(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

謝罪

とある2年の教室 
昼の時間・・・皆休憩をしながらお弁当などで食事をしている最中である。


そんなお昼の時間ーーーー皆持つ箸やパン・・・・・・・止まる程の珍妙な・・・・・・・・事態が発生していた・・・・・・・・・   


「ねぇ比奈?」
「なに?」 


どうしても気になってしょうがない、1人の女子生徒が恐らくこの事態を把握しているであろうーー生徒会会計で学校の『姐さん』と呼ばれている松永 比奈に質問をする。 


「いいの?アレ・・・ほっといて」  


そう言って指差す女子生徒
彼女が指差す先に・・・・   


「ググググ〜〜!(涙目)」  
「ムムムム〜〜!(涙目)」 


頬っぺたツネあっている生徒会長の沙耶と部活会委員長の愛佳あいかがいた・・・お互い既に涙目 
   

「あ〜・・いいのいいの
あの2人ーーーああ見えて仲良いから」 
「それは知ってる」
『(こくこく)』


周囲のクラスメイトも同意している。
 

「私・・・と言うか、クラス全員の疑問だと思うんだけど・・・・何で午前の競技が終わってすぐケンカしてるの?」 
『(そうです。その通りです。)』


クラスのみんなも同じ気持ちの様だ。
普段もよくケンカしてる。


「ああ・・それはね?・・・ボールがね?原因なの」
『え?』  


比奈の説明によると午前に行ったドッジボールで、5試合目から2球になったボールの1つを求めて、何故か味方同士同じクラス2人が 奪い合いを始めたのが、きっかけである。


「最初は沙耶がボールの所有権を得たんだけど・・・次に隙を見てアイちゃんがボールを取って、その次にまた沙耶が、またアイちゃん、沙耶、アイちゃん、沙耶・・etc」
「うん分かったから、もういいです(呆れ)」 
『(こくこく)』  
  

「グ〜〜〜〜〜〜!愛佳ちゃ〜〜〜ん・・」
「ム〜〜〜〜〜〜!サヤ〜〜〜〜!」  


しばらくこの頬っぺたのツネリ合いが続くが・・・皆さん仲良くお昼の時間を楽しんだ。 


********
校舎裏 


今まさに激突しようとしていた凛と江梨であったが 


やめろ・・・」 
「「!?」」  


そんな零のひと言に周囲の時間が止まり、同時に凛と江梨の動きも止まるのであった。


「れ、零さん?・・」
「な、なに今の・・悪寒・・」   


激突しようとした瞬間、強烈な寒気に襲われた2人 


「(零さんの・・異圧・・)」  


凛はすぐに理解した様だが、初めて受けた江梨は何がなんのか理解出来ていなかった・・・
「・・・何をしたの?・・今」 
「・・・・。」


江梨の質問に無言のまま、佇んでいる零


「・・な、何か喋りなさいよ?」 


どうしてか分からない、それでも何か違うのが彼女は直感で感じた・・・・・・。 


(どういう事?さっきまでと雰囲気が・・・・ーーー違う・・。)


無言のままこちらを無表情・・・で見ている零に何かただならぬ気配を感じる。
そこまで考えると・・・不意に額に汗が 


(お、恐れてる・・・私が?)


これまで佳奈に並ぶ程、魔獣との激戦を繰り広げてきた江梨であったが、そんな彼女ですら、無意識に震えてしまう程の異質な何かを零から感じ取りーーーー本能的に・・危険だと判断した。


