(旧)こっそり守る苦労人
シスコン対シスコン
夏休み初日の朝 
零はとある人物に再会していた・・・いや。
「「・・・・・。」」
再会してしまった、と言った方が正しいか? 
その人物と向き合った瞬間零はそんな事を考えていた。
零を見るその目は酷く歪んでおり、殺意に似た死線で零の肌に突き刺していた。 
同じく零もそんな死線をぶつけてくる相手に慈悲など与えない。
死んだ魚でも見るかのように、彼のことを濁った目で見・・観察していた。
互いの死線が交錯する。
長い沈黙の後、何方が共なく、口を開く2人。
「久し振りだね零君ーーーまだ生きてたか」  
「お久し振りです冬夜さんーーーまだご存命でしたか」  
「・・・・・・。」
久し振りの再会にしては随分棘のある2人の挨拶に、傍で黙り込むしかなかった柊であった。
彼らが居るのは、柊が経営している喫茶店【猫まんま】で、時刻は朝の8時である。
何故こんな朝からココにいるのかというとーーーーそれは前日、昼に学校で終業式を終えてからの話に戻る。
********
零視点
ハァ・・・やっと夏休みだ。
なんか白石のヤツが追試うんぬんで頭を抱えてたが、俺の知ったことではないな。
 唸っていた白石を置いて、さっさと下校して自宅までの道を歩いていた。
そんな俺にーーー声が掛かった。
「零、ちょっといいかな?」
「ん?柊さん?」
これはビックリ・・・こんな所で柊さんに会った。
基本柊さんに会うのは、店で会う時だけだ(まぁ俺は休日を除いたら、学校あるから夕方だけになるしな。)。
 
「零?」
「あ、はい。」
「せっかくだから、何処かで食べてかないか?」
そう提案する柊さんに俺は少し悩むが頷くことにした。
ちょうど昼なので腹も減ってたからというのも理由だが、同じく終業式である妹の葵が、今日は友達(たぶんリンも含まれてる)と夕方まで遊んでくると事前に聞いてたのを思い出したから、早く帰ってもしょうがないと考え着いたからである。
「私が奢ろう遠慮なく食べてくれ。」
「では、有り難く。」
取り敢えず俺たちは手頃な中華屋で昼食を取ることにした。
本来であれば、目上の人に奢ってもらうなど、俺の流儀に反する行為であるが・・・この人が相手だとなぁ。
こういう時、結構頑固なんだ柊さんは ・・・。
今までも、何度か外食したことがあるが、決まって柊さん達の奢りであった。
最初の頃は、俺も金を出すと言ったんだが・・・・大人の権限というヤツか?財布すら出させて貰えなかった。
しばらく食事を進めていくと、柊さんが本題へ移った。
「明日なんだが、時間あるかな?零」
正直急だな、と俺の率直な感想であったが・・・・柊さんの頼みは極力引き受ける俺は、拒否しようなんて気持ちは一切無かった。
「了解です。朝からの方が良いですか?」
「あぁ。朝食を兼ねて来てくれかな?」
「分かりました。」
その後も問題なく、明日の予定を立てた俺たちは、昼食を終え別れ、家に帰宅したのであった。
この時を振り返って俺は思ったーーーー何故理由を聞かなかったのか?かと。
********
ホントなんで理由聞かなかったんだ?・・・俺は
柊さんが用意してくれた朝食(トーストにゆで卵とサラダの組み合わせ)を頂きながら、あの時の俺に問う俺であった。
正面の席では、優雅に朝食を食べ終えコーヒーを飲む冬夜さんがいる。
「・・・・。」
無言で食す俺に一切視線を向けず。スーとコーヒーを飲む冬夜さん。
・・・得体の知れない人だ。
英次も得体が知れないが、この人も充分得体が知れないーーーそれぞれ別の意味でだが。
あの凪の兄ーーー九条冬夜。
俺が知る限り、男性メンバーの中では一番危険な存在である。
特に妹の凪が関係すると、落ち着いた雰囲気から一変ーーーー修羅か化身をイメージさせるのがこの人の怖い部分だ(偶に某仕事人の名曲がBGMで流れてる気がする程に)。 
「俺に何の用ですか?」
このままでは埒があかない。
逃れられないのならこっちから仕掛けるーーーそう考え、なんでもない風を装いながら俺は問う。
「ん?用?」
コーヒーを持ち、惚けた表情で首を傾げる冬夜さんに・・・少しイラッときたが、
ここで熱くなると負けた気分なるので、顔に出しません。 
  
