(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

終わり良ければすべて良し

佳奈視点


・・・暖かい。
妙に暖かい温もりを感じて私は目を覚ました。
 

「・・・んぅ」


あれ・・?
私・・・どうしたんだっけ?
ボーとして思考が回らない私に知っている声がーー。 


「気が付いたか?」


え・・?だれ・・?
呆然とそんなことを思っていると・・・・目の前に泉君の顔・・・・(ここ大事!)が・・・・がガガガガっ!!


「キャァァアアーーー!!」


ひ、悲鳴を上げてしまった!ってそりゃそうだよ!だってーー。


「なんで泉君が私をおんぶしてるの!?」
「・・・とりあえず、ボリュームを落とせ・・・周囲の視線が痛い・・・・・・・・。」
  

ハッーーー!


煩そうに片目を閉じる泉君に言われて、周囲に視線を向けると・・・・買い物帰り主婦の人とか子供とかがーーーーーっ!!
現状を理解して顔が・・・燃えるように熱い!


「顔が赤ぇぞ?」 


だ、だって、青年に背負われてる女性の絵図だよ!!恥ずかしいよ! 
ていうか、体逸らしてないから色々当たってーーーーーー。
〜〜〜〜〜!?   


「取り乱してるところ悪いが、暴れないでくれないか?バランスが取りずれ。」 
「そ、そんなこと言われたって・・・。」


ムリムリ!ムリだよ!
この状況で取り乱すなってムチャぶり過ぎだよ・・! 
・・・・・・・。
・・・・・・・。 


暫く混乱しっぱなしだったけど・・・・な、なんとか、お、落ち着いた・・・かな? 
そのおかげか・・・頭の中で記憶の整理がついた・・・思い出した。


「私・・・気を失ったんだ・・・。」
「そうだ。」


私の呟きに歩きながらも答えてくれる泉君。 


「魔獣を倒したの・・・泉君だよね?」
「あぁ、遠距離攻撃で倒した。」
「やっぱりあの黒い光線、泉君だったんだ。」


あの時私の視界には、上空を飛ぶ、異質な黒く輝く直線が映っていたのだ。
呆然とするなか、私は直感に似た感覚で理解した。
・・・・アレは泉君の異能だ。と。
  

「遠距離って・・・学校から・・・・?」
「あぁ」


あっさり答える泉君・・・本当みたい。
彼以外の異能者から言ったら、たぶん笑って信じないと思うけど・・・・泉君だとね・・・・・・・? 
今までの見てきた、数々の彼の化け物ぶりを想像すると・・・・納得してしまう。


「・・・・・・一応聞くけど・・・どうやって?」 
感知技法・・・・で遠距離からの攻撃を可能にした。」
「・・・・・それって」
「できんぞ?」 
「・・・・。」


誰がとは聞きません何がとも聞きません!
聞いてみただけ・・・ううっ・・ちょっと悔しい・・・! 


「見てたってこと?」


もしそうなら、もっと早く助けてくれても良かったのでは?と少なからず思うところがある私は、少しトゲのある声音で聞いてしまう。


「途中からな。・・・・正直おまえがピンチだとは・・・・予想外だった。」
「ーーーうっ」
「・・・・最初に感知して連絡した時・・・・勝ってたよな?」


え、ええと・・・・。


それに・・・ーーーー再び感知してたらおまえ・・・・心力の動き・・・・・がいつもと全然違ってたぞ?」 
「・・・・・ちょっと心力の・・・操作を(ボソ)」 


別に悪いことした訳じゃないのに・・・何故か声がちいさくなる・・・・・・う、俯いてしまった。


「あー・・・・【武闘】か?」 
「・・・・・はい。」


さすがに気づいちゃったか・・・さすが。
私の反応で大体を把握した泉君は、ため息混じりに呟く。


「ハァ〜なるほどな。・・・慣れない心力操作に精神がビックリしたんだろう。」
「精神がビックリって・・。」


なんかエセ科学でも聞かされてる気分・・・。 


「バカ (おまえ)に分かりやすく言っただけだ。」
「ばーーーー!?」


ガバッと顔を上げる。
な!何言ったかな・・!?この男の子! 
背後で私の機嫌が悪くなったのを感じ取ったのか? 
続いて説明をしだす泉君。


「普段おまえが心力を動かす時は、大抵が異能を使う時だ。心力そのものを操る機会がおまえになかった・・・・その反動だ。」
「だったらそう言ってよ・・・。」


なんであんな風に言うのかな・・・私だってそれぐらいなら分かるよ。


「・・・・・まあおまえの頭を考えるとザンネン知能・・・・な?」 
「なるほどなるほど〜〜〜?」 
 

どうやら泉君の中の私は相当知能が低いおサルさん・・・・・らしい・・・・・ムカっ!
ーーーーエイッ! 


