完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

10

聞こえてきた放送に神崎は心の中でさらに面倒なことになるなと思ってしまった。
「これから、クイズラリーを15分後に再開します。なお、午後からは体育館、グラウンド、美術室、音楽室を回るポイントに追加しますので、必ず回ってください。繰り返します・・」


「さて、行くか」
「そうね」
神崎が梯子を降りようと梯子に手をかけた瞬間、突風が吹いた。神崎の顔を隠している髪が風によって払われようとしたとき、神崎は目にも止まらない速さで髪を押さえた。
「どうしたの、急に立ち止まって?」
「なんでもない」
神崎はいつもと変わらない口調で答えたが、普通の人では気づかないぐらい僅かに震えていたことに桐野は気が付いた。彼の過去には一体、何があったのか、桐野は踏み込んではいけない気がした。もし、踏み込んだのなら、彼はすぐにでも私を拒絶するだろうと桐野は感じ取っていた。


15分後


2人はグラウンドに来ていた。
グラウンドには、体育科の先生がメガホンを持って生徒たちにのクイズラリーについて説明を行っていた。


「えー、ここではクイズもするが体力も見させてもらう。なのでここでは、2人3脚で障害物競争をしてもらう」
男子生徒たちからは歓声が、女子生徒たちからは不満の声が上がった。
「お前らの言いたいことはわかる。男子が変なことしたら、こちらに申し立てていいぞ。容赦なく生徒指導室につれいていくからな」
これには、男子生徒たちは渋い顔をして、女子生徒たちは男子生徒たちを睨みつけて、やれるもんならやってみろと言う顔をした。


「また、面倒なルールを作ったもんだ」
「あら、そうかしら、男女が仲良くなるチャンスになるじゃない」
「男子生徒が女子生徒に何かしたら、その時点で破局を迎えるがな」
「それはそんなことする男子生徒たちが悪いんじゃないかしら」
「それはそうだが、この状況が男子生徒たちを誘導しているとも言える」
「一部の男子生徒はそれどころじゃないみたいよ」
「そうだな、殺気で人が殺せるなら俺はもう死んでるな」
もちろん、神崎のパートナーは桐野で二人三脚も彼女とやることとなるのが必然だ。
そうなると男子生徒たちから憎悪と嫉妬の感情を向けられるのもまた必然だった。


生徒たちは先生の誘導に従って、二人三脚用の足を結ぶ紐を取っていく。
「さて、この障害物競争の説明をしよう。まず、10組ずつレースをしてもらう。ルールは簡単、二人で協力して障害物を乗り越えてトラックを一周したら、ゴールだ。みんな頑張ってくれよ」
挨拶してるのは女子に人気の体育教師、新井先生だ。年も若く気軽な性格が生徒に人気だ。


「それじゃ、スタートだ」

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