(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

信じる心

零視点


「「グァァァァァァ!?」」


鎌を掴んでいる手から出る黒炎に包まれる魔獣・・・絶叫からして相当堪えるようだ。
まあ当然か心力にしろ瘴気にしろ、コイツの動力源は間違いなくどちらかだ。
それが削られてるんだ。苦しまないわけがない。


この黒炎は対象の心力と瘴気をすべて燃やし尽くす技だ。
【黒夜】の『消失』対象に出来るのは瘴気と心力たった2つのみであるが、逆に言えば相手がチカラを持つ者である限りーーーー俺は負けない・・・・・・。 


カイチョウさんの心力を支配してるようだが、意味などない。
黒炎によって内部まで燃やし尽くし、魔獣の生きる空間を無くしていけばいい。
黒炎の出力を上げる・・・内部まで黒炎を浸透させるためだ。 
【黒夜】は対象に比例して消費する心力の量は変わる・・・現在は一度に放出する中の4割くらいの放出量だが・・・これで充分だろ。 


推定がBランクとは言ったが、それは寄生関係に対しての部分が大きい。
報告では戦闘レベルはCランクあると聞いたが、実際はそこまでないと戦闘介しての俺の感想である。
せいぜい、Dランク中位か?ヘタしたら下位かも知れない。
鎌や泡にも驚いたが、武器を使う魔獣は中にも居るし、奇妙な能力を使うのも居る・・・もっと厄介な能力を持ったヤツいた。 


他者に乗り移る寄生魔獣という部分では、確かに新種かも知れない。
消滅する寸前で寄生した対象から抜け出す事で、生き残ると言うのも確かに脅威である・・・が


それはーーーー相手が俺で・・無かったらの話だ。


黒炎で一気に燃やし尽くして、このまま終いにしてやるーーーー早くしないとリンが泣く。 
 

「「シューーー!!」」 
「・・・・?」  


周囲や体から泡が大量に放出して自分を包んでる黒炎にぶつけてる。
しかし、その程度では黒炎消えない。触れては割れ、触れては割れ、蒸発していく泡の集。
抵抗のつもりか?意味ねぇぞ?  


「「シューー!シューー!!シューー!!」」 


鎌を持つ手にも力が入り始めてる。体を揺すって激しく抵抗している。 
コイツ、俺の手を無理矢理引き剥がして、逃れようとしてる。


「・・・・。」 


まあ逃さないが。
【武闘】の出力を上げる俺。
掴んでる鎌の持ち手がギシギシ言ってる。
コイツの力も女性ロリの身体にしては強いが・・・それでも人間レベルだ。  
【武闘】で身体強化済みの俺の拘束から抜け出せるわけがない。


時間の問題だなと俺が呆れながら思っていると


「「シュゥゥゥゥゥゥウウウ!!」」


・・・クラ  
ーーーーーッ!?
ーーーバッ! 


「・・・・・。」
「「・・・・・。」」


何だ?今・・・意識が揺らいだ・・・・・・・?    
気絶しかけた・・・何故?接触に侵食はされてない筈だ。  
【黒炎煉鎧】を確認するが、突破された形跡はない。


「「クククッ!キサマハモウ、ワレノジュッチュウ二ハマッタ!」」 


高らかに言う魔獣・・・すると周囲から泡の数々が・・・。 


泡沫うたかた


大小異なる泡が浮いてる・・・先程より、泡の色が濃く見えるのは気のせいではない。


「・・・・・・。」


どうやら簡単には行かないようだと思った俺は。 
自身の警戒集中力を底上げして、敵の出方を伺う事にした。


「「シュー」」


プククククククッ! 
泡が動き出した。俺に向かって。  
大量の泡が俺の周囲を覆おとしている。
包囲するきか・・。


「・・・・。」
「「シュー!ニガサナイノハコチラノセリフダ!」」 


迫る泡を下がりながら避けるが、虹の空間はそれ程広くない。
すぐに背に壁が付いてしまったので、迎撃に移ることにした。


「・・・・・。」


一瞬、手に意識を集中して武器を生成するーーー黒弓だ。


「・・・・・。」 


シュシュッ!
矢を発現させると近づいて来た泡に向けて飛ばす。
ジュアアアア〜!  


