話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

異世界クロスロード ゆっくり強く、逞しく

アナザー

第5話 小さな英雄と異端の魔法使い

少し離れた丘の上。
戦場となっている平原が見える。

・「ぜぇぜぇぜぇ」

・セリス
「おい、何で走ってたアタシが平気で、担がれてただけのお前が息切れしてんだよ。」

だって、すごく早かったんだもん。
凄く怖かったんだもん。

・セリス
「さて、ここからがお前の出番だ。」

地図を取り出すセリスさん。

・セリス
「敵の位置を索敵して、この地図に記してくれ。
指を指してくれれば良い。」

・「わかりました。」

俺は広げられた地図を見ながら自分のマップと意識を重ねて行く。
そして最初の位置を指で指そうとした瞬間。

・マップを反映しますか?

不意に無機質なアナウンスが聞こえた。
反映?どゆこと?
ビックリして止まっていると。

・セリス
「どうした?
そこに敵か?味方か?」

・「えっと、ちょっと待って下さいね。」

再び俺は地図とマップを重ねる。
そして指を指した時。

・マップを反映させますか?

まただ、反映?
反映か・・・
紙の地図に俺のマップを反映させるって事か?
それならセリスさんにも目えるようになる?
やってみるか。

・「反映させてくれ」

突然喋った俺にセリスさんが反応したが、直ぐに地図の異変に気付く。

・セリス
「いつの間にマークしたんだ?
おい、これマークが勝手に動いてるぞ?」

マジか、反映ってこう言う事か?
思った以上に自動マーカーが優秀なんですが!
俺は出来る限り冷静に説明をする。

・「こ、この赤い点が敵意を持った者。
つまりは敵になります。
白が中立、つまり味方となります。
青は味方、セリスさんになります。
マークが動いているのは、その方が移動しているからですね。」

・セリス
「(コイツ、何て規格外な能力を持ってるんだ。
リーシュが必要になると言っていたが。
ここまで有能な奴とは。
ある種の戦慄を覚えたぜ。
たが、これは助かる。
いや、最高だ。)」

・「どうしました、セリスさん?
何か不味かったですか?」

ハッとするセリス。

・セリス
「いや、何でもない。
これなら、いける。
ライオット、お前は凄い奴だな。」

褒められた!
セリスさんに褒められたぞ!
ちっちゃ可愛い子に褒められるって何だか新鮮。

・「これからどうするんですか?」

・セリス
「ここから魔法で撃ち抜いて、森で迎撃しているサリス達が平原まで押し返せるように誘導する。
最初の一撃で3ヶ所を潰したい所だが、アタシの魔力じゃ2ヶ所がせいぜいだ。
だから何処を落とすかが重要になる。
魔力回復薬が有れば他にも潰せたんだがな。」

成る程、だから高い場所に来たのか。
って事はこの距離も射程圏内って事なのか。
魔法って奥深い。

・「魔力が減らなければ他にも潰せるんですか?」

・セリス
「まあな、
だが無い物をねだっても仕方がない。
もう少しだけ敵の動きを見て潰す所を決めよう。」

ふむ、
リーシュさんは内緒にしろと言っていたが、セリスさんには俺が居れば大丈夫って言ってたよな。
リーシュさんは自動マーカーの事知らないから、魔力の面で大丈夫と伝えたって事になる。
つまり、セリスさんになら教えても良いと言う事か

・「セリスさん。
魔力回復方法ならあります。
なので潰す優先度と順番を決めてドンドン魔法を打ち込むってのはどうでしょうか?」

・セリス
「そう言えば、リーシュがお前が居れば大丈夫って言ってたな?
あれはこの地図の事だけじゃ無いのか?
個人的に回復薬を持ってるって事か?」

・「あ、薬じゃ無いですよ。
俺が魔法で魔力を回復させるのです。」

・セリス
「は?何言ってるんだ?
そんな事出来ないだろ?
まさか、出来るのか?」

何だか凄い驚いてるな。
やっぱり魔力回復の存在は余り言わない方が良いみたいだな。
今後気を付けないと。

・「はい、出来ます。」

・セリス
「マジかよ。
(コイツ、本当に何者だ?あり得ないだろ?)
魔力回復の程度はどれ程だ?」

・「あ、その辺がよくわからないので、潰す優先度と順番を決めて魔法を使って欲しいのです。」

・セリス
「(成る程、回復量はそう多くはないって事か。
とは言え僅かでも魔力を回復させる事が出来るのであればコイツは最高のサポート要員となる。
パーティーに欲しい逸材だ。)
良いだろう、上等だ。
僅かでも回復するなら3ヶ所潰してやる。
魔力回復、頼んだぞ。」

そう言ってセリスさんは目を細めた。
約30秒程その状態が続くと次第に変化が訪れる。
周りの空気が変わって行く。
空気がピリッと張り詰める。
ビリビリと大気が振動を始める。
少しずつ空気が回り始める。
徐々に速度を速めていく。
セリスさんを中心に大きな渦となる。

・「何だこれ、凄い。」

緊張が高まっていく。
渦巻く空気が一気にセリスに吸い込まれて行く。
一瞬の静寂の後、
セリスさんが目を見開く。

・セリス
「いくぞ、」

『氷塊』

そう言い放つと右手を前に突き出した。
セリスさんの右手から小さな氷?が飛んでいく。
それが目的地の上空まで行くと一気に大きくなり、巨大な氷の塊がその周辺を敵ごと押し潰した。

