スポットライト

三浦しがゑ

仲人⑥

「社長、1番に中野さんからお電話です。」

 中野君は菅ちゃんの大学の一つ後輩で、確か雑誌社に勤めている人物だ。僕も昨日のパーティで初めて顔を合わせた。確かあの後、真奈美と一緒に会長との二次会にでかけたはずだが、もともとは菅ちゃんが彼に会長を紹介したので、そのお礼の電話に違いなかった。
 「おー、中野、昨日はどうもな。僕も忙しくて久しぶりに会ったというのに、何だかろくに話もできずにすまなかったな。又そのうちに一緒に飲もうぜ。」
 といって電話を切りかけたが、相手が話を始めたらしく、受話器を置く手を止めた。そして彼の話が進むにつれ、菅ちゃんの青色は段々と青ざめていった。
 「いや、教えてくれてありがとう。こっちでもちょっと本人に確認してみるよ。いや、ほんとにありがとう。」
 そういって電話を置くと、ふーっと大きなため息をついた。
 「どうした?何か問題でも起きたか?」
 「いえ…、はい。ちょっと本人に確認してみます。」
 と部屋を出て行った。
 そしてすぐに、真奈美を連れ立って現れた。

 「真奈美、すまんが、昨日二次会であった事を僕達に話してくれないか?。」
 真奈美はきょとんとしている。

 「えぇ。あの後、小野瀬会長と一緒に赤坂の料亭に行きました。会長が二次会に誘われたのは10人程度でしたので、わりとこじんまりとして和気藹々とした会でしたが…。」
 「いや、」
 菅ちゃんは真奈美の話を遮って続けた。
 「いや、僕が知りたいのは、油性マジックの件だ。」

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