(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

卓球戦 前編

体育館で到着した零は・・・・既に疲れ切っていた。精神的に・・  


「ハァ〜」
「溜息が酷いっすよ?」


隣の莉緒が零にそう言うと 


「疲れてんだよ」


お前と違って、と零は呟く。


「うちも結構疲れてるんっすけど・・・」


苦笑気味に否定する莉緒であるが・・・零は聞いてない


(・・・・いつ動く?)


精神的な疲労感を感じる中、零は神経を研ぎ澄ませていた。


(・・・・まだこの近くには居ないか) 


例の新種の魔獣がこの街に侵入した以上、零は何時でも動ける様に準備している。 


(・・・・感知出来んな)


【詠み手】を使い周囲を察知しているが引っ掛かる気配が全くしないことに少なからず焦りを覚える零 
魔獣の能力は、まだ不明な点が幾つもある・・・・零が警戒してるのはその一つ・・・瘴気のコントロール・・もしくは消失   


(まじで瘴気そのものを消せるんだとしたらーーーーそいつはもう魔獣と呼べる存在じゃないな・・・・・・・


魔獣とは瘴気によって存在しているーーーそれが無いとすれば・・・これ程厄介な敵はいない 


(そいつのレベル自体も警戒しないといけないのに・・・これじゃよ)


最低でもBランクはあると推測されている新種の魔獣・・・つまり、一般の異能者が何十人、Cランクまで・・・・・・単独で・・・仕留めることが出来る高レベルの異能者が5人以上・・・・必要である。 


(ハァ〜〜〜・・・いっそコッチから動く・・・・・・・という手もあるが・・)


一瞬考えたがすぐ切り捨てる零 


(ダメだな。もし相手が既にこっちを把握してたら・・・逆に学校が危ない) 


零が学校にいる事で魔獣が警戒して、学校ココを襲ってこない可能性が高いのだ。
 

(ただでさえ学校ココは、集まり易い状態なんだ・・・下手なことは出来ない) 


やはり待つしか無いと考えついた零であるが、
(英次が探知出来れば・・・・・・・・・可能性はある) 


なら自分は、待機して周囲を警戒することに集中するだけだ。と零は再確認する。


ただ  


(試合出ずに体力を温存すべきだと思うが・・・俺だけか?) 


やはり引き受けるべきではなかったと零はこれまで以上に後悔するのであった・・・ 






『それではこれより委員会戦、部活戦の卓球試合を行いたいと思います。』
遂に始まる午後の部ーーー卓球戦 


「零っち、行くっすよ」
「あぁ」
「ゼロ君〜レッツ・ゴー!」
「アンタだけ行けばいい」
「莉緒ちゃんとの、対応の差に抗議だよ!抗議!」
(やかましいのが1名いるが当然無視だ・・・これ以上余計な事で疲れたくないんだマジで)