「ーーー!?く、くるぅ・・!て、てめぇ・・おぶってもらっといて・・・!」 


ふん!泉君が悪いんだから・・・・! 
・・・・背後から首を絞めるせいで、(控えめな)胸とか密着しちゃってるけど
・・・・・・・一切反応を示さなかった泉君。


・・・・・・・イラ(怒)  
ゴツン!! 
なんかイラッときたので、その鈍頭に頭突きをしてやりました・・・! 
・・・・痛い(涙目)  
******** 
零視点


頭まだ地味に痛え・・・何故白石はあんなにキレてたんだ? 
俺は夕陽の中、校舎を出ようと歩いてる最中である。
ハァ〜・・・せっかく助けてやったのに・・・お礼がまさかの頭突きとは・・・・そんなにバカ扱いされたのが気に障ったのか?  
この後俺たちは20分程掛けて学校に戻ってきたのだが・・・・怒られました。雷が落ちたわ。 


おぶられていた白石にはなかったが、俺は即教師からのお説教へ移らされた。


当然と言えば当然か・・・。
球技大会中に途中で居なくなり、学校を抜け出し、女子生徒をおぶり戻ってきた・・・・怒らないほうがおかしいか。
まぁ怪我した白石を運んで来たっていう風にも見れたので、罰則関係にはならなかった。


問題があったとすればーーーー球技大会・・・というより、生徒会だな。あと風紀委員との対決についてだ。


「ゼロくんのバカァ〜〜〜〜!!」 


号泣で俺をバカ呼ばわりする沙耶さん。
普段ならやり返す俺であるが・・・今回はな。
何言わず、黙ったまま沙耶さんの罵声を受けているとーーー他のメンバーから擁護する声が。


「サヤ、そのくらいにしなさい。レイ君が困ってるでしょ?」
「小森、お前が怒る気持ちも分からなくもないが、今回俺たちは、泉に無理を言って・・・・・・頼んだんだ。ーーーそんなヤツに対して・・・・責める・・・のがお前のやり方か?」


比奈さんと和人さん・・・特に和人さんの言い方には、沙耶さんの罵声を止めるに充分な威力であった。 




ただ、あの2人・・・・は、また別であったが・・・。


「零っち?ウチに誤魔化しは通じないっすよ?ーーーー何があったっすか・・・・・・・・?」 


・・・・・・・。
俗に言う野生の勘か?これ程莉緒が恐ろしく思えたのは、初めてのことだった。
・・・・・まぁ以前・・一件・・で怪しまれてるからな・・・気を付けねば。 


「零くん・・・ロリコンってホント?」


これには本当苦労した・・・!
精神的なダメージが大!
・・・・メンタル弱いんだよ?  
涙目で弱々しい由香さん・・・・心が痛いっ!
胃に穴が空きそう・・・。 
というか・・・途中で抜け出したことには無関心なんだ。  


因みロリコン騒ぎの原因となった部活会のカイチョウさんは、無事に目を覚まして・・・・泣きじゃくってました。


「ぐすぐすっ・・敗けたデス。(涙)」  


・・・・あ〜・・・負けたらしい。


「なにがなにやら分からないデス・・。」


・・・・どうやら覚えてないようだ。記憶が前後でボケてるようだ。
俺が居なくなった後で無事に目を覚ましたようだ。 
俺達との試合は俺が抜け出したことで不戦勝となったが、風紀委員会との対決で惨敗を期したそうだ。
・・・・その話を聞いて俺は思った。
絶対ぇ武の奴ーーーー乳に惑わされたな!(アイツは巨乳好きなのだ。)
あの風紀委員会、巨乳が多いからな・・・。
・・・・・。


「今いやらしい・・・・・ーーーーこと、考えたでしょ泉。」  


ーーーーッ!?
く、くせ者じゃなくて水野!? 
どっから出て来た!?この現代忍者!  


