(旧)こっそり守る苦労人 中学生編

ルド@

プロローグ

ある真冬に起きた出来事である。  
雪の降る森の中を  
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!」
1人の少年がけている。 




「ギギギギギッ!」
「グギェッ!」
「シュ〜〜!」  
彼の視線の先に3体の化け物・・・・魔獣・・がいる。
どれもこれも地球には絶対いないであろう形をした化け物である。    


【魔獣】ーーー突如この世界に現れた謎の生き物
人間を狙いその中にある魔獣のエネルギー『心力』を奪い、この世界に棲みつく存在。 
しかも、その存在を認識出来る人間は人類の半分もいないーーーー限られた人間だけだ。


ーーーーーいや、違うか?  


もしくは選ばれた人間と呼ぶ方が正しいか?
選ばれた人間ーーーー魔獣の存在を認識出来る者
そしてその魔獣に自身に流れる『心力』を使い、
対抗できるチカラ『異能』を持つ存在ーーー【異能者】がいる。 


彼もまたその1人だ・・・・・・・・・。 


「テェェェェェェェッ!」 
少年は手に持つ黒刀で3体の内の一体の懐に一気に接近して真っ二つに切り裂く。


「グギャ〜〜〜!!?」  


周囲に飛び散る魔獣の血・・・いや『心力』から歪み変化した魔獣のエネルギー『瘴気』が飛び散る。
そして少年が黒刀をその周囲を切ると蒸発する様に消滅してく。    


「ギギーーー!!」 
ウチ一体の魔獣が彼に襲い掛かろうするが、少年はそれを躱し、2体の魔獣の間をすり抜けて、駈け出す。 


「ギギッ!?」
「シュ!?」 
そんな少年の動きに戸惑う魔獣たちだが、少年の次の行動に更に魔獣たちは混乱してしまう。
「ッ!ハッ!」
少年はそのままスピードを緩めず目の前に立ち塞がる木を片足で蹴ると、空中に飛びバク転をする。 
「フッ!」
その際手に持っていた黒刀は消えており、左右の手には黒い槍があり、身体をバク転すると同時に後方にいる2体の魔獣に槍を飛ばした。  


「ギィィィィ!!!」
「!?!?」 
不意に突き刺され黒い槍
そして肉体ーーー存在がドンドン消失していくのが2体の魔獣には分かった。
何とか槍を抜こうする魔獣たちだか、一瞬少年から目を逸らした事、この2体は後悔する。 




何故なら魔獣たちが槍を引き抜こうとしてる時、少年は両手に彼の体がスッポリと隠れてしまう程のバカデカイ斧を2体の魔獣に向けてナイフ投げの様に投げた直後だったのだ。 


次の瞬間、残り2体の魔獣もーーーーーーこの世界から去っていった。 










「ん?」
ポケットから振動がするーーー電話か 
少年は携帯の電話をオンにして耳にあてると  
『オイ零ッ!聞こえるかッ!?ーー零ッ!?』   
やたら焦っていてやかましい声が聞こえる。


「聞こえてますよ?けんさん」  
電話先の相手ーーー鍵は少年の声を聞く落ち着きを取り戻して、喋り出す。
『やっと出たか、心配したんだぞ?』
「済みません戦闘中だったので」
淡々と答える少年に電話の先の男性はハァ〜と溜息をつく。


『おまえな〜って、今はそれどころじゃない!』
気の抜けた声が聞こえてきたと思えばまた焦った声を出す男性  




『マズイ事になった。外の連中・・・・が気付いた様だ。』  
『外』ーーー外部の異能機関という事だ。
今少年がいる森は日本の異能機関の管轄外であり、多少派手に暴れてもバレる事はないと言われていたのだが、
またいつもの冗談か?と少年は考えるが、電話の相手の反応からすると・・・・どうやら本当にバレたらしい。


