居候人は冒険者で店員さん

ルド@

【突然の依頼その10】

「終わったな」
「どうにか、ですが」


無事にパーティーも終わったところで、おれはアーバンさんと館の外で、人に聞かれないように話している。


一途きであるが、緊張状態にはなったが、何も問題ないと館の主人が言ってくれたお陰で大した問題も起きずに済んだ。


ただ、同じく護衛として来ていたカインたちが少々突っ込んで来たそうだが、他の護衛が無事に解決させたから退がっていいと、雇い主とアーバンさんから言われて不満そうにしたが、どう言っても何も聞かせて貰えず諦めて引き退ったそうだ。


「例の2人組はタッグで動くことが多い危険な連中だった。1人は爆発物などのトラップの仕込みなど専門にして、もう1人は国でも警戒している危険度がBの剣殺という男だった」


アーバンさんは部下達に持って来させた、報告書を見ながらおれに話してくれた。


おれ自身はそこまで興味はなかったが、もう夜も遅なりこのまま帰宅しても、どうせアリサさんからこっぴどく怒られるのは確定的だったから、ちょっとだけ聞いていくことにした。


「あの動きと魔法を考えるなら、それくらいはあるでしょうね。雷の魔法は本当に恐ろしかったです」


危険度Bと聞いて納得がいったが、おれの言葉にアーバンさんはおかし気に言ってくる。


「それでも君なら余裕だろ?  現に無傷だ。ランクがBであっても対魔法使い用の戦闘方法を身に付けている君なら容易いだろう?」
「食らったらアウトだったからですよ。あんな危険な剣、ヘタに受けて腕がスパンって斬られたら堪りません」


刃の面を叩いたり逸らしたりしたが、直接受けようとしなかった。


ガードできたかもしれないが、それでも思い出しただけで肝が冷える。
魔法として放たれた斬撃は問題なかったが、あの異様な剣捌きはたとえ来る所が分かっても、見ているだけで恐ろしかったのだ。


それにもし一太刀でも浴びていたらと思うと、おれはブルルと身体を震わせて危険な仕事を寄越してきた、アーバンさんを恨めしそうに睨んだ。


急な仕事でもやっぱこれはないだろうホント。


「う……すまん」


その視線を受けて申し訳なそうな顔で、悪かったと謝ってアーバンさんは話題を反らせるつまりで、労いの言葉を投げかけた。


「あ、ああ……うん!  確かにご苦労だった!  お陰で怪我人や死人も出ず助かった!」
「報酬は頼みますよ?」


これは絶対だ。散々働かせといて、もし下げたらキレてやる。


「ふっ勿論だ。ブラックリストの奴も捕まえたんだ、通常の倍以上は確実だ」


と嬉しそうに言ってくるので、報酬の件は大丈夫なようだ。
それにしてもブラックリストか、久々に大物取りができたみたいだな。


「それは嬉しい限りです。ですが、今後はなるべく前もって仕事の依頼を出してください。それに昨日あれだけ働かせたんですから、少しは他のアテを探しておいて下さいよ」


なにせ前日の依頼でおれをこき使ったのは、アーバンさんであるのだ。
今回と似た感じでおれに護衛関係の依頼を頼み込み、街付近の調査ということで付き添われたのだが、途中で最近溜まり出している盗賊の集団と戦闘にあってしまい、このまま放置できないと結局、アジトを潰すまで戦わされてしまったのだ。


「……ホント悪かった。急だったんだ、許してくれ。それにお前のようなタイプはそうそういないんだ……」
「急なのは分かりましたが、ですけどね。おれは魔法使いと違って、身体の疲労は重いんですよ」


別に戦うことには文句はない。これまでもそうだった。


ただ、事前の依頼内容ではあくまで護衛であったのに、最終的にアジトまで潰す形となっていたことだ。
どう考えても仕事外の内容であるが、アーバンさん達が戦う姿勢であったこともあり、おれも場の空気を読み立ち会ったが、それでも予想外に疲弊したのは言うまでもない。


魔法使いは魔法を使うと魔力を消費して、体が貧血のようになってしまうが、少し休めば問題なく動けるようになる。


しかし、おれは煌気術を使うと煌気と一緒に気力、体力を奪われてしまい、自然回復が落ちて疲労が溜まるのだ。
それに異能のスキルによって集中力や精神力を消耗して、神経をすり減らしてしまう。


二重の意味で消耗が激しいのだ、おれの場合は。


なのでおれはしっかり、次の日は休むとアーバンさんとギルドの方に伝えておいた。
魔力なしのおれの場合、身体的な疲労は看過できない、ちゃんと休息を取っておきたかった。……まぁ今回は寝すぎたけど。


それが次の日になって突然呼び出されて、異能を使わないといけない場所で、相手の1人は魔法を使う強敵だった。


いくら承諾した依頼でも文句を言いたくなったのだ。
そんなおれの訴えにアーバンさんも、とうとう項垂れて頭が上がらなくなっていた。


「分かってる、しばらくは呼ばない……筈だ」
「そこはちゃんと言ってくださいよ……」


けど、やはりというか、どうにも煮え切らないアーバンさんに、おれは呻くように軽くを頭を抱えた。……また、すぐ何かあったら呼ばれてしまいそうだよ、こりゃ。


そして突然発生した護衛依頼も敵の鎮圧によって無事に終えた。









「それで?  何かいうことは?」
「申し訳ありませんでした!」


家に戻ったおれはフライパンを持って、待ち構えていたアリサさんの前で土下座をしていた。
死神様はいらっしゃないので多少はマシだけど、油断したらまたすぐご降臨しそうな雰囲気だな。


