スポットライト
別れ⑥
「すぐるちゃん、ちょっといいかしら。」
話がひと段落する頃合いを見計らった様に、奥さんが声をかけた。
「どうしても会ってもらいたい人がいるのよ。」
そういうと僕を別室に連れて行った。
20代半ばくらいと思われる女性がぽつんと立っており僕を見ると黙って頭を下げた。
“受付で見かけた女性だ”と瞬時に分かった。受付で僕を見つけると「あっ」という顔をして深々と頭を下げたので「どこかで会った人かな」と少し気にはなっていたのだが。その後もお茶を出したり来客に対応したりしていたので、監督の親類の方かなと思っていた。
「斉藤道子さんです。」
奥さんが紹介した。
「どうも。どこかでお会いしましたか?」
「すぐるちゃんが道子ちゃんに会うのは初めてよ。」
そう言って二人に座るようにうながした。
「お会いするのは初めてですが、私は長い間先生を存じておりました。そして、こうしてお会いできる日が来るのを楽しみにしていました。」
静かな声で彼女が話し始めた。
奥さんが僕を見ながら静かにうなづいた。
「私は先生が11年前に事故から助けて下さった楢原シヅエの孫になります。」
そう言うと再度深々と頭を下げた。
僕にとっては、とうの昔に蓋をしてしまった出来事だったが、その人のお孫さんがなぜここにいるのかがわからない。
「少し長くなりますが、是非お話を聞いて頂きたくて。
私の両親は私が5年生の時に私を置いて出て行きました。ある日学校から帰ったら家財道具が全てなくなっていて、それっきり今に至るまで両親がいなくなった理由はおろか、消息も全くわかりません。
当時は母の母親、つまり祖母との付き合いも全くなく私は養護施設に入る事に決まっていました。そんな時、祖母が私を引き取りに現れました。
話がひと段落する頃合いを見計らった様に、奥さんが声をかけた。
「どうしても会ってもらいたい人がいるのよ。」
そういうと僕を別室に連れて行った。
20代半ばくらいと思われる女性がぽつんと立っており僕を見ると黙って頭を下げた。
“受付で見かけた女性だ”と瞬時に分かった。受付で僕を見つけると「あっ」という顔をして深々と頭を下げたので「どこかで会った人かな」と少し気にはなっていたのだが。その後もお茶を出したり来客に対応したりしていたので、監督の親類の方かなと思っていた。
「斉藤道子さんです。」
奥さんが紹介した。
「どうも。どこかでお会いしましたか?」
「すぐるちゃんが道子ちゃんに会うのは初めてよ。」
そう言って二人に座るようにうながした。
「お会いするのは初めてですが、私は長い間先生を存じておりました。そして、こうしてお会いできる日が来るのを楽しみにしていました。」
静かな声で彼女が話し始めた。
奥さんが僕を見ながら静かにうなづいた。
「私は先生が11年前に事故から助けて下さった楢原シヅエの孫になります。」
そう言うと再度深々と頭を下げた。
僕にとっては、とうの昔に蓋をしてしまった出来事だったが、その人のお孫さんがなぜここにいるのかがわからない。
「少し長くなりますが、是非お話を聞いて頂きたくて。
私の両親は私が5年生の時に私を置いて出て行きました。ある日学校から帰ったら家財道具が全てなくなっていて、それっきり今に至るまで両親がいなくなった理由はおろか、消息も全くわかりません。
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