「そうですか」
しかし、電話先の相手とは違い、先程と変わらない淡々とした口調で答える。
彼からしてみれば、バレようがバレまいが、そんな事はどうでも良いのだーーー彼にとっては大した問題ではない。 
『今げんと一緒に妨害工作をしてるが、余り持ちそうにない。』
ただ、電話先の相手とっては話は別らしい。




『保ってあと10分ってところだ。
・・・・・・・時間がないーーー急げ零。』    
正直急ぐ必要は彼にはない。
だが、そんな事を言ったら、あとで説教タイムに入るので、渋々であるが指示に従う。 


「分かりました。」
電話を切った少年は一息、息を吐く。


「・・・・寒いな」
現在は雪も降る真冬の夜である。 
息も白くなって当然だ。
分厚い黒のロングジャンパーを着ているが、それでこの時間にこの雪と風では、余り意味をなさいのである。




「・・・もう直ぐ今年も終わりか」 
雪の降る夜空を見上げながら呟く少年 
彼の言う通り、今12月の半ば・・・と言うより、正確に言うと12月24日の午後11時47分だ。    
俗に言うクリスマウスイブだ。 
そしてもう直ぐクリスマウスへと変わる。
と言うかホワイトクリスマウスだなと少年は苦笑する。 
本来であればこんな処で、下らない魔獣討伐などせず、家族か友達、あるいは彼女と楽しくわいわいするのが、一般的なクリスマウスでの過ごし方であるのだが・・・・何故か彼はこんなひと気のない夜の森の中で魔獣と戦っているのだ。   






「と言っても、家に帰っても妹と気不味いクリスマウスになるだろうな。」
そう言って、どこか悲しそうな顔する少年 
彼の脳裏では、少年の顔を見て怯えてしまう妹を彼は想像する。 
「武や英次の処も論外だしな。」
ふと、頭に浮かんだ友人2人ふたりを思い出すがすぐに却下する。
「英次は絶対誘っても断るだろうし、武は・・・・あの姉・・・がな」
少年が武と言う男の子と知り合いなったのは中学に入ってからだ。
そしてその男の子のひとつ上の姉・・・その姉の事がどうも知り合った時から苦手なのだーーーこの少年は  




「あとは彼女か・・・・・いないか」    
何なら溜息をつく少年  
残念そうな諦めた様なそんな顔をしている。
別に女性関係が皆無という訳ではないが、彼の短にいる女性たちは少年にとって、友だちという認識でしかないのだ。
そう結論付けるともう一度溜息をつく少年 










そうしていると不意に気配が  
「・・・・来たか」 
人外の気配ーーーー魔獣の気配 
少年の背後の森に視線を向ける
するとそこには青い二つの小さな光
魔獣の眼ーーー瞳の光。 
 



「随分遅かったな?」
そう尋ねる少年、だが魔獣は  
『・・・・・』  
「無言か」 
口を開かず、黙ったまま少年を見ているーーー冷たい目・・冷酷な瞳で表情を消して、氷像の様にして少年を見る魔獣




『・・・・・』 
「まぁいいこれで終わらせるーーーーこの下らん祭り・・・・・・・を」
『・・・・・』
”下らない祭り”彼のそんな一言に、これまで無表情だった魔獣の顔がニヤリと笑みを浮かべた。
『死神の笑み』少年は芸術画とかで、そんなタイトルの書かれていそうな絵を不意に連想した。本当にあるか知らないが
そんな笑み今こいつ魔獣はしている    






「後の事なんて、どうとでもなる。」
そんな笑みを見た少年は、何もかも振り切った気持ちで  
「それにどうでもいい。」
魔獣と同じ冷たい瞳に無表情に変わり、口が僅かなら笑みになる。    




「さぁーーーー最後の祭りを始めよう。」 
自身の異能を【黒夜】を全解放した。 
 



まるで・・・・友人に別れの挨拶でするかの様に




彼はそう呟いた。 








これは当時いずみ れいが高校に入っておらず、
まだ中学1年の真冬ーーーークリスマウスの聖夜に起きた出来事である。 






そしてこの一件から半年後ーーー中学2年の夏


物語はここから始まる。 
 


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