異世界クロスロード ゆっくり強く、逞しく

アナザー

第18話 特訓初日 新たな発見

タスラー撤退後の食事会にて。

鬱憤を晴らすが如く。
飲むわ、食べるわ、歌うわの大騒ぎ。
そんな中、端っこに陣取る主役のライオット。

・なあ、なんで端っこ?
一応お前が主役みたいなもんなんだぜ?
真ん中で飲んで来いよ。

セリスさんが俺に絡んできた。

・だって皆さん怖いんだもん。
俺は静かに暮らしたい。

・うん。

ライオットの隣にはマーダーがいる。

・静かに暮らしたいって、お前には無理だろ?
いつも騒ぎの中心に居るくせに。
てか、マーダー。
お前も今回の中心人物なんだからな。
2人して端っこに居るってどうなんだ?

・だって私、
ライオットさんの、
恋人だから。

・ブッ、
何だと?いつの間にそんな事に?
おい、ライオット
どう言う事なんだ?

あ、そう言えば訂正するの忘れてた。
ついでに謝っておくか。

・タスラーとのやり取りの中で、部外者の俺が自然に話の中に入る為に、仕方なくそう言う設定にしました。
マーダーさん、成り行きとは言え、
突然あんな事言ってごめんなさい。

・構わない。
守ってくれた。
嬉しかった。

・そう言う事か。
ビックリしたわ。
大体まだ逢ったばかりだろ?
ビックリしたわ。

セリスさんが酒を飲みながらぶつぶつ言ってる。
聞かなかった事にしよう。

・んで、決闘はどうするんだ?
どうやって勝つ?

・そうですね、色々と考えてる事はあります。
でも、まだ仮説の段階ですので何とも。

・それで4日後って言ったのか。
4日で何とかなるのか?

・俺の仮説が正しければ大丈夫です。
後はマーダーさん次第で作戦も変えます。

・ぶっつけ本番か。
まあいい、気楽に行け。
万が一の時はアタシが出る。
誰にも文句は言わせねぇ。
お前はアタシが護るんだからな。

セリスさんがカッコいい。
一緒に居ると安心するわぁ。

・なるべくセリスの手を煩わせない様にするよ。
とりあえず、明日はマーダーさんと特訓してくる

・何か必要な物が有れば言え。
武器でも何でも用意してやる。
だから、、、、
無茶だけは、、、しないでね。

お淑やかセリスさんがちょっと出てきた。
そんな心配そうな顔しなくても大丈夫だよ。

・ライオットさん。
無理しないで。
私だけで、
出てもいい。
いっぱい守って貰った。
十分。

マーダーさんも心配になってしまったのかな?

・2人とも大丈夫だよ。
勝算はあるって言ったろ?
今日は楽しもう、勝利の前祝いとしてさ。

俺は明るく振る舞う。
そして夜は深けて行く。

次の日の早朝。
俺はギルドに来ていた。

・おはようございます。

・あら、おはよう。
ちゃんと3日分の樽は用意しておいたわ。

・サリスさん、ありがとうございます。
あと、マーダーさんが良ければ3日間泊まり込みで行きたいので、キャンプ用具と幅広く雑魚から強敵まで出て来る場所って無いですかね?

・泊まり込みで行くのね。
野営道具なら貸し出してるわ。
狩場は、地図に印を付けて後で渡してあげる。

・ありがとうございます。
では、水を作ってきますね。

俺は錬金の部屋に入っていった。

・あの子、負けるなんて微塵も思ってないわね。
楽しみになってきたわ。
今回はどの様に切り抜けるのかしら。

サリスは思案するが答えは出ない。
どう考えても負けてしまうビジョンしか浮かばないのだ。

・答えはあの子が見せてくれる、、
もう、信じるしかないわね。

サリスは地図を取りにギルド倉庫に向かった。

・さてさて、樽9つか。
あまり時間も掛けたく無いし。
1人だから遠慮なく一気にやってやるか。
魔力全開でいくぜ!

