居候人は冒険者で店員さん
【任務完了その2】
『無事に確保した。周囲に被害は無しだ』
急な暗殺未遂だったが、アーバンさんからの連絡を聞いてようやく終わったのだと息を吐いた。
弓矢の形状を銀鎖に戻すとおれは通信機越しにアーバンさんに礼を口にする。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
『気にするな。どうせこちらが気付けばすぐに依頼しただろう。今回は偶々ターゲットがカインだったからこうなったが、そのおかげで対応もし易かった。それに彼なら大抵の相手ならやられることもないだろう』
冗談そうに苦笑して告げられ、まだ後始末があるからとアーバンさんとの通信が終わる。
そしてもう一度深く息を吐いたおれは……ふと思った。
「偶々…………本当にそうか?」
そのまま視線を沈み始める太陽へ。
時刻も夕刻へと近付き日も沈み出す中、おれは街の外に向けるとその場から静かに移動した。
『ーー!!』
「やはりいたか」
密かに街を出て林に入ったところで、そいつの気配を感じて奇襲を仕掛ける。
出会い頭にその頭部へ蹴りを入れた。気で強化された蹴りはおれの倍の重さはあるそいつを吹き飛ばす。
『ーー!?』
『ーー!!』
そして騒ぎ出したそいつらは声を出す器官がないか、声とは言い難い叫びを上げる。
全身が木の蔓である魔物のエントは、ギチギチと音を立てておれに蔓を振るってきた。
「ランクD……まぁこのぐらいはしてくるか」
妙に街の外が騒がしい気配が集まってるのを感じて探ってみたが、どうやら街の騒ぎに反応したようだ。
数にして30体以上。
「進化種もいない。一気にいくか」
持っていた“グレイプニル”の鎖の一部を変化。
煌気を流し込むことで改良が不能な“クリアストーン”の形状を変えることが可能だ。
そこでさらに異能の【心王の絆】を使用。
この万物すべてに心に干渉する能力を使い“グレイプニル”の武器をより体に馴染ませ扱い易くしていく。
武器と同調してその技能を引き継ぐスキル────“アイテム”。
そうして手慣れたように作り出した細長い槍を投げて、ゆらゆらと歩いていた2体を重ねるように突き刺す。
「“形状変化”」
さらに遠隔操作して貫いた槍の形状を変化。
無数の針として貫いたエントから別のエントへ。次々と貫いていく。
が、木の魔物ということもあって臓器がないのか、貫かれた状態でも動き蔓を伸ばしてくるモノもいる。……少々厄介だ。
「火は……ここじゃマズイ。なら────ルナ、頼む」
【はい!】
刹那、おれの体を包み込むのは青き光。
光が止むと髪と瞳は青く染まり、服にも少しだけ青色の龍をイメージした模様が付いていた。
セイリュウの女神ルナのチカラを得た姿────【夜月静寂】。
適当に相手して追い返すことも考えたが、食糧である人間に飢えた大量のエントの数を見て、仕方なくこのモードに入っていることにした。
【行きましょう!  ヴィット!!】
「ああ」
パチンッと指を鳴らして【夜月静寂】のチカラと、煌気が込められた衝撃波を引き起こす。
「じゃあな」
煌気術奥義────“滅烈”。
瞬間、青き光の衝撃と共にエントの群れを抜き、林全体にまで衝撃が走り抜いていった。
***
時刻は夜へと移った。
騒いだエントの始末を終えてカインたちと合流したが……正直いって面倒だった。
少し間、持ち場を離れたのがバレて女性陣からのお叱りの嵐。ミオは当然だが小柄のルリから責めるような視線を浴びたのは結構辛かった。後からカインが急な事態があったからだとフォローしてくれたが、それはそれで質問の嵐が始まってしまうだけだった。……特にマリアさんの方から何か探るような視線が飛んできた時に、ブルッと背筋を震わせたのは内緒だな。
ちなみにリアナちゃんは絶賛不機嫌状態である。
完全に省かれたことを根に持ってるらしい。ぷぅと頬を膨らませて顔を合わせてくれなかった。……今度なんかプレゼントしよう。
「そう、そんなことがあったのね」
「いや、本当に騒がしい1日でしたよ」
そんな話を家に戻ったその夜、不思議にしていたアリサさんと酒を飲みながら語る。
一緒に帰って来たリアナちゃんの不機嫌な顔を見れば、何かあったのかと気付くのは当たり前だが、怒られることはなく苦笑されてしまうだけ。……こちらのことも察してくれる分、こういう時のアリサさんは優しい。
あと悪酔いしない程度に軽くだったが、頰僅かに上気している姿はなんとも言えず、ついつい色っぽいと思ってしまったのは内緒にしておこう。
