【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「今夜は絶対、キミを抱かない」5
自宅に戻ると、父は母に支えられながらリビングのソファに横になり、すぐに寝息を立て始めた。
晴久も雪乃に支えられてはいるものの、自分の足で立てている。
「まったくもう。お父さんたら平気そうにしてたのに、やっぱり口出ししちゃうんだから」
唯一酒を飲んでいない母はため息をつきながらも、久しぶりに見る戸惑った父の姿を子供を見るかのように眺めて微笑んだ。
彼女は続いてリビングの入り口にいる雪乃を振り返る。
「雪乃。晴久さんをお部屋に連れていって、シャワー浴びてもう休みなさい」
「うん。そうする」
「晴久くんごめんなさいね」
「あ、い、いえ……」
「お父さんもお付き合いにはちゃんと賛成してるし、感謝してるのよ。ひとり娘だから感傷的になっちゃったみたいで。気にしないでね」
晴久は酔いながらも、フォローしてくれた母に「大丈夫です」と返事をした。
雪乃に腕を支えられながら階段を上がり、二階の彼女の部屋へ。
ベッドの横にはお客さま用の布団が敷いてあった。
「晴久さん、横になってください」
雪乃は彼をベッドに倒そうとしたが、彼は下の布団に腰を下ろす。
「大丈夫、雪乃。ごめんね。少しずつ醒めてきたから」
手をひらひらさせてから彼女の肩に添え、押し戻す。
晴久はぼんやりとする視界の中で、やたらとかわいく映る雪乃に理性が切れかけていた。
「シャワーはどうします?  明日でもいいですよ。濡れタオルで汗だけ拭きましょうか」
「いや、いい。いい。大丈夫」
身ぐるみを剥がされ濡れタオルで拭かれようものなら、おそらく我慢できなくなる。
晴久は冷静になるため、フーッと息をつき、雪乃の頭を撫でた。
「酔いが醒めたらシャワーを借りるよ」
それまで少し休もう、と布団に横になる。
雪乃は気をきかせて、彼の胸元に手を伸ばし、シャツのボタンを上から三つほど外した。
「雪乃……」
「……ふふふ、なんだか酔ってる晴久さん、かわいいです」
彼女は晴久の隣にごろんと横になり、腕の内側へ潜り込んで頭を擦り付けた。
「大好き……」
ゴクリ、と晴久の喉が鳴る。
「ダ、ダメだよ雪乃。離れて」
「え?  どうしてですか?」
「酔ってるし理性がきかない。我慢できなくなりそうだ」 
雪乃は瞳をうっとりと潤ませ、指で彼の胸元の肌を上から下へとなぞっていく。
(晴久さん……かわいい)
「雪乃っ」
「いいですよ、我慢しなくて。お母さんたちは今夜は一階で寝るはずですから、誰も来ません。……ね?」
「ダメだ」
キッパリと拒否し、雪乃を避けて布団から起き上がった。肩で息をしながら彼女の手をほどいていく。
「晴久さん……?」
彼が起き上がった衝撃で尻もちをついた雪乃だが、すぐに立て直し、座り込んでいる彼に再び迫る。
「どうしてダメなんですか?」
「ご両親の家でキミを抱けないよ」
「……どうして?」
「どうしてもだ。抱けない。抱かないからな……」
晴久の決意が揺らいでいるとピンときた雪乃。
抱けないと断られるのは寂しいものの、その頑固なこだわりがやはり好きだと感じる。
意地悪がしたくなり、彼の膝に乗って、首もとにキスをした。
「抱いてほしいな……」
潤んだ瞳で見つめると、晴久は余計にハァハァと息を荒立てる。
「ダ、ダメだと言ってるだろ……」
「そんな。つらそうな晴久さんを放っておけません。こんなになっちゃってるのに、我慢なんてできるんですか?」
ベルトに伸びてきた雪乃の手を晴久は捕らえた。
「……雪乃。本気だから。俺は今日は絶対、キミを抱かない。キミが本当に大切だから、ご両親を悲しませるようなことは絶対にできない」
(え……?)