「アレェ?呼ばれた理由はてっきり貴方ーーーかと思いましたが・・・・違いましたかぁ?」
疑問系の語尾を少し強調して煽る俺ーーー顔はもちろん笑顔(ココ重要です!)です。 
「・・・・はははっ。面白い事を言うね・・?俺が君を呼んだと?朝からそんな冗談は、聞きたくないな。」
一瞬顔を強張らせるが、すぐに落ち着いた雰囲気に戻り、俺に対して苦笑気味に言う冬夜さん。
冗談?冗談ときましたか・・。
冬夜さんの言葉に頭の中で、何かが切れそうになったがーーーーコラエマス、キレタラ負ダ 
「はははっ貴方が俺を呼んだ?それこそ面白い冗談・・いえジョークですねぇ。俺を呼んだのは柊さんですよぉ?
冬・夜・さ・んとは一言も言ってませんよぉ?」 
 
可笑しいなお人だなぁ〜〜〜思わず小笑してしまう。 
次の瞬間冬夜さんから発する気配が鋭くなったのを感じたが、素知らぬまま笑顔で伺う俺。
「いやいや、そんな事はないさ。君の下手な説明じゃそう聞こえてもしょうがないぞ?」 
「そんな事ありません。冬夜さんが残念な思考なだけですよ?」  
睨むというより、目線による殴り合いだな。
もちろんボコボコにしてやります。
「あるね。」
「ありません。」
笑みのまま、脳裏で冬夜さんを殴り飛ばします。
手加減など不要ーーー殴る殴る殴る! 
「ある。」
「ないです。」
しつこいお人だ・・・そろそろ本当に手が出そうだ。
場の空気が淀んでくる中、柊さんが割り込んできた。 
「そのくらいで。2人とも落ち着いて。」  
呆れ混じりな顔でコーヒーを持ち同席して来た。
「冬夜、零を呼んだのは私だ。零、冬夜さんがこの場に居るのは別件だ。2人がココに居るのは偶然だよ。」
偶然・・ねぇ?
柊さんの言葉に疑惑の念を濃く感じた俺は
冬夜さんに向けていた視線を柊さんに移し、ジト目で睨む俺。
「幻さん何が狙いですか?」 
冬夜さんも同じらしく、目線が疑いの色が映っている。
「零君と俺を引き合わせ・・・何を企んでるのかお聞きしたい。」
感心のある声色で柊さんに質問する冬夜さん。
目に誤魔化すなって文字が見える。
そんな冬夜さんに柊さんが溜息を吐く。
「疑り深いな冬夜は・・・まぁ少しはあるけど」
「あるんじゃないですか」
全くこの人は・・・!
「揚げ足を取らないでくれよ零・・・ハァ」
恨めしそうに見てくる柊さん。
そんな目をしても無駄ですからね?
「用件は何ですか?話してください。」
「せっかちだね2人とも」
俺と冬夜さんの視線に押され出した柊さん。
「コッホン!・・・実はーーー。」
一度咳払いをしてから説明し出した。
結論から言えば・・・・・非常に面倒な内容に後悔した俺であった。
でその後ーーーー。
「クタバレイモウトドロボウ!」
「誰が泥棒ですか!」
誤解招くからやめてーっ!
バトル事になった俺と冬夜さん・・・・・なんでーっ!? 
いや理由は柊さんだ。
話の後、流れで模擬戦を行う事になったんだが・・・・相手は当然、現役の高レベルの異能者である冬夜さんだ。
柊さんの提案にノリノリで承諾した冬夜さん・・・・そんなに俺が目障りなのでしょうか?
提案
柊さんがとあるお願いで、俺と冬夜さんに協力して引き受けて貰う代わりにーーー地下の訓練場で憂さ晴らしついでに”模擬戦をしては?”と冬夜さんに提案したんだ・・・俺の了承もなく!だ。
結果強引ではあるが、俺と冬夜さんは今、模擬戦を行う事になった。
・・・・なったんだが。
その瞬間、冬夜さんの表情が豹変したーーー修羅の顔・・いや。
アレはーーー。
「ク〜〜タ〜〜バ〜〜レ!」 
妹を想う兄の顔だーーーダークな方の(俺も時々あります。)
透明な光の大剣を振り回し俺を斬ろうとする冬夜さん・・・殺人鬼にしか見えん。
「っ・・!」
【黒夜】で出した黒槍で防御する・・・が目が光の所為でチカチカする・・・眩しい!
「ニ・・ガ・・サン!」
声が古いラジオの音になってる!?
バッ!バッ!バッ!バッ!
大剣が振るわれる度に空が響く。
筋力重視の【武闘】で強化してるな?昔より速くなってる!
「エグい人だ!」
「よくモ凪ヲ!ヨくモナぎヲ!」
「怖ぇっ!」 
どっかの武神の生まれ変わりとかじゃありませんか?
数え切れない程の斬撃の嵐の中、呑気にそんな事を考えてしまう。
というか、”よくも凪を!”って寧ろアイツの方が俺を使いパシリにしたんですけど!
暗躍してるの寧ろアイツーっ! 
「模擬戦ですっ、よねっ!?」 
槍で捌きつつ問う俺に鬼神の形相で答える冬夜さん。
「あタリマエだ!何方かがクタバルまで終わラナイ戦いでダ!」 
「それ模擬戦じゃなくて殺し合いです。」
 
