(旧)こっそり守る苦労人
卓球戦 中編
零は悩んでいた・・・ 
「予想はしてたけど・・・全然ダメだな。沙耶さんが」
「うう・・予想してたんだ」 
現在休憩時間に入っている零たちは・・・・絶賛反省中であったーーー言わずもだが沙耶についてだ    
「このままだとマズイ」 
別に試合を全て勝利すれば問題は無いが・・・・だが総合評価だと少しマズイのである。
全チームと戦うわけでは無い。各ブロック毎で5試合を行われる、そして一番勝ち個数が多いチームの優勝なんだ。
ただ勝つだけじゃダメだ。3勝ずつ勝たないと、総合評価で負ける可能性が高い。
「次の試合からは、3勝ずつしないと・・・・出来ればの話だが」 
「うッ!」
「零っち」 
零の言い方に嗜める莉緒 
「そうだな・・悪い沙耶さん」 
少し意地の悪だったと反省する零 
「ううん、ゼロ君の言う通りだし・・・足引っ張ってるね」
「・・・・。」 
落ち込む沙耶とジト目で零を睨む莉緒・・・・2人の反応にさすがにやり過ぎたと反省してしまう零
「あー・・・そこまで悲観するな沙耶さん」
すかさずフォローに入る 
「総合優勝は難しいかも知れないがーーー部活会と風紀委員会にギャフンと言わす手はあるぞ?」
「ほ、ホント!?」
沙耶にとっては思い掛けない内容である・・・が 
「・・・・・・・やっぱ知らないのか・・ハァ」
驚く沙耶を見て、呆れ声を出しため息を吐く零 
「な、何そのため息は〜〜!」
そんな反応をする零に憤慨する沙耶であるが 
「いやだってよ〜、なあ莉緒?」
「そっすね〜〜〜?さすがにこれは擁護できないっすね。沙耶っちセンパイ」
「莉緒ちゃんまで!?」
莉緒までもが零に賛同しているという現実に、少なからずショックを受ける沙耶      
しかしこれは仕方ないのである・・・何故なら 
「沙耶っちセンパイ」 
零に引き継ぎ莉緒が沙耶に説明する。
「トーナメント表ーーーちゃんと見たっすか?」
「え・・・・あ!」
思い出したかのように思考顏から驚愕顏へ一瞬で切り替わる沙耶
「次ーーー部活会とだ!」
「やっと思い出したか」
「あははは」 
呆れてしまう零と乾いた笑い声を出す莉緒・・・本当に忘れてた沙耶を信じられない目で見ている。
「部活会だけじゃないーーーその2試合後は風紀委員会と試合を行うぞ?」
「うッ・・・わ、忘れてました」
「ついさっき見たっすよね・・・すごい記憶力っす」 
それは凄いのか?と零は疑問を覚えるが 
「まあそれはいいーーーつまりだな沙耶さん、俺たちが言いたい事が分かるな?」
零が促すと沙耶は頷き零の言いたい事を答える。
「次の試合で部活会を、4試合目で風紀委員会をーーーーどっちも倒して勝利を収めるんだね?」
「そうだ。」
総合優勝は難しいが、実際に対戦して勝ってしまえば、後はそれ程、問題視してない零である。
沙耶の性格を考えれば、仮に総合優勝で勝ったとしても、実際に目星のチームと試合が出来なければ・・・後々面倒になると零は考えた。 
だから、それを回避する為のーーー救済措置とでも言った方が正しいか  
 
「総合優勝を諦めろとは言わないが・・・今はあの2チームを倒す事だけを考えないか?」