「(此処で倒さないとッ!
ーーーーこの人は危険だ・・・・・・・!)」


結論が出たのと同時に異能を全開にする江梨である。


熱炎の鎖ヒートフレイム・チェーン!」      


4つ真っ赤な鎖を発現した江梨は
鎖が出現した瞬間その周囲からジューと煙が出てる・・・見た目以上の温度があるようだ。
「はッ!」


鎖を使い零を包囲しようと考えてるようだ。  


「零さん!」  


 凛から心配そうに呼び掛けが聞こえる中、周囲を炎の鎖で包囲された零であるが、


「・・・・・。」  


特に何でもないかの様に無表情で眺めているだけであった。


「・・・何故避けないの?」
「・・・・・。」


質問を受ける零であるが・・・答える気配が全くない。


「さっきから無言ね?
・・・何か意味があるの?」
「・・・・。」


「まあいいわ、これで逃げ場はない!ーーー炎幻獣サラマンダー!」


江梨の前に炎が集まり収縮して、形が変わりーーー炎の竜が出現した。


『サラマンダー』
その呼び名を聞くと炎を纏ったトカゲを連想し易いが・・・


「・・・・。」


今零が見るサラマンダーは少し違う。
2メートル程の巨体であるそれは、頭部に威厳の様に二つ角を生やし、肌はワニを連想した方がいいか?硬そうな鱗で所々が小さな尖がありそれが背中、そして尻尾まで続いている。 
肌は赤と言うよりも真紅に近く身体の至る所に炎が出ている、四つん這いで立ち翼は無いが、東洋の竜の様に翼が無くても飛べるのでは?と思わせる雰囲気がある。




これが篠崎 江梨が扱う『属性型』から進化した『派生型』【炎喰い】の象徴


あらゆる炎を喰い尽くす幻獣ーーーー『炎幻獣サラマンダー』である。








「言っとくけど・・・これに受けたら火傷程度じゃ済まないわよ?」
「・・・・・。」


挑発気味な江梨の発言だが、無表情のまま変化の無い零にいらつきを隠せずにいる江梨  


「あくまで無言という訳?それとも」


一瞬、間を置き 


「私なんかと・・・・会話するのはーーーイヤという事?」
「・・・・。」


無言を肯定と取った江梨はふぅーと息を吐き 


「そうーーーーー行けッ!!」


もう我慢の限界を超え過ぎておかしくなったのか・・・さっきまでの悪寒がウソの様に憤怒のオーラを心力として放出し、自身の炎幻獣ーーサラマンダーを零に向かって突撃させた。


「・・・・。」


当たれば、火傷以前の前に、あんな巨体が猛スピードで直撃すれば、いくら零でもタダでは済まない


「零さんーーーーーッ!!!」 


凛の悲鳴が炎幻獣が接近してくる中、零には聞こえた。   


「・・・心配するなーーリン」
そう呟くと同時に零は自分の意識をより深くして・・・・異能ーーー【黒夜】を発動した。 




********
零視点 
決着は一瞬だった・・・ 
意識が浅くなるの・・・・・・・・を感じる・・ 


「え?」


目の前には、俺を見上げて呆然とした篠崎妹の顔・・・近くではリンが手を胸に当てて、ホッとした顔をしている。 


アウト・・・だな?篠崎妹」       


俺は手に持つ黒剣・・の先を、彼女の喉元に当てながら聞く。 


「あ・・う」 


ゆっくりと膝を付く江梨  
何が起きたか簡単に説明しよう。
俺の異能ーー【黒夜】で奴の炎のトカゲみたいなヤツの上から、極太の槍を操作して6本突き刺し(頭部と両手両足にそして尻尾の各6カ所)動きを止め拘束した。
その後【武闘】と【黒夜】のコラボで炎の鎖を突破(【武闘】で強化した身体で両手に持った長剣を扱い周囲の鎖を斬り裂いた。) 
そのまましもべ(サラマンダー)がやられた事で呆然としていた篠崎妹に、一瞬で接近して黒剣を突き付けて終わった。    


「まだ・・・やるか?」
「く・・」


少しばかり異圧で脅かす俺・・・・うん、待って下さい!
やり過ぎとか、外道とか、主人公にあるまじき行為だとか聞こえますがーーーー違うから!(必死) 
抑えないとかないと、また暴れそうだで怖いんだよ!(汗)  


いや・・・言いたい事も分かりますよ?
年下ぽい膝をついた女の子をすぐ側で見据えている男・・・・お願いッ!今携帯スマホ握った方々!どうか・・・どうかその手の携帯スマホを閉じて・・・床に置いて・・・・置いて下さ〜〜〜い!!(汗)   