殺戮者とはこの人の事では?
何で俺がこんな目に!?
しかも理由が凪ーっ?
・・・・理不尽過ぎるっ!
「フンフンフンフンフンフン!」
「っ!この!」
以前冬夜さんから見た目は大剣でデカイが、実際は重くないって言ってたな・・・。
俺の目の前で連続で大剣を振るう冬夜さんを見て、ズルいと愚痴りたくなった。 
 
「零!守ってばかりじゃ訓練にならんよ?」
「黙って下さい!」
あなたの所為でしょう!?口にしませんが・・・! 
後方から聞こえる柊さんの声に、心の中で文句をぶち撒ける俺。
「フーーーーンッ!!」
「ッーー!」
大きく横斬りに反応が遅れ、防御を取るがーーー吹き飛ばされた! 
「っ・・重い」
何て力だ。槍を持つ手が痺れてしまった。
まあ当然の結果かもしれん。
通常強化の【武闘】と筋力重視の【武闘】でパワー勝負して勝ち目なんかない。
「ふぅー。ちょっとマジ過ぎませんかね?」
言いたくはないが、正直やりづらい、この人の相手は。
アイツの兄というだけが理由じゃないが・・・この兄妹と戦うとどうしても逃げたくなる!
・・・まぁ逃げませんけど。
相手が凪か朱美さんならダッシュで逃げますが・・・。
「グルううう!」
「人間やめ過ぎでしょう・・・。」
犬じゃないんだから・・・もういいや。
このままだと永遠に終わらんどころか自分の身がヤバいのでーーー真面目やるか。
意識を深くして行くーーー。
意識深くにある『死神』を呼び起こすーーー。
同調するかのように『心力』が落ち着きを取り戻すーーー。
ーーー戦闘準備完了。
「行きますよ?冬夜さん。」
「来い。」
槍から剣へーーー『武器チェンジ』
二刀流で構える俺に鬼神顏のままであるが気を引き締める冬夜さん・・・・感じ取ったようだ。
【武闘】の出力を上げていく俺たちーーー。
構えたまま睨み合うーーー。
殺気で軋む訓練場ーーー。
そしてーーー。
「「ーーーッ!」」
戦闘が開始された。
「ハイッ!そこまで!」
「「ーーッ」」
柊さんの声に飛び出しそうになる体を引き止める。
戦闘時間は約20分・・・激戦だった。
多少抑えてた部分もあったし、【異能術式】を含む上位系の技は一切使ってないが・・・。
 
「ハァッ・・・相変わらず小細工が上手いな・・。」
「ハァ・・・ハァ・・そちらも・・・以前比べて攻撃的にでしたね?」 
息を切らす俺と冬夜さん・・・小細工は余計です。
 
