オリジナルマスター
〜オリジン・ワールド〜
戦争は起きなかった。
世界全体を巻き込む『神の試練』とも呼べる大戦だったが。
やがて『古代原初魔法』の継承者達は争いを求めず、歴史に残酷な血が流れることはなく、平和な日々が送られていた。
「さて、飯でも食いに行くか」
聖国のウルキアの街。
冒険者として過ごすジーク・スカルスは、行き付けの酒場に向かう。
途中、ウルキアの学園が見えるが、ジークは気にせず歩いて行く。
興味が無いわけはないが、色々と面倒な秘密を抱えている彼には、余程のことがない限り潜りたくない門だ。
「お、ジーク!」
「ん、おお、お前らか……外の依頼か?」
「うん、そうだぁ。……よかったらまた組まない? ジーク君が居ればこっちも助かるんだけど」
「ん、気が向いたなら、今日はオフだろう?」
途中、同業者にも会うとちょうど出かけようとしていたか、仕事に誘われるがウフな格好を見せてお休みなことをアピールする。
残念そうにため息を吐かれるが、正直必要ないだろうとバランスの取れた4人の男女パーティを見る。
基本はソロで動く彼だが、いざという時は臨時で加わってサポートしてきた影響か、偶にこうして誘われたり勧誘されたりしてきた。
「ハハハハっ! そうか、残念だ」
「そうね、……あ、もしかしていつもの店に行くの? だったら今日はやめた方が良いと思うけど」
「? なんでだ?」
弓使いと思われる女性の1人がふとした顔で言ってくるが、理由が分からず首を傾げていると、ニヤとした顔で女性が切り出した。
「どうせ店に来るからって、サナちゃん達が待ち構えてるわよ?」
「……」
彼はのんびりと好きに過ごすのが好きだ。
冒険は嫌いではなかったが、争いごとは嫌い。
戦いも必要でなければ、好んでやろうとはしない。
血生臭い争いなど御免だった。
「勝負よ、ジーク!」
「断る。店員さん、注文頼む」
「って、逃げるなっ!」
警告されたが、結局行き付けの酒場に到着すると早々に絡まれた。
彼の前に白服の騎士のような格好をし、膨れ上がった双兵持ちの女性が立ち塞がった。
「何度も何度も逃げられるなんて思わないで! 今日こそ、その化けの皮を剥いでやるわ!」
無視して先に進むと回り込まれてビシッと指を差される。
金髪の同年代近い女性で、名はサナ・ルールブ。
街でも有名な名家の貴族らしいが、冒険者として活動している。
だが、有名な貴族の立場の所為か、大半から特別視されて距離も置かれていた。
ただ、貴族に対して一切気にしない彼が気に入ったか、それともデリカシーゼロな態度に気に入らないのか、事あるごとに絡んで来た。
我の強そうな顔付き凛々しい印象があり、見た目は美少女であるが、鋭い眼力はどこか直視し難いと彼は視線を逸らす。
ふと彼女の背後にいる、2人の女性とも目が合う。
1人はふんわりとした水色の髪をした女性、アイリス・フォーカス。
魔法職か髪の色よりも濃い青色のローブを羽織っており、杖を持ってない方の手で彼に手を振っていた。
若干申し訳なそうではあるが、彼に出会えて嬉しいのか、にこりと微笑みを浮かべていた。
もう1人はショートのオレンジ髪の同じく女性、ミルル・カルマラ。
ボーイッシュな印象のある、スレンダーな体型の盗賊職か、身軽そうな黒の軽装な格好で腰辺りに短剣が差してあった。
こちらは楽しそうにニヤリ顔をして傍観している。
この状況を楽しむ気満々の笑顔だと、ジークは苦い顔でどっちも助けてくれそうにないと諦めた。
「ジーク、……さっきから何処見てるわけ?」
「ええと、メニュー表」
ついつい、2人の全身を観察するように見ていた。
ギロッとした目付きのサナに詰め寄られ、視線が覆っても鎧越しに揺れる胸元に移って……。
「本当に何処見ているのかしら? 不敬罪で訴えるわよ?」
「ご勘弁を」
残念ながら食事後の勝負は確定のようだ。
コキっと首を鳴らして、ジークは歩き出すが、ふと思い付いたか振り返って3人に尋ねた。
「なぁ、もし飯がまだなら一緒に食べないか?」
何気ない様子で美少女3人を食事に誘った。
場所はムードもない行き付けの酒場であったが。
【オリジナルマスター 〜オリジン・ワールド〜】に続く。