「え〜〜と?み、水野さん?」
「・・・・なんで敬語?」


いや、なんかお前の不機嫌オーラを感じ取った瞬間、敬語になってしまった。
・・・やっぱ苦手だな。


「なに?さっきから」
「い、いや、そういえやお前が俺に言おうとしてたのって、結局何だったんかな?って思ってよ」 


試合で勝ったらって話だったけど・・・・・あのイラつきよう考えると・・・・相当な内容爆弾? 


「なにその反応?・・・ちょっとキモいわね。」
「・・・・・。」


ショック!
ショック過ぎて黙り込んでいると。 


約束・・・・・したでしょ?」 
「え・・・?」 


水野の呟きに呆然とする。
約束・・?何のこと? 


「だ、だから・・・・〜〜〜〜っ!」
 

うわっ!?水野の瞬間沸騰!? 
たまーにだが、コイツキレると顔が一瞬で真っ赤になるんだ・・・煙が出そうだ。


「こ、今度楓と食事に行くって・・・・約束したでしょ!?」


・・・・・・・・・・・あ、


「やっぱり忘れてたのね?」


いや、けどあれは・・・・アレって・・・かなり前・・・でもないな・・・・・。(2ヶ月も経ってないし。)


*読者の皆様も忘れてる方が大勢いると思いますが、第1章の『いつもの日常 後編』で零はその場で話していた楓との約束で、食事の約束をすることになっていたのだ・・・・・い、言っときますが、忘れてたわけじゃないですから!ちょっと置いといたらここまで延びいただけですから! 


「・・・・なんか色々とぶつけたい・・・・・気持ちで一杯だけどーーーまあ良いわ。どのみちもう直ぐ夏休みだしーーーー埋め合わせはにして貰うから」  
「・・・・了解。」


なんかどんどん夏休みの予定が増えていってるような・・・。
苦難の予感がするけど、断れない・・・・なぜ俺は忘れていたんだ・・・・・・・?(作者:スミマセン)  


********
喫茶店【猫まんま】 


「ご苦労だったね零。それに白石さん。」
「どうも」 
「まぁなんとか・・・。」


出迎えてくれた店の店長柊さんにいつも通りに答える俺と、どこか、苦笑気味の白石・・・・まださっきの戦い気にしてるのか?  


その後、店で軽く飲みながら(ジュースです)談話していった俺達。  


途中白石からこんな質問が


「ねぇ?泉君。なんか蓮君と江梨ちゃんメールで私たち以外・・の異能者と一緒に寄生魔獣を倒したって話がきたんだけど・・・。」
「その件は俺は知らん(たぶん英次の仕業だな。)ーーどんな奴だったって?」
「んーなんか鎖系の捕縛能力の使い手だったらしいよ?」
「・・・・そうか。」


たぶんスノウのヤツだなと俺が納得していると


「そ、そいえば・・さ?」
「ん?どうした?」


なにやら挙動不審の白石・・・・なるほど。 


「便所なら奥を出て右の「違う」」


分かってる。分かってるからそんな冷たい口調で言うな。


「・・・・どうしたんだ。」


真面目に聞こうと向き合うとーーーー顔が薄く赤くなってる白石。


「ん・・・呼び方・・・・・転校生・・・でも良いよ?」 
「・・・・・。」
「い、いやっあの・・・なんかあの後から・・・・・ずっと、”おまえ”とか”てめぇ”とかだから・・・呼び辛いのかと思って・・・。」


・・・・・そこからくるか・・・・・。 
なんか言い難くというのは事実だ。
あの時・・・の影響で呼び辛くなってるのも間違いない。


・・・まさか白石にそれを指摘されて気を遣われるとは・・・・焼きが回ったか? 