***
「ふぅ、疲れた」
そうして酔いが回りアリサさんが自室に行った後、おれも自室に行って1人で酒を煽っていたが。
【じゃ、あたしたちも混ぜてよ】
【お酌しますよ?】
少しばかり寂しいか、と思っていたところで声が掛かる。
そんなおれの心境を察してか幽体のように2人の美女が出現した。
一人はアリサさんよりも濃い炎のようなオレンジ髪をした女性。
そして顔立ちそうだが、スタイルもアリサさんと瓜二つの彼女は、ニヤニヤと笑みを浮かべるとおれの膝片側に座り、手元にあるグラスを取って飲み出した。……瓜二つだけど間接うんぬん気にしない活発な性格なのだ。
もう一人もリアナちゃんよりも濃い水のような蒼色の髪をした女性。
同じくというべきか、こちらもリアナちゃんと同じ顔立ちをしておりスタイルも同じだ。
こちらの彼女は個人では少々控えめな性格をしているが、隣の彼女とつい張り合うことがあり若干恥ずかしそうだが、同じようにもう片側の膝にちょこんと座って、さりげなくおれの胸元に顔を寄せて頰をスリスリしてきた。……可愛い反応だ、向こうの子は無防備の時にこっそりやるから、なかなかこんな機会はないんだよな。
薄い白のワンピースを着ている二人の女性が嬉しそうな顔を向けてきたので、おれも少し頬を緩めて声をかけた。
「ルナ、コロナ」
スザクの女神コロナ。
セイリュウの女神ルナ。
世界のバランスを保つ六体の女神の内の二柱。
おれの能力を結び付いて、今おれと一緒にいる。
「ああ、付き合ってくれるか?」
【うん!】
【はい!】
一度死に掛けたおれと契約を結んだ関係だ。
おかげでおれは命を拾い今もこの世に残っていたのだ。
そして契約内容とは、来るべきその日まで。
姉のアリサさん。
妹のリアナちゃん。
光と火の女神と、月と水の女神の継承者となった2人を、命を懸けて守り抜くこと。
いずれ世界が危機に瀕した時に彼女たちが立ち上がる。
おれはその時まで彼女たちを守る。何があっても必ず守り抜く。
目覚めた時、嬉し泣きをした彼女たちを見たその時から。
この笑みを失わせない。
どんな手を使っても、彼女たちと彼女たちのカインを守り通すと。
おれはそう決めて契約を結んだのだった。
急な暗殺未遂だったが、アーバンさんからの連絡を聞いてようやく終わったのだと息を吐いた。
弓矢の形状を銀鎖に戻すとおれは通信機越しにアーバンさんに礼を口にする。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
『気にするな。どうせこちらが気付けばすぐに依頼しただろう。今回は偶々ターゲットがカインだったからこうなったが、そのおかげで対応もし易かった。それに彼なら大抵の相手ならやられることもないだろう』
冗談そうに苦笑して告げられ、まだ後始末があるからとアーバンさんとの通信が終わる。
そしてもう一度深く息を吐いたおれは……ふと思った。
「偶々…………本当にそうか?」
そのまま視線を沈み始める太陽へ。
時刻も夕刻へと近付き日も沈み出す中、おれは街の外に向けるとその場から静かに移動した。
『ーー!!』
「やはりいたか」
密かに街を出て林に入ったところで、そいつの気配を感じて奇襲を仕掛ける。
出会い頭にその頭部へ蹴りを入れた。気で強化された蹴りはおれの倍の重さはあるそいつを吹き飛ばす。
『ーー!?』
『ーー!!』
そして騒ぎ出したそいつらは声を出す器官がないか、声とは言い難い叫びを上げる。
全身が木の蔓である魔物のエントは、ギチギチと音を立てておれに蔓を振るってきた。
「ランクD……まぁこのぐらいはしてくるか」
妙に街の外が騒がしい気配が集まってるのを感じて探ってみたが、どうやら街の騒ぎに反応したようだ。
数にして30体以上。
「進化種もいない。一気にいくか」
持っていた“グレイプニル”の鎖の一部を変化。
煌気を流し込むことで改良が不能な“クリアストーン”の形状を変えることが可能だ。
そこでさらに異能の【心王の絆】を使用。
この万物すべてに心に干渉する能力を使い“グレイプニル”の武器をより体に馴染ませ扱い易くしていく。
武器と同調してその技能を引き継ぐスキル────“アイテム”。
そうして手慣れたように作り出した細長い槍を投げて、ゆらゆらと歩いていた2体を重ねるように突き刺す。
「“形状変化”」
さらに遠隔操作して貫いた槍の形状を変化。
無数の針として貫いたエントから別のエントへ。次々と貫いていく。
