転移兄妹の異世界日記(アザーワールド・ダイアリー)

Raito

第10話:炎のダンジョンと魔王幹部

 1


 俺たちはダンジョンから帰ってきた。簡単に言うと途中離脱だ。


 何が初心者向けダンジョンだ。バリバリ上級者向けだろうが。


 あんな灼熱の空間、人間が入れるところじゃない。というわけで、再挑戦するため、俺たちはアリス魔具店に来ていた。


「あ、いらっしゃいませシュバリむぐ!?」


 とんでもないことを口走りかけたアリスの口を塞ぐ。


「おい、バレたらどうすんだバレたら!ミナミはともかく、他の二人は知らないんだぞ!?」


「そ、そうですか?なら、なんとお呼びすれば…」


「シュガーでいいんだよシュガーで!」


「で、ですがそれは先代が使われていたシュバリエル様の愛称で…」


 何こんなところで忠誠心見せたんだこいつ!?まあ、たしかに元幹部ならば見せて当然だろうが…。


「今はそんなことより、こいつの身バレを避けるべきだろ!?もしもバレたら死刑だぞ、死刑!」


「おおげさですよ!?でも、言われてみれば…はいそうですね、では、これからはシュガーさんとお呼びすることにします」


「二人とも、何話してるの?」


「い、いや、なんでもない。あ、こいつの紹介がまだだったな。こいつの名はアリスって言うんだ。この魔具店の店主だ」


「どうも皆さん初めまして、元魔王…むぐっ!?」


 またもやとんでもないことを言い出したこいつの口を塞ぐ。何言ってんの、こいつ!?


「お前やっぱり馬鹿だろ!?なんてことカミングアウトしちゃったんだよ!元魔王幹部だって十分な重罪だろうが!」


「そ、そりゃ『七つの大罪』ですから」


「いや、今はうまく返して欲しかったんじゃないんだよ!シンプルに重罪だろ、牢獄行きだぞ!」


「う、うーん。そうなんですか、ならあまり公言しないようにしますね。牢獄生活は御免です」


 なんとかアリスを説得して、ミナミたちの方へ向き直る。まさか、元魔王軍って、こんなやつばっかじゃないだろうな?


「あ、あの、そろそろ私たちの方を紹介していただけたら…」


「あ、ああそうだな、右からミナミ、ルキア、メアリーだ」


「紹介雑じゃないですか?もう自分で自己紹介します。私はイリヤ・ミナミ、そちらに居るイリヤ・ユウマのたった一人の妹です。一緒の部屋で寝ていて、花嫁第一候補痛い!」


 俺はミナミの頭を軽く小突いた。本当、こいつは自己紹介で一度変態発言をしないといけないというプライドでもあるのだろうか。


「ひ、酷いですぅ…でも、こういうところがまたそそられるんですよねぇ…」


 なんだこいつ、Mにでも目覚めてしまったのだろうか。とりあえず、今はそっとしておこう。


「ぼ、僕はルキア・エリエル。一応鬼の一族で、今は剣士をやってるよ。あ、誤解がないように言っておくけど女だからね?」


「鬼の一族、ですか…」


「あ、やっぱり気に障ったかな…」


「い、いえ大丈夫ですよ!?少々知り合いに鬼の一族なのにエルフの血を引いている人がいて、その人を思い出していたのです。まあ、その人の鬼っぽいところは一度も見たことはないのですが…」


「僕と兄以外にもそんな人が…今度会いたいなぁ」


「会えるかは微妙ですね。今は、詳細も安否も不明なので、なんとも言えないです」


 ていうか、こいつってエルフの血も引いていたのか。初耳なんだが…そういうことは、もっと早く言ってもらいたいものだ。


「え、えっと次は私ですね。私のこと見えますか?」


 まあ、こいつの場合はそこからだろう。見えてないのなら元も子もない。


「あ、一応見えますよ。くっきりはっきり」


「そ、そうですか。では自己紹介ですね。私の名前は、メアリー・キアリス。現在幽霊です。霊感のない人には見えないらしいので、見える人が増えてくれて、その…嬉しいです…」


