(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

嫌な出会い 前編

朝は地獄である。(*自業自得)
いつも通り葵の朝ご飯を食べ、(命を削らせて)学校へ来たが、俺のライフは既にゼロであった。
以前、学び舎は唯一のオアシスと言ったが(*そこまで言ったか?)、これではもうオアシスなんて言えるか!? もう教室がただの拷問部屋にしか見えない!


「腐った学校なんて滅びちまえ……!」
「お前の辞書には、学習と言う言葉は無いのか? なに逆ギレして不穏なことを言ってんだ」


だって仕方ないじゃん! あの朝食の後に走ると毒の回りが早くなって辛いのよ!?(*料理の話です)
お残しも出来ないから八つ当たりしたくなるの。それくらい分かるでしょう!?


「お前がどうしようもないシスコンなのはよく分かった」


ナチュラルに人の思考を読むな! この(不適切な言葉)が!!
まったく! 先生が来るまで武とお喋りをするのが定番になっているが、正直疲れるだけじゃないか? はぁ、近くに知り合いの男子がいないからなぁ。こうゆう時に話し易い英次は、離れた席でコミュ二ティ能力を発揮してるから来ないし。


ハァ〜。アイツが居たらこいつを弄って暇潰し出来るのに。


「おい、心なんか読まなくたって、表情で大体は分かるんだぞ?」
「……ハァ〜」
「溜息つくな! 悲しくなるわ!」


で、そんなこんなしてる間に先生が到着したが、少しいつもと違う気が……。


「オーイ、みんな席に着け。今日は転校生が来るぞ〜」


いつもの軽いノリの教師です。気のせいか? ……うん? テンコウセイ?


「先生、今転校生って?」
「オー、そうだぞ?」
「イヤ、なんで疑問系」
「ソウダゾ」
「何でカナ読み!?」
「う〜ん? だから、転校生だって」
「マジですか?」
「本当ですか?」


「ん〜? あ〜、言ってなかったな」
「「「「忘れてたの!? 言ってないよ!?」」」」


いつも通り元気なクラスだ。若干ウザく感じるが、先生のあのノリじゃしょうがないか。


「今日、来るぞ〜」
「「「「遅いですよ!!」」」」


まったくその通りである。興味ないけど相手にも悪いだろう。不安で緊張してるだろうし。
何やってんだこの教師は。他の先生と違ってガミガミ言わないが、軽いノリと言うかやる気がないのか、単純に面倒くさがり屋なだけかも教師なのに。……深く考えると疲れるな、これは。すぐに放棄した。


それより転校生かぁー。時期的にちょっと珍しいような? 一体どんな奴が…………ッ!?
思考を切り替えた直後、頭の中で非常事態に鳴りそうな警報を知らせるベルが高鳴った! む、無意識の警報というか!? しかし、これはなんの!?


「どんな奴なんだろうなぁ? 可愛い子なら歓迎だけどなー、零。……零?」


っ───イ、イカン! こっちに話が来やがった! おのれぇー武め! 見えない空気も読めないのか!?(*普通は読めません)


「ウン!? ドウシタ?」 


ヤバイ、声が変だ。オ、オチツケ俺ぇ!


「いや、それはコッチのセリフなんだが、どうした? 酷い汗だぞ?」


はーい、言われて気付きました。顔から大量の汗が出てます。なんてこった!?
夏が近いから教室も暑いけど、この汗は暑さの所為じゃない。心頭滅却せねば。……心頭滅却ってなんか格好いいな。


「あー大丈夫……何でもない」
「本当か? なんか悟りを開いたみたいな顔だけど」
「ああ、モーマンタイ」
「本当に大丈夫なのか!?」


いつなく戸惑っている? 俺を見て武もふざけた表情を消して、真剣な顔付きに変わる。心配してくれるのは申し訳ないが、真剣顔か……ごめん、やっぱり似合わんな。


「キツイなら無理するなよ」 


近いです、キモイです。
───あ、いけない! 心配されているのについ本音が!


