戦場の悪魔

7話 昇進

「なぁ聞いたか? 敵の旅団長を倒したって」

「あぁすっげーよな。しかも曹長に昇進、金貨3枚の褒賞も出たらしいぜ」

「くぅー、やっぱああいう人が偉くなるんだろうなぁー。俺たちも頑張んねぇと」

 朝、兵舎にある食堂で食事をしていると、周りから痛いほどの視線を感じた。
 どうやら話の対象は俺たちのようだ。

 法国との戦争で俺がとどめを刺した両手剣使いの大男は、約2000人の兵たちを束ねる旅団長だった。
 総指揮を執る指揮官の下に、約6000人をまとめ指示する師団長が数人いて、その下にいるのが旅団長だ。
 俺たちは今回の戦争で、敵国のナンバー3の首を取ったということになる。

 これはかなりの手柄で、俺と隣で硬い黒パンをかじっているレルトは異例の出世を果たし、軍曹に昇進した。
 それぞれ9人の部下を与えられ、分隊長になったのだ。

バルト少尉も活躍し中尉に昇進したらしい。

「――そうだアルキス。何に金を使うか決めたか?」

 俺がほとんど味のしないスープを飲んでいると、レルトがそう訊いてきた。

 褒賞で得た金貨3枚は、俺が持っている銀塊と大体同じ価値がある。
 突然舞い込んできた大金を持て余していたんだよな……。
 毎月の給金もあるし、これと言った使い道が思い浮かばない。

「ん~、いやまだだな」

「おっ、じゃあ武器屋に行かないか? これから行くつもりだったんだよ」

 武器屋か……。
 これから先、どんな場面でも命を預ける相棒ぶきが今にも壊れそうなボロ剣じゃ、さすがにマズイか。
 この際ドカンと自分専用の業物を買ってみるのも悪くないかもしれない。

「そうだな……いい機会だし、俺も行くか」

 そう了承し、2人で武器屋に向かうことになった。






「……すごいな」


 武器屋に来た俺は、並べられた武器の数々を前に感嘆の声を漏らした。
 銀貨数十枚から金貨数枚の物まで、さまざまな種類が置かれている。
 手に持ってみると、軽さや剣の重心など上物と安物の差は歴然だ。

「う~ん……やっぱこれだ! これにします!」

 店員に話を聞き、どれにするか悩んでいたレルトは長考の末ようやく決めたみたいだ。

「いくらのにした?」

「金貨2枚! 値は張るがどうしてもこれが一番しっくりくるんだよなぁ……。お前はどうすんだ?」

「切れ味はもちろんだけど、適度に重さがあって丈夫なのがいいな」

 俺がそう言うと、店員がポンと手を叩いた。

「ならそっちの兵士さんにはこれがオススメですぜ。今日仕入れたばっかなんですがね……」

 まだ店頭に並べていなかったのか、店の奥から取ってきたのは真っ黒な剣。
 手に取って軽く振ってみる。

「これ、いいな……。値段は?」

「本当はもう少し高いですが、特別にもう一方ひとかたと同じ金貨2枚で!」

「おっ、じゃあこれで」

 満足のいく出会いを経て、俺は新たな武器を手に入れた。

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