「・・・・・。」


2矢ほど飛ばしたんだが・・・蒸発した。
・・・え、マジですか? 
先ほどは泡が蒸発したのに、今度は触れた瞬間、【黒夜】の方が蒸発してしまった。


「「シューシュー!」」  


なんか嬉しそうにシューシュー言ってる魔獣にムカつくが、これはちょっと予想外で驚いたな。
泡も少し減ったのが分かったが、その蒸発スピードよりも俺の矢・・【黒夜】が蒸発するのが早かった。
つまりこれはーーー。 


「俺の黒夜異能を上回ったと言うことか。」  
「「クククッ!サアドウスル?」」 


完全に調子に乗ってんな。
異能で周囲の泡を消してやりたいが・・・それは危険だ・・・・・・
泡の濃さが変わってから、俺の中に居る『死神・・』が泡に対して警戒を示している。
さっきの意識が飛びそうになった立ち眩み。奇妙な泡の集。思考を巡らせーーーー推測する。  


・・・・・なるほど、これは面倒だな。
泡に意識を集中したと思えば一瞬で、事態の深刻さを理解した俺は、続いてこれを打開しようと、次の手をすぐさま思考しているとーーーー。 


「「クククッ、イイコトヲオシエテヤロウカ?」」
「?」


何んだ? 
周囲の泡がどんどん増えて大きくなっていく。
一斉に襲うつもりか・・・。  


「「ワレハホカノワレトツナガッテイル、イシガツナガッテイル。」」


ベラベラ喋る魔獣は、俺が動けないと思ったのか自分に対する警戒を緩めてる。
その間に俺はたった今立てた策・・・・を実行する為、頭の中で異能処理操作の実行準備中であったがーーー。
次のヤツのセリフ・・・で止まってしまった。


「「イマキサマノナカマノヒトリ・・・オンナガイル・・・・・・」」 
「ーーーーー」
 

・・・白石。 




「「ズイブン、クセンヲシイテイルヨウダゾ?ドウスル?」」
「・・・・・。」
「「アチラノワレノニクタイハモロイ。ナラアノオンナノカラダヲ、アラタナカラダトスルノモワルクナイ。」」
「・・・・・。」
「「シュシュー!アンシンシロ。キサマノカラダモコノワレガイタダク。オンナトアワセテヤ」」
だまれ。」   


最大・・の【異圧】で黙らす俺。 
・・・・聞くに堪えん言葉だ。黙らすのに手加減など不要。


「「ッ!?」」
「それ以上・・・口を開かなくていい。」 


・・・・異能処理操作ーーー完了。 
心力ーーー増大・・・・放出ーーー最大出力・・・・。 


「「シュー!?」」


ーーーー膨れ上がった俺の心力にビビったのか・・・後方に下がる魔獣。
そんな魔獣のことなど無視して俺は聞く。


「さっきからずっと何を言っている?貴様一体何を口にしている?」


ーーーーしかし、その行動に意味などない。可能性などない。
俺は問う。先ほど魔獣が語った言葉について。


「白石の体を奪う?俺の体を奪う?」


ーーーーさっきからずっと言っているだろ?お前の知能は白石以下か?  
恐怖あまりか、声が出せなくなっている魔獣。


「貴様一体ーーーー何を言っているんだ?」


ーーーー逃さないと言った筈だ。動揺など意味がないんだ。  
恐怖で歪む魔獣に対して再度質問する俺であったが、


白石アイツは負けん。」


ヤツが答える前に俺は言う。
ーーーー【異能術式カードアンサー】・・・起動。 


「俺が鍛えたから言ってるわけでない。・・・ただ確信している。アイツは勝つ。」


俺は鍛えてきた白石のことを思い出しながら、魔獣に言う。 
ーーーー【異能術式カードアンサー】・・・起動。 


「俺の協力者。これから共に戦う相棒。」


2つの術式の準備を完了した俺は、恐怖で戸惑うばかりの魔獣に、ここで初めて大きな笑みを浮かべて言い返してやる事にした。 




俺が認めた白石・・・・・・・この程度のヤツ・・・・・・・如き・・に負けはしない。」


まだ、どこか信用出来ない部分は確かにある。
背中を預けるには、まだまだ未熟過ぎる。


それでも・・・俺は俺の非道な言葉を聞いても、俺から離れなかったアイツを・・白石の気持ちをーーーー信じてみよう・・・・・・と思った。


「そしてーーーーこの俺もな・・・・・


曖昧な気持ちかも知れないが・・・今はこれくらいで勘弁してほしいが・・・それでもーーーー俺は負けない。  
アイツが頑張ってんのに俺が、この程度で苦戦する訳にはーーーーいかないからな! 