「オイー! いま絶対に失礼なこと言っただろう!!」
「いや気のせいだって、キモイ
「キモイ!?」


あ、読みを間違えた。スマンなキモイたけしよ。……違和感が取れんな。
とりあえず何かショックを受けている武は無視します。ハッキリ言って面倒しかありません。


「無視しないでぇぇぇ!?」


今はそれどころではない。生憎と悪ノリに付き合っている余裕もなかった。


色々と省かせて貰うが、俺は異能者の気配を探ることが出来る。正確には心力を利用するが、気配自体は普通に探れる。隠れんぼなら見つける側で圧勝出来る自信があるね!
まぁそれは置いといて前回の接近もこれで分かった。魔獣に対しても似た方法で遠くても探ることが可能だ。


それが何で今説明する必要があるのか。
問題は教室の扉の向こうです。……居るんです。一言で言うとピンチなんです。


しかし、そうすると疑問が生まれる。この探知方法は俺が編み出した物。知り合いの異能者なら使える者のいるが、扉の向こう側の人物は知り合いではないと気配だけで分かってしまう。
他の異能者だと放出中の心力や瘴気の塊の魔獣は探知出来るだろうが、力を抑えている異能者を見分けることは出来ない。いや、不可能とは言わないが、俺のコントロールなら簡単にバレないと思う筈。
大丈夫って、柊さんも言ってた。だから問題ない…………筈。


「……」


どうしよう、急に不安になってきた。学校を割り出しただけでも驚愕なのに、どうしてこの教室までバレたんだ!? ていうか、もう正体も看破されてんのか!? あぁ〜〜っ!! 誰かちゃんと説明してくれぇ!!


「いい加減静かにしろ〜「「「あんたが言うな!!」」」……」


本当だよ、事前に言ってくれよ。何してくれてんだよ、この教師は。


「あ〜じゃ呼ぶぞ〜」 


取り敢えず、バレないようにしよう。……何をしたらバレないようになるか不明だけど。


「オーイ、入って来ていいぞ〜」
「失礼しまーす」


声の時点で性別は判明したようなもんだが、一応言っておくと入って来たのは───女子でした。


「「「「お〜〜!!」」」」


外野の連中が可愛いとか、美少女などとうるさい。
武も何か叫んでいるが、無視です。


黒髪で短めのポニテな女子だ。見たことあります。
背丈は普通で胸は……結構スリムで、脚が細いなっと思った。不適切な雑念が多いと視線が飛んで来そうだからあまり考えないでおこう。


注目を浴びている女子は、黒板前に立つと生徒全員を見渡して。


「じゃ〜、自己紹介よろしく〜」
「はい、〇〇高校から転校して来ました白石しらいし佳奈かなです。宜しくお願いします」


パチパチパチパチッ!! 
周囲から拍手が響く。男子達の興奮具合が影響してドラムみたいな音が鳴ってる。
ついでに俺の中で警報の音もまた、一段と煩くなりました。勘弁してよ。


朝からとんでもないことになってしまった。
妹の料理のダメージも気付けば治って……うん、いないや。しばらく新たなストレスと共に辛さは続いた。




******




(*ここから少しの間、主人公のキャラがオカシクなっていきます。不快だと思う方、この部分については、飛ばしていただて構いません。こちらについては、作者の勢いで書かせて頂きました。 グロやエロ関係ではありません。あくまで、主人公のキャラが変になるだけです)


武『なんだ!? この注意事項!? 不安しか感じねぇぞ!!』


冒頭で何か叫んでるのがいましたが、休み時間。
ナレーター(泉零)です。只今、転校生の席に人が集まってます。大人数です、ハッキリ言って邪魔くさいですね。


クラスメイト達『『なんか始まった上に酷い言われ方された!?』』


男女バラバラで……心なしか内側に女子が多く、外側に男子多い……根性ないなぁ。


男子達『うっせわ!!』


しかし、混ざっている武が何と内側にいます! 意外なことに攻めてますが、あっさりと美希に蹴られました! 弱弱です、なんとも弱弱です! 藤堂が苦笑して桜井が何か言って美希が武にキレました! ああ、なんて弱弱な武でしょうか(嘆かわしい)。 


武『弱弱弱弱言うなぁ! てか、ナレーションしてないでこっち来いやぁ!!』


結構慌てた様子の武。……こらこら武選手ナレーターにツッコミしないの。選手は選手らしくちゃんと相手を見なさい。


武『選手ってなんだ!? ───ブハ!?』


あ〜〜美希選手にまた蹴られました! 武選手! もうアレですね、蹴られている様はまさにサッカーボールのようだ!


