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(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

追試対策

期末テスト・・・それは、学生なら逃れる事が出来ない試験の一つである。
当然俺の学校でも夏休み前に期末テストは存在した。
俺はこう見えて勉強はソコソコ出来る・・・妹程はないが。
球技大会からしばらくして、期末テストが行われたが問題なくクリアした俺。
赤点もなく、夏休みに行われる追試試験を受けることもなく、補習授業も受ける必要がない・・・あぁ素晴らしい! 


晴れて、のんびりとした夏休み生活を満喫出来る!
テスト結果が返ってきた時、俺はそう確信していた・・・それなのに


「ココ。間違ってるぞ白石。」
「ううっ・・。」


柊さんのお店【猫まんま】で朝早くから、白石の勉強会を始めていた。
前日に冬夜さんとの訓練の疲れが残り、さっきまで眠気に襲われていたがコーヒーを飲んで切り替える俺。


「ハァ・・・なんで俺が教えないとイケないんだ・・?」 
「ううっ、それは言わないでよっ・・。」


気不味そうな表情の白石を見てため息を吐く俺。
あぁなんでこうなったっけ?


********


零視点 
夏休み前・・・昼前の学校。
終業式を終えて、帰宅の準備をしていた俺。
さっさと帰ってしまおうと思っていた俺だが、


「うわぁ〜〜〜!」


そんな中、教室に響く奇妙な悲鳴?泣き声?が・・・・・・というかよく聞く・・・聞きたくない声が・・・白石バカだ。


「佳奈さん大丈夫ですか?」
「ど、ドンマイじゃ・・」
「ん〜〜ガンバっだね」


いつものメンツ藤堂・美希・桜井の美女コンビは、今悲鳴を上げていた白石に駆け寄って慰めていた。


「あ〜〜多分アレだな・・・・追試か?」
「それ以外ないだろう。アイツに関したら、それ以外の可能性はない。」


薄っすら予想する武にバッサリ言い切る俺。


「容赦ないなぁ零?」
「だって実際それぐらいだろう?終業式に悲鳴を上げるヤツの事情なんて」 
      

結果自体は随分前に聞かされてたと思うが・・・まぁその時が近いと思うと・・・叫びたくなるんだろうなぁ。


「じゃ、俺帰るわ。」
「お?皆んなで一緒に帰らないのか?」
「・・・見てみろ。アレ・・・。」


俺チラッと白石達の方に視線を向けさせると


「ううっどうしよう〜〜」
「頑張るしかないのじゃ」
「私も出来る限りお助けします・・・!」
「出来る事は教える事ぐらいだけどね。」


涙目で唸る白石にそれぞれ声を掛け慰める女子軍。
その光景を武に見せ、改めて聞く。


「まだ長引きそうだし、ヘタしたら巻き込まれるぞ?」 
「あー、確かに・・。」


嫌そうに顔を歪める武・・・やっぱ夏休みを満喫する直前で勉強なんて・・・誰でも嫌だわな。


「じゃあな武・・・由香さんによろしくな。」
「あぁ・・・まあ頑張れよ?」
「あははは・・・。」


励みにならるか怪しいが、有り難く受け取っておこう・・・。


ーーー不意に背後からこんな会話が。


「そう言えば、零が勉強を教えるのが上手かったのじゃ。」
「え、本当?」
「そうじゃ。中学時代の話じゃが、良く零に教えて貰ってたのじゃ!」  
「あぁボクもボクも。あの時はボクも色々あって勉強を疎かにしてたからね・・・その時に零が勉強を教えてくれたんだよ。」
「そうなんですか・・・流石泉さんです。」


美希たちの会話に俺は眉をひそめる。
確かに中学時代に美希たちに勉強を教えた事はあるが、あの時はなぎのやつにそそのかされただけで。
不穏過ぎる流れ・・・逃げる。
さッと、教室を出て行ったーーー去り際に


「じゃあ私も泉君に頼ーー」


あー、あー、聞こえなーい聞こえなーい。
そんな感じで校舎を出た後、前回の続きで柊さんに遭遇、昼食へと移っていたのだった。


******** 


んーやっぱ何で俺がココで白石に勉強を教えてんだ?


「俺が教えなくても、あの女子メンツに教えて貰えばいいじゃないか?」


あの3人なら喜んで教えてくれる筈だが・・。 
美希はともかく、藤堂と桜井は頭が良いからな、教えるのに不憫ふびんはないだろう。


「う〜っ、そりゃあ最初は美希ちゃん達にお願いしたけど・・・」
けど・・?」


歯切れの悪い白石に不審感がーーー。


「ぶ、部活があって・・・・。」
「・・・・・・。」


ーーないな。流石白石・・・深読みした俺がバカみたいだ。
呆れ返ってしまい、言葉が出ない・・・どうしろと?


