天才ダラダラしていたら家を追い出されたけど、結局、王都の学園で無双する

スリーユウ

29

「さて諸君、今日は、君たちには今度、王城で開かれる武芸大会について話し合ってもらう」
担任のヴェルデ先生は教室に入ってくるなり、叱咤のような声が響き渡った。


「この武芸大会は学年ごとに行われて、毎年行われていて学年ナンバー1を決めている。各クラスから代表2名を決めてこの大会に参加してもらう」
ヴェルデが説明を終えたところで、フェリクスが手を挙げた。
「ヴェルデ先生――、その大会に出るメリットを教えてください」
「メリットか、この大会には外国の国賓や国のお偉いさんが山ほどくる、その方々に自分をアピールできるぐらいだな」
「なるほど、ありがとうございます」
その言葉に他の生徒達は目の色を変えるが、フェリクスは逆にやる気を失っていた。


「お前なら、軽く一番をとれるだろう」
フェリクスの実力を知っているアベルは皆に聞かれないように静かに聞いてきた。
「え、いやだよ、そんな一銭にもならなそうな、やつ」
「一銭にもならん事もないだろう、これからの事を考えるなら自分をアピールできるというのは、金銭には代えられんぞ」
「それは将来、権力を持ちたいやつとか、騎士団に入りたいやつがやることで俺は商会という場所があるし、自分の手札を晒すって意味ではある意味マイナスだな」
「そう言われると、何も言えんな」


「さて、お前たちの中で武芸大会に参加したいものを挙手しろ」
ヴェルデ先生の声にクラス中の生徒が挙手した。
「お前たちは参加しないのか」
ヴェルデ先生は挙手していない2人を指摘した。その指摘にフェリクスとアベルは顔を見合わせるが軽くアイコンタクトをしたかと思うと代表してフェリクスが答えた。


「ええ、参加しません」
「そうか、了解した。参加を希望する者はこの後、グラウンドに集合、そのほかの物は自習をしておけ」
ヴェルデ先生が移動すると共にクラスの生徒たちも一緒に移動始めた。


「さて、暇だから、様子でも見に行こうか、フェリクス」
「おもしろそうだ、行くか、アベル」
自習するということは何をしててもいいこと言うことで、2人はグラウンドに移動した。


2人が移動した先ではクラスメイトたちが地面とキスをしていた。
「貴様たち、そんなので、クラス代表が務まると思っているのか」


どうやって代表を決めるのか、わからないがとりあえず、ヴェルデ先生が生徒たち全員とい相手をしているのだけは分かるが、果たしてどうやって代表を決めるのだろうか。倒れている生徒たちの中にはクラレンスの姿もある。ほかの生徒より、泥まみれなのは見間違いではないだろう。


「どいつもこいつもたるんどる」
ヴェルデ先生は自分の武器なのか、鞭を地面に打ち付けながら、周りの生徒を見渡していた。


「なんだ、あれは」
「どうやら、生徒たちとバトルしてるみたいだね」
「にしたってやりすぎだろ」
「あの先生、手加減しなさそうだから」
「そんな感じがするな」


「おい、お前たち、そこで見学している暇があったら、参加しろ」
「俺たちは参加しないと言いましたよ」
「ここまで来ている以上、そんなのは関係ない」
ないのタイミングでヴェルデ先生はフェリクス達に電撃を飛ばしてきた。


「めんど」
しかし、フェリクスはその電撃を最小限の防御魔法で壁を作ると横に逸らした。
「ほう、面白い、面白いぞ、フェリクス」


「なぁ、あの人、やばくね、アベル」
「一応、あの人とか言わない方がいいと思うぞ、フェリクス」
「でも、やばいだろ、あれ」
そんなことを言っている間にもヴェルデ先生は次々とフェリクス達に攻撃を仕掛けてきた。