「・・・・・」 


 お〜〜!ちょっと待って!?
何泣いてるの!?篠崎妹この子!?  
無言で泣き出した篠崎妹を見て戸惑う俺 


「あ・・リ・・ッ」  


近くにいるリンに助け舟を・・・と思ったがそれは無しだな 
現在、複雑な顔をしてるリン・・・多分、さっきの事はまだ怒ってるけど、篠崎妹の泣き顔を見て・・・複雑な気分になってるんだろう。
どうしようかと思ったら・・転校生の声が  


「江梨ちゃん!」
 「・・・佳奈」


彼女の戦意が喪失した為か、転校生と蓮を拘束していた炎の檻が消えたようだ。


「江梨ちゃん・・あなた「江梨」」


転校生が何か言おうとしたところで、後ろから遅れて来た蓮が割り込んできた。


「・・蓮」 
「江梨・・君がした事は、決して許される事ではない。」
「・・・。」
「蓮君・・・」


蓮の言葉に口を紡ぐ江梨と彼の鋭い目付きに、動揺する転校生  




「江梨、君が何故激情し、泉さんに攻撃したかは・・・分かってる。」
「・・・・。」
「けど、だからと言って、それが人を傷付けて良い理由にはならないーーー異能者なら尚更だよ?」  
「・・・うん」
「もし泉さんが大怪我して、江梨が犯罪者として警察に捕まればーーー1番悲しむ・・・・・のは佳奈さんだと・・・・・・・・・・・何故気付かない?」  
「そ、それは・・」
「君はした事は、ただ自分勝手に怒りを吐き出しただけだ・・・佳奈さんを・・・・・理由にして・・・・・」  
「ッ!・・・・」  


鋭い目付きから、どんどん悲しような顔で言う蓮
彼の言葉を聞き・・苦しそうな顔で、否定しようにも言葉が見つけることができないでいる江梨  
2人を見てオロオロして、泣きそうな顔をしている転校生


・・・・・・・・・。


「江梨、泉さんに謝「ちょっと待ってくれるか?」」


俺が待ったするとは思わなかったのか、驚きの表情をする蓮 


「泉さん・・」
「俺に任せてもらえるか?」 


こんな3人を見ていたら・・・・ほっとけない 


「泉君ッあの・・」 
「大丈夫だ」


それに・・・今回の原因はーーー俺だ
俺がカタをつける。






「・・・・。」 


膝を付いたまま俯いている江梨を見下ろす姿勢になるが・・・話し出す。


「今回の件は俺に非があるのは明らかだが・・・・その後のおまえの取った行動は・・・・常軌を逸してる。」
「・・・そうね」


俯いたまま俺の言葉に頷く江梨に俺は続ける。
「特に最後のサラマンダーアレ・・・アレはやり過ぎだってーーーー俺じゃなきゃ、死んでたかも知れないぞ?」 
「・・・・・・。」


今度は黙り込んでしまう・・・・反論なし、か 
自覚はあったのか・・・・だがな?


江梨の肩をポンっと手を置く
ピクッと反応して、チラリと上目遣いで見てくるの見て  


「途中、割り込んだリンを、止める事が出来たが・・・・・」 


少しずつ青ざめていく江梨


蓮も転校生も感じているのだ・・・・・少しずつ上げている異圧・・に   




「もし・・・リンが大怪我してたらーーーーーーこんなもん・・・・・じゃ済まさねぇぞ・・・・・・・・?・・・・オイ・・


ゴォッーーーーーーー!!!!  
一気に異圧を、最大近くまで上昇させる
本気の殺気もぶつけて 


「ーーッ〜〜〜〜〜〜ッ!?」


ビクッ  
強烈な悪寒にでも襲われたのか・・身体を抱き締め震えている江梨を、冷たい眼で見下ろす。
5秒ほど経ったか?
転校生が俺の異圧に圧されながらも近付き 


「泉君お願い!もうやめてッ!」


震えながらも、江梨の肩を掴んでいる俺の手を両手で掴み、すがってくる転校生を見て、異圧を解く


「ハーーーーーッ!!ハーーッ!!ハーーッ!」 


俺の異圧を至近距離で浴びた江梨は、真っ青から殆ど真っ白なってしまった肌を見た俺は、さすがにやり過ぎたかと思うが・・・これはケジメだ。
大事な後輩が傷付きそうになった・・・これぐらいしないと、またあんな事があったら大変だからな・・・最低限の処置はさせて貰う。   