「あー・・・夏休みだしな・・部活で忙しいのか。」
「・・・ううん。なんとか時間作ろうとしてたから・・・申し訳なくて、断っちゃった」


なるほどな・・・けどよ?


「俺には申し訳ないとは思わないんだなぁ?」


イジワルな言い方なのを自覚しながらも一応聞いておく。


「ううっ・・泉君なら良いかなって思って・・・。」


そうきたか・・・。
信頼ーーーといった所か。
複雑な気持ちではあるが・・・仕方ない。


「ハァ〜〜しょうがないなぁ。ーーーほれ、続き始めるぞ?」
「あ、ありがとう〜〜〜〜〜っ。」


泣くなよ・・・ハァ。
世話の焼ける相棒だなぁと心の中で呟きつつも、教本に手を伸ばす俺であった。




 



「とかなんか上手くまとめた所でひとつ。」


そろそろ現実を見ようかな?白石さん? 


「肝心の追試試験まであと今日含て三日・・なんだが。そのわずかの期間で間に合う・・というかーーー補習・・を回避できんのか?」
「い、言わないでぇぇえええええっ!」   


愕然とうつ伏してる白石をジトーと見る。
現実逃避も大概にしたほうが良いぞ?
人のこと言えないけど・・・。


「仕方ない・・・補習で予定が吹っ飛んでも困るしな。」


ここは俺が一肌脱ぐしかねぇな。
俺が覚悟を決めメモ用にしていた新品の用紙に何かを書いていく。


「予定・・?何の事?」 


俺が何をしてるかよりも、先ほどのセリフにピクッ、と引っ掛かりを感じた白石が訊いてきたので、用紙に書きながら俺は答えていく。


「あぁ、昨日柊さんにお願いされてな、4日後・・・に1泊2日で海に行くぞ。俺とお前で2人で」 
「・・・・・・。」


唖然とした顔で口を開きポカーンとしている白石。
・・・・そんなに予想外の話だったか?・・・・だったか・・・・
普通急に旅行に出るぞなんて言われたら、こんな感じで放心してしまうか、と俺が記入の合間に考えていると。


「あの〜?それ・・私聞いてないんだけど?」  


白石からの予想通りの返答が・・・まあそうだろうな。
言い忘れた俺に非があるのは明らかだがーーー良いか♪ 


「今言ったからな?空けておけよ?」
「・・・・・・。」


そんな俺の言葉に、ギャーギャー怒るのかと思ったが、予想に反して白石は落ち着いて・・・いや落ち着き過ぎて、すっかり諦め顏になってしまっている。 
どうやら、これまでの経験からココで怒鳴り散らしても、意味がないと分かっているみたいだ・・・成長の兆しが見えて俺は嬉しいよっ。


「・・・それって仕事・・?」 


放心状態ではないが、それでも色々とお思うことがあるのか、声が掠れた声に。


「あぁ、詳しい話はまた今度話すが・・・場所が海だから・・・多分水着・・が必要だ。」
「・・・・何で?」


水着が必要なことに疑問を覚える白石(その顔は何か焦りの色が見えるが俺にはよく分からない)。
俺はそんな疑問を浮かべている白石にーーー簡単に答える。


海に居るから・・・・・・ーーー相手が。」
「ーーーッ!?」 


目を見開き、驚きの顔をする白石。
まぁ本来であれば、外での仕事なんて余程の事がない限り、引き受けたりしない。
だが、今回の仕事の依頼主・・・・・・・情報提供者は柊さんだ。断るのは難しい・・・というか断る選択はない。
改めて、この仕事についてのヤル気を湧き上がらせる俺・・・しかし肝心の、話し相手である白石が何かビクビクと体を震えて青ざめてる・・・どうした? 


「ね、ねぇ?そ、その海って・・・何処・・?」


恐る恐る尋ねてくる白石に首を傾げたが、俺は仕事場所である海の場所について話すことにした。 
海といっても、そこまで遠くない。この街の付近にある街・・・の奥にある海である。
行った事はないが、学校の奴らの中には旅行とかで行ったことがあるくらい有名な場所だ。
正直そんな場所で仕事をしないといけないと考えると・・・ん? 
俺の返答に更に青く・・・いや白く、血色が薄くなってる白石であるーーーってオイオイ! 