戦闘の流れとしては、接近して剣での攻め技合いである。
冬夜さんが大剣を振るうと俺は両手の剣で受け流し斬りかかるが、それを素早く大剣を回して防御して、力任せに振ってくる。
持ち手を短く持ったり長く持ったりして、剣筋を変えてくる冬夜さんに嫌気がさすが、なんとか器用に捌き逃れてから、迎撃して次の手を実行にする俺。    
一気に急接近した俺は、組み技で冬夜さんを倒して、そのまま斬りかかりに入るが、持つ大剣をクルリと回して防がれただけでなく、思いっきり蹴り飛ばされてしまったため、再び剣同士の攻防へ移った。
しばらく剣での交戦が続いたがーーー結局柊さんからの終了の合図があるまで決着が着かなかった。 
「ハァ〜〜!もうやりませんから。」
「いやいや、またやろうよ零君。楽しいよ?」
既に機嫌が良くなっていた冬夜さんは、もう戦うのを嫌がる俺に先程とは違う笑みで、肩をポンポン叩いてきた。
「満足したかな?」
「はい!久々に楽しめました。」
柊さんの質問に喜びの顔で頷く冬夜さん。
もうここまで聞いたら分かると思うがーーー彼・・九条冬夜さんは戦闘マニアです重度の。
と、いうより、俺の知り合い・・・先輩達の大半が朱美さんを筆頭に戦いに飢えた中毒者の集まりなのだ・・・残念なことに。 
まぁこの人の場合、俺に対するストレスとかも含まれてるだろうから・・・でも朱美さんよりはマシか? 
模擬戦が終わり、気怠さだけが残る中、俺たちはちょっどお昼時になったので昼食へ移った。
「良しじゃあ次!組手を始まるから用意するんだ零君!」
昼食後、訓練場に置いてある道着に着替えた冬夜さんに・・・・俺はうんざりするだけして、道着に着替えたのであった。
結局その日は、模擬戦・組手・寝技・模擬戦の順に訓練を続けていった。
既に外は真っ暗で俺自身も疲れ切ったので、店で寝泊まりする羽目になったが・・・・久々に割と楽しめた。
・・・当然内緒であるが(冬夜さんだけじゃ済まなくなりそうだから)。  
疲れた頭の脳裏に2人の女性の顔を思い浮かべ、苦笑してしまう俺であった。
あと一つ・・・これだけは絶対言っておきたい。
「俺の妹の方が絶対可愛い!」 
これだけは頑として譲るつもりはなかったのであった・・・おやすみ。
追試対策へ続く。
零はとある人物に再会していた・・・いや。
「「・・・・・。」」
再会してしまった、と言った方が正しいか? 
その人物と向き合った瞬間零はそんな事を考えていた。
零を見るその目は酷く歪んでおり、殺意に似た死線で零の肌に突き刺していた。 
同じく零もそんな死線をぶつけてくる相手に慈悲など与えない。
死んだ魚でも見るかのように、彼のことを濁った目で見・・観察していた。
互いの死線が交錯する。
長い沈黙の後、何方が共なく、口を開く2人。
「久し振りだね零君ーーーまだ生きてたか」  
「お久し振りです冬夜さんーーーまだご存命でしたか」  
「・・・・・・。」
久し振りの再会にしては随分棘のある2人の挨拶に、傍で黙り込むしかなかった柊であった。
彼らが居るのは、柊が経営している喫茶店【猫まんま】で、時刻は朝の8時である。
何故こんな朝からココにいるのかというとーーーーそれは前日、昼に学校で終業式を終えてからの話に戻る。
********
零視点
ハァ・・・やっと夏休みだ。
なんか白石のヤツが追試うんぬんで頭を抱えてたが、俺の知ったことではないな。
 唸っていた白石を置いて、さっさと下校して自宅までの道を歩いていた。
そんな俺にーーー声が掛かった。
「零、ちょっといいかな?」
「ん?柊さん?」
これはビックリ・・・こんな所で柊さんに会った。
基本柊さんに会うのは、店で会う時だけだ(まぁ俺は休日を除いたら、学校あるから夕方だけになるしな。)。
 