「参加しないって言ったんだけどな、こっちの話全然、きかないな」
「グランドに来たのが運の尽きだったな」
「あの先生、攻撃魔法が的確すぎだろ」
「先生の魔法を片手間で防いでる、フェリクスもすごいけどな」


ヴェルデ先生が放つ魔法は、どれも一流と言われる域に達していて、フェリクスも防ぐのにはそれなりの魔法を使わなければならなかった。しかも使われる魔法が多彩でそれに対しての対抗魔法をしなければ、完全に防ぐことはできない。魔法を解除すればいいと思うかもしれないが、解除は敵の魔法陣に干渉するものであって、魔法によって起こった現象には作用できない。今のフェリクスは解除できるほど、ヴェルデ先生との距離が近くないので解除はできなかった。


「これも防ぐか、なら、近接戦闘だ」
魔法では攻撃が通用しないと思ったのか、ヴェルデ先生は鞭に電撃を纏わせて振るってきた。


「その攻撃ダルすぎだろ」
しかし、その鞭もフェリクスはギリギリで躱す。ちなみにアベルは後ろに下がって、フェリクスとヴェルデ先生の戦闘を見守ってる。


「お前の本気を見せて見ろ、フェリクス・クレソン」
「嫌です」
ヴェルデ先生が近接攻撃と魔法を織り交ぜながら、攻撃しているのに対して、フェリクスは逃げに徹している。たまに、土系の拘束魔法を放つがヴェルデ先生が捕まる様子はない。たとえ捕まったとしても、すぐに魔法で拘束を解いてしまっていた。


「これじゃ、きりがない」
「それなら、私を気絶でもさせてみるんだな」
「それでいいなら、いくらでも」
痺れを切らしたのか、フェリクスはヴェルデ先生の後ろに高速移動すると蹴りを入れてヴェルデ先生を吹き飛ばした。


「全く、底が知れんな」
防御はしていたのか、かろうじてヴェルデ先生は意識を保っていたが、腕の色が青紫に変色していた。
「先生こそ、怖いですね」
フェリクスの頬に薄くはあったが初めて一筋の傷があった。


「なぁに、かなりの実力差があろうと生徒にいいようにされては先生としてのお前らの教壇に立つ資格がないからな、一撃は入れたぞ、フェリクス」
「全くあきれた戦闘狂ですね、ほら、腕出してください、先生、直しますから」
「あれだけの戦闘能力で回復魔法まで習得しているとは驚きだな」
「自分は戦闘狂ではないので、万能に物事を覚えているんです」
フェリクスがヴェルデ先生の腕に回復魔法をかけるとみるみる内に青紫に変色していた腕が元の腕に戻っていった。


「ありがとう、フェリクス」
「いえ、自分がしたことですので」
これで戦闘が終わりとばかりにフェリクスはヴェルデ先生の治療が終わるとグラウンドを去っていった。


「それではクラス代表を発表する」
しばらくたった後、他の人たちがクラスに戻ってきた。心無い名しかみんなの表情は暗い。
「フェリクスとアベルだ」
「はぁ」
「だろうと思った、諦めろ、フェリクス」
アベルは何かを悟ったように肩をすくめたがフェリクスは納得が出来ずに立ち上がる。


「いや、自分とアベルは参加しないって言いましたよね、ヴェルデ先生」
「ほかに任せれる奴がおらんから、我慢しろ」
「我慢って問題じゃないんですが」
「これは決定事項だ」
これは何を言っても聞かない奴だと理解した、フェリクスはグラウンドに行かなければよかったと軽く後悔した。


「あ、ちなみに言っておくが、わざと負けようとするものなら、後日、大量の罰則を用意するので覚悟しておくように」


しっかりとフェリクスの性格を理解していたヴェルデ先生はフェリクスにしっかりと釘を刺した。


「なんでだよ―――――」
「がんばろうな、フェリクス」


アベルの励ましの一言が無性に心に響くフェリクスであった。



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