「どうかしたのか?顔色悪いぞ?」 


さすがに心配になってきた。


「あ、いやその・・・ちょっと・・・ね?」


また歯切れの悪い回答である・・・何かあるのか? 
訊いてみようか考えたが、白くなる顔色に・・・この線は触れない事にした。
まぁそのうち何か言ってくるだろう。


「・・・今回は俺たちにとっての初のチーム戦になるが・・・実はもう1人いる。」
「もう1人?」
「向こうで合流するから着いた時に紹介するよ。」


というか、仕事以外で冬夜さんあの人と会いたくありません。
また、剣振り回されるのが眼に浮かぶ。






そうこうしていると、用紙に書いていたモノが丁度完成した。


「さっ!お前の勉強会のスケジュールが出来たぞ。」


バサッ
机の上に今描いた円状のスケジュール表を敷いた。 


「え?何コレ・・?」


呆然したまま机の上あるスケジュール表を眺める白石。


「見ての通りお前のスケジュールだ。」
「・・・・・。」


目を点して俺と紙に視線を行ったり来たりする。
・・・・何をそんなに驚く? 
そう俺が思っているとーーー。 


「こ、これ・・・・勉強時間が深夜・・まであるんだけど・・・何処で勉強するの・・・・・・・・?」
「お前のに決まってるだろう。」(←何気なく凄いこと言ってます!) 


何を言い出すんだ? 
それ以外の選択なんてないだろう? 


「え?」
「ん?」


ぎょッ、とした顔で目を白黒させる白石。
さっきから挙動不審過ぎないか? 


「ほ、本気?」
「・・・・・。」


本気、ってお前なぁー。  
*佳奈の「本気・・?」とは”零が自分の家に来る”という説明に実は寝ぼけてるのではと、本気で疑ってるのである。


「ハァ〜〜あのなぁ白石、追試まであと三日だぞ?時間はねぇんだぞ?で、お前のテスト結果は散々だ。」 
「ぐーっ!」 


ナイフでも刺さったか?
胸を押さえ出し崩れだす白石を置いて俺は話を続ける。


「出来る限りフォローしようと俺は考えたが、そこには問題がある。時間と場所・・・と言っても時間はそれ程問題ではない。一番の問題は場所だがな。時間帯を考えると泊まり込みでやるのが一番良いが・・・この店で夜更かしするのはNGだ(柊さんに迷惑はかけない!)、そう考えると残った選択はお前の家だけだ。お前だって家に帰れないのはイヤだろう?」


*零は本当に無自覚です。無自覚で無茶苦茶なことを言ってます。 


「だっ、だったら泉君のお家でもーーー。」
「ーーーそれは絶対ダメだっ。」


納得できず(*コレは正しいです。)、俺の家を提案してきた白石にーーー俺はバサリと切り捨てた。


「え!?な、どうして・・?」
「・・・・出来れば聞かないで欲しい。」


口になんて出来ない!俺は目を強く瞑ると、脳裏に浮かぶ・・・惨劇がーーー。
あの妹・・・が居る・・・我が家へもし・・・白石を連れてったりしたら・・・・・・・・・・・・遭遇した瞬間開戦だな・・。
そんな地獄絵図未来予想図が脳裏に映り、冷や汗が大量にかく俺に不審そうに視線を向ける白石。


「私が家に行くと何かマズイの?」
「マズイというか・・・危険・・というか」


主にお前の身がな。
言えませんが・・・。 


危険・・?」
「あーっ!もういいからっ!とにかく!勉強場所は白石の家だ!泊まるのは本当にマズイから、終わり次第俺はこの店に戻る。お前は取り敢えず、この三日間は家で大人しく勉強してるんだ・・・分かったな?」
「・・分かった」(なんか色々諦めた佳奈)


ハァ〜取り敢えず、どうにかなりそうだ・・・いや。
それは勉強の成果が見られた時と追試試験が合格した時に言うセリフだな。


「良し!じゃあ昼飯を食べたらお前の家に行くぞ・・・一応聞くが一人暮らしだよな?」
「うん・・そうだけど・・・?」(逃れられないと覚悟した佳奈) 
「いや〜・・・彼氏とでも同棲したら・・・マズイだろ?」
「い、いないに決まってるでしょっ!!」 


ど、怒鳴られました・・・気遣ったのにぃ・・。
結局その後、白石が住んでるマンションに行き、勉強の続きを行った・・・・以外と女の子ぽい部屋でした(内装は省きますが) 
さてさて・・・三日後の追試・・・乗り切れるか・・な? 
奇妙なランチタイムへ続く。

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