「気にしてないと言ったら嘘になるが・・・・戻す気はない・・・・・・。」


そうだ。戻す必要などない。
これから、それだけのことだ。


「これからもよろしくなーーー白石・・
「ーーーーうん!よろしくね泉君!」 


この時俺達は、一歩だがーーーー確かに前へ進めた。








白石がこの後篠崎兄妹合流のようなので、早々と帰ってから・・・・柊さんからのいじり攻撃が開始した。


「随分進展したんだね?」
「まぁ」
「何か心変わりするきっかけでもあったのかな?」
「さぁ」
「・・・・名前で呼ぶのは何時なのかな?」
「何時でしょうね?」 


こんな下らないやり取りは置いといて、本題に入る。


「新種の魔獣『パラサイト』は無事に倒しました。街全体を【鷹の眼・・・】で調べましたが、怪しい気配はありませんでした。」
「それはまたーーー大掛かりだね?」
「まあ相手相手だったので・・用心に越したことはないかと。多少心力を消費しましたが。」


昼の篠崎妹との一戦に体育館での魔獣戦。
そして、遠くからの遠距離戦・・・・。
使用した『心技』の大半が大技かつ上級技能が必要なものだ。
使った心力は膨大だな・・・・回復が早い・・・・・とはいえ、さすがにキツイな。
異能処理による集中処理も相当な使った・・・ちょっと眠い。


「・・・・随分異能使ったようだね・・・・大丈夫・・・か?」
「・・・問題ありません。」


気づかれたか・・・それもしょうがないか。
けど本当に問題ない。
この程度ならーーーーまだ大丈夫だ・・・・・・


・・・・それよりも
・・・・・・。


「どうかしたのかい?」
「いえ、実は学校で戦った魔獣は言葉が話せたんです。人間に取り憑いた影響だと思いますが・・。」
「それは珍しいね。」


魔獣の中には知能が高く人の言葉を理解するヤツもいるが、話すタイプとなると・・・・俺も一人・・知らない。
この時俺は、無意識のうちにアイツ・・・のことを人として・・・・数えていたことに気付いてなかった。




「最初の奇襲が失敗した時、ーーーーーアイツ、俺をこう呼んですよ。」


俺は思い出す。あの時、勝利を確信した俺は、油断して・・・相手の術中にハマった。
その時・・・・ヤツは俺に向かって呟いたんだ。
 

「『王殺し・・・・』と。」 


俺のその呟きに柊さんは目を見開き、ただ沈黙するばかりであった。


第3章 苦労人と球技大会 下 完。
第4章 苦労人と夏休み 上へ続く。 


おまけ
帰宅後


零「疲れた〜〜〜」(心力消費による反動で怠くなってる零) 
零「今日はもう疲れたし・・・寝るか?」(眠気が酷いので自身の部屋へ一直線に向かおうとする零)


葵「あ、兄さんお帰りなさい。」(風呂上がりパジャマ姿) 
零「ふっただいま葵よ。」(零のパラメーターーーマックスまで快復!!!!)  
葵「兄さんご飯にしますか?お風呂にしますか?それともーーー妹からのご褒美ですか?」(球技大会で頑張ったであろう兄を褒めたいと思う妹ーーーーあわよくば、イチャイチャしたいと願望も隠れている。) 


零「・・・・先に風呂に入ろうかな・・。」(一瞬揺らぎそうになった零であったが、ここで妹選択だとーーーいよいよアウトだと自重したのである。)
 

葵「そうですか・・。」(そうれはそうだろうな、とどこか残念そうにする。)
零「じゃ、じゃー風呂に入ってくる・・・。」(そのまま浴室へ。)


葵「ハァ・・荷物でも片付けますかーーーあれ?」(鞄の中を見ると見られない風呂敷と小さな入れ物が入っている。)
葵「なんでしょう?ん〜〜〜ーーーハッ!」(気になって風呂敷を解いてみると・・・・そこから大きな弁当箱が)




ガラ〜〜〜!


葵「おおおお〜〜お兄ちゃんっ!これはどういうこと!?」(風呂場に入り、二つの弁当箱を突きつける葵・・・・口調が幼児化している。) 
零「(葵さん!?ちょっーー待て!?前!前隠させてぇぇぇえ!」(・・・当然裸の零)    
葵「前なんてどうでもいいよ!その前にこの弁当箱!」(弁当箱を持ってない手で零を揺する葵)
零「ギャ〜〜〜〜!やめてぇぇぇぇぇぇ!」


・・・そ、その後口論になって葵がびしょ濡れになってスケスケハプニングとか、葵がヤケになって一緒に入ろうと脱ぎだすとか、一緒に寝ようとかーーーありますが省きます!
 

結局がその夜零は一睡もできず朝を迎えたのである・・・・隣で幸せに寝ている妹を見ながら(一緒に寝ました。) 

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