「はぁ、遅いから心配してたけど、まさか貴族の館でそんなことをしてたなんて……」
「ま、まぁ……」


依頼完了後、帰宅してアリサさんに問答無用で正座状態にさせられたおれは、今日起こったことを全部、アリサさんに報告することとなった。


別に秘匿事項が含まれているわけでもないので、おれも抵抗なく正直に答えた。
まぁ、少々戦闘部分については言葉を濁したけど。


そうして話していくうちに、どんどん表情が険しくなっていくアリサさん。……いや、ホント怖いです。死神様が再降臨しそうでマジでチビりそうです。


「仕事なのは分かるわよ?  ヴィットがアーバンさんから気に入られて色々と、仕事を紹介されているのも知っているし。……でもね、あまりにも急過ぎるでしょう!?」


おっしゃる通りです。
夕方の時よりもずっとご立腹の様子で憤慨しているが。


それよりもちょっと怖いことが。
アリサさんのフライパンが真っ赤に染まって──────


「ふ!」


チリ……


「熱っっーー!?」
「姿勢を崩さない」


なんてスッゴイ熱気だよ!?  少し熱がかすっただけで転げ落ちそうだ!
あんなの食らった火傷どころじゃないよっ!?


「あ、アリサさん、さすがにそれは冗談じゃ済みませんって!」
「私を心配させた罰です!  いつものことでも、やっぱり心配なのよ!」


おれはあなたが持っている凶器の方が心配ですよ?


アリサさんが持っているフライパンから恐ろしい程、熱が出ていよいよ景色を歪み出している!  もう完全にご立腹なようだった。
この人は別に冒険者とかじゃないけど、実力は間違いなく…………うん、やめとこう。辛くなる。


「もう!  アーバンさんもアーバンさんよっ!  ヴィットの能力が探索向きだからって、いつもいつも危険なことばかり押し付けてっ!」
「で、でも、アーバンさんも申し訳ないって謝ってましたよ?  それに今回の報酬は結構なものって言ってまし──」
「はい?」
「──すみません黙ります」


ダメだ、ヘタなこと言ったら殺される。アーバンさんごめんなさい。
その後しばらくの間、説教が続きおれはいつ、あのフライパンの裁きを受けることになるのかと、説教が終わるまでヒヤヒヤするのであった。




「言いたいことも言えたことだし、ご飯にするわ。お腹空いているでしょう?  温めるからちょっと待ってて」
「は、はい、ありがとうございます!」


まだアリサさんの機嫌はよろしくないようだが、とりあえず不満をぶちまけたようで、少しは穏やかになっていた。……おれの心はすっかり疲弊してしまっていたが。


「そういえばカイン達はどうしたんですか?  仕事は一緒だったなので、もう帰って来てもいい頃だと思いますが……」


食卓のテーブルに皿を並べている時に気がついた。
おれとは少し内容は違うと思うが、カイン達も同じく護衛の依頼だったはず。ギルドに報告しに行った後ならもう帰って来てもいいのだが。


と、おれが疑問を浮かべいるとアリサさんが、ああと思い出したように顔で口を開いた。


「今日はカインもリアナも帰らないみたいよ?  なんでもパーティーメンバーと食事会を開くってさっき連絡があったから。はぁ、もっと早く連絡してくれれば良かったのに……」


そう言って隅に置いている受話器型のマジックアイテムを指すアリサさん。少しばかり不満そうだが、パーティーの交流も大事なことだと理解している分、おれの時よりはトゲが弱かった。


いやいや、アリサさんそのパーティーメンバーはハーレム要員ですからね?
ただの桃色な食事会ですよ。一歩間違えたら真っ赤な修羅場パーティーに変わるかもしれないけど。


にしても、カインとリアナちゃんは帰って来ないのか。……カインは永遠に帰ってこないかもしれないが。


まぁ冗談(?)、は抜きにしても大方、最近入ったばかりのリアナちゃんと他のメンバーとの親睦を深めるのがカインの作戦だと思うが。


ただあの女性陣とリアナちゃんかぁ…………大丈夫か?


既に修羅場みたいなのが、影ながら発生しているようだし。
……本当に血み泥な展開にならなければいいが。


ああ、けどカインが刺されるのは全然構わないからな?


「て、ことは……」


───まぁ、それはそれとして。
思い掛けないハッピーな情報が紛れていたことを、おれはしっかりと気付いていた!


おれは期待の眼差しでアリサさんと向き合うと、嬉し恥ずかしい質問を────!!


「つまり今晩はおれとアリサさんの二人きっ───「変ことしたら焼き切るから」りって、なに言ってんのっ!?」


残念ながらハッピーな展開は期待できそうになかった。
しくしく……。


【ご苦労さま、私たちの──】
【ナイトさま?】


「っ」


と、耳元で2人の女性たちの声が聞こえて、おれは少々照れ臭いとアリサさんにバレないように手を振って、何もない天井に向かって苦笑気味に述べる。


「ナイトじゃないって……。本当に困った女神さまたちだよ」


耳元でおかしそうに笑っている女性たちに困りつつ、おれは表情でないようにアリサさんと食事にするのだった。


今日はホント、色々あったわーー。



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