月が…色を持ってる。 
黄色でも灰色でもない。綺麗な、宝石のような色。
太陽の光がどこに当たるかによって色が変わるのだろう。どんどん青から紫色になっていく。

…………………なんか、ここ、地球じゃなくない?
異世界?転生?ばかな。
でも…、やっぱりこれ、転生だよな?
転生したんだよな?僕。
そう思うと、真龍は深色のことを思い出した。
彼女の最後に見せた笑顔を思い浮かべながら真龍は呟く。

「…深色、怒ってるかなぁ?勝手に死んで。」

とつぶやきながら周りを見渡す。

おお、剣を持ってる人がいる。
ここが現実世界なら「銃刀法違反」だな。
あれ、それって日本だけだっけ?
アメリカは一般人でもライフル持ってるしな。
にしても、随分ゴッテゴテの飾りがついた剣だな。好みじゃないかも。
特にあの人なんか。見てよ、炎の飾りがついてる。
あれ…?待ってよ。なんか近づいてきてるよね?え?僕?僕ですか?僕に用があるんですか?
そして男は真龍の前に立つ。
やはり、と真龍が思うと同時に声をかけてきた。

「少年。ここで何をしている。」

いや〜、それを教えてほしいほどなんですよ!僕は何をすればいいんですかね。そう思いつつ頬をかこうとすると自分の手が異様に短いことが分かった。
…待て。もしかして…。
自分の手を見ると小さい。5歳ほどだろうか。

「えと…」 

口籠ったあと、なんとか言い訳を考えだした。

「分かりません…。気がついたらここにいて…」

あれ?言い訳でも…ない…か?
すると男はふむ、と考え込み、
「少年、名は?」
マタツと答えるべきか、適当な名前をつけるか。でも、後者だと後々後悔しそうだ。
でも、マタツって答えるのも…。……この体、真龍のじゃないし…。
真龍はなんとなくそう思い、正直に答えた。

「…分かりません。」

正直に答えると、男はぱちくりとまばたきをし、その直後、がっはっはっ!と面白そうに笑った。
突然の大声に真龍は驚く。
目を丸くしていると男は髭面の顔を歪め、笑う。

「少年、お前は中々骨がありそうだ。…俺のところに来るか?」

おお!願ってもいないほど大きな提案! 
それにありがたい!

「い、行きます!」

男は大きく頷いたあと真龍をヨイショ、と抱き上げた。
人に抱っこされるのいつぶりだろうか。
…というかこのおじさん、汗臭い。
なんかの騎士なのだろうか。
全身が鎧に覆われてる。

「お、おじさん。ひ、一人で歩けます…」

すると男はがっはっはっと大胆に笑い、

「そんな足で歩けるわけ無いだろう!」
「え?」

恐る恐る下を見ると

(あー。足を折ったのか?僕。変な方向に曲がってる…。痛いわけだ。)

しゅんとしながらされるがままになる。
そして連れてこられたのは…。

「でっっっか!」

豪邸であった。
でかいでかい。
真龍は目を点にする。

「学校まるごと入るな…。」

と思わず呟くと

「ん?…なんだって?」

とおじさんに聞き返された。

「あ、いえ。独り言なので…。大丈夫です。」

きょとんとおじさんはしたが、気に止めた様子もなくずんずんと普通に入っていく。
内心真龍はハラハラしていた。

追い出されないかな、と。
(はぁ。どうせ、この世界でもどうせモブだろ。僕。)

そう確信し、息を吐いた後大きく頷いた。
よし!追い出される覚悟は出来た。
そしておじさんは長い庭を突っ切り、玄関の前に立つ。すると門番らしき人がお辞儀しながらドアを開いていく。

「「「「おかえりなさいませ。」」」」

 メイドやら執事やらたくさんの人がいて、一斉にお辞儀をしつつ、声を揃えた。
おじさんはへらへらと笑いながら普通に通っていく。
そして通り過ぎようとする真龍たち。
その時、おじさんは執事みたいなおじいさんに止められた。

「ご主人さま。お待ちを。」

恐る恐る振り返ると穏やかな顔でこちらを見ている執事さんがいた。

「こちらのお坊っちゃんは?」

そしておじさんは真っ白な歯をのぞかせ、親指を立てながら当然のように言う。

「弟子にする!」

執事さんは頷く。

「そのようなことなら。」

と深くお辞儀をした。
ずんずんと奥へ向かうおじさん。

「あ、あの…」

と聞きたいことがあったため声をかけると

「ん?なんだ少年。あぁ。なんか少年だと呼びづらいな…。なぁ、お前。名前が欲しいか?」

と言われた。いや、なんでそうなる? 欲しいが。
その間にもおじさんは考え始める。

「うーん…エレミヤはどうだ?良いだろ?」
「え、えと…あの〜。」
「なんだ?気に入らなかったか?」

真龍は慌てて首を振る。

(なんだこの人。)

真龍は正直にそう思ったが、口には出さなかった。もちろん。

「い、いえ。名前は…気に入りました。あの…。僕はなんで弟子に選ばれたのですか?」

そう。それが聞きたかったのだ。 
するとおじさんは頷き、

「お前、すごいオーラを持っていたからな。だから爺も納得したんだろ。」
「オーラ?爺?」

おじさんは頷き、

「オーラってのは、まぁ、いわゆる気配…だな。爺ってのはさっき俺を呼び止めた奴だ。」
「な、なるほど…」

よくわからないが、後で本を見せてもらおう…いや、まず読めるか?文字。日本語…なわけないよな。
…色々覚えなきゃな…。
面倒くさい。異世界転生。
真龍改めエレミヤは深くため息をついた。



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