・「はは、凄え、これが魔法か。」

・セリス
「ドンドンいくぞ。」

『氷塊』

また、セリスさんから小さな氷が飛んで行く。
おっと、俺も仕事しなきゃだな。
三発目を出す前にっと。

『癒しの波動』

・セリス
「あぁっ」

セリスさんらしくない声が聞こえたと思ったら、驚いてる顔でこちらを見ていた。

・セリス
「(何だ?これ。魔力が、魔力が溢れてくる。
こんな事ってあるのか?凄い、本当に凄い奴だ。
これなら!)」

・セリス
「いける所までいくぞ!」

『氷塊』

セリスさんの魔力が回復したのであろう。
また何かが高まっていく感覚がする。
何だろう?
セリスさんの周りのキラキラ光ってる珠みたいな
あれが魔力なのかな?
ハッキリと見える。
流れがよくわかる。

『癒しの波動』

もっと、もっと見せて下さい。
セリスさん!

その後も2人のやり取りは続く。

『氷塊!』
『癒しの波動!』
『氷塊!』
『癒しの波動!』
『氷塊!』
『癒しの波動!』

・セリス
「このまま、戦車も潰すぞ!
ライオットぉぉぉ」

・「セリスさん〜」

いつの間にか、セリスさんの左手は俺の右手を掴んでいた。
渦巻く魔力の中心に包まれる。
まるで一つの意思を持った兵器そのものになる。
標的となったオーク陣営を無惨にも壊滅させて行く
みる人が見れば凄惨な光景。
まさに地獄と表しても良いかもしれない。
しかし2人は止まらない。

『氷塊!』
『癒しの波動!』
『氷塊!』
『癒しの波動!』
『氷塊!』
『癒しの波動!』

・セリス
「これでラストだ!」

今までとは比べ物にならない大きな流れが来る。
俺は瞬間的に察した。

・セリス
「おぉぉぉぉ」

空気が圧縮される。
魔力が渦を巻く。
セリスさんに吸い込まれながら大きくなる。
巨大な魔力の塊が一瞬で凝縮される。
刹那

『・氷刃,五月雨落とし』

『・癒しの波動』

小さな無数の氷が飛んで行く。
上空で集まって光る。
すると大きな氷の刃が数えきれない程降り注ぐ。
凄まじい轟音と振動。
そして・・・沈黙。

オーク陣営は完全に崩壊していた。
さらに森に潜伏していたオークも。
森の中にいた冒険者は無傷。
地図で味方の場所を確認していたセリスさんは味方に当たらない様に擊ち分けていた。
本当に凄い人だな、セリスさん

・セリス
「ライオット!」

突然呼ばれた。
するとセリスさんが俺を見て言い放った。

・セリス
「お前は、最高だ!」

そう叫びながら抱き着いて来た。

・「セリスさんこそ、最高です!」

俺も抱きしめ返す。
この時、俺達は完全に舞い上がっていた。 

森では迎撃していた冒険者達が平原に出てきて状況を確認している。
やがて大きな歓声が上がる。
勝利を確信して大騒ぎとなっていた。
その中、一人冷静に丘を見つめる人がいた。
策を講じて、後で必ず来るであろう妹の魔法を信じ、迎撃し続ける指示を出したサリスさんだ。
そんなサリスさんは遠くの丘の上で抱きしめ合う二人を見ていた。

・サリス
「魔法撃ちすぎよセリス。薬をどれだけ飲んだの?
、、、って心配してたんだけどシラけちゃったわ。
セリスったら大胆に抱き合っちゃって。
ところでもう一人は誰かしら?
遠くてわからないけど、セリスの良い人かしら?
後でしっかり聴かななきゃね。
フフフ」

様々な感情の中、平原にはセリスの無事と作戦成功を心から願い、戦い続けた姉の姿があった。

・セリス
「その、あれだ。
ちょっと舞い上がってたわ。」

・「はい。」

・セリス
「今のは、無かった事にしような。」

・「はい。」

丘の上ではやっと正気に戻ったセリスが顔を真っ赤にしながらライオットと話していた。
小さな魔法使いと異端の魔法使いの活躍により、最小限の被害で勝利を納めることが出来た。
この戦い以降、オルドラの氷鬼姫、と言う二つ名が付いたギルド長はその名を轟かせ、異端の魔法使いはひっそりと存在を隠すのであった。

こうして、オーク殲滅戦は幕を閉じた。

トリナ村のオーク殲滅戦
兵士側に2名の尊い犠牲が出てしまったが、オーク軍の規模を考えると奇跡と言って良い程の大勝利を収めた。
その後、村の周辺を軍が調査。
オークの全滅を確認。
魔法による地形の変化も調査。
農村への影響は無いと判断が下る。
それから3日掛けて村人の心のケアを行う為、暫くは軍人が村の警護を行う事となった。
司令官は殉職した兵士の為に私財から小さな供養塔を建て、命日には御供物をして供養して欲しいと村長に頭を下げた。
以上が司令官バルトロストが行った全てである。


登場人物
ライオット
主人公
魔法の力に圧倒された。

セリス
オルドラギルド長
氷魔法でオークを殲滅させる。
ライオットの魔法で味わった事のない感覚を得る、そしてライオットに惹かれ始める。

・バルトロスト
作戦本部司令官
奇跡的な勝利を掴むものの、犠牲となった兵士の事で胸を痛める。実は優しい人なのだ。

・サリス
ギルド総務でセリスの姉
セリスが丘の上で誰かと抱き合うのを見掛ける。
誰か気になって仕方がない。


「異世界クロスロード ゆっくり強く、逞しく」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く