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第23話 魔神と魔導神 愚かな者を裁く師の鉄槌。
【うんうん、実に面白かったぁ。アレが《魔導神》と《魔王》の後継者かぁ……】
とあるビルの屋上。崩壊していく塔を見ながら、《魔神》の彼女は興味深そうに頷いている。
彼女にとっても研究価値のある塔であったが、今となってはどうでもいい。
【最高じゃないかぁ。アレなら今後も試し甲斐がありそうだねぇ】
寧ろ壊れてくれた方が後腐れがない。
彼女の興味は『二つの魔のチカラ』を宿している彼に移っていた。
【あの龍人を失ったのは惜しいけど、所詮は実験体の1体だし最近聞き分けも悪くなっていたから、ここからが引き際だったかもねぇ】
所持する能力を引き上げたら面白くなりそうだと話を持ち掛けたが、守護獣の一角に過ぎない。ほんの少しだけ力を分け与えただけで、あっさりと堕ちてしまった。
しかし、それが普通なのだ。
魔神の力は全ての悪の集合体にして頂点の力。
同じ【魔】の名を持つ《魔導神》とは大きく違うのだ。……唯一魔王だけは、魔神の力を取り込んで未知の領域に踏み込んだようだが、そんな《魔王》もあっさりと裏切ってみせた。
【はぁ、あの《魔王》が情報を漏らした所為で、散々同士がやられてるのに……】
だからこそ、次なる魔神に至る存在を探していたが、思わぬ形で最高の素材を巡り会えたようだ。
【なかなか《《同胞》》が増えないけど、あのはた迷惑だった《魔王》の力すら受け入れた彼なら───】
『修羅の運命を裁く神の剣』
【───ッ!?】
死が脳裏に過った一瞬のうちに、その場から退避した魔神だが、まるで思考を読んだかのように、飛来した『黄金の剣』は行く手を遮り、地に突き刺さっていた。
【“神の一振り”……】
神々しく輝きを見せているそれは、先程の彼が持っていたのは桁外れ。決して壊せない訳ではないが、天敵中の天敵の魔力が込められた一振り。ヘタ触れたら命のレベルで危険だと魔神の本能が激しく警報を鳴らしていた。
「大人しく退けば見逃してもいいと思った」
頭上から彼女に掛ける声。淀みなく淡々とした声音であるが、見上げなくても彼女は理解出来ていた。
「『魔神狩り』なんてしているオレから言わせれば、お前程度の奴は小物同然だ。派手にやらかす連中に比べれば、まだまだお利口な子供だな」
前半はともかく後半の小物扱いや子供扱いは、彼女も文句の1つは言いたくなったが、安い挑発に乗れば命が無いこと理解していた。
【……いつから此方へ?】
「少し前だが……ところで、いつまでそうしているつもりだ?」
【出来れば、このまま帰らせて欲しいけどなぁー?】
いつまでも顔を上げないことを指摘される。出来れば上げずにさっさと立ち去りたいが、恐らく退避行動をした刹那の内に首か胴体がお別れしてしまう。
【いくら分身でも流石に《魔導神》を相手したくないからねぇ? お宝回収や証拠隠滅もしないからダメぇかなぁ?】
何処かわざとらしい彼女は弱々しい声音で《魔導神》に慈悲を求めようとするが……。
「さっき言った筈だ。大人しく退けば見逃してもいいと────あの時なら」
【──ッ!】
続いて襲いかかったのは、神炎を支配する槍の一槍。
触れただけでも焼き尽くされそうなソレを咄嗟に反転して躱した魔神だが、さらに回転して飛来した神雷を支配する大槌を障壁越しに受けてしまう。
【分身なのに『古代原初魔法』を3つも……!】
「魔法は日々進化するもんだ」
反動で飛ばされた魔神を先回した神剣の振り下ろしが直撃。遠隔操作でボールのように彼女をビルへと叩き付けた。
【このチートバグキャラがぁ!!】
すぐさま飛び出た彼女だが、すっかり激怒した様子で上空から見下ろす彼を睨みつけて飛び掛かろうと──
【がぁ!?】
回転した横薙ぎの槍を受けて別のビルに叩き付けられた。
【キャァアアアア!?】
さらに受けた際に神炎を浴びせてしまい、全身を炎で覆われてしまう。ビルの壁を転がりながら地上まで落下していく。必死に炎を消そうと魔神の魔力を放出しているが……。