「私も嬉しいですよ。幽霊に出会うことなんて滅多にないので。会えたとしてもファントムタイプのモンスターだけですから」


「そ、それは大変ですね…」


 一通りの自己紹介が終わり、アリスがレジカウンターの席に座る。


「それはそうと、本日はどのようなご用件で?ただ自己紹介しに来ただけではないでしょう?」


「あぁ、その通りだ。話が早くて助かるよ。実はだな…」


 俺たちは先日の出来事をアリスに話した。すると、彼女の顔がかなり険しくなっていた。


「その白骨死体、かなり異常ですよ」


「いや、それはわかるけどさ、どの辺りが危険なんだ?」


「モンスターの骨というのは、普段はドロップしにくいんですよ。剣で切ると骨は砕けるし、魔法で倒すと骨ごとなくなる。つまり、本来なら状態以上にして…簡単に言えば毒状態にして、弱りきったところを剥ぎ取ることが入手方法…なんですけど」


 かなり酷い殺し方をするらしい。だが、これが一番効率がいいだろう。


「話を聞くところ、それは骨だけで、もう皮がない状態なんですよね?」


「えっと、つまりどういうことだ?」


「小型モンスターの皮なんて、価値もないんですよ。でもそこには骨しかなかった。つまり、皮が蒸発したんです。まるで火葬されるように」


 余計に頭が痛くなって来た。


「そ、それなら一緒に見に行くか?その死体」


「で、でも、アリスには店の仕事があるから、無理じゃないかな」


「それもそうだな、ごめんアリス今のはなかったことに…」


「いえ、今日は定休日ですので、ご同行できますよ。それに、なんだかそれ、嫌な予感がします」


 こいつもどうやら、あのダンジョンの異常さに気づいたらしい。


 2


 改めてアリスをパーティに加え、臨時パーティを結成した。元魔王幹部が味方なら心強い。まぁ、こちらには最初から元魔王がいたのだが…。


「確かに暑いですね…っと、これですか、骨の山。少々灯もらえますか?」


「あ、うん」


 アリスは骨を手に取り、じっと眺めた。そして、一言つぶやいた。


「まだ新しい…」


「新しい?骨がか?」


「はい、そうです。これは死んでから一週間もたってないですよ。死体になることなく、一瞬で骨にされたのでしょう。まるで、水が一瞬で蒸発するように、体内の水分を全て熱に奪われ、ミイラにもならず白骨化したようですね。普通、このタイプのモンスターは骨を落としませんから」


 洞窟内は暑いはずなのに悪寒が走った。俺たちはとんでもなくやばい奴を敵に回しているのかもしれない。


「それに足跡、これは明らかに人間のもの」


「つまり、これは人間の仕業って言いたいのか?」


「いや、人型の何か…といったほうが正しいかも」


「人型の何か?なんですかそれ?」


「ゆ、幽霊とかですか…?」


 二人が完全に怯えきっている中、アリスは冷静に事態を整理していた。


「いや、違います。おそらく悪魔とか、その類でしょう。冒険者たちの生気を喰らうために用意されたダンジョンかもしれません」


「ダンジョンの作られる目的があるなんて、そんなの、僕知らなかったよ」


「いえ、ただの考察です。気にしないでください。あ、あとそろそろこれを飲んでください」


 そういうと、アリスは瓶のようなものを五つ取り出した。何だろうこれ?


「クーラーポーションですよ。これを服用すると、一定時間氷魔法が体を包み込み、熱に強くなるのです。定価一本300ルナです」


「金取るのかよ!」


「いや、今回はお試しということで、タダでお譲りします」


「おお、太っ腹ですね!」


 そう言われると、アリスは「エヘヘ」と照れていた。


「そういえば、一定時間ってどのくらいなんだ?」


「個人の魔力保持量によって変わらますので、あまり長期戦には向いてませんね…って、あれ見てくださいひらけた場所がありますよ」


「ボス部屋ってやつか?とりあえず、このポーション飲んどくかぁ…」


 俺は一口ポーションを飲み込んだ。すると、身体中に電撃が走る!