「あっしもそう思うっす。沙耶っちセンパイ、次が勝負どころっすよ!」
莉緒も零に賛同して気合が入ってるようだ。
「・・・うん、分かった・・・わたし、がんばる!」
「その意気だ沙耶さん!」
「勝ってギャフンと言わせるっす!」
ここに来て初めてーーー3人の意思が統一されたのであるが・・・当の3人は知らない。
『それでは、第2試合を始めたいと思います!各チームは、移動して集まり次第、試合を始めてください!』
実行委員の声に周囲の人達が動き出す。
当然、零が入っている、チーム生徒会も移動を開始した。
「さあ行くよ2人とも」
「ハイっす」
「あぁ」
さすがに今回は、先ほどのように沙耶をイジメようとは考えていない零・・・・また拗ねられても困るからというのは内緒だが   
そして、特に問題もなく、対戦場所の卓球台に到着した零たち 
「居るっすね。零っち」
「あぁ・・・面倒くさそうだ」
少し面倒になると分かり、嫌そうな顔をする零・・・そんな彼に
「そんなリアクションは、ねぇーだろう?零」
対戦チームである部活会・・・そのメンバーの一人に零がよく知る男がいたのである。
さっきまで教室で騒いでいた奴であり、午前の部で、零と一緒にクラスの勝利へ貢献した男ーーー1年男子の中でもトップクラスの実力者・・・武だ。 
「なあ武」 
「おう」
「八百長は駄目ぞ?」
「やってねーよ!?」 
ないとんでもない事言ってんの!?みたいなノリで否定する武 
何時ものやり取りではあるが、今回は一味違う。
何故なら零の隣には莉緒が居るから 
「石井・・・クズっす」
「グハっ!」 
吐血でもしたかのように変な苦悶の表情を浮かべ、崩れ落ちる。 
「・・・零はともかく藤咲に言われると心が傷つく・・」 
「俺は”ともかく”って何だ?」
武の妙な言い回しに対して睨む零・・・・それより   
「というか莉緒?随分辛辣だな?」
あのいつも笑顔で人と接している莉緒が武に強いあたりをすることに不審に思う零   
「当然っす」
酷くサッパリした口調で答える莉緒・・・・目が鋭くなってる。  
(珍しいな、コイツがここまで、他人に対して敵意を向けるなんて) 
なにやら、目つきが険しくなってる莉緒・・・零もビックリしている。
しかし、ふと頭に引っ掛かりを覚える。 
(・・・ん?なにか大事な事を忘れてる気が?)
過去に武と莉緒に因縁のようなのがあったか?と頭を捻っているが・・・思い出せない。
  
「オレ・・・おまえに何かしたか?」
武の方も全く身に覚えないのか、さっきから戸惑うばかりである。 
「”何か?”、これは驚いたっすね・・・まさか忘れてしまったっすか・・・零っち」  
「お、おう?」 
何故急に自分に?と零は疑問を浮かべるが、一応聞いてみる。 
「ウチと初めて会った日の事ーーー覚えてるっすよね?」 
「え、そりゃさっき」
”午前中に話した時のだろ?”と言おうとした瞬間、声が出せなくなった零
(お〜〜〜〜!?思いだしたぁぁぁぁぁぁぁ!!)
あまりの衝撃に普段見せないほどの狼狽振りの零に武も驚き、自分が一体何を忘れてるのか・・思い出すのが恐ろしくなってきたのである。 
(アレだっ!あの時だ!)