ほんの遊び心で戯れていただけなのに、晴久の方は眉を切なく寄せて自身の欲望と戦っていた。
それがすべてキミのためだと口にされると、雪乃の胸の中にはじんわりと感動が広がっていく。
「……晴久さん」
「ごめん。すぐにシャワーを浴びて酔いを醒ましてくるから」
「は、はい」
「そしたら寝よう。今夜はおやすみのキスだけだよ。いい?」
「……はい」
雪乃は彼に言われるがまま、バスタオルの準備をする。
今夜、なんだかんだ手を出されるんじゃないかと甘く考えていたのに、彼の決意は固かった。
風呂を終え、おやすみのキスをした後、布団とベッドに分かれて眠る。
(なにもされないのに、今夜はおかしいな。ドキドキしてたまらない)
晴久がベッドへ上がってくるのではと身構えていたのに、それは雪乃の杞憂に終わった。
じりじりと焼けつくような緊張の中、やがてふたりは眠りについたのだった。
  
晴久も雪乃に支えられてはいるものの、自分の足で立てている。
「まったくもう。お父さんたら平気そうにしてたのに、やっぱり口出ししちゃうんだから」
唯一酒を飲んでいない母はため息をつきながらも、久しぶりに見る戸惑った父の姿を子供を見るかのように眺めて微笑んだ。
彼女は続いてリビングの入り口にいる雪乃を振り返る。
「雪乃。晴久さんをお部屋に連れていって、シャワー浴びてもう休みなさい」
「うん。そうする」
「晴久くんごめんなさいね」
「あ、い、いえ……」
「お父さんもお付き合いにはちゃんと賛成してるし、感謝してるのよ。ひとり娘だから感傷的になっちゃったみたいで。気にしないでね」
晴久は酔いながらも、フォローしてくれた母に「大丈夫です」と返事をした。
雪乃に腕を支えられながら階段を上がり、二階の彼女の部屋へ。
ベッドの横にはお客さま用の布団が敷いてあった。
「晴久さん、横になってください」
雪乃は彼をベッドに倒そうとしたが、彼は下の布団に腰を下ろす。
「大丈夫、雪乃。ごめんね。少しずつ醒めてきたから」
手をひらひらさせてから彼女の肩に添え、押し戻す。
晴久はぼんやりとする視界の中で、やたらとかわいく映る雪乃に理性が切れかけていた。
「シャワーはどうします?  明日でもいいですよ。濡れタオルで汗だけ拭きましょうか」
「いや、いい。いい。大丈夫」
身ぐるみを剥がされ濡れタオルで拭かれようものなら、おそらく我慢できなくなる。
晴久は冷静になるため、フーッと息をつき、雪乃の頭を撫でた。
「酔いが醒めたらシャワーを借りるよ」
それまで少し休もう、と布団に横になる。
雪乃は気をきかせて、彼の胸元に手を伸ばし、シャツのボタンを上から三つほど外した。
「雪乃……」
「……ふふふ、なんだか酔ってる晴久さん、かわいいです」
彼女は晴久の隣にごろんと横になり、腕の内側へ潜り込んで頭を擦り付けた。
「大好き……」
ゴクリ、と晴久の喉が鳴る。
「ダ、ダメだよ雪乃。離れて」
「え?  どうしてですか?」
「酔ってるし理性がきかない。我慢できなくなりそうだ」 
雪乃は瞳をうっとりと潤ませ、指で彼の胸元の肌を上から下へとなぞっていく。
(晴久さん……かわいい)
「雪乃っ」
「いいですよ、我慢しなくて。お母さんたちは今夜は一階で寝るはずですから、誰も来ません。……ね?」
「ダメだ」
キッパリと拒否し、雪乃を避けて布団から起き上がった。肩で息をしながら彼女の手をほどいていく。
「晴久さん……?」
彼が起き上がった衝撃で尻もちをついた雪乃だが、すぐに立て直し、座り込んでいる彼に再び迫る。
「どうしてダメなんですか?」
「ご両親の家でキミを抱けないよ」
「……どうして?」
「どうしてもだ。抱けない。抱かないからな……」
晴久の決意が揺らいでいるとピンときた雪乃。
抱けないと断られるのは寂しいものの、その頑固なこだわりがやはり好きだと感じる。
意地悪がしたくなり、彼の膝に乗って、首もとにキスをした。
「抱いてほしいな……」
潤んだ瞳で見つめると、晴久は余計にハァハァと息を荒立てる。
「ダ、ダメだと言ってるだろ……」
「そんな。つらそうな晴久さんを放っておけません。こんなになっちゃってるのに、我慢なんてできるんですか?」
ベルトに伸びてきた雪乃の手を晴久は捕らえた。
「……雪乃。本気だから。俺は今日は絶対、キミを抱かない。キミが本当に大切だから、ご両親を悲しませるようなことは絶対にできない」
(え……?)
ほんの遊び心で戯れていただけなのに、晴久の方は眉を切なく寄せて自身の欲望と戦っていた。
それがすべてキミのためだと口にされると、雪乃の胸の中にはじんわりと感動が広がっていく。
「……晴久さん」
「ごめん。すぐにシャワーを浴びて酔いを醒ましてくるから」
「は、はい」
「そしたら寝よう。今夜はおやすみのキスだけだよ。いい?」
「……はい」
雪乃は彼に言われるがまま、バスタオルの準備をする。
今夜、なんだかんだ手を出されるんじゃないかと甘く考えていたのに、彼の決意は固かった。
風呂を終え、おやすみのキスをした後、布団とベッドに分かれて眠る。
(なにもされないのに、今夜はおかしいな。ドキドキしてたまらない)
晴久がベッドへ上がってくるのではと身構えていたのに、それは雪乃の杞憂に終わった。
じりじりと焼けつくような緊張の中、やがてふたりは眠りについたのだった。
  
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