『まずっ!?』


 俺とミナミの声が盛大にかぶった。何だこの不味さは?これ本当に飲み物か?


「知らなかったの?ポーションってあまり美味しくないんだよ?」


「どちらかといえば薬に近い」


 ま、まあ、もう水で流し込んだから大丈夫…あれ、目から涙が…。


「う、うっぷ…」


「おいミナミ、流し込め!吐くなよ、絶対吐くなよ!?」


「フリですかうっぷ…」


「フリじゃねぇ!早く流し込め!」


 ミナミは必死に水筒を飲んでいる。そのあいだに、俺はアリスと話をしていた。


「これで効果は出るのか?」


「おそらくですが出ると思います。では、行きましょうか。ダンジョンのボス退治に」


「おう!」


「はい!」


「うん」


「そうだね!」


「あ、あの、まだ水流し込み終わってないんですけど、口の中に残留したポーションが…」


 3


 やけにだだっ広い空間に出た。


 なんだろう、ここ?


「何もないな。何のために用意されたんだ?ここ」


「いや、見てください!あれ、石でできた椅子じゃないですか?それにこれ…」


 ミナミが部屋の一角を指差すと、そこには巨大な椅子があった。


 その椅子は、俺の背の二倍くらいの座高で、かなり古いもののようだった。その証拠に…。


「かなり古いものです。元々のボスだったんでしょうか?これはジャイアントオーガの骨ですね。このタイプは、環境に適用できる筈ですが…」


「てことは、ここはかなり古い時期から存在していたことになりますよね?でも、環境に適用できる種類が、どうして白骨で見つかるのでしょうか…?」


「おそらく、環境に適用する前に、肉体が尽きたんですよ。それほどの高温だったのでしょう」


「やっぱり今回、アリスに来てもらって正解だったね。僕たちじゃどうやら歯が立たなそうだから…」


「まあ、そうですよね。私たちではかないませんよ。こんなデカブツを一瞬で葬るようなのになんて…」


 すると、アリスがピクリと肩を動かし、奥の方は目をやった。何やら足音がする。俺たちは臨戦態勢に入った。


「だ、誰だ!?」


「誰ですか!?」


 俺たちが口々にそういうと、奥から少女の声が聞こえた。


「まあまあ、そう身構えなさんな、飛んで火に入る夏の虫たち。あんたたちどうせ死ぬんだから、何したって無駄に決まってんでしょうが」


 何だこの声?俺たちが死ぬ?ふざけるな、人は二度死ねないんだ。すると、足音がどんどんと大きくなって来た。こいつ、近づいて来ている。


「おい、正体を表せ!そんなとこにいないで、早くこっちに来い!ぶちのめしてやる!」


「物騒なものね、言われずとも…」


 そういうと、目にも止まらないスピードでこちらに走り寄って来た。


「とっとと全員始末するからさ!」


「ルキア避けろ!」


 俺が叫んだ時には…。


 時すでに遅し、ルキアを狙った白銀の鎧を着込み、青い髪が特徴的な少女の剣が、ルキアの盾をやすやすと貫いた。幸い、体には届かなかったようだ。


「た、盾が!?そんな簡単に…」


 不意に背後からドサっという音が聞こえた。振り向くと、ミナミが倒れていた!


「おい、大丈夫かミナミ!」


「おいおい、アタシも随分と舐められたもんだねぇ、この魔王幹部『八黒星』の一人、マキュリ様がさぁ!」


 八黒星?こいつ、魔王幹部か!?どうやら嫌な予感が的中したようだ!


「危ない!」


 ルキアがそう叫ぶと、ガキンっという甲高い音とともに、ルキアの剣が真っ二つに折れてしまった。


「そ、そんな…」


 すると、ルキアまでもが倒れ込んでしまった。どうなってるんだ?まさか…!?


