戦場の悪魔

10話 剣聖

「あ、あああなたの職業は――――ゆ、《剣聖》です!」

 神官が間抜けな顔をしてそう言った。
 あれは私――カルベナが10歳の時のことだ。

 剣聖といえば物語に出てくるカッコいい存在。
 当時、私も同年代の子どもたちと同じように憧れを抱いていた。
 しかしそれは……どこか遠い場所での出来事だという風に。

 それなのに突然、私は剣聖になって。
 幼馴染であり一番の親友、アルキスと別れ王都にやって来た。
その時私は酷いことを言ってしまった。
 両親には王都で良い暮らしをさせてあげられているし、10歳年上の先輩剣聖も可愛がってくれている。


 だけど――いつも気を抜くと思い出してしまうのだ。


 魔物を倒すのはあまり抵抗がない。でも、敵国の兵士だとしても人はいつまで経っても慣れなくて……やっぱ、私には向いていないのかな?

 初めての戦争で敵兵を斬った後、手に残った感触が消えてくれなかった。
 それはまるで、私に課せられた罰のようで。胸が痛く、夜も眠れなかった。
 だけど、両親には心配をかけたくなかった。

 そんな私が泣きながら向かったのは――アルキスの家。

 おじさんとおばさんが亡くなってしまって、アルキスは1人で暮らしていた。

私はアルキスに助けを求めた。
だが怒られてしまった。当然だ、必要ないなんて言って王都に行ってしまったんだから。

そこで謝れば許して貰えたかもしらない。だが私は逆ギレしてしまった。しかも王国を追放すると言って。私はなんて自分勝手なんだろうと自分の事ながら思う。

いや、待って私がこんな思いをしてるのは全部アルキスのせいだ。アルキスが代わりに剣聖になっていれば。そうだ、アルキスが悪いんだ。

殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。



カルベナは重度のストレスによっておかしくなってしまっているのである。

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