世界実験開始
第一章 その10
「花を?」
「小さい頃、森の中で遊んでいた時に見つけたことがあったんです。ふと思い出したら、なんだかまた見たくなっちゃって」
そう話す彼女の表情は、どこか楽しそうに見えた。
「だから、こんな森の奥まで……」
「はい。探し続けていたら、こんな場所を見つけたものですから。ちょっと休憩してました」
どうやら、涼河は根本から勘違いをしていたらしい。
感じ取った呼吸の波は、彼女のものだったようだ。
幸い、変化した右手は見られていないようで、彼女ば涼河をただの軍人だと思っている。
「それよりも、軍人さんはどうして、こんな森の奥に?」
「あ、そうだった。すいません。今すぐ集落に戻って下さい。今、集落には──」
涼河は、自分が集落に来た経緯を説明した。
人口や戸籍に残っている人の生死などを調べるため、調査隊が集落を訪問していること。
自分は、その護衛としてきたこと。
共同国軍の残党が、まだ周辺に潜んでいる可能性があること。
一通りの説明を聞いた彼女は、涼河と共に戻ることを決め、二人は森を出るため歩き出した。
「それにしても、よくこんな奥まで一人で来ましたね。怖くないんですか?」
「庭みたいなものですから」
「へぇ、たくましいですね」
「何でそんなこと聞いたんですか? もしかして軍人さん、怖かったんですか?」
「なっ!? そんなことないですよ!」
「えぇ〜ほんとかな?」
「ほんとです!」
ムキになる涼河を見て、彼女はくすくす笑う。
「ふふふっ、すいません。なんだか拍子抜けしちゃって」
「拍子抜け?」
「軍人さんって、もっとこう……お堅いイメージがあったから」
「ああ、なるほど……ってちょっと待てよ。それって僕が弱々しいってことじゃ……」
「話しやすいんですよ」
顎に手を当てて考え込む涼河に、彼女は微笑みながらそう告げた。
「そう、ですかね?」
「はい。表情が柔らかくて、お優しいので」
なんだか妙に恥ずかしくなり、涼河はそっぽを向きながら、どうも、とだけ返す。
だが彼女には、その仕草が軍人らしくないのだと、すぐに指摘されてしまうのだった。
二人が森を抜けたと同時に、調査終了の狼煙が上がったため、二人は急いで集落に戻った。
「いやいや気づいてよかった。危うく彼女を情報的に殺すところでしたよ」
「お手数をおかけしてしまい、本当に申し訳ございません」
そう言って上泉に頭を下げるのは、彼女の母親であろう女性。
だが、目は青くなかった。
「お母さんは日本人なのか。ということは──」
「──涼河。あの人は誰?」
背後を振り向くと、そこには任務を終えて合流した時雨がいた。
「小さい頃、森の中で遊んでいた時に見つけたことがあったんです。ふと思い出したら、なんだかまた見たくなっちゃって」
そう話す彼女の表情は、どこか楽しそうに見えた。
「だから、こんな森の奥まで……」
「はい。探し続けていたら、こんな場所を見つけたものですから。ちょっと休憩してました」
どうやら、涼河は根本から勘違いをしていたらしい。
感じ取った呼吸の波は、彼女のものだったようだ。
幸い、変化した右手は見られていないようで、彼女ば涼河をただの軍人だと思っている。
「それよりも、軍人さんはどうして、こんな森の奥に?」
「あ、そうだった。すいません。今すぐ集落に戻って下さい。今、集落には──」
涼河は、自分が集落に来た経緯を説明した。
人口や戸籍に残っている人の生死などを調べるため、調査隊が集落を訪問していること。
自分は、その護衛としてきたこと。
共同国軍の残党が、まだ周辺に潜んでいる可能性があること。
一通りの説明を聞いた彼女は、涼河と共に戻ることを決め、二人は森を出るため歩き出した。
「それにしても、よくこんな奥まで一人で来ましたね。怖くないんですか?」
「庭みたいなものですから」
「へぇ、たくましいですね」
「何でそんなこと聞いたんですか? もしかして軍人さん、怖かったんですか?」
「なっ!? そんなことないですよ!」
「えぇ〜ほんとかな?」
「ほんとです!」
ムキになる涼河を見て、彼女はくすくす笑う。
「ふふふっ、すいません。なんだか拍子抜けしちゃって」
「拍子抜け?」
「軍人さんって、もっとこう……お堅いイメージがあったから」
「ああ、なるほど……ってちょっと待てよ。それって僕が弱々しいってことじゃ……」
「話しやすいんですよ」
顎に手を当てて考え込む涼河に、彼女は微笑みながらそう告げた。
「そう、ですかね?」
「はい。表情が柔らかくて、お優しいので」
なんだか妙に恥ずかしくなり、涼河はそっぽを向きながら、どうも、とだけ返す。
だが彼女には、その仕草が軍人らしくないのだと、すぐに指摘されてしまうのだった。
二人が森を抜けたと同時に、調査終了の狼煙が上がったため、二人は急いで集落に戻った。
「いやいや気づいてよかった。危うく彼女を情報的に殺すところでしたよ」
「お手数をおかけしてしまい、本当に申し訳ございません」
そう言って上泉に頭を下げるのは、彼女の母親であろう女性。
だが、目は青くなかった。
「お母さんは日本人なのか。ということは──」
「──涼河。あの人は誰?」
背後を振り向くと、そこには任務を終えて合流した時雨がいた。
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