「効果切れです、今の温度は六十度前後!このままでは生死に関わりますよ!」


「アッハッハ!ザマァないねぇ、この後に及んで熱中症かい?こんな低脳な連中で、この私に挑もうなんて、やはりあんたら私を舐めてんのかい?」


 少女の体をして、かなり大人っぽい口調を喋るマキュリは、まるで暑さを感じない様子だった。


「聞いたことがあります、今の魔王幹部の一人は温度を操る悪魔。彼女の周りの温度は百度を超えるかもしれません。彼女自身はいくら温度が上がろうが痛くもかゆくもないですから!」


「な、ならどうするんだ?何か打つ手はあるのか」


「こうなれば火力で押すしかありません!シュガーさん!」


 アリスがそう呼びかけているころ…。


 シュガーはとっくに効果切れを起こしていた。


「そうだ!レベルはリセットされてるんだった!」


「はわわ、どうするんですか!?もう打つ手はないですよ!?」


「アッハッハッハッハ!滑稽だねぇ、私はどちらかというと、今ここで楽にするより、もっと苦しんでもらいたいなぁ。そのためにギリギリ死なない温度にしてやってんだからさぁ!あんたら二人も早めに効果切れ起こして、醜く悶え苦しんどいてよ」


「バインド・チェーン!」


 アリスがそう叫ぶと、無数の鎖がマキュリに向けて放たれた!が…。


 彼女の一振りの剣で全てバラバラにされた。


 あのクソサド悪魔め、あいつに報いることはできないだろうか?あれ、何か大切なことを忘れているような…そうだ!


「アリス、俺の魔力を吸え!」


「え、いいんですか?確かに魔力はもうあと僅かですが、それではユウマさんが…!」


「グダグダ言ってる場合じゃない!早く!」


「わ、わかりました!耐えてくださいね!?」


 そう言うと、アリスは俺の手を取った。そして、前も感じた魔力を吸われる感覚…手がどんどんと熱くなっていき、やがて意識が朦朧としだす。


「いけますよ!とりあえず、これである程度の魔力は吸い取れました」


「はぁ…はぁ…なんとか耐えたぞ!」


「大丈夫ですか?あとはあの悪魔をどうにかしないとですね」


  実を言うと、俺には作戦があった。勝算は五分五分だが、何もしないよりかはマシだ。


「ちょっとメアリー、こっちに耳貸してくれ」


「ん、なんですか?」


 そして、今回の作戦を伝える。本人はかなり驚いていたが、それは当然の反応だろう。大した根拠もない、博打のようなものだからな。


「む、無理ですよ、わたしには!」


「お前しかできないんだ!頼む!」


「わ、分かりましたよ、行ってきますね?どうなっても知りませんよ?」


 そういいながら、ニヤニヤとしながら俺たちを見つめているマキュリの方へと飛んで行った。そして、彼女から剣を取り上げた!


「わ、何だ?剣が勝手に!?」


「今だ!アリス、やれ!」


「バインド・チェーン!」


「ぐあっ!?」


 あいつは「あんたら二人」と言った。それはつまり、メアリーが見えていないということ。


 そこでメアリーに剣を取り上げさせ、剣に意識が行っているうちに拘束する。つまり不意打ちだ。


「な、何が起こったの?それに、その魔力は『グラトニー・ドレイン』!?あんた、まさか…」


「今頃気づきましたか、わたしは『七つの大罪』暴食のアリス。あなたの魔力と生命力、根こそぎ奪わせてもらいますよ」


「そん…な…、たかが…旧魔王…幹部…ごときに…私が…この私が…!」


 しばらくすると、マキュリの姿がなくなった。ジャラジャラと鎖が落ちていく。


「悪魔系統は、ほとんど魔力と生命力ですから、それがなくなると形を維持できなくなるんです。骨も残らないんですよ」


「本当だな、何も残ってない…」


 俺たちがそんな会話をしていると、どうやらミナミが目を覚ましたようだ。


「うーん…お兄ちゃん?どうしたんですか」


「お、気がついたか、ミナミ。とりあえず、二人を回復させてやってくれ。それと自分もな」


「分かりました、ヒール!」


 ミナミは、回復魔法を唱え、自分と二人の生命力を回復させた。すると、二人ともめを覚ました。


「ああ、終わったみたいだね…」


「うん、そうみたい…」


「シュガーさん、ルキアさん、ミナミさん。目が覚めて良かったです!」


 そういうと、メアリーは三人に抱きついた。本当、今回はこのパーティじゃないと勝てなかったな。


 いや、ちょっと待て。今回はシュガーと俺だけ何もしてなくないか?