「れ、零?」
「・・・武ーーー入学した時を思い出せ」
「・・・・・・ッ!gはろhがふれglうぇkッ!」
「落ち着け、何語だソレは」  
驚き過ぎで人語を話せなくなった武に冷静にツッコむ零 
「驚いたのこっちっすよーーーーまさか入学していきなり覗かれるなんて思わなかったっすもん」
そう。以前から話にはあったが、今から3ヶ月ほど前・・・つまり、入学してすぐ零の目の前にいる武と午前に試合した久保が女子更衣室を覗いたという事件である。
当時を思い出し、冷たい目になる莉緒・・・・相当ショッキングだったようだ。
「あ、はははは(汗)・・・・その節は大変な失礼しました」
完全にozu状態になってしまった武・・・・これは零も弁護のしようがない。 
(アレは入学当初に行われた健康診断の時だ。この武と久保が1年女子が着替えている3階の女子更衣室に・・・あろう事か屋上から持参したロープを使って、降り窓から覗こうとしたんだ・・・失敗したが)    
武と久保の覗きは失敗に終わったが、その時にちょうど着替えていたのが・・・莉緒である。 
(当時の莉緒はすっげーショックを受けてて、俺があいつらの代わりに謝罪しに行っても、ずっと俯いたまんまだったもんな)
その時の事を思い出し、少し懐かしむ零であるが今は
「莉緒、覗かれそうになったお前に言っても無駄かも知れないが・・・今は」 
零の言いたいことが察してた顔で・・・  
「分かってるっす。今は試合ーーーっすね!?」
ゲシゲシッ  
「痛い痛い!拗ね蹴らないでくれ!全然分かってない!?」   
武が制止するも、止まらない莉緒・・・・その光景に微笑む零
「あぁ、試合後なら幾らでもコイツを罵倒していいし、ボコボコしていいから・・・今は我慢してくれ」
「うっす」
そこまで聞くと攻撃をやめる莉緒・・・残念そうだ
 
「なぁ零、おまえはオレをフォローしてるのか?それとも糾弾したいのか?」
悲しげに尋ねる武に零は微笑んだまま 
「俺はただお前が莉緒の罵倒によって心を軽く折れてくれたらいいなぁ♪とかしか考えてないんだ!」
「分かった。やっぱりお前は敵だ!」  
”親友という名の悪魔だ!”と武は心の中で叫ぶ。
「おいおい〜親友にむかって何っ「こんな時に限って親友とか言うなぁ!」」
なんでもなさそうに言う零に憤慨して、怒鳴る武 
・・・・・。
・・・・・。 
「それより武」
いつも通り、話を逸らす零に怒りを通り越して呆れてしまう武 
「それよりって・・・ああ、なんだ?」
「メンバー・・・足りなくね?」
零の視界には、武以外に先輩らしき女子生徒が一人いるだけであり、人数的にはあと一人足りないである。  
「あぁ、会長がまだ来てないんだ」
「カイチョウ?お前のところに怪鳥なんていたのか?」
零の頭の中で馬鹿デカイ鳥を想像したが 
「オレの部活会に何処かの山のヌシとか住んでないから、会長だよ。会・長!」 
字違いかと零は納得するが
「それこそいないと思うが」
「怪鳥よりかはいると思うけど・・・ウチのところの委員長だよ。あの人自分を『会長』もしくは『総帥』と呼べって煩いんだよ。」
理由を聞いた零は一瞬思考したあとに真顔で武に
「何処かのボスキャラにでもなりたいのか?」
”この近くにダンジョンなんて無いぞ?”と言いたくなる零であった。
ついでに
(まあ地下ならあるが)
昨日利用していた喫茶店の地下にある訓練場を想像して、苦笑する・・・今度また利用して佳奈を虐める?予定だから 
「生徒会の会長と張り合ってるだけだって、会長妙に生徒会、というか小森会長の事を意識してる節があるから」
「・・・・同族嫌悪?」
「それ絶対本人たちには言うなよ。面倒になる。」
「言われんでも分かってる」 
”そんなミスなんかするか!”と続けて言おうとするが 
「おまえ・・・・ときどき、無自覚で爆弾発言するから・・・不安なんだよ」
「・・・・。」
全てを否定し切れない・・・ついさっきも自分の発言でとんでもない事なったからと、無言なってしまう零  
「ま、まあ・・・極力気をつける」
そう言うしかなかった零である・・・・どんどん嫌な予感が強まる武であった。 