「【黒炎天空こくえんてんくう】」      


俺のそう称えると虹の空間の真上から、雲のような形をした黒炎が出現した。


「「シュ!?コ、コレハ!?」」
まだだ・・・ーーー【黒炎大地こくえんだいち】」 


俺が立つ下から黒炎が渦のように噴き出して、周囲の泡を呑み込んでいく。
異能術式カードアンサー】によって出現した。2つの巨大な黒炎。


「「シュ!?シュー!!」」 


逃げようとしたが、遅過ぎる。
上空に設置している黒炎の雲がヤツを逃さない様に黒炎を飛ばして、動きを制限する。


下に設置している黒炎も同じだ。
周りにある泡を呑み込みながら、魔獣が逃げないように、渦を広げ、逃げ場を無くしていく。




もやは手加減などする必要などない。コイツは俺を怒らせたーーーならば、最大限・・・異能チカラで礼を尽くすのみだ。


ガス・・だな?お前の泡の正体は。」


最後の抵抗で鎌で飛んでくる黒炎を斬り伏せている魔獣。
俺はどうでもいい仕草で語る。あの泡の正体を。


「黒夜に触れて蒸発した瞬間、気体となって空気中にばら撒く事で、俺に気付かせずに倒そうと考えたみたいだが・・・」


匂いがなかった所為で気付くに遅れてしまった俺は、さっきの交戦で割れて気体となったガスを吸ってしまい、意識を失い掛けた。 
けど、それも、もう意味をなさい。 


「ちょっと遅かったが・・対策済んだ。泡のガスはもう効かない。」


【武闘】で体内の心力を活性化させて、ガスに対する耐性をつけた。
対象時間が掛かりそうになったが、コイツがベラベラ喋ってくれたおかげで、それ程問題なく済んだ。
さらに黒炎を呑み込むように包み燃やす事で気体なるのを防ぐことが出来るーーーーもう泡沫は攻略した・・・・


「上空からは黒炎の浮雲。下からも黒炎の渦潮。」    


状況を教えているのは親切だからでない。
単純に知らしめてるだけだ。


おまえはもうーーー生き残れない・・・・・・という現実を。  




アウトだ・・・・ーーー【術式融合カードフュージョン】起動 
裁きの炎に包まれよ【ー終炎しゅうえん黒炎拝火ゾロアスター】」  




上と下から黒炎が合わさり、巨大な黒炎の球体となる。
鎌も泡も障害にすらならない。一瞬で包まれた魔獣。 


抵抗などする暇もなく黒炎の中でーーーーーその魂を散らしたのであった。 


どうしよう?へ続く。


おまけ
お正月


葵「混んでますね兄さん。」


零「あぁ、離れるなよ?」
葵「は、ハイ♪」ギュ!


零「ふふっ、まだまだ甘えん坊だな。(キャ〜〜〜〜!妹からお手手を繋いでくれた!)」
葵「良いんですよ〜!離れると大変ですから〜」ぎゅ〜〜〜!


零「ふっ、しょうがない妹だ。(あ〜〜〜〜!?妹が!葵様が俺の!俺の腕にィィィィ!?)」


葵「こうすれば、離れる事はありませんから・・・・仕方なくですから・・!」
零「しっかり掴まってろよ?(や、柔らかい!い、いつのまにここまで!?お兄ちゃんビックリです!妹が知らない間に色々と成長してるなんて!)」 


葵「〜〜〜♪」
零「(アアアア〜〜♪新年早々幸せ♪これはきっと、俺の妹への想いに共感した神様からの、ご褒美に違いない!)」
由香「随分嬉しそうだね?零くん?」






零「・・・・・(神様・・・俺への天罰ですか修羅場コレは?アナタを信じた結果がコレなんですか!?)。」   


葵「・・・由香さん」メラメラ!
由香「・・・葵ちゃん」メラメラ! 


零「(あ、なんか背後に炎が視える・・・。)」


この後、葵と由香に両端から引っ張られ、両腕からの感触とか2人の吐息とかでドギマギする零であった。  


 武「・・・うん。やっぱりオレは無視されるのか(涙目)」


今年もやはり無視される武であった。

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