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スポットライト

三浦しがゑ

伴侶⑦

あれは確か徹夜が2日続いた夜だったと思う。誰もが疲れ果て個々に仮眠を取っていた。僕も、うとうとと仮眠していたが、小さな物音で目が覚めた。起きていくと洋子が一人、別室で作業をしている。
「少し休んだらどうだ?君が一番寝ていないだろう。」
「すみません。起こしてしまいましたか?私は大丈夫です。皆さんにご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
洋子が深々と頭を下げた。
洋子がいる部屋だけが凍える程寒い。 
「暖房くらい入れたらどうだ?」
「いいえ、いいんです。この暖房をつけるとあちらの部屋にファンの音が響くんです。」
といってみんなが仮眠している部屋を指差した。
「それに、これ以上空気が乾いてしまうと皆さん風邪をひいてしまいますし。何よりも暖かくすると、私、きっと寝ちゃいますから。」
そう言って笑ってみせた。笑うと口元から見える八重歯がまるで少女の様だ。
オフィスを見渡すと、数箇所にタオルが干してある。乾燥を防ぐ為に洋子がやったに違いない。
「まぁ、程々にしてもう寝なさい。無理をしすぎて倒れる方がよっぽど大変だからな。」
僕はその寒い部屋を後にして又仮眠室に戻った。それから1時間もたった頃だろうか、洋子が仮眠室に入って来るのを寝ぼけまなこで見ていた。「やっと寝るみたいだな」と思ったが彼女は仮眠室を一回りしてそれぞれの布団をそっとかけなおしたりしている。そして又別室に戻ると彼女が作業を再開する音が聞こえ始めた。
翌朝僕が目覚めると彼女はもう他のスタッフと共に仕事をしていた。
「早いな。昨日はぐっすり寝られたか?」
菅ちゃんが洋子に話しかけている声がする。
「はい。お陰様で昨日はぐっすりと眠れました。」
彼女の明るい声が響いた。多分彼女はほどんど眠ってはいない。が、彼女はそれを周りには全く感じさせなかった。多分彼女のこういった行動を誰もがどこかで見ているに違いない。彼女の作品に現れる表面的ではない優しさや芯の強さは彼女の日常からにじみ出ているものだと今でも思っている。

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