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スポットライト

三浦しがゑ

伴侶③

「まぁ、夢があるという事はそれでもまだいい方だとは思うがな。」
 僕も彼女は現れないだろうと思っていた。
 しかしそれから3日後、彼女はエイトナインに現れた。会社の女の子によると、9時半に事務所に来た時にはもう彼女がオフィスの前で待っていたそうだ。菅ちゃんも僕も、仕事が入っていなければ昼前にオフィスに顔を出す事はない。事務の女の子は一応菅ちゃんに洋子が来ている事を電話で伝えた。
 「いやぁ、参りました。本当に来たみたいです。一応言った手前、僕はこれからオフィスに行って彼女に会ってきますが、先生はどうなさいますか?」
 寝ている所を電話で起こされて少々不機嫌ではあったが、あの世間知らずの女の子が3日間でどんな作品を作ってきたのかにはとても興味があった。そしてどんな作品にしろ3日間で約束通り写真集を仕上げて持ってきた努力はかってあげたいなと思っていた。
 「事務のアルバイトとして雇ってあげてもいいしな。」
 電話を切ってのそのそと僕も出かける準備を始めた。
 僕が事務所に着いた時には既に菅ちゃんと彼女は話を始めていた。僕がオフィスに来た気配に気づくと菅ちゃんが応接室から出てきた。
 「で、どうなの?」
 「それが…。」
 明らかに困った顔をしている。
 「いいんですよ。これが。」
 そう言うと彼女が作ったサンプルを差し出した。
タイトルは「50animals」となっている。どうやらこれから50の動物に出会う事になりそうだ。表紙はほとんど白に近いピンク色でできており、そこに僕が以前撮った象の写真のアップがモノクロで印刷されている。象の横顔の写真だが、像の優しい瞳が、カメラを横目でとらえており、とても優しい写真で僕も大変気に入っている一枚だ。その象の瞳を中心に、象が表紙にアップで写っており、どから見ても象が自分を見ている様な感覚に陥る。その瞳は万物の創造者が「生きとし生ける者全部」を愛する瞳で見守っている様で、僕にはそれが像の瞳には見えず、僕は久しぶりに鳥肌が立った。

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