そうしていると武の隣にいる女子が近づいて来た。
「ん?・・・ども?」 
「(コク)・・・話すの・・・初めて」
「・・・はい」
ジーとした目で零を見てくるので困惑する零
そんな零を見て武が代わりに答える。
「あ〜この人は2年の土宮先輩で部活会の副委員長を務めてる。」
「和人さんと同じか」
「あぁ女子の中でも、トップクラスの実力だぜ?噂じゃあの風紀委員の姫将軍どころか、和人先輩に匹敵する実力があるとか」
「何故不明確なんだ?」
零が疑問を聞いてみると武は頰を掻き言い難そうにする。
「あ〜・・滅多に本気を出さないんだよ。この人」 
どうやら、面倒くさがり屋のようだと零は解釈したが  
「今回は・・・本気」
当の本人はやる気満々だと否定してくる・・・・声は何処までも平坦であるが 
「あなたに・・・興味・・・ある」
「俺にですか?」
コクリと頷く土宮・・・気のせいか目に力が入ってる気がする零 
「出来れば・・・・あなたと・・・対戦したい」 
「・・・・・。」
一体どうしてここまで興味を持たれているのか・・・零は不思議であった。 
「おお!あの無口な土宮先輩がーーースゲーお喋りに!」
「これで!?」 
「この人、殆ど喋らないんだよ。喋る時なんて、返事の時ぐらいだ・・・それでも頷くだけの場合が多い」
「・・・・。」
相当の事なのだと零は改めて思った。
「来ねぇぞ!?大丈夫なのか!?」
既に3分が経った早くしないと部活会の失格になる。
「いや、そんなあの会長が!」 
「道に・・・迷った?」
焦る武と無口の先輩女子・・・心なしか焦ってる?
 
残り時間1分を切ったところで 
「零っち、アッチっす」
最初に気づいたのは莉緒である。
彼女の指差す先に・・・ 一人の女子がこちらに近づいている。
「ん?」 
「おぉ来たみたいだ。」
安心した武の声が隣から聞こえる零・・・微かな舌打ちが 
「零っち」
「零」
「気のせいだ。」
疑いの目する二人に素知らぬ顔で否定する。 
そんな二人を無視して零はこちらに来る女子に視線を移す。
「アレが部活会の・・」 
背は美希と同じくらいか少し小さい。
黒髪は首の部分くらいまでしかない短髪
全体的にスレンダー・・・と言えばフォローになるか?と零は考えるが・・・・身体的特徴について触れないことにする。  
「ん?」
彼女を見ていると何処かの違和感を感じる零・・・違和感と言うか
「ーーーー!?」 
異質な・・・何か 
(ま、まさか) 
恐ろしい可能性へ思考が回る零だがーーーーー既に遅い。
「「フフフフッマタセタカ?・・・・デス?」」 
胸を張らし、零たちに聞こえるように高らかに言う彼女・・・偉そうに  
「・・・・・。」 
声が二重になってるとか片言になってるとか語尾がデスとかツッコミたいこと沢山あるが・・・・その前に
「ニンゲンドモ・・・サァ!ハジメヨウデハナイカ!・・・デス!」」
「な、」
(なんかとり憑いとるぅぅぅぅぅぅぅ!?) 
波乱の予感? 
卓球戦 後編へ続く。
おまけ
榊凛と篠崎江梨の戦いの時の疑問?
 零「?・・・何かあったか?」
佳奈「ねえ泉君、凛ちゃんが使った異能って・・・水よね?」
零「あぁ、水関連に干渉する事が出来る異能ーー【水態】だ」
佳奈「あの時さ、雨降らしてたよね?」
零「雨の遮蔽か?・・それがどうした?」
佳奈「いや、私は江梨ちゃんの炎の檻のせいで、雨を受けなかったけど」
零「・・・?、だから?」
佳奈「凛ちゃんと江梨ちゃん・・・・濡れなかったのかな〜?て」
零「・・・・・・。」
佳奈「何で黙り込むの?」
零「まあ・・・・あの時はそれどころじゃなかったし・・・考えるべき事じゃないと思ったからであって「見たの」・・・・・リンと江梨でした。」
佳奈「今度二人にあったらーーーーちゃんと謝ろうね」 
零「は、はい(おかしいよ!雨降らしたのリンなのに!何で俺が!?)」
佳奈「眼を逸らすという努力をしなかったから」バッサリ 
零「おっしゃる通りで」ガクっ  
今度凛と江梨にあった大変な事になりそうだな、と零はこの時思った・・・・やっぱ眼は逸らすのが紳士だよ? 