ライオットは遠慮なく水を放出する。

・錬金術のレベルが一定値になりました。
補正レベルが解放されます。

・忘れてた。
元々、この補正値狙いだったな。
樽が9つで錬金術が結構上がるんじゃ無いかな?
よしよし、ラッキーだ。

約1時間程で樽が全部満タンになる。

・ぶはぁ、流石に疲れた。
とりあえずステータス見ながら休憩だな。
ステータス

レベル8 所持金 3309c
筋力 55 +20(特  +20(加
知力 70 +20(特 +40(加
敏捷性 53 +10(特
・スキル
自動マーカー、マップ、精神自動回復、順応力 
・魔法
癒しの鼓動
風魔法 レベル8
炎魔法 レベル12
水属性 レベル15
・技能
剣術レベル8 補正レベル1  筋力 2 敏捷生 2
杖術レベル1
盾術レベル1
体術レベル9 補正レベル1 筋力 2 俊敏性 3
射撃レベル9  補正レベル1 筋力 2 俊敏性 2
・特殊技能 補正値パッシブ(特
採取レベル12 補正レベル2 筋力 10 知力 10
採掘レベル11 補正レベル2 筋力 10 敏捷性 10
魔装術レベル7 補正値レベル1 知力 10
・加工技能 補正値パッシブ(加
裁縫レベル10 補正レベル2 知力 20
鍛治レベル10 補正レベル2 筋力 20
錬金レベル10 補正レベル2 知力 20

・知力が断トツに上がってる。
最近は魔法ばかり使ってるからな。
武器スキルも上げなければ。
しかし、これだけやって錬金術が10って事は飲料水ではこれ以上は上がらないのかな?

・ライオットさん、
おはよう、
早いね、
私も、
水、手伝う。

今日もフードを被ったマーダーさんが来ていた。

・あ、もう終わりましたので。
マーダーさんの準備が終わりましたら早速行きたいと思います。
実は3日間泊まり込みで行きたいのですが。
大丈夫ですか?

・泊まり込み?
野営するの?
2人で?

・はい、でも2人で泊まるのが不安だったりしたら無理しないで教えて下さい。
別に泊まらなくてもここからすぐに行ける場所で特訓する事も出来ますので。

・大丈夫。
ライオットさんなら、
2人でも平気。
むしろ
他に人が居る方が嫌。
2人が良い。

・ありがとうございます。
俺、実は野営が初めてなので手際とかは悪いと思いますが、2人でやれば何とかなりますよね?
一緒に頑張りましょう。

・うん。
頑張る。
ところで、
樽が9つもある
全部、
やったの?

・そうですよ、
これで3日はここに来なくても大丈夫です。
では、サリスさんに地図をお願いしているので取ってきますね。
野営道具もついでに借りてきますので、ギルドの前で待っていてください。

俺は部屋を出てサリスさんを探しに行った。

・ライオットさん、
本当に凄い、
何者なんだろ

マーダーはライオットがいつの間にかやってのけた飲料水の精製量に驚愕していた。

ギルド前にて、
俺は大き目のリュックを背負ってマーダーさんの所に行く。

・お待たせしました。
では早速向かいたいと思いますが、
何か買い出しとか行きたいですか?

・大丈夫。
すぐに行ける。

・では行きましょう。
途中で疲れたら言ってくださいね。
パーティーだから遠慮は無しでお願いします。

・荷物持つ。
リュック、
渡して。

・大丈夫ですよ。
荷物はこれで全部ですから、
マーダーさんはそのまま付いて来てください。

・良いの?
荷物持ちじゃないの?

・違いますよ。
荷物持ちは俺がしますから。
これでも男ですので。

・ふふふ、
パーティー。
仲間。

何だかマーダーさんが嬉しそうだな。
とりあえず目的地まで歩いて行くか。
ちょいちょい休憩入れながらで良いな。
遠慮して疲れても言わなさそうだし。

2人は途中で休憩を取りつつ、半日ちょい程掛けて目的地周辺までたどり着いた。

・よし、ここからマップで安全圏を探そう。
マップオープン。

赤点が結構離れて点在している。
成る程、良い狩場だ。
それぞれのテリトリーがある感じだな。
流石はサリスさん、良い仕事するね。
俺は近場の川で野営地を設置する事にした。
一応、川から少し離れた高台にしておこう。
水位が上がると怖いしね。