沙耶からの抗議をなんとか受け流す零・・・そんな彼に莉緒が表示版を見ながら呟く。 


「ウチらの初戦の対戦相手・・・・美化委員会っすね」


莉緒の呟きに零は1人の知り合いを思い浮かべるーーー楓だ。 


「藤堂がいるあの委員会か・・・・まああいつはさすがに呼ばれんだろ」


剣道を除けば、ほぼ運動音痴である楓がチームとして選ばれるとは、さすがに考えられないと零は思ったのだが・・・ 


そうで・・・もなさそうっすよ・・・・・・・・?」


莉緒の一言にまさかと顔を向ける零に微笑を浮かべチラリと別の方向に視線を移す。
莉緒彼女の視線を追っていくとその先には・・・ 


「よろしくお願いします。泉さん・・・


既に自分達が利用する卓球台の側まで来て、待ち構えている楓がいた。
そんな彼女を見た零は・・・


「人選ミスだろ〜〜〜っそっちも・・・・


右手で頭痛で痛む頭を押さえながら、絞るように呟くのであった・・・・ちなみに 


「それどういう意味かな!?ゼロ君!」


”そっちも”とは当然の如く・・・沙耶のことを指しているが本人以外誰も不思議そうしないのである


「なんで誰もおかしいと思わないの!?」


若干涙目になって周囲に叫ぶ沙耶であるが・・・誰も視線を合わせず見ようとしない 


「それが現実ってことだ」 


恐らくこの学校で沙耶に対し、ここまでハッキリとバッサリと切り捨てることが出来るのはーーー零だけであろう


・・・・その代償は重いが 






「痛いな!何時までもぽこぽこ背中を叩くな!」
「〜〜〜〜〜〜っ!」 


既に試合開始の合図が出ているのに零たちはまだ試合を始めていない・・・沙耶と零の所為で


『コラ〜〜〜〜!さっさと試合せんかーーーーッ!』


マイクを持った先生が零たちに向けて怒鳴ってる。


「このこのこの!」


しかし、沙耶彼女にとって、そんなのは関係ない。


『・・・・・。』 


周囲の奇異な視線もお構い無しに、只々ただただ自分に対して、暴言を吐いた零に、体裁という名のぽこぽこ攻撃を加える・・・・零曰く、地味に痛いそうだ
  

「だから痛いって、いい加減離れろよ沙耶さん」


なんとか説得を試みる零であるが 


「ガーガーガー!」


既に人間としての言葉も失ったこの宇宙人を相手に・・・・完全にお手上げ状態である零 


そんな状態の零に相手チームの楓が更に追い討ち?を掛ける


「い、泉君、そろそろ始めないと失格になりますよ?」 
「えっ!」


楓の言う通りである。試合が始まって5分以上試合が開始出来る状態でないチームは試合不能として失格となるのだ。 
既に3分半が経過している・・・あと1分半もない 
 

「や、ヤバイっすよ!零っち早くしないと!」 
「ッーーッーー分かっーーてっーーる!」   


沙耶に背後からぽこぽこ攻撃・・・うっかり舌を噛みそうになる零だが 


「沙耶さん」 


再度説得を試みる。


しかし


「フンっ!」プイっ 


完全に拗ねてしまった沙耶・・・こんな彼女を宥めるのは骨が折れる。
ましてや時間がない、短時間では不可能だ・・・・まあ宥めるならの話だが・・・・・・・・・




「良いのか?沙耶さん」
「?」


零は沙耶にだけ聞こえるように彼女の耳元で話す 




「もしココで失格となったらーーーー部活会の委員長さん・・・・・・・・・に笑われるぞ・・・・・・?」
「ーーー!」


零の言葉にビックっと体を跳ねる沙耶・・・動揺が走った 


「そうなったら、この学校一番の・・・こどもお子ちゃまはーーー沙耶さんという事になるな。」
「ーーーッ!!」 


”一番の”その部分が沙耶の心を突き刺す


「だって、失格となった理由が”俺の言葉に拗ねてしまった”・・・だろ?これだけ聞くとーーーーガキ・・ぽくね?」  
 「ーーーッ!!!」 


沙耶の顔が一気に赤くなる・・照れでは無いのは明らか 


彼女は想像した。
ココで失格となって、あの部活会委員長ーーー愛佳あいかが鼻で笑ってる姿を


『フンッ情けないデスネーーサヤ《・・》』 
「ーーー愛・佳!・・ちゃん!」   


その顔はドンドン憤怒へと変わっていくーーー周囲から見たらこどもがプンスカ怒ってるようにしか見えないが・・ 


「まあ良いわ・・・沙耶さんが出ない以上、俺たちの試合はここま「やる・・」・・・は?」


諦め宣言をしようとしていた零に沙耶が割り込む


「何か言ったか?」
「だ、からその・・・やる(ぼそ)」


言い難そうに知っている沙耶・・・さっきまで拗ねてた所為で言いづらいようだ。




しかし、そんな事など一切知っ・・・・たことではない・・・・・・・零は 


「よく聞き取れないな〜〜〜?大きな声で・・・・・ーーーーもう一度・・・・♪」
『(うわ〜〜〜〜)』 


”鬼畜だな”とこの場に居た全員が思った。


「ぅ〜〜〜〜〜ッ!」
「どうしたんだ?さぁさぁ?」 


涙目で唸る事しかできない沙耶に返事を促す零・・・心なしか嬉しそうにしてる・・・変なスイッチが入ったようだ 


「あーーーーッ!もうっ、分かったよっ!やりますやりますっ!やらせて頂きますぅぅぅぅ〜〜〜〜!!(涙目)」 


もうヤケクソ気味に叫ぶ沙耶・・・・最後の部分なんて泣き声に聞こえる 


  