「解放───『虹光王の極衣』『極・虹光の障壁』」
虹の障壁が結界となって、周囲のビル群と一緒に地上を覆う。
放出された魔神の魔力は虹の障壁を侵食しようとするが、逆に封じ込まれる。触れただけでも有毒な筈の魔力が無力化されている。
一瞬にして魔神にとって最悪な環境となった。
【神の魔力を混ぜているの!?】
「当たり前だ。お前の目の前にいるのは誰だと思ってる?」
虹のオーラを纏った魔導神───ジーク・スカルスが地上に降り立つ。
「オレは《魔導神》───神の一角を引き継いだんぞ。力に溺れて弱さに怯えたお前らと違ってな」
【───ッ! 黙れぇッ!!】
それが引き金であった。
神炎を消して立ち上がったが、これでもない怒りの形相で全身から憤怒の魔力を爆発させた。
【力に溺れたのは貴様らもだろう!! 何が神の一角だッ!! いつから貴様らが世界の支配者となったァ!?】
そして、両手から禍々しく漆黒の光線を放つ魔神。
ジークごと虹の世界を壊してやろうと、莫大な量の魔力を注ぎ込んで巨大な光の砲線を───
「かつてはそうだった。だが、今は違う」
立ち塞がった神雷の大槌が放出した巨大な雷が漆黒の砲線からジークを守る。
さらに側に集まった黄金の神剣と神炎の槍が共鳴し合い光を増幅させる。
「自分たちの運命に立ち向かおうとしないお前らじゃ、オレどころか弟子にだって勝てないぜ?」
『古代原初魔法』の融合魔法で生み出された『緋金の炎』が光線となって、漆黒の砲線を吹き飛ばした。
何者も貫く刃の槍となって、魔神へと伸びて行った。
「魔王を通してお前らのことも理解しようとしたアイツにも劣る。全世界で最も心が弱く臆病な者たちだ」
【何が弟子だァ!? あんな奴がボクたちの何が────ギャアアアアアアアアアアッッ!?】
展開した高度な魔法陣の障壁も虚しく、怒りと激痛から肉体を貫かれた魔神は絶叫を上げると全身の魔力が暴発。
怪しげな漆黒の爆発を起こして、この世界から消滅したのだった。
とあるビルの屋上。崩壊していく塔を見ながら、《魔神》の彼女は興味深そうに頷いている。
彼女にとっても研究価値のある塔であったが、今となってはどうでもいい。
【最高じゃないかぁ。アレなら今後も試し甲斐がありそうだねぇ】
寧ろ壊れてくれた方が後腐れがない。
彼女の興味は『二つの魔のチカラ』を宿している彼に移っていた。
【あの龍人を失ったのは惜しいけど、所詮は実験体の1体だし最近聞き分けも悪くなっていたから、ここからが引き際だったかもねぇ】
所持する能力を引き上げたら面白くなりそうだと話を持ち掛けたが、守護獣の一角に過ぎない。ほんの少しだけ力を分け与えただけで、あっさりと堕ちてしまった。
しかし、それが普通なのだ。
魔神の力は全ての悪の集合体にして頂点の力。
同じ【魔】の名を持つ《魔導神》とは大きく違うのだ。……唯一魔王だけは、魔神の力を取り込んで未知の領域に踏み込んだようだが、そんな《魔王》もあっさりと裏切ってみせた。
【はぁ、あの《魔王》が情報を漏らした所為で、散々同士がやられてるのに……】
だからこそ、次なる魔神に至る存在を探していたが、思わぬ形で最高の素材を巡り会えたようだ。
【なかなか《《同胞》》が増えないけど、あのはた迷惑だった《魔王》の力すら受け入れた彼なら───】
『修羅の運命を裁く神の剣』
【───ッ!?】
死が脳裏に過った一瞬のうちに、その場から退避した魔神だが、まるで思考を読んだかのように、飛来した『黄金の剣』は行く手を遮り、地に突き刺さっていた。
【“神の一振り”……】
神々しく輝きを見せているそれは、先程の彼が持っていたのは桁外れ。決して壊せない訳ではないが、天敵中の天敵の魔力が込められた一振り。ヘタ触れたら命のレベルで危険だと魔神の本能が激しく警報を鳴らしていた。
「大人しく退けば見逃してもいいと思った」
頭上から彼女に掛ける声。淀みなく淡々とした声音であるが、見上げなくても彼女は理解出来ていた。