 
    
「予想はしてたけど・・・全然ダメだな。沙耶さんが」
「うう・・予想してたんだ」 
現在休憩時間に入っている零たちは・・・・絶賛反省中であったーーー言わずもだが沙耶についてだ    
「このままだとマズイ」 
別に試合を全て勝利すれば問題は無いが・・・・だが総合評価だと少しマズイのである。
全チームと戦うわけでは無い。各ブロック毎で5試合を行われる、そして一番勝ち個数が多いチームの優勝なんだ。
ただ勝つだけじゃダメだ。3勝ずつ勝たないと、総合評価で負ける可能性が高い。
「次の試合からは、3勝ずつしないと・・・・出来ればの話だが」 
「うッ!」
「零っち」 
零の言い方に嗜める莉緒 
「そうだな・・悪い沙耶さん」 
少し意地の悪だったと反省する零 
「ううん、ゼロ君の言う通りだし・・・足引っ張ってるね」
「・・・・。」 
落ち込む沙耶とジト目で零を睨む莉緒・・・・2人の反応にさすがにやり過ぎたと反省してしまう零
「あー・・・そこまで悲観するな沙耶さん」
すかさずフォローに入る 
「総合優勝は難しいかも知れないがーーー部活会と風紀委員会にギャフンと言わす手はあるぞ?」
「ほ、ホント!?」
沙耶にとっては思い掛けない内容である・・・が 
「・・・・・・・やっぱ知らないのか・・ハァ」
驚く沙耶を見て、呆れ声を出しため息を吐く零 
「な、何そのため息は〜〜!」
そんな反応をする零に憤慨する沙耶であるが 
「いやだってよ〜、なあ莉緒?」
「そっすね〜〜〜?さすがにこれは擁護できないっすね。沙耶っちセンパイ」
「莉緒ちゃんまで!?」
莉緒までもが零に賛同しているという現実に、少なからずショックを受ける沙耶      
しかしこれは仕方ないのである・・・何故なら 
「沙耶っちセンパイ」 
零に引き継ぎ莉緒が沙耶に説明する。
「トーナメント表ーーーちゃんと見たっすか?」
「え・・・・あ!」
思い出したかのように思考顏から驚愕顏へ一瞬で切り替わる沙耶
「次ーーー部活会とだ!」
「やっと思い出したか」
「あははは」 
呆れてしまう零と乾いた笑い声を出す莉緒・・・本当に忘れてた沙耶を信じられない目で見ている。
「部活会だけじゃないーーーその2試合後は風紀委員会と試合を行うぞ?」
「うッ・・・わ、忘れてました」
「ついさっき見たっすよね・・・すごい記憶力っす」 
それは凄いのか?と零は疑問を覚えるが 
「まあそれはいいーーーつまりだな沙耶さん、俺たちが言いたい事が分かるな?」
零が促すと沙耶は頷き零の言いたい事を答える。
「次の試合で部活会を、4試合目で風紀委員会をーーーーどっちも倒して勝利を収めるんだね?」
「そうだ。」
総合優勝は難しいが、実際に対戦して勝ってしまえば、後はそれ程、問題視してない零である。
沙耶の性格を考えれば、仮に総合優勝で勝ったとしても、実際に目星のチームと試合が出来なければ・・・後々面倒になると零は考えた。 
だから、それを回避する為のーーー救済措置とでも言った方が正しいか  
 
「総合優勝を諦めろとは言わないが・・・今はあの2チームを倒す事だけを考えないか?」