武『フォローのつもりか、全然嬉しくないわ!? 余計に惨めだわ!』 


流石ちっこいのに空手部のエースである美希選手!
一体あのちっこい体のどこにアレほどのパワーがあったのか!?


武『だからナレーションをやめろぉぉ!!』
美希『誰がちっこいかぁーー! ガルルルルッ!』


2人してこちらに向かって何か叫んでいますね。まったく、ちゃんと試合に集中してほしいですねぇ


武『試合じゃね暴力だ! 思い切りイジメだよっ! 現在進行形でイジメが行われてんだよ! お前の目の前でなっ!』


だから武選手さっきから叫んでないで相手にちゃんと集中してください。本当に困った人達で実況する方も大変大変……。


美希『お主もいい加減コッチに来んか!! ギタギタにしてやるのじゃ!!』


あらあら、いけませんよ美希選手。ナレーターへの暴力行為は反則です。失格にしますよ?


美希『上等じゃッ!!』
武『叩きのめしてやるッ!!』


やれやれですね。試合しなきゃ観客は盛り上がらないと言うのに。この2人は、せっかくの試合を台無しにするおつもりですかね?


桜井『観客ってもしかしてボク達のこと? あといつから試合扱いになってたの?』


おやぁ? 今度は観客からの発言ですか? クレームではないようなので問題ないでしょう。ここはナレーターとしてなんでもお答えしましょう!


クラスメイト達『『ナレーター!?!? 嫌がらせキャラじゃなくて!?』』


YES、私こそが本日のナレーターを務める泉零です、ヨロシク!
只今、行われているのは、我がクラス恒例のデスゲーム。略すと『クラデス』。


クラスメイト達『『恒例だったとしてもデスゲームは嫌だ!!』』』
クラスメイト達『『あと可愛らしく略すな!! デスがある時点で全然誤魔化せてないから!!』』


こんな反響が多いですよねぇー。
ああ、後で転校生にもやって貰いたいので、ここで1度分かりやすいように説明しましょうか。


転校生『え、私も?』


極めて簡単ですよ? 相手の魂を一雫まで倒し尽くせば勝ちという、非常に簡単なゲームですから───。


武・美希『『やらんわぁあああああ』』


(*その後、無事・・? にデスゲームは終了しました。ついでに武君は死んでないのでご安心を───「死んでたまるか!! てか2度とやるか!!」)


以上、ナレーター泉零がお届けしました。




******




続・休み時間。
簡単な交流も無事に終わって、転校生とクラスの人達との挨拶も一通り済んだ。


「「「簡単な交流? 無事に終わった?」」」


なにやらブツブツ言ってくるクラスメイト達。……なんでさっきから人の思考を読むのかな? オープンキャラじゃないから勘弁してほしいんだけど。


「え〜と……泉君で、いいんだよね?」


おっとここで転校生が自己紹介しに来た。そういえばナレーションしているだけで一切挨拶もしてないや、うっかり。


「おうよ、よろしくな」
「うん。さっきのは……凄かったね。その色々と……」


困ったような顔で理解しました。やり過ぎましたね!(*当然)


「有名人みたいだね」
「武が目立つ所為だから」


遠くから「お前も充分目立ってるわ!」とか聞こえるが無視。……あ、武が崩折れた。


「ねぇ? 石井君だったかな? ……泣いてるけどいいの?」
「気にするな。ああ見えてあいつはMだから「チガウ!!」」


遠くから武が吠えた。割と本気で。
この間の獣にも負けないくらい。転校生もビクッと震えていたが。


「声がヤバそうよ?」
「……そうだな」 


からかい過ぎたか、アイツ1度爆発すると引きずるからな。
……後で昼飯でも奢るか。


「ふふっ、有名人と言うより人気者みたいね」
「そんなことはないと思うが、……それに今はそっちが人気者だろ?」


視線が集まってますしね。……お?