「零?」
「あ、はい。」
「せっかくだから、何処かで食べてかないか?」
そう提案する柊さんに俺は少し悩むが頷くことにした。
ちょうど昼なので腹も減ってたからというのも理由だが、同じく終業式である妹の葵が、今日は友達(たぶんリンも含まれてる)と夕方まで遊んでくると事前に聞いてたのを思い出したから、早く帰ってもしょうがないと考え着いたからである。
「私が奢ろう遠慮なく食べてくれ。」
「では、有り難く。」
取り敢えず俺たちは手頃な中華屋で昼食を取ることにした。
本来であれば、目上の人に奢ってもらうなど、俺の流儀に反する行為であるが・・・この人が相手だとなぁ。
こういう時、結構頑固なんだ柊さんは ・・・。
今までも、何度か外食したことがあるが、決まって柊さん達の奢りであった。
最初の頃は、俺も金を出すと言ったんだが・・・・大人の権限というヤツか?財布すら出させて貰えなかった。
しばらく食事を進めていくと、柊さんが本題へ移った。
「明日なんだが、時間あるかな?零」
正直急だな、と俺の率直な感想であったが・・・・柊さんの頼みは極力引き受ける俺は、拒否しようなんて気持ちは一切無かった。
「了解です。朝からの方が良いですか?」
「あぁ。朝食を兼ねて来てくれかな?」
「分かりました。」
その後も問題なく、明日の予定を立てた俺たちは、昼食を終え別れ、家に帰宅したのであった。
この時を振り返って俺は思ったーーーー何故理由を聞かなかったのか?かと。
********
ホントなんで理由聞かなかったんだ?・・・俺は
柊さんが用意してくれた朝食(トーストにゆで卵とサラダの組み合わせ)を頂きながら、あの時の俺に問う俺であった。
正面の席では、優雅に朝食を食べ終えコーヒーを飲む冬夜さんがいる。
「・・・・。」
無言で食す俺に一切視線を向けず。スーとコーヒーを飲む冬夜さん。
・・・得体の知れない人だ。
英次も得体が知れないが、この人も充分得体が知れないーーーそれぞれ別の意味でだが。
あの凪の兄ーーー九条冬夜。
俺が知る限り、男性メンバーの中では一番危険な存在である。
特に妹の凪が関係すると、落ち着いた雰囲気から一変ーーーー修羅か化身をイメージさせるのがこの人の怖い部分だ(偶に某仕事人の名曲がBGMで流れてる気がする程に)。 
「俺に何の用ですか?」
このままでは埒があかない。
逃れられないのならこっちから仕掛けるーーーそう考え、なんでもない風を装いながら俺は問う。
「ん?用?」
コーヒーを持ち、惚けた表情で首を傾げる冬夜さんに・・・少しイラッときたが、
ここで熱くなると負けた気分なるので、顔に出しません。 
  
「アレェ?呼ばれた理由はてっきり貴方ーーーかと思いましたが・・・・違いましたかぁ?」
疑問系の語尾を少し強調して煽る俺ーーー顔はもちろん笑顔(ココ重要です!)です。 
「・・・・はははっ。面白い事を言うね・・?俺が君を呼んだと?朝からそんな冗談は、聞きたくないな。」
一瞬顔を強張らせるが、すぐに落ち着いた雰囲気に戻り、俺に対して苦笑気味に言う冬夜さん。
冗談?冗談ときましたか・・。
冬夜さんの言葉に頭の中で、何かが切れそうになったがーーーーコラエマス、キレタラ負ダ 
「はははっ貴方が俺を呼んだ?それこそ面白い冗談・・いえジョークですねぇ。俺を呼んだのは柊さんですよぉ?
冬・夜・さ・んとは一言も言ってませんよぉ?」 
 