「あっしもそう思うっす。沙耶っちセンパイ、次が勝負どころっすよ!」
莉緒も零に賛同して気合が入ってるようだ。
「・・・うん、分かった・・・わたし、がんばる!」
「その意気だ沙耶さん!」
「勝ってギャフンと言わせるっす!」
ここに来て初めてーーー3人の意思が統一されたのであるが・・・当の3人は知らない。
『それでは、第2試合を始めたいと思います!各チームは、移動して集まり次第、試合を始めてください!』
実行委員の声に周囲の人達が動き出す。
当然、零が入っている、チーム生徒会も移動を開始した。
「さあ行くよ2人とも」
「ハイっす」
「あぁ」
さすがに今回は、先ほどのように沙耶をイジメようとは考えていない零・・・・また拗ねられても困るからというのは内緒だが   
そして、特に問題もなく、対戦場所の卓球台に到着した零たち 
「居るっすね。零っち」
「あぁ・・・面倒くさそうだ」
少し面倒になると分かり、嫌そうな顔をする零・・・そんな彼に
「そんなリアクションは、ねぇーだろう?零」
対戦チームである部活会・・・そのメンバーの一人に零がよく知る男がいたのである。
さっきまで教室で騒いでいた奴であり、午前の部で、零と一緒にクラスの勝利へ貢献した男ーーー1年男子の中でもトップクラスの実力者・・・武だ。 
「なあ武」 
「おう」
「八百長は駄目ぞ?」
「やってねーよ!?」 
ないとんでもない事言ってんの!?みたいなノリで否定する武 
何時ものやり取りではあるが、今回は一味違う。
何故なら零の隣には莉緒が居るから 
「石井・・・クズっす」
「グハっ!」 
吐血でもしたかのように変な苦悶の表情を浮かべ、崩れ落ちる。 
「・・・零はともかく藤咲に言われると心が傷つく・・」 
「俺は”ともかく”って何だ?」
武の妙な言い回しに対して睨む零・・・・それより   
「というか莉緒?随分辛辣だな?」
あのいつも笑顔で人と接している莉緒が武に強いあたりをすることに不審に思う零   
「当然っす」
酷くサッパリした口調で答える莉緒・・・・目が鋭くなってる。  
(珍しいな、コイツがここまで、他人に対して敵意を向けるなんて) 
なにやら、目つきが険しくなってる莉緒・・・零もビックリしている。
しかし、ふと頭に引っ掛かりを覚える。 
(・・・ん?なにか大事な事を忘れてる気が?)
過去に武と莉緒に因縁のようなのがあったか?と頭を捻っているが・・・思い出せない。
  
「オレ・・・おまえに何かしたか?」
武の方も全く身に覚えないのか、さっきから戸惑うばかりである。 
「”何か?”、これは驚いたっすね・・・まさか忘れてしまったっすか・・・零っち」  
「お、おう?」 
何故急に自分に?と零は疑問を浮かべるが、一応聞いてみる。 
「ウチと初めて会った日の事ーーー覚えてるっすよね?」 
「え、そりゃさっき」
”午前中に話した時のだろ?”と言おうとした瞬間、声が出せなくなった零
(お〜〜〜〜!?思いだしたぁぁぁぁぁぁぁ!!)
あまりの衝撃に普段見せないほどの狼狽振りの零に武も驚き、自分が一体何を忘れてるのか・・思い出すのが恐ろしくなってきたのである。 
(アレだっ!あの時だ!)
