世界実験開始
第二章 その1
本土奪還から一ヶ月。
あの日を最後に、共同国軍は全く姿を見せなくなった。
皇国政府はこれを好機とし、壊滅状態だった皇国海軍の再建に着手。国内では本土奪還に続いて、領海・離島奪還の機運が高まっていた。
世界に目を向けると、戦いはまだ一進一退の状況が続いており、決着の目途は立っていない。
戦いは、まだ終わっていないのだ。
しかし──、
「──東京への帰還命令が出た」
真門の勇ましい声が、天城山の朝に響く。
整列する兵士達にざわめきが生じ、僅かに隊列が乱れる。
それを正すかのように、真門がさらに大きな声で話し始めた。
「我々は長きに渡り戦い続け、ついに国家の宿願であった、本土奪還を成し遂げた。この成果は我々だけでなく、各所で戦った兵士達、我々を支援し続けてくれた国民、全員で勝ち取った勝利である」
兵士達から歓声が巻き起こり、それを戒めるように真門が咳払いをする。
「そして、我々が次に取り組まなければ行けないのが、奪われた領海・離島の奪還である。そこで今回、皇国陸軍は海軍と連携し、共同戦線の結成を約束した。これにより、我々第一軍は、東京に帰還すると同時に全部隊を解散、再編成に入る。撤退は今日から一週間後だ。それまで英気を養っておくように。以上!」
朝礼の終了を告げる言葉に、兵士達の一糸乱れぬ返事が続いた。
「海軍再建のためとはいえ、まさか陸軍の兵士まで動員するとはな」
兵舎に帰る途中、圭佑はそう漏らした。
「仕方ないよ。陸軍に回していた軍事費が財政の一番ネックな部分だったんだから」
今回の共同作戦の目的は二つ。海軍の再建と、資金繰りだ。
共同作戦ということは、しばらく陸軍の活動当面の間、停止するということだ。
これまで政府は、本土奪還のために莫大な軍事費を陸軍に使っていた。
そのため、今の規模の陸軍を維持したままでは、海軍の再建は不可能だと判断したのだろう。
「これからは海での戦いになるのか。なんか想像つかねぇな」
「そうだね……」
──鮮血で染められた海。
──たゆたう無数の死体。
「涼河、どうしたの?」
「え? 何?」
「急に黙るから、どこか具合でも悪いのかなって……」
「ああ、ごめん。大丈夫」
「なぁ、時雨はどう思う? 自分が戦う姿、想像できるか?」
すると、時雨は少し考えて言った。
「……私は、涼河のサポートをするだけだから。きっと何も変わらない。それよりも私は、イシュターク部隊の今後が気になる」
「今後?」
圭佑がきょとんとした声をあげる。
「うん。──私達、このまま一緒にいられるのかな……って」
「…………そっか……」
あの日を最後に、共同国軍は全く姿を見せなくなった。
皇国政府はこれを好機とし、壊滅状態だった皇国海軍の再建に着手。国内では本土奪還に続いて、領海・離島奪還の機運が高まっていた。
世界に目を向けると、戦いはまだ一進一退の状況が続いており、決着の目途は立っていない。
戦いは、まだ終わっていないのだ。
しかし──、
「──東京への帰還命令が出た」
真門の勇ましい声が、天城山の朝に響く。
整列する兵士達にざわめきが生じ、僅かに隊列が乱れる。
それを正すかのように、真門がさらに大きな声で話し始めた。
「我々は長きに渡り戦い続け、ついに国家の宿願であった、本土奪還を成し遂げた。この成果は我々だけでなく、各所で戦った兵士達、我々を支援し続けてくれた国民、全員で勝ち取った勝利である」
兵士達から歓声が巻き起こり、それを戒めるように真門が咳払いをする。
「そして、我々が次に取り組まなければ行けないのが、奪われた領海・離島の奪還である。そこで今回、皇国陸軍は海軍と連携し、共同戦線の結成を約束した。これにより、我々第一軍は、東京に帰還すると同時に全部隊を解散、再編成に入る。撤退は今日から一週間後だ。それまで英気を養っておくように。以上!」
朝礼の終了を告げる言葉に、兵士達の一糸乱れぬ返事が続いた。
「海軍再建のためとはいえ、まさか陸軍の兵士まで動員するとはな」
兵舎に帰る途中、圭佑はそう漏らした。
「仕方ないよ。陸軍に回していた軍事費が財政の一番ネックな部分だったんだから」
今回の共同作戦の目的は二つ。海軍の再建と、資金繰りだ。
共同作戦ということは、しばらく陸軍の活動当面の間、停止するということだ。
これまで政府は、本土奪還のために莫大な軍事費を陸軍に使っていた。
そのため、今の規模の陸軍を維持したままでは、海軍の再建は不可能だと判断したのだろう。
「これからは海での戦いになるのか。なんか想像つかねぇな」
「そうだね……」
──鮮血で染められた海。
──たゆたう無数の死体。
「涼河、どうしたの?」
「え? 何?」
「急に黙るから、どこか具合でも悪いのかなって……」
「ああ、ごめん。大丈夫」
「なぁ、時雨はどう思う? 自分が戦う姿、想像できるか?」
すると、時雨は少し考えて言った。
「……私は、涼河のサポートをするだけだから。きっと何も変わらない。それよりも私は、イシュターク部隊の今後が気になる」
「今後?」
圭佑がきょとんとした声をあげる。
「うん。──私達、このまま一緒にいられるのかな……って」
「…………そっか……」
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