「ま、それはあくまで仮定の話だ。
お前も頭が冷えたみたいだしよ?・・・さっきの戦闘その件はもう良い・・・問題はその前だ・・・・・・・




ここからは、俺が裁かれる・・・・番だ。


「篠崎江梨ーー何でお前が怒って、そして転校・・白石・・が泣いたか・・・・まだ分からない」


白石・・
その一言に転校生・・・白石佳奈が目を見開き驚きの顔をする。 
呼吸を落ち着かせながら俺の話を聞いている江梨、他の人達も同じだ、江梨ほどじゃないが 
リンも空気を読み、黙って聞いている。


「俺は・・・みんなが思ってる程、万能じゃないんだ。
抜けてる事、必要な事、人として大事な事がーーーー欠けてるモノ・・・・・・が沢山ある・・」


そうだ。俺には分からない事が沢山ある・・・とても大事なことを 




・・・不意に蘇る記憶ーーー辛い記憶   


「そんなんだから、昔から・・・よくやらかしてきた・・・ 
今すっかり仲良くなったが・・・昔は俺を怯えた目で見てた妹・・・・・・・・・


『ごめんなさい・・・ごめんなさい・・れいくん・・・こわいよ・・』   


あれは堪えたな・・ 




「正しい事してると思った行動をーー本気で怒った・・・・・・幼馴染み・・・・」  


『零・・・あなたは正しいーーーけど残酷だ!
そんな事したって誰も喜ばない!誰も幸せにならない!
不幸なままだ!それは平和とは違う!ただの自己満足だ!』      


無表情でクールな一面しか想像出来ないあいつが・・・あんな激情した顔で怒ってくるとは思わなかった




「俺の言葉にお前のように怒り、殴り掛かっ・・・・・て来た親友・・・・・」 


『当たり前だ!・・馬鹿な考え方してるダチをめぇ覚まさせる為なら・・・オレは殴るぜ、例え・・それがおまえでもだ!馬鹿零がぁ!』


思い出すと殴られた時の痛みが・・  


「そして・・その親友の姉・・・彼女の想いを・・・」 


・・・・由香さん 


振り返って見ると・・・本当にダメダメだな俺・・ 




ここまで話して、俺は先程まで、俺を敵視していた江梨に苦笑して言う。


「俺はどうしようもないクズだ。
お前が思ってる以上にだ。
一番大事な事に気付く事が出来ず、理解する事が出来ず、今までーーーー生きてきた・・・・・。」


彼女の表情にはもう怒りは見えなかった・・・戸惑いで一杯の表情だった
そうだよな・・・戸惑うよな、こんな話を聞かされたら
リン以外の他の2人も同様であった・・・いや白石は何処か寂しそうな・・・哀しそうな表情で・・今にも泣きそうである。


「お前の怒りはーーー白石を想っての怒り」


だが俺は話し続ける・・・止まることなく・・・話し続ける 


「それは正しい。
お前の兄の言う通り、やり過ぎではあったが・・・
それでも、俺を殴るぐらいしてもいいと思う。」 


殴られる俺が言うのもおかしいがな


一気に喋っていった為、肺から空気が抜けて、酸欠の様な状態になりそうだ・・・ 
だが、まだーーー喋るのをやめない 




白石・・
「ーーー!」 


俺の声にビクと身体を震わす白石
俺は白石の方を向く 


「お前が何故悲しみ、涙を流したか・・未だに分からないのに、こんな謝罪は間違ってると思う・・・・だが、それでも謝らせてくれ」


残った空気を一気に吐き出し、その場で膝を付く 
突然膝を付いた俺にこの場にいる全員が目を白黒して戸惑う中
土で汚れるのを無視して、そのまま正座した俺は、白石を見上げ視線を合わせ、みんなにも聞こえる様にハッキリ言う。 


「本当にーーー済みませんでした」


深く深く頭を下げる
額に土が付くほどに頭を下げる


こうして、俺と白石ーーーそして篠崎兄妹と凛を巻き込んだ騒ぎは、俺の土下座で幕を閉じたのだった。 


昼食を兼ねた話し合いへ続く。




  


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