「そうだな。零の言った通り、今は白石さんがこのクラスの注目のま───」


「そうじゃなぁ。零の言った通りすっかり注目の的じゃよ」
「ボクもそう思うね。しばらく大変だろうけど、頑張ってね」


キザ顔で武が何か言っていたが、美希と桜井ともし訳なさそうに遅れて藤堂がこちらにやって来た。


「白石さん綺麗ですからね。……石井さんも大丈夫ですか?」
「───!? と、とうど「「「こんなキザ男は無視だ(よ・じゃ)、藤堂 ((楓))」」」……」


なんか感動したような武がなんか言っていたが、調子に乗らせると普通に転校生と藤堂が困るから両断しておく。……あ、そうだ。


「昼飯さぁ、俺達(武を除く)と一緒に食わないか? そっちもまだ学校のことよく分かんないだろうし、ついでに教えてやるよ」
「え? ……いいの?」
「ああ、お前らもいいか?」


反対されるとは思えないが、一応他のメンバー(武を除く)に確認を取る。


「勿論じゃ」
「良いよ」
「はい、大賛成です」
「おう、てことで、そっちはどうする?」


あっさりみんなからも了承が取れたところで、再度転校生白石に尋ねてみると。


「あ、うん! ありがとうね!」


嬉しそうに頷いて返事した。
大袈裟な気もするが、美少女の満面な笑みを見て、男子だけでなく女子もぽわーんとしたテレた顔をしていた。
どうやら美希とは別の意味で和む空気を作れる転校生がやって来たらしい。全員笑顔で迎え入れていた。


ただ、1人を除いては。


「お願いです(涙)。どうか無視しないで(涙)」 


同じクラスの英次も誘おうと思ったけど断られた。急だと難しいからまた今度誘ってくれと言われた。社会人みたいなセリフだな。
 

「オレを誘って……。全然空いているから誘ってください(涙)」
「……」


いい加減可哀想に思えてきた。足にしがみ付くとかどんだけ必死なんだよ。
仕方ないので襟首掴んで引っ張って行くことにした。え、乱暴だって? いいんだよ俺がドSだから。


「グスン! 知ってたわぁ!!」


あら、知ってたの? 涙目で睨んでくる武を見ながら、愉快な笑みを浮かべた。
……一瞬たりとも警戒を解こうとは思わなかった。




“嫌な出会い”後編へ続く。


おまけ───『とある疑問・妹編』


武「前から疑問に思ったんだが」


零「急にどうした?」


武「料理は毎日妹さんが作ってるんだよな?」 


零「? ああ」


武「毎日弁当も作っているんだよな?」


零「ああ」 


武「……」


零「……? それがどうした? 今さら俺の体の心配か? そんなのおにいちゃんスキルの1つ『自動治癒』で乗り切るさ」


武「初耳だよ、そんなヘンテコなスキルがあるんて。もはや人間じゃない。『おにいちゃん』っていう別種だろう。……いや、そうじゃなくてっ!?」


零「?」


武「つまりあれだ! 妹さんも、その……食べているって、ことだよな……?」


零「うん? ……ああ!」


武「気付いたか!? オレが疑問に思ったのはそこだよ! 妹さんも食べているのに何で妹さんだけは平気なんだ? 何か理由があるんだろ!?」


零「ふ……単純な話だ」


武「お前が何か仕込みしているのか?(解毒薬的な)」


零「いくら何でも毎日は無理だ(解毒薬も無理だった)」


武「え、じゃあ……なんで?」


零「本当に単純ことだ。……葵は普通に食えるんだよ。自分が作った料理をな」


武「…………え? 料理って……アレだよな?(毒物的な)」


零「ああ、アレだ(劇物でもある)」


武「……大丈夫なのか?(毒的な意味で)」


零「何度か心配になって訊いてみたんだが、不思議そうに首を傾げるだけなんだ(後すっごい可愛い! 毒も気にしない!)」


武「あー……そうか(重症か)」
零「ああ(妹サイコー!)」


零・武「「……」」


零・武「「飯食うか((絶対会話が合ってないな))」」


*この昼食を得て葵の料理は更に謎が深まった。(*本人も一緒に) 



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