「『魔神狩り』なんてしているオレから言わせれば、お前程度の奴は小物同然だ。派手にやらかす連中に比べれば、まだまだお利口な子供だな」
前半はともかく後半の小物扱いや子供扱いは、彼女も文句の1つは言いたくなったが、安い挑発に乗れば命が無いこと理解していた。
【……いつから此方へ?】
「少し前だが……ところで、いつまでそうしているつもりだ?」
【出来れば、このまま帰らせて欲しいけどなぁー?】
いつまでも顔を上げないことを指摘される。出来れば上げずにさっさと立ち去りたいが、恐らく退避行動をした刹那の内に首か胴体がお別れしてしまう。
【いくら分身でも流石に《魔導神》を相手したくないからねぇ? お宝回収や証拠隠滅もしないからダメぇかなぁ?】
何処かわざとらしい彼女は弱々しい声音で《魔導神》に慈悲を求めようとするが……。
「さっき言った筈だ。大人しく退けば見逃してもいいと────あの時なら」
【──ッ!】
続いて襲いかかったのは、神炎を支配する槍の一槍。
触れただけでも焼き尽くされそうなソレを咄嗟に反転して躱した魔神だが、さらに回転して飛来した神雷を支配する大槌を障壁越しに受けてしまう。
【分身なのに『古代原初魔法』を3つも……!】
「魔法は日々進化するもんだ」
反動で飛ばされた魔神を先回した神剣の振り下ろしが直撃。遠隔操作でボールのように彼女をビルへと叩き付けた。
【このチートバグキャラがぁ!!】
すぐさま飛び出た彼女だが、すっかり激怒した様子で上空から見下ろす彼を睨みつけて飛び掛かろうと──
【がぁ!?】
回転した横薙ぎの槍を受けて別のビルに叩き付けられた。
【キャァアアアア!?】
さらに受けた際に神炎を浴びせてしまい、全身を炎で覆われてしまう。ビルの壁を転がりながら地上まで落下していく。必死に炎を消そうと魔神の魔力を放出しているが……。
「解放───『虹光王の極衣』『極・虹光の障壁』」
虹の障壁が結界となって、周囲のビル群と一緒に地上を覆う。
放出された魔神の魔力は虹の障壁を侵食しようとするが、逆に封じ込まれる。触れただけでも有毒な筈の魔力が無力化されている。
一瞬にして魔神にとって最悪な環境となった。
【神の魔力を混ぜているの!?】
「当たり前だ。お前の目の前にいるのは誰だと思ってる?」
虹のオーラを纏った魔導神───ジーク・スカルスが地上に降り立つ。
「オレは《魔導神》───神の一角を引き継いだんぞ。力に溺れて弱さに怯えたお前らと違ってな」
【───ッ! 黙れぇッ!!】
それが引き金であった。
神炎を消して立ち上がったが、これでもない怒りの形相で全身から憤怒の魔力を爆発させた。
【力に溺れたのは貴様らもだろう!! 何が神の一角だッ!! いつから貴様らが世界の支配者となったァ!?】
そして、両手から禍々しく漆黒の光線を放つ魔神。
ジークごと虹の世界を壊してやろうと、莫大な量の魔力を注ぎ込んで巨大な光の砲線を───
「かつてはそうだった。だが、今は違う」
立ち塞がった神雷の大槌が放出した巨大な雷が漆黒の砲線からジークを守る。
さらに側に集まった黄金の神剣と神炎の槍が共鳴し合い光を増幅させる。
「自分たちの運命に立ち向かおうとしないお前らじゃ、オレどころか弟子にだって勝てないぜ?」
『古代原初魔法』の融合魔法で生み出された『緋金の炎』が光線となって、漆黒の砲線を吹き飛ばした。
何者も貫く刃の槍となって、魔神へと伸びて行った。
「魔王を通してお前らのことも理解しようとしたアイツにも劣る。全世界で最も心が弱く臆病な者たちだ」
【何が弟子だァ!? あんな奴がボクたちの何が────ギャアアアアアアアアアアッッ!?】
展開した高度な魔法陣の障壁も虚しく、怒りと激痛から肉体を貫かれた魔神は絶叫を上げると全身の魔力が暴発。
怪しげな漆黒の爆発を起こして、この世界から消滅したのだった。
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