・野営地を設置するのに時間が掛かると実験出来るか怪しくなるかな?
先にやるか。

俺は空の太陽を見て考える。
日差しは強めだ、これなら余裕かな。
てか、太陽で良いよな?
似た様なもんだし、太陽としておこう。

・マーダーさん、とりあえず先にやりたい事があるので荷物をここに置いて川原に行きましょう。

・わかった。

2人は川原に降りて行く。

・では、始めます。
今からやる事とは。
マーダーさんに火を作ってもらう事です。
俺の仮説が正しければ炎を使えるはず。

・無理
私は水属性。
火属性は主に貴族が使える事が多い。
火を作れる人は強くなれる。
水とは正反対。

・確かに、、、
火属性を使えば強くなるって印象はありますね。
でも、俺的には水属性の方が凡庸性は高いと思ってますよ。

・意味がわからない。
昨日も言った。
水から火は作れない。
常識。
水だと敵も倒せない。
水は洗って飲むだけ。
水は何もできない。

おっと、地雷を踏んだみたい。
マーダーさんが少し怒ってる感じ?
いや、悲しんでる感じか。
でも、水が何もできないとか、
それは違うと思うよ。

・マーダーさん、
俺を信じて色々試してみませんか?
水がどれ程凄いのか、示したいんです。

・貴方も私を馬鹿にするの?
水属性はただの足手まといなの。
パーティーでも、ダンジョンでも
洗ったり、飲み物を使ったり。
荷物を持つだけ。
危険になったら捨てられる。
囮としてしか使えない。
何もできないの。

マーダーさんが心を閉ざし気味なのが少しわかった気がする。
属性は生まれつきって言ってたな。
水属性の人達の境遇は余り良くないのかな?
さて、どうやって信じてもらうか。
説明は難しいから、やっぱり実演かな。

・マーダーさん。
俺は決して馬鹿になんかしてませんよ。
水には無限の可能性があると思ってます。
だから、賭けをしませんか?
俺が勝ったら俺の言う事を聞く。
俺が負けたらマーダーさんの言う事を聞く。
賭けの内容は、、、
そうですね、
水属性では敵を倒せないと仰ってましたね?
なら水属性であの岩に穴を開けてみせます。
如何でしょうか?

・無理に決まってる。
何故?
何故こんな事をするの?

・常識とは、、、
大勢の人の偏見が重なった時に出来る物です。
常識が全て正しいとは思えない。
だから、証明してやるんですよ。
水属性は、マーダーさんは凄いんだって。

マーダーは黙って俺を見詰める。

・今から、俺が証明してみせます。
見ていて下さい。

・うん。
わかった。
私は、
ライオットさんを信じる。

よし、俄然やる気が出てきた。
イメージを大切に行こう。
大事なのは水圧だ。
細く、そして限りなく速く。
ウォーターカッターで鉄だって切断出来るんだ。
魔力を使えば同じ様な水圧を作り出せるはずだ。
魔力を溜めて圧縮。
水に変換すると同時に細く速く発射だ。
よし、行ける。

・行くぞ。
スプラッシュニードル!

シュン、シュン、シュン

よし、出来た。
思わず3連射してしまった。
やる気って凄い!
俺はマーダーさんを見る。
これまでにない程驚いている。
そう言えば岩に水が当たる音がしなかったな。
俺は岩を見る。
後ろの延長線上の岩が幾つも穴が空いていた。
穴を開けると言うより綺麗に貫いていた。

・やりすぎちゃった、テヘ。

・今の、水属性?
本当に水属性だけだった。
他に魔力の質は感じなかった。
岩が、あんなに、
凄い。

・えぇ、
水属性のみでやりました。
如何ですか?
水属性は凄いでしょう?

・うん。

マーダーさんが俺を尊敬の眼差しで見詰める。

・俺が思うに、マーダーさんの方が強い魔法を撃てると思いますよ。
俺はまだ魔力の扱いに長けてない。
魔力を回復出来るから量で勝負しています。
しかし、職人さん達は日々質を向上させています
魔力の操作で職人に勝てる人など居ませんよ。
だから、理解すれば職人さんは強い。
サリーヌさんやドンクさん、マーダーさんの魔力操作を見てそう感じました。

・信じられない。
でも、ライオットが言うなら、、そうなんだね。

・おっと、今日のやりたい事が出来なくなる前にやりますか。
マーダーさんに火を作って貰わなきゃ。

・うん。
やってみる。
教えて。

マーダーさんが前向きになってくれた。
出来そうな気がするぞ。

・俺は考えたんです。
何故、他の属性が使えないのか。
魔力は同じなのに変換できないのは何故か。
それは生まれ付き魔力の本質が決まっているからだと思ったんです。

・ふんふん

・要するに、魔力の本質そのものを変化させれば違う属性を使えます。
恐らく俺は本質を変化させれるのでしょう。
ですが、普通の人は本質を変化させれない。
だから属性が決まっている。
ならば、本質を変えないで他の属性を生み出す事が出来れば、水から火を生み出せるのではないかと考えました。

・ふむー。
難しい。

・てなわけで実演してみますね。
まず、用意するのはこちらの糸草さん。

俺は鞄から糸草を取り出した。

・これを着火材とします。
ここで問題!
水を使って、この糸草に火をつける事は可能か?

