(旧)こっそり守る苦労人 中学生編

ルド@

こんな学校生活(幼馴染みからのアドバイス)

失敗とは誰にでもあるーーー彼もそうだった。
今迄、数々の魔獣と交戦して、退治していく中で・・・彼も失敗していた。


だから彼は、他人失敗について、とやかく言わない。
いちいちキレたりしない。




・・・だが今回は・・・今回ばかりは


彼の怒りはフルスロットルにまで達していた。


「くぅぅぅたぁぁばぁぁぁれぇぇぇぇ!」
「グギャアアアアアアアアアアア!?」


零の渾身の回し蹴りを喰らいーーーーーふっ飛ばされた武・・・・自業自得である。




「かはっ!あっほぉ!本気で蹴りやがったな!」
なんとか起き上がり、咳き込みながら叫ぶ武だが・・・零は冷たい口調で言う。
「ほ〜〜〜?さっきの件・・・・・ーーーアレについての分だったが・・・まだ足りんか?」
”さっきの件”という部分に対し顔が赤から青へ変わる武・・・・恐怖からか・額には冷汗が流れる。   
「いいえそんな事はありません・・・・先程は大変申し訳ありませんでした・・・」 
低くなる武、見下ろす零・・・その目にさっきほどと同じ殺気が見え隠れしている。
 



「ハァ〜」
しばらくすると溜息を吐く零
「おまえ・・・・俺に何か恨みでもあるのか?」
「特にないと思うが・・・その、さっきはスマンかった。」
反省している武を見て、これ以上責めることが出来ない零 
「もういい・・・済んだ話だ。」
原因は自分にもあると、膨れ上がっていた怒りを抑えることにした。


現在は昼休みの時間、食堂である。
先程まで零たちの席に由香が座っていたが、もうそこにはいない、次の授業の準備で移動したのだ。


そしてその後ーーーさっきのブチ切れた零が慌てて逃げようとした武を力の限り蹴り飛ばしたのである・・・・馬鹿でかく膨れ上がった怒りを乗せて
「おまえはもう少し口の固いヤツだと思ったが」
「いや、ホントゴメンて、オレもうっかりしてた。」
本人が一番驚いてるようだ・・・それだけ予想外だったのだろう。 
「けどよ、どうする零?」
「・・・・・。」
武の言いたいことを察したのか・・・黙り込んでしまう。
 

「デートーーー二つ・・になっちまったぜ?」


デート・・・
幼馴染みの凪からの課題で同じ2年の黒河と擬似デートをすることになった零であったが・・・・それを知った由香ともデートをすることになってしまった。 


「仕方ねーだろ?あの状況じゃ断る訳にもいかない」 
”拒否権など与えない”そんな雰囲気を醸し出していた由香・・・零に選択の余地などなかったのだ。
『誰でもいいんでしょう?私じゃダメな理由でもあるの?』
『私とデートは・・・イヤ?零くん』   
悲しげに聞く由香の顔を思い出し、溜息を吐いてしまう零 
「それにしたって」
なおも納得がいかない武は、零に異議を唱えようとするが・・・ 


「随分面白くなってきたねーーー零」
彼らのテーブルに1人の女子生徒が座り込んだ。
「・・・凪っ」
「やぁ♪武君もどうも」 
 「九条・・もしかして・・・・見てたのか?」  
疑いの目で武が睨むように聞くと 


「勿論さーーーあんな面白い場面・・・逃さないよ。」
酷くあっさり認める凪に、やっぱりかと溜息をつく零と茫然とする武 
「なんする事が英次みたいだぞ?」 
仕返し・・という訳ではないが、似てたくない人物と凪を照らし合わせて言ってみたところ・・・凪は余裕顏で口を開く  
「ん?彼も見てたよ?」さっきの修羅場・・・
彼女に言われ武が周りを見るが・・・いない 
「え、何処にもいねーぞ?あの残念イケメン・・・・・・」 
零も武と同じである・・・・いない。さらに言えばさっきもいなかったと零は思うが 
「あ、ゴメンゴメンーーー見てた・・・じゃなくて視てた・・・だ。彼も物好きだね?」
「・・・・。」
視てた・・・ーーーその言葉に零は僅かにピクッと身体を揺らす。 
「?見てた見てた?どういう意味だ?」
「気にしなくて良いーーーつまらない話だから語るほどの話じゃないから
「・・・・・。」
「??」
何の事かさっぱり分からないでいる武に対して、零は黙り込んだままーーーー凪を険しい目で睨んでいた。
「で、零ーーーどうするのかな?」
しかし、彼女はそんな視線をそよ風のように受け流し尋ねる。
「どうするって?」
「デートだよデートーーーこれは重大なことだよ?」
大丈夫かコイツみたいなリアクションをとる凪 
「零は2度行けば問題ないとか考えてるみたいだけどーーーーそれはBADバットだ」 
「バット?」
バットーーBAD?不快、悪いって意味だったか、と零は思考するが 
「じゃあ聞くけどーーーどっちと先にデートする・・・・・?」
「え、そりゃ先にデートを誘った黒河」
「なるほど・・・武君聞いた?」
「あぁ、零、確かにそれも間違っちゃいないが・・・選び方が」 
「?・・・何か変か?」 
全然理解できていない零・・・そんな彼を見て凪が切り出す。 


「零・・・君にはデートする前にしないといけない・・・・・・・・事がある。」
「え?・・・何を?」
何かあるか?と考えるが・・・思い浮かばない零  
「それはーーーデートマナーと基本的な女性対応だ」
「なに?」 
「なるほど」
戸惑う零と納得顏の武
「当然デートマナーも大事であるがそれ以前に女性に対しての接し方を覚えないといけない。」
「?」
さっぱり分からない零を可哀想な子を見てるかのように見る凪が言う。  
「零、今の君が女の子とデートなんかしたら相手の子が可哀想だ。」
「凄い言われようだな」
「冗談じゃ、ない」 
「おいおい」
”そりゃないだろう”と反論しようとするが・・・その横から   
「零・・・オレもそう思うぞ?」
「・・・・。」
まさかの奇襲が・・・さすがの零も事態の深刻さを感じ始めた・・・・既に遅いかも知れないが  
「課題を出したのは私だーーーこのまま放置などしない。」
彼女がいなければの話である。 
「な、凪?」 
「ふふふっ任せなさいーーー私が手を貸すから。」
普段無表情な彼女が不敵に笑う・・・その光景に寒気を覚える零 
「不安が募るだけなんだが・・・」  


ここから、零の勉強訓練が始まったのである・・・家庭教師は勿論、九条 凪である。

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