スポットライト
伴侶④
不思議な感覚の中表紙を開くと「ゴールデンレトリバー」というタイトルが目に入る。僕が撮った写真の切り抜きだが、大きく舌を出したゴールデンが、「あっかんべー」をしている様で、無邪気な人間の子供を見ている様な気になる。その写真の右下に手描きで描かれたらしい細やかな花のリースがあり、その中にゴールデンレトリバーについての説明書きが書いてある。そしてその横には漫画チックに描かれたゴールデンレトリバーがプレートを持って2本足で立っている。どうやらここには僕のコメントが入る様だ。次のページをめくる。タイトルは「オラウータン」もちろん僕の写真だが、正面を向いたオラウータンが丁度F字状になった木の枝で髪をすいている様子で、これも不思議な感覚だが、あの子の作品に対する思い入れの強さからか、言葉は悪いが、「疲れたおやじが、鏡を見ながら出勤前に薄くなった前髪をとかしている」様に見え、ついついフッと笑ってしまう。その様子を見た菅ちゃんが、僕を見てコクリと頷く。ページをめくる度に新しい動物に出会うのだが、動物の写真一枚一枚が、なぜか人間の仕草そのものに見えてしまう。そしてその動物の生態を読むにしたがって、それぞれの動物に人間がどの様に関わっているのか、そして人間のせいで動物の生態がどれだけ傷つけられているのかが分かる様になっている。それぞれの写真が人間の表情に酷似している事から、これらは人間とは別の生き物ではなく、人間と繋がっていると改めて感じ、人の愚かさも感じ始めた頃、最後のページを迎えた。その一枚だけが、厚紙の様な紙質でできていて全体には、銀のアルミホイルの様なシートがはってあり、タイトルには「YOU」(あなた)と書かれている。アルミホイルは、丁度少しゆがんで見える鏡の役割を果たしており、少し複雑な心境で最後のページを迎えた僕の顔を僕の気持ち同様、少し歪んで映し出していた。そしてそれは、「今のあなたはどうですか?」という問いかけの様でもあった。
表面的に見れば、動物たちの人間臭さを出したとても笑える写真集だが、人間も又動物であり、その仲間である動物のそれぞれの種を人間のエゴの為にどれだけ傷つけているかを問う、とても深いテーマを感じさせる。写真集をみて感じる事は人それぞれだろうが、僕自身は「地球愛」を感じ、神妙な気持ちになっていた。
いずれにしろ、この作品を全くの素人である彼女が、たった3日間で作り上げた事に、僕は驚きを隠せなかった。
「うーん。」
僕も腕を組んで考え込んだ。
「本当に彼女が作ったんでしょうか?。」
「とにかく僕も話を聞いてみるよ。」
菅ちゃんに続き僕が部屋に入って行くと彼女はとても緊張した顔を見せた。
「お忙しいのにすみません。」
消え入りそうな声で言った。
「サンプル、見せてもらったよ。」
彼女は裁判で裁かれる時の様な顔をしている。
「実際僕はすごく驚いているよ。僕個人としてはとても気に入っている。だけど君、本当にこれを君一人で作ったの?いや、疑う訳ではないが、これを3日間で作るのはプロでも難しいんじゃないかと思ってね。」
すると彼女はにっこりと笑って言った。
「はい、全部私一人で作りました。ただ、これ全部を3日間で作ったのではありません。この3日間で作ったのはこの写真集の4分の1くらいです。後は専門学校在籍中に作りました。先日菅原さんにもお話しましたが、私は先生の作品が大好きで卒業したら絶対に先生の作品に関わる仕事につきたいと思っていました。ですから私なりに「自分だったらどんなデザインの写真集をつくるだろう」っていつも考えていて、失礼ながら先生の写真を使って写真集のサンプルをいくつも作っていたんです。この他にも違うイメージのサンプルがいくつかあるのですが、先日オフィスにおじゃまさせて頂いて、なぜかはわかりませんが、きっと次の写真集はこのイメージかなと思いました。ですから、本当の意味では菅原さんがおっしゃった3日間で仕上げるという課題はクリアしていないんです。」
表面的に見れば、動物たちの人間臭さを出したとても笑える写真集だが、人間も又動物であり、その仲間である動物のそれぞれの種を人間のエゴの為にどれだけ傷つけているかを問う、とても深いテーマを感じさせる。写真集をみて感じる事は人それぞれだろうが、僕自身は「地球愛」を感じ、神妙な気持ちになっていた。
いずれにしろ、この作品を全くの素人である彼女が、たった3日間で作り上げた事に、僕は驚きを隠せなかった。
「うーん。」
僕も腕を組んで考え込んだ。
「本当に彼女が作ったんでしょうか?。」
「とにかく僕も話を聞いてみるよ。」
菅ちゃんに続き僕が部屋に入って行くと彼女はとても緊張した顔を見せた。
「お忙しいのにすみません。」
消え入りそうな声で言った。
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彼女は裁判で裁かれる時の様な顔をしている。
「実際僕はすごく驚いているよ。僕個人としてはとても気に入っている。だけど君、本当にこれを君一人で作ったの?いや、疑う訳ではないが、これを3日間で作るのはプロでも難しいんじゃないかと思ってね。」
すると彼女はにっこりと笑って言った。
「はい、全部私一人で作りました。ただ、これ全部を3日間で作ったのではありません。この3日間で作ったのはこの写真集の4分の1くらいです。後は専門学校在籍中に作りました。先日菅原さんにもお話しましたが、私は先生の作品が大好きで卒業したら絶対に先生の作品に関わる仕事につきたいと思っていました。ですから私なりに「自分だったらどんなデザインの写真集をつくるだろう」っていつも考えていて、失礼ながら先生の写真を使って写真集のサンプルをいくつも作っていたんです。この他にも違うイメージのサンプルがいくつかあるのですが、先日オフィスにおじゃまさせて頂いて、なぜかはわかりませんが、きっと次の写真集はこのイメージかなと思いました。ですから、本当の意味では菅原さんがおっしゃった3日間で仕上げるという課題はクリアしていないんです。」
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