「ちょ、苦しいですよ!?」


「い、痛い…」


「は、離して…」


「はっ!すいません…つい嬉しくて…」


 いつのまにやら、あいつの魔力で灼熱空間だったこの部屋は常温に戻り、というか少々寒いほどだった。俺の制限時間もとっくに切れてるだろう。


「お前ら、早くギルド戻るぞー」


「そうですね!帰ったら打ち上げですよ!」


「おお、いいね!」


「わ、私も参加していいんでしょうか…?」


「メアリーさんが居たから勝てたんですよ。
これはみんなで手に入れた勝利です!」


「アリス、性格変わったね」


「そ、そうでしょうか?」


 そんな他愛もない会話をしつつ、俺達はダンジョンを出た。


 4


 俺たちは洞窟を抜け出し、ギルドへと向かった。そして、今回の魔王軍幹部討伐の臨時報酬も付き…。


「今回のクエストの報酬と臨時報酬、合計三百万ルナです!どうぞお受け取りください!」


「うおー!!!」


 ギルド内に歓声が上がった。どうやら俺たちが洞窟にて死闘(俺は何もしていないが)を繰り広げている間にとっくに日が落ち、帰りは周りから聞こえるモンスターの声にガクブルしながら真っ暗な森を最短ルートで突っ切ってきた(道とは言っていない)。


 そんなこんなで、今はギルドに一番人が集まる時間、つまり夕食の時間である。


「あ、はいどうもです…」


「この状況でもコミュ障」


「この状況だからだよ、こんな人に囲まれて…ていうか、お前いい加減レパートリー増やせ」


「まあまあ、たまにはいいじゃないですか!
ほら、じゃんじゃん食べましょう!」


 こいつはこんなになって太らないのだろうか。まだこの世界に来る前、「大分お腹周りが目立ってきましたから、痩せないとですね」と話していた。


 まぁ、今言ったとこで、腹パンが飛んでくるのがオチだ。


「…ああ、そういえばまだルーン戦の打ち上げをしてませんでしたね!ほら、冒険者の皆さん!今日は私のおごりですよ!」


「お、小さいくせに粋だねぇ、嬢ちゃん!おーい注文だ!生ビール二十本、焼き鳥五十本!」


「こっちには肉も頼むよ!」


「では、ここからここまでぜーんぶください!」


「か、かしこまりましたー!」


 ミナミは完全に周りに流され、自分のもらった大金を、早速豪遊していた!冒険者からの株は上がるだろうが、それよりも俺はあいつの頭と、財布の中身が心配だ。


「じゃ、じゃあ俺たちは適当なもの食って先帰っとくよ。あ、注文です」


「ぼ、僕もそうしようかな」


「私もそうします。ナイトが心配ですし…」


「わ、私も明日の開店までに準備を済ませないと」


 どうやら、俺たちはそれぞれ急ぐ用があるらしい。俺だけとくにないのだが、騒がしいのが苦手なのだ。一方のミナミは…。


「アッハッハー、ひあわせなのですよー!」


 完全に酔っていた!


「お前、まだ十五だろ!?なんでアルコール飲料を飲んでるんだよ!」


「だひじょーぶ、このしぇかいはみしぇいにぇんがアルコール飲料を飲んでも、だひじょーぶ…。おにぇしゃん!もっとお酒おかわり!」


「し、シュガーさん!?こんなに酒に弱い方でしたっけ!?」


 こいつら、もう手に負えない!


 俺たちまともな者たちは、さっさと食事を済ませて帰った。


 二人はどうやら深夜近くに帰ってきたらしく、それから三日ほど二日酔いならぬ三日酔いに苦しんでいた。

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