「れ、零?」
「・・・武ーーー入学した時を思い出せ」
「・・・・・・ッ!gはろhがふれglうぇkッ!」
「落ち着け、何語だソレは」  
驚き過ぎで人語を話せなくなった武に冷静にツッコむ零 
「驚いたのこっちっすよーーーーまさか入学していきなり覗かれるなんて思わなかったっすもん」
そう。以前から話にはあったが、今から3ヶ月ほど前・・・つまり、入学してすぐ零の目の前にいる武と午前に試合した久保が女子更衣室を覗いたという事件である。
当時を思い出し、冷たい目になる莉緒・・・・相当ショッキングだったようだ。
「あ、はははは(汗)・・・・その節は大変な失礼しました」
完全にozu状態になってしまった武・・・・これは零も弁護のしようがない。 
(アレは入学当初に行われた健康診断の時だ。この武と久保が1年女子が着替えている3階の女子更衣室に・・・あろう事か屋上から持参したロープを使って、降り窓から覗こうとしたんだ・・・失敗したが)    
武と久保の覗きは失敗に終わったが、その時にちょうど着替えていたのが・・・莉緒である。 
(当時の莉緒はすっげーショックを受けてて、俺があいつらの代わりに謝罪しに行っても、ずっと俯いたまんまだったもんな)
その時の事を思い出し、少し懐かしむ零であるが今は
「莉緒、覗かれそうになったお前に言っても無駄かも知れないが・・・今は」 
零の言いたいことが察してた顔で・・・  
「分かってるっす。今は試合ーーーっすね!?」
ゲシゲシッ  
「痛い痛い!拗ね蹴らないでくれ!全然分かってない!?」   
武が制止するも、止まらない莉緒・・・・その光景に微笑む零
「あぁ、試合後なら幾らでもコイツを罵倒していいし、ボコボコしていいから・・・今は我慢してくれ」
「うっす」
そこまで聞くと攻撃をやめる莉緒・・・残念そうだ
 
「なぁ零、おまえはオレをフォローしてるのか?それとも糾弾したいのか?」
悲しげに尋ねる武に零は微笑んだまま 
「俺はただお前が莉緒の罵倒によって心を軽く折れてくれたらいいなぁ♪とかしか考えてないんだ!」
「分かった。やっぱりお前は敵だ!」  
”親友という名の悪魔だ!”と武は心の中で叫ぶ。
「おいおい〜親友にむかって何っ「こんな時に限って親友とか言うなぁ!」」
なんでもなさそうに言う零に憤慨して、怒鳴る武 
・・・・・。
・・・・・。 
「それより武」
いつも通り、話を逸らす零に怒りを通り越して呆れてしまう武 
「それよりって・・・ああ、なんだ?」
「メンバー・・・足りなくね?」
零の視界には、武以外に先輩らしき女子生徒が一人いるだけであり、人数的にはあと一人足りないである。  
「あぁ、会長がまだ来てないんだ」
「カイチョウ?お前のところに怪鳥なんていたのか?」
零の頭の中で馬鹿デカイ鳥を想像したが 
「オレの部活会に何処かの山のヌシとか住んでないから、会長だよ。会・長!」 
字違いかと零は納得するが
「それこそいないと思うが」
「怪鳥よりかはいると思うけど・・・ウチのところの委員長だよ。あの人自分を『会長』もしくは『総帥』と呼べって煩いんだよ。」
理由を聞いた零は一瞬思考したあとに真顔で武に
「何処かのボスキャラにでもなりたいのか?」
”この近くにダンジョンなんて無いぞ?”と言いたくなる零であった。
ついでに
(まあ地下ならあるが)
昨日利用していた喫茶店の地下にある訓練場を想像して、苦笑する・・・今度また利用して佳奈を虐める?予定だから 
「生徒会の会長と張り合ってるだけだって、会長妙に生徒会、というか小森会長の事を意識してる節があるから」
「・・・・同族嫌悪?」
「それ絶対本人たちには言うなよ。面倒になる。」
「言われんでも分かってる」 
”そんなミスなんかするか!”と続けて言おうとするが 
「おまえ・・・・ときどき、無自覚で爆弾発言するから・・・不安なんだよ」
「・・・・。」
全てを否定し切れない・・・ついさっきも自分の発言でとんでもない事なったからと、無言なってしまう零  
「ま、まあ・・・極力気をつける」
そう言うしかなかった零である・・・・どんどん嫌な予感が強まる武であった。 
そうしていると武の隣にいる女子が近づいて来た。
「ん?・・・ども?」 
「(コク)・・・話すの・・・初めて」
「・・・はい」
ジーとした目で零を見てくるので困惑する零
そんな零を見て武が代わりに答える。
「あ〜この人は2年の土宮先輩で部活会の副委員長を務めてる。」
「和人さんと同じか」
「あぁ女子の中でも、トップクラスの実力だぜ?噂じゃあの風紀委員の姫将軍どころか、和人先輩に匹敵する実力があるとか」
「何故不明確なんだ?」
零が疑問を聞いてみると武は頰を掻き言い難そうにする。
「あ〜・・滅多に本気を出さないんだよ。この人」 
どうやら、面倒くさがり屋のようだと零は解釈したが  
「今回は・・・本気」
当の本人はやる気満々だと否定してくる・・・・声は何処までも平坦であるが 
「あなたに・・・興味・・・ある」
「俺にですか?」
コクリと頷く土宮・・・気のせいか目に力が入ってる気がする零 
「出来れば・・・・あなたと・・・対戦したい」 
「・・・・・。」
一体どうしてここまで興味を持たれているのか・・・零は不思議であった。 
「おお!あの無口な土宮先輩がーーースゲーお喋りに!」
「これで!?」 
「この人、殆ど喋らないんだよ。喋る時なんて、返事の時ぐらいだ・・・それでも頷くだけの場合が多い」
「・・・・。」
相当の事なのだと零は改めて思った。
「来ねぇぞ!?大丈夫なのか!?」
既に3分が経った早くしないと部活会の失格になる。
「いや、そんなあの会長が!」 
「道に・・・迷った?」
焦る武と無口の先輩女子・・・心なしか焦ってる?
