完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

82

2年4組の準備は着々と進んでいた。


「「「櫻井君、服を作るから、体を図らせて――」」」


あんな風に女子に櫻井が追いかけれている姿も皆、見慣れてしまっていた。


「何回、あいつだけ、体測るんだよ」
「俺らは服、自分でつくるんだよ」
「あいつだけ、いいな」


いつものことだが櫻井だけ特別扱いされて、男子生徒諸君は不平不満を垂れていた。


「うるさい、お前ら、そんなこと言う暇があったら、手を動かせ」
神崎の目の前にはもう仕立てられた執事服が3つほど置いてあった。ほかの者が1つ仕上げていないと考えれば、圧倒的な早さだろう。しかし、普段、裁縫作業などしない者がほとんどなわけで男子側の作業はあまり進んでいなかった。


「あーもう、わかった、お前らに任せてても終わらん、お前らは教室の確保するために生徒会にでも相談するか、メニューでも考えとけ」
「「「すみません、お願いします」」」
男子生徒たちもそれがわかっているのか、おとなしく神崎の助言に従った。神崎はこうゆうときにはうちの学校の生徒は素直だなと感心していた。


そんな中、神崎は残りの執事服を黙々と作り続けた。


「全く貴方はホントに多芸ね」
「こっちを見てる暇があったら、自分の服でも作ったらどうだ?」
「私は自分の分だけでいいから、もう終わったわ」
「生徒会もあるだろうに、ご苦労なことで」
「今回はその生徒会で貴方に話が合ってきたわ」
「嫌な予感しかしないんだが」
「そうね、確かに今からするお願いは貴方にとって嫌なことかもしれない、嫌なら断ってくれて構わないわ」
「断る選択肢をくれるとはどうしたんだ?」


周りには誰もいないため、しーんとした静かな間が生まれた。


「――ユウとして文化祭に出てほしいわ」
「それは、毎年の有名人を呼ぶ奴か」
「そうよ、だから、断ってくれても構わないわ、無理な――」
「いいさ」
「え」
「出てもいいって、言ったんだ」
「ホントに言ってるの?」
「本気で言ってるさ、別にお前のことだ、俺の正体を隠すことについては万全を期すんだろう」
「それはもちろん、そのつもりよ」
「なら、出てもいい、これで話は終わりか」
「ええ、終わりよ、私としては貴方の心境の変化について聞きたいところだけど、生徒会としては終わりよ」


「別にずっと逃げてもいられないなと思っただけだ」
「そうなのね」
それだけ言うと桐野は教室を去っていった。









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