・不可能。

わぉ、即答。

・答えは、
可能です。

・うそ、
出来るの?

・はい。
まず、水をこの様に成形して作り上げます。
これを水のレンズと言います。

俺はレンズ型に水を作り出す。

・そうすると、光が集まる場所が出来ます。
ここだけ光が強いの、わかります?

・うん、
ここだけ明るいね。

・レンズを上下すると光の大きさが変わります。
光を限りなく点にして、暫く糸草に当てると。

・あっ、煙、
煙が出て来た。
あぁ、火が出た。
凄い、何で?

やっぱり、こう言う概念は無いのか。
当たり前か、
向こうの世界の様に科学なんて無さそうだしな。
そう考えると小学生って凄い事習ってるよね。

・これは、空にある明るい星の光を集めて熱を作り出す方法です。
水で火が作れる事がわかりました?

・やってみてもいい?

・是非是非!
一緒にやりましょう。
まず、レンズを作って、光を集めて、
糸草に当てて待つ。

うん、さすが水のスペシャリスト。
成形とかもう出来てるよ。

・あ、燃えた。
凄い、楽しい。

マーダーさん楽しそうだな、、、
何だか和むわぁ。

・仕組みが理解出来たみたいですね。
ここからが本番です。

・うん。
凄いドキドキする。
こんなの初めて。
もっと教えて。

・ひとつひとつ進みますね。
先ず、レンズを作り浮かべます。

俺はレンズを魔力で浮かせて固定する。

・うん

・両手を前に出して、間に魔力の玉を作ります。

・うん。

・魔力にレンズで火を着ける感じです。
魔力の玉を先程の糸草と考えて、熱を加えるのです
そして、その時の魔力の変化を感じて下さい。

・やってみる。

俺は暫く待った。
魔力のスペシャリストの職人だからこそ、、、
出来ると思うんだ。
僅かな変化も逃さないはずだ。
頑張れマーダーさん。

・変化した。

・その魔力の感覚を覚えてください。

・わかった。

・新しい魔力の感覚を覚えたら、
次は糸草が燃え出す所をイメージして、
魔力をそのイメージに被せてみて。
魔力を燃やすんです。

・イメージを被せる。
糸草が燃え出すイメージ。
魔力を、燃やす。

ボゥ

よし、火が出た。
どうだ?
俺の考えが正しいなら、炎属性を覚える筈だ。
、、、少し経ったがマーダーは動かない。
ダメか?
せめてアナウンスとか聞こえたらなぁ。

・ライオットさん、
ライオットさん、

・はい、ここに居ますよ。

・水炎魔法を、、、
覚えました。

おっと予想外の属性が出てきた。
名前からして水属性の本質で使う炎属性?
大方予想通りだけど、新しい属性が出来てしまったぞ。

・それに、
ツインエレメンツって言う称号が着きました。
魔力の絶対量が2倍になるって。

・おお〜、何だか凄いですね。
おめでとうございます。
予想外の属性でしたが、火が作れたでしょ?

・はい。
本当に火が作れた。

マーダーさんは両手に火の球を作り出す。
作り方さえわかれば魔力の操作はお手の物だな。
やっぱり職人はすげぇ。

・もう簡単に作れるんですね。
俺が思った通り、マーダーさんは凄い人です。

マーダー恥ずかしそうに俺を見る。

・初めて、、、
こんなに褒められた。
ありがとう。
ライオットさんのお陰で、自信が持てそう。
でも、こうなるって知ってたの?

・いえ、ひょっとしたら程度ですね。
出来るかどうか、やってみないと分からなかったです。

自信を持ち始めたからかな?
話し方がカタコトじゃ無くなって来た。
この調子で頑張れ、マーダーさん。

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