世界全体を巻き込む『神の試練』とも呼べる大戦だったが。
やがて『古代原初魔法』の継承者達は争いを求めず、歴史に残酷な血が流れることはなく、平和な日々が送られていた。
「さて、飯でも食いに行くか」
聖国のウルキアの街。
冒険者として過ごすジーク・スカルスは、行き付けの酒場に向かう。
途中、ウルキアの学園が見えるが、ジークは気にせず歩いて行く。
興味が無いわけはないが、色々と面倒な秘密を抱えている彼には、余程のことがない限り潜りたくない門だ。
「お、ジーク!」
「ん、おお、お前らか……外の依頼か?」
「うん、そうだぁ。……よかったらまた組まない? ジーク君が居ればこっちも助かるんだけど」
「ん、気が向いたなら、今日はオフだろう?」
途中、同業者にも会うとちょうど出かけようとしていたか、仕事に誘われるがウフな格好を見せてお休みなことをアピールする。
残念そうにため息を吐かれるが、正直必要ないだろうとバランスの取れた4人の男女パーティを見る。
基本はソロで動く彼だが、いざという時は臨時で加わってサポートしてきた影響か、偶にこうして誘われたり勧誘されたりしてきた。
「ハハハハっ! そうか、残念だ」
「そうね、……あ、もしかしていつもの店に行くの? だったら今日はやめた方が良いと思うけど」
「? なんでだ?」
弓使いと思われる女性の1人がふとした顔で言ってくるが、理由が分からず首を傾げていると、ニヤとした顔で女性が切り出した。
「どうせ店に来るからって、サナちゃん達が待ち構えてるわよ?」
「……」
彼はのんびりと好きに過ごすのが好きだ。
冒険は嫌いではなかったが、争いごとは嫌い。
戦いも必要でなければ、好んでやろうとはしない。
血生臭い争いなど御免だった。
「勝負よ、ジーク!」
「断る。店員さん、注文頼む」
「って、逃げるなっ!」
警告されたが、結局行き付けの酒場に到着すると早々に絡まれた。
彼の前に白服の騎士のような格好をし、膨れ上がった双兵持ちの女性が立ち塞がった。
「何度も何度も逃げられるなんて思わないで! 今日こそ、その化けの皮を剥いでやるわ!」
無視して先に進むと回り込まれてビシッと指を差される。
金髪の同年代近い女性で、名はサナ・ルールブ。
街でも有名な名家の貴族らしいが、冒険者として活動している。
だが、有名な貴族の立場の所為か、大半から特別視されて距離も置かれていた。
ただ、貴族に対して一切気にしない彼が気に入ったか、それともデリカシーゼロな態度に気に入らないのか、事あるごとに絡んで来た。
我の強そうな顔付き凛々しい印象があり、見た目は美少女であるが、鋭い眼力はどこか直視し難いと彼は視線を逸らす。
ふと彼女の背後にいる、2人の女性とも目が合う。
1人はふんわりとした水色の髪をした女性、アイリス・フォーカス。
魔法職か髪の色よりも濃い青色のローブを羽織っており、杖を持ってない方の手で彼に手を振っていた。
若干申し訳なそうではあるが、彼に出会えて嬉しいのか、にこりと微笑みを浮かべていた。
もう1人はショートのオレンジ髪の同じく女性、ミルル・カルマラ。
ボーイッシュな印象のある、スレンダーな体型の盗賊職か、身軽そうな黒の軽装な格好で腰辺りに短剣が差してあった。
こちらは楽しそうにニヤリ顔をして傍観している。
この状況を楽しむ気満々の笑顔だと、ジークは苦い顔でどっちも助けてくれそうにないと諦めた。
「ジーク、……さっきから何処見てるわけ?」
「ええと、メニュー表」
ついつい、2人の全身を観察するように見ていた。
ギロッとした目付きのサナに詰め寄られ、視線が覆っても鎧越しに揺れる胸元に移って……。
「本当に何処見ているのかしら? 不敬罪で訴えるわよ?」
「ご勘弁を」
残念ながら食事後の勝負は確定のようだ。
コキっと首を鳴らして、ジークは歩き出すが、ふと思い付いたか振り返って3人に尋ねた。
「なぁ、もし飯がまだなら一緒に食べないか?」
何気ない様子で美少女3人を食事に誘った。
場所はムードもない行き付けの酒場であったが。
【オリジナルマスター 〜オリジン・ワールド〜】に続く。
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