 
残り時間1分を切ったところで 
「零っち、アッチっす」
最初に気づいたのは莉緒である。
彼女の指差す先に・・・ 一人の女子がこちらに近づいている。
「ん?」 
「おぉ来たみたいだ。」
安心した武の声が隣から聞こえる零・・・微かな舌打ちが 
「零っち」
「零」
「気のせいだ。」
疑いの目する二人に素知らぬ顔で否定する。 
そんな二人を無視して零はこちらに来る女子に視線を移す。
「アレが部活会の・・」 
背は美希と同じくらいか少し小さい。
黒髪は首の部分くらいまでしかない短髪
全体的にスレンダー・・・と言えばフォローになるか?と零は考えるが・・・・身体的特徴について触れないことにする。  
「ん?」
彼女を見ていると何処かの違和感を感じる零・・・違和感と言うか
「ーーーー!?」 
異質な・・・何か 
(ま、まさか) 
恐ろしい可能性へ思考が回る零だがーーーーー既に遅い。
「「フフフフッマタセタカ?・・・・デス?」」 
胸を張らし、零たちに聞こえるように高らかに言う彼女・・・偉そうに  
「・・・・・。」 
声が二重になってるとか片言になってるとか語尾がデスとかツッコミたいこと沢山あるが・・・・その前に
「ニンゲンドモ・・・サァ!ハジメヨウデハナイカ!・・・デス!」」
「な、」
(なんかとり憑いとるぅぅぅぅぅぅぅ!?) 
波乱の予感? 
卓球戦 後編へ続く。
おまけ
榊凛と篠崎江梨の戦いの時の疑問?
 零「?・・・何かあったか?」
佳奈「ねえ泉君、凛ちゃんが使った異能って・・・水よね?」
零「あぁ、水関連に干渉する事が出来る異能ーー【水態】だ」
佳奈「あの時さ、雨降らしてたよね?」
零「雨の遮蔽か?・・それがどうした?」
佳奈「いや、私は江梨ちゃんの炎の檻のせいで、雨を受けなかったけど」
零「・・・?、だから?」
佳奈「凛ちゃんと江梨ちゃん・・・・濡れなかったのかな〜?て」
零「・・・・・・。」
佳奈「何で黙り込むの?」
零「まあ・・・・あの時はそれどころじゃなかったし・・・考えるべき事じゃないと思ったからであって「見たの」・・・・・リンと江梨でした。」
佳奈「今度二人にあったらーーーーちゃんと謝ろうね」 
零「は、はい(おかしいよ!雨降らしたのリンなのに!何で俺が!?)」
佳奈「眼を逸らすという努力をしなかったから」バッサリ 
零「おっしゃる通りで」ガクっ  
今度凛と江梨にあった大変な事になりそうだな、と零はこの時思った・・・・やっぱ眼は逸らすのが紳士だよ? 
 
    
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