可笑しいなお人だなぁ〜〜〜思わず小笑してしまう。 
次の瞬間冬夜さんから発する気配が鋭くなったのを感じたが、素知らぬまま笑顔で伺う俺。
「いやいや、そんな事はないさ。君の下手な説明じゃそう聞こえてもしょうがないぞ?」 
「そんな事ありません。冬夜さんが残念な思考なだけですよ?」  
睨むというより、目線による殴り合いだな。
もちろんボコボコにしてやります。
「あるね。」
「ありません。」
笑みのまま、脳裏で冬夜さんを殴り飛ばします。
手加減など不要ーーー殴る殴る殴る! 
「ある。」
「ないです。」
しつこいお人だ・・・そろそろ本当に手が出そうだ。
場の空気が淀んでくる中、柊さんが割り込んできた。 
「そのくらいで。2人とも落ち着いて。」  
呆れ混じりな顔でコーヒーを持ち同席して来た。
「冬夜、零を呼んだのは私だ。零、冬夜さんがこの場に居るのは別件だ。2人がココに居るのは偶然だよ。」
偶然・・ねぇ?
柊さんの言葉に疑惑の念を濃く感じた俺は
冬夜さんに向けていた視線を柊さんに移し、ジト目で睨む俺。
「幻さん何が狙いですか?」 
冬夜さんも同じらしく、目線が疑いの色が映っている。
「零君と俺を引き合わせ・・・何を企んでるのかお聞きしたい。」
感心のある声色で柊さんに質問する冬夜さん。
目に誤魔化すなって文字が見える。
そんな冬夜さんに柊さんが溜息を吐く。
「疑り深いな冬夜は・・・まぁ少しはあるけど」
「あるんじゃないですか」
全くこの人は・・・!
「揚げ足を取らないでくれよ零・・・ハァ」
恨めしそうに見てくる柊さん。
そんな目をしても無駄ですからね?
「用件は何ですか?話してください。」
「せっかちだね2人とも」
俺と冬夜さんの視線に押され出した柊さん。
「コッホン!・・・実はーーー。」
一度咳払いをしてから説明し出した。
結論から言えば・・・・・非常に面倒な内容に後悔した俺であった。
でその後ーーーー。
「クタバレイモウトドロボウ!」
「誰が泥棒ですか!」
誤解招くからやめてーっ!
バトル事になった俺と冬夜さん・・・・・なんでーっ!? 
いや理由は柊さんだ。
話の後、流れで模擬戦を行う事になったんだが・・・・相手は当然、現役の高レベルの異能者である冬夜さんだ。
柊さんの提案にノリノリで承諾した冬夜さん・・・・そんなに俺が目障りなのでしょうか?
提案
柊さんがとあるお願いで、俺と冬夜さんに協力して引き受けて貰う代わりにーーー地下の訓練場で憂さ晴らしついでに”模擬戦をしては?”と冬夜さんに提案したんだ・・・俺の了承もなく!だ。
結果強引ではあるが、俺と冬夜さんは今、模擬戦を行う事になった。
・・・・なったんだが。
その瞬間、冬夜さんの表情が豹変したーーー修羅の顔・・いや。
アレはーーー。
「ク〜〜タ〜〜バ〜〜レ!」 
妹を想う兄の顔だーーーダークな方の(俺も時々あります。)
透明な光の大剣を振り回し俺を斬ろうとする冬夜さん・・・殺人鬼にしか見えん。
「っ・・!」
【黒夜】で出した黒槍で防御する・・・が目が光の所為でチカチカする・・・眩しい!
「ニ・・ガ・・サン!」
声が古いラジオの音になってる!?
バッ!バッ!バッ!バッ!
大剣が振るわれる度に空が響く。
筋力重視の【武闘】で強化してるな?昔より速くなってる!
「エグい人だ!」
「よくモ凪ヲ!ヨくモナぎヲ!」
「怖ぇっ!」 
どっかの武神の生まれ変わりとかじゃありませんか?
数え切れない程の斬撃の嵐の中、呑気にそんな事を考えてしまう。
というか、”よくも凪を!”って寧ろアイツの方が俺を使いパシリにしたんですけど!
暗躍してるの寧ろアイツーっ! 
「模擬戦ですっ、よねっ!?」 
槍で捌きつつ問う俺に鬼神の形相で答える冬夜さん。
「あタリマエだ!何方かがクタバルまで終わラナイ戦いでダ!」 
「それ模擬戦じゃなくて殺し合いです。」
 
殺戮者とはこの人の事では?
何で俺がこんな目に!?
しかも理由が凪ーっ?
・・・・理不尽過ぎるっ!
「フンフンフンフンフンフン!」
「っ!この!」
以前冬夜さんから見た目は大剣でデカイが、実際は重くないって言ってたな・・・。
俺の目の前で連続で大剣を振るう冬夜さんを見て、ズルいと愚痴りたくなった。 
 
