【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「世界一幸せにするよ」3
後部座席に引き出物の大きな袋を置いて、ふたりは広々とした前の席へ乗り込む。
お酒を飲まなかった晴久は、全員ほろ酔いだったテーブルのメンバーの相手にいささか疲れた様子でため息をついた。
「晴久さん大丈夫ですか」
「平気だよ。意外と部長が飲んじゃってね。嗜めるのが大変だった。まったく、部下の結婚式で酔うなって話だよ」
「ふふふ、そうですね」
いつもの車内。
ちょこんと座った雪乃も、ハンドルに手を置いたまま動き出そうとしない晴久も、少し緊張の面持ちをしていた。
まだなにも計画は立てていないが、ふたりで結婚式を目の当たりにし、ドキドキと胸が高鳴る。
あと少しで自分たちにもその日が来るのだ。
「……雪乃」
気分が高揚し、帰るまで我慢ができなくなった晴久は運転席から助手席へ手を伸ばし、雪乃の頬に触れながらキスをする。
「晴久さん……」
「結婚式、羨ましくなった?  俺たちも、もう少しだよ。あといくつかイベントをクリアして、そしたらすぐにウェディングドレス着せてあげるから」
「……はい。楽しみです」
手を重ね、雪乃の薬指の指輪をふたりで握り合った。
しばらく経ってからゆっくり離れ、名残惜しく車は発進する。
「晴久さん、道が違っていませんか?」
自宅とは違う方向へ走っていることに気づき、雪乃は窓の外と隣の晴久を見比べた。
いつもの郊外のマンションではなく、まだキラキラと眠らない街の光の中へと走っている。
「ホテル取っちゃった。いいよね?」
「えっ。……も、もう。晴久さんったら」
「いいですけど」と付け加えた雪乃は真っ赤になって座席に埋もれ、窓の外へ顔を向けた。
おそらくこういう気分になるだろうと先回りしていた晴久の企みは成功し、ふたりの間には熱っぽく甘い空気が流れ始める。
ホテルの部屋に着いたふたりは、もう一秒も待てずにドレスアップした衣装を乱しながら絡まり合い、ベッドにもつれ込んだ。
「雪乃っ……」
「晴久さんっ……」
激しいキスを受けながら、雪乃は彼と出会った奇跡を思い出す。
きっと運命だ。白馬に乗った王子様は本当にいた。波間にぼんやりと映る晴久を見つめながら恋の神様へそう感謝をし、目を閉じて、体の芯から幸せに浸った。
「好きだよ。雪乃を花嫁にできると思うと、たまらない。あの停電がなければ、ずっと雪乃のことを知らないままでいたなんて。もしそうだったらって考えただけで怖いな」
まさしく同じことを考えていた晴久に、雪乃は抱きついて体を持ち上げ、キスを返した。
「晴久さん。あの日、晴久さんが私に気づいてくれたから、こんなに幸せな今があるんですね」
「それは俺の台詞だよ。雪乃こそ、俺を見つけてくれて、ありがとう」
 
運命のふたりの恋は、いつまでも、どこまでも。
END
お酒を飲まなかった晴久は、全員ほろ酔いだったテーブルのメンバーの相手にいささか疲れた様子でため息をついた。
「晴久さん大丈夫ですか」
「平気だよ。意外と部長が飲んじゃってね。嗜めるのが大変だった。まったく、部下の結婚式で酔うなって話だよ」
「ふふふ、そうですね」
いつもの車内。
ちょこんと座った雪乃も、ハンドルに手を置いたまま動き出そうとしない晴久も、少し緊張の面持ちをしていた。
まだなにも計画は立てていないが、ふたりで結婚式を目の当たりにし、ドキドキと胸が高鳴る。
あと少しで自分たちにもその日が来るのだ。
「……雪乃」
気分が高揚し、帰るまで我慢ができなくなった晴久は運転席から助手席へ手を伸ばし、雪乃の頬に触れながらキスをする。
「晴久さん……」
「結婚式、羨ましくなった?  俺たちも、もう少しだよ。あといくつかイベントをクリアして、そしたらすぐにウェディングドレス着せてあげるから」
「……はい。楽しみです」
手を重ね、雪乃の薬指の指輪をふたりで握り合った。
しばらく経ってからゆっくり離れ、名残惜しく車は発進する。
「晴久さん、道が違っていませんか?」
自宅とは違う方向へ走っていることに気づき、雪乃は窓の外と隣の晴久を見比べた。
いつもの郊外のマンションではなく、まだキラキラと眠らない街の光の中へと走っている。
「ホテル取っちゃった。いいよね?」
「えっ。……も、もう。晴久さんったら」
「いいですけど」と付け加えた雪乃は真っ赤になって座席に埋もれ、窓の外へ顔を向けた。
おそらくこういう気分になるだろうと先回りしていた晴久の企みは成功し、ふたりの間には熱っぽく甘い空気が流れ始める。
ホテルの部屋に着いたふたりは、もう一秒も待てずにドレスアップした衣装を乱しながら絡まり合い、ベッドにもつれ込んだ。
「雪乃っ……」
「晴久さんっ……」
激しいキスを受けながら、雪乃は彼と出会った奇跡を思い出す。
きっと運命だ。白馬に乗った王子様は本当にいた。波間にぼんやりと映る晴久を見つめながら恋の神様へそう感謝をし、目を閉じて、体の芯から幸せに浸った。
「好きだよ。雪乃を花嫁にできると思うと、たまらない。あの停電がなければ、ずっと雪乃のことを知らないままでいたなんて。もしそうだったらって考えただけで怖いな」
まさしく同じことを考えていた晴久に、雪乃は抱きついて体を持ち上げ、キスを返した。
「晴久さん。あの日、晴久さんが私に気づいてくれたから、こんなに幸せな今があるんですね」
「それは俺の台詞だよ。雪乃こそ、俺を見つけてくれて、ありがとう」
 
運命のふたりの恋は、いつまでも、どこまでも。
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