「だったらとっととやれよ、最初は沙耶さんだろう?」 
「ううううううう〜〜〜!」


零の言い分に、ものすごく納得がいかない沙耶・・・しかし、時間がないので、振り切るしかなかった・・・・ 




そんな零と沙耶のやり取りを眺めていた莉緒と楓は・・・思いっきり引いていた・・・・・  


「わ〜〜〜零っちが悪魔に見えるっす。やっぱドSっすね。」
「泉さん・・・活き活きしてますね。嬉しそうです。」


自分も似た感じで弄られた事を思い出し、改めて零のドSぶりに引く莉緒と普段は見せない、零の活き活きとした表情を見て、興味深そうに呟く・・・けがれのない純粋な眼差しで 




「じゃ、始めるか・・・行くぜ藤堂」
「はい!勝負です泉さん」 


少し周りより遅れたがーーー試合開始である。


最初は沙耶である・・・相手は3年の女子ーーーー結果は惨敗・・


「て、オイ!?」 
「グスグスっ」
「瞬殺っすね」 


体育座りになって静かにしめじめと泣いている沙耶にツッコンでしまう零と呆然と先ほどの試合を振り返る莉緒  


結果から報告すると零たちの勝利である。
1回戦の沙耶の試合がストレート負けで終わったあと零が楓と、莉緒が2年の女子と試合をして見事勝利を収めた。 
2勝1敗でチーム生徒会の勝利に終えたが・・・・試合はまだ始まったばかり・・・・ここから更に苦難な道になっていく零たち・・・まあ一番疲れるのは間違いなく零であるが・・・・ 


「ハァ〜先が思いやられる」 


溜息を吐きそういう零・・・その声には確かに疲れが感じられていた・・・


******** 
とある女子トイレ
その子は手を洗い、不敵に笑っていた。


「フフフフ次はついに・・・サヤのいる生徒会デス」 


その目はメラメラと燃えていた


「フフ、待っているデスーーーサヤ!」


濡れた手をハンカチで拭き女子トイレを出ようとする・・・・しかし 


「フフフフフフ・・ん?」


何か奇妙な感覚が身体を通り抜ける 


「?・・・なんデスか?」


不思議な感覚だ・・・・何処か寒気を覚える 


「!?」


今は夏だし、自分は冷え性ではない 
なのにこの寒気はなんだ?


次第に不安を覚える彼女 


「ううう、み、みんなの所に行くデスっ」


廊下に出てチームメンバーがいる体育館へ目指す・・・・が




「ふぎゃっ!」


女子トイレの廊下の境界で何か・・にぶつかってしまう彼女・・・そこには何もないのに、壁にでもぶつかったかのように、彼女は後方へ転んでしまう。


「うう〜〜何が・・デスか?」


痛みに声ながら不安に駆られる・・・目の前には何も無い筈


しかし彼女は感じた・・・・目に見えないけど、そこには何か居る・・・・  


「だ、誰デスか?ゆ、幽霊デスかぁ?」


恐怖からか・・・声が震えている 
・・・・・・。
・・・・・・。
返事は・・・無い 


だがその代わり


「ーーー!?」


彼女の目にはトイレと廊下の境界が・・・・空間が揺らいでる・・・・・・・・のが・・・見えた・・・


そこまで理解したところで


「ーーーーー」


彼女の意識はそこで途切れた・・・いや途切れる寸前


『シュ〜〜〜〜』   


何か生き物・・・の声が・・・沈んで意識の中・・・彼女には聞こえた 


卓球戦 中編へ続く。


おまけ  
初戦
楓「勝負です泉さん!」
零「よし来い!」
楓「(まずボール上げて・・・・!落ちてきたところ・・・・振る!)・・・・えい!」スカ   
零「・・・・・。」
楓「・・・・・。」
零「あー・・・俺がサーブしようか?」
楓「お願いします////」 


特例として零からのサーブだけになったが・・・・結局楓のラケットに掠りもせず・・・楓のストレート負けが確定した・・・・なぜ選ばれたんだ?と零は不思議で仕方なかったが、試合後、向こうの3年が


美化委員の3年「ん〜〜〜楓ちゃんが相手なら、絶対戦えないと思ったのになぁ〜〜〜?泉君には効かないか」 
零「その作戦・・・絶対特定の楓ファンクラブ珍妙な集団にしか効きませんよ?」
楓「珍妙な集団?」 
零「なんでもない・・・気にするな」 
 あんまり言うと楓が怖がってしまうと思い言わないことにした零であった・・・・ファンに罪はないと呟いて 

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