「零!守ってばかりじゃ訓練にならんよ?」
「黙って下さい!」
あなたの所為でしょう!?口にしませんが・・・! 
後方から聞こえる柊さんの声に、心の中で文句をぶち撒ける俺。
「フーーーーンッ!!」
「ッーー!」
大きく横斬りに反応が遅れ、防御を取るがーーー吹き飛ばされた! 
「っ・・重い」
何て力だ。槍を持つ手が痺れてしまった。
まあ当然の結果かもしれん。
通常強化の【武闘】と筋力重視の【武闘】でパワー勝負して勝ち目なんかない。
「ふぅー。ちょっとマジ過ぎませんかね?」
言いたくはないが、正直やりづらい、この人の相手は。
アイツの兄というだけが理由じゃないが・・・この兄妹と戦うとどうしても逃げたくなる!
・・・まぁ逃げませんけど。
相手が凪か朱美さんならダッシュで逃げますが・・・。
「グルううう!」
「人間やめ過ぎでしょう・・・。」
犬じゃないんだから・・・もういいや。
このままだと永遠に終わらんどころか自分の身がヤバいのでーーー真面目やるか。
意識を深くして行くーーー。
意識深くにある『死神』を呼び起こすーーー。
同調するかのように『心力』が落ち着きを取り戻すーーー。
ーーー戦闘準備完了。
「行きますよ?冬夜さん。」
「来い。」
槍から剣へーーー『武器チェンジ』
二刀流で構える俺に鬼神顏のままであるが気を引き締める冬夜さん・・・・感じ取ったようだ。
【武闘】の出力を上げていく俺たちーーー。
構えたまま睨み合うーーー。
殺気で軋む訓練場ーーー。
そしてーーー。
「「ーーーッ!」」
戦闘が開始された。
「ハイッ!そこまで!」
「「ーーッ」」
柊さんの声に飛び出しそうになる体を引き止める。
戦闘時間は約20分・・・激戦だった。
多少抑えてた部分もあったし、【異能術式】を含む上位系の技は一切使ってないが・・・。
 
「ハァッ・・・相変わらず小細工が上手いな・・。」
「ハァ・・・ハァ・・そちらも・・・以前比べて攻撃的にでしたね?」 
息を切らす俺と冬夜さん・・・小細工は余計です。
 
戦闘の流れとしては、接近して剣での攻め技合いである。
冬夜さんが大剣を振るうと俺は両手の剣で受け流し斬りかかるが、それを素早く大剣を回して防御して、力任せに振ってくる。
持ち手を短く持ったり長く持ったりして、剣筋を変えてくる冬夜さんに嫌気がさすが、なんとか器用に捌き逃れてから、迎撃して次の手を実行にする俺。    
一気に急接近した俺は、組み技で冬夜さんを倒して、そのまま斬りかかりに入るが、持つ大剣をクルリと回して防がれただけでなく、思いっきり蹴り飛ばされてしまったため、再び剣同士の攻防へ移った。
しばらく剣での交戦が続いたがーーー結局柊さんからの終了の合図があるまで決着が着かなかった。 
「ハァ〜〜!もうやりませんから。」
「いやいや、またやろうよ零君。楽しいよ?」
既に機嫌が良くなっていた冬夜さんは、もう戦うのを嫌がる俺に先程とは違う笑みで、肩をポンポン叩いてきた。
「満足したかな?」
「はい!久々に楽しめました。」
柊さんの質問に喜びの顔で頷く冬夜さん。
もうここまで聞いたら分かると思うがーーー彼・・九条冬夜さんは戦闘マニアです重度の。
と、いうより、俺の知り合い・・・先輩達の大半が朱美さんを筆頭に戦いに飢えた中毒者の集まりなのだ・・・残念なことに。 
まぁこの人の場合、俺に対するストレスとかも含まれてるだろうから・・・でも朱美さんよりはマシか? 
模擬戦が終わり、気怠さだけが残る中、俺たちはちょっどお昼時になったので昼食へ移った。
「良しじゃあ次!組手を始まるから用意するんだ零君!」
昼食後、訓練場に置いてある道着に着替えた冬夜さんに・・・・俺はうんざりするだけして、道着に着替えたのであった。
結局その日は、模擬戦・組手・寝技・模擬戦の順に訓練を続けていった。
既に外は真っ暗で俺自身も疲れ切ったので、店で寝泊まりする羽目になったが・・・・久々に割と楽しめた。
・・・当然内緒であるが(冬夜さんだけじゃ済まなくなりそうだから)。  
疲れた頭の脳裏に2人の女性の顔を思い浮かべ、苦笑してしまう俺であった。
あと一つ・・・これだけは絶対言っておきたい。
「俺の妹の方が絶対可愛い!」 
これだけは頑として譲るつもりはなかったのであった・・・おやすみ。
追試対策へ続く。
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