が、木の魔物ということもあって臓器がないのか、貫かれた状態でも動き蔓を伸ばしてくるモノもいる。……少々厄介だ。
「火は……ここじゃマズイ。なら────ルナ、頼む」
【はい!】
刹那、おれの体を包み込むのは青き光。
光が止むと髪と瞳は青く染まり、服にも少しだけ青色の龍をイメージした模様が付いていた。
セイリュウの女神ルナのチカラを得た姿────【夜月静寂】。
適当に相手して追い返すことも考えたが、食糧である人間に飢えた大量のエントの数を見て、仕方なくこのモードに入っていることにした。
【行きましょう!  ヴィット!!】
「ああ」
パチンッと指を鳴らして【夜月静寂】のチカラと、煌気が込められた衝撃波を引き起こす。
「じゃあな」
煌気術奥義────“滅烈”。
瞬間、青き光の衝撃と共にエントの群れを抜き、林全体にまで衝撃が走り抜いていった。
***
時刻は夜へと移った。
騒いだエントの始末を終えてカインたちと合流したが……正直いって面倒だった。
少し間、持ち場を離れたのがバレて女性陣からのお叱りの嵐。ミオは当然だが小柄のルリから責めるような視線を浴びたのは結構辛かった。後からカインが急な事態があったからだとフォローしてくれたが、それはそれで質問の嵐が始まってしまうだけだった。……特にマリアさんの方から何か探るような視線が飛んできた時に、ブルッと背筋を震わせたのは内緒だな。
ちなみにリアナちゃんは絶賛不機嫌状態である。
完全に省かれたことを根に持ってるらしい。ぷぅと頬を膨らませて顔を合わせてくれなかった。……今度なんかプレゼントしよう。
「そう、そんなことがあったのね」
「いや、本当に騒がしい1日でしたよ」
そんな話を家に戻ったその夜、不思議にしていたアリサさんと酒を飲みながら語る。
一緒に帰って来たリアナちゃんの不機嫌な顔を見れば、何かあったのかと気付くのは当たり前だが、怒られることはなく苦笑されてしまうだけ。……こちらのことも察してくれる分、こういう時のアリサさんは優しい。
あと悪酔いしない程度に軽くだったが、頰僅かに上気している姿はなんとも言えず、ついつい色っぽいと思ってしまったのは内緒にしておこう。
***
「ふぅ、疲れた」
そうして酔いが回りアリサさんが自室に行った後、おれも自室に行って1人で酒を煽っていたが。
【じゃ、あたしたちも混ぜてよ】
【お酌しますよ?】
少しばかり寂しいか、と思っていたところで声が掛かる。
そんなおれの心境を察してか幽体のように2人の美女が出現した。
一人はアリサさんよりも濃い炎のようなオレンジ髪をした女性。
そして顔立ちそうだが、スタイルもアリサさんと瓜二つの彼女は、ニヤニヤと笑みを浮かべるとおれの膝片側に座り、手元にあるグラスを取って飲み出した。……瓜二つだけど間接うんぬん気にしない活発な性格なのだ。
もう一人もリアナちゃんよりも濃い水のような蒼色の髪をした女性。
同じくというべきか、こちらもリアナちゃんと同じ顔立ちをしておりスタイルも同じだ。
こちらの彼女は個人では少々控えめな性格をしているが、隣の彼女とつい張り合うことがあり若干恥ずかしそうだが、同じようにもう片側の膝にちょこんと座って、さりげなくおれの胸元に顔を寄せて頰をスリスリしてきた。……可愛い反応だ、向こうの子は無防備の時にこっそりやるから、なかなかこんな機会はないんだよな。
薄い白のワンピースを着ている二人の女性が嬉しそうな顔を向けてきたので、おれも少し頬を緩めて声をかけた。
「ルナ、コロナ」
スザクの女神コロナ。
セイリュウの女神ルナ。
世界のバランスを保つ六体の女神の内の二柱。
おれの能力を結び付いて、今おれと一緒にいる。
「ああ、付き合ってくれるか?」
【うん!】
【はい!】
一度死に掛けたおれと契約を結んだ関係だ。
おかげでおれは命を拾い今もこの世に残っていたのだ。
そして契約内容とは、来るべきその日まで。
姉のアリサさん。
妹のリアナちゃん。
光と火の女神と、月と水の女神の継承者となった2人を、命を懸けて守り抜くこと。
いずれ世界が危機に瀕した時に彼女たちが立ち上がる。
おれはその時まで彼女たちを守る。何があっても必ず守り抜く。
目覚めた時、嬉し泣きをした彼女たちを見たその時から。
この笑みを失わせない。
どんな手を使っても、彼女たちと彼女たちのカインを守り通すと。
おれはそう決めて契約を結んだのだった。
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