オリジナルマスター
第14話 氷の女王と挑む挑戦者たち。
─────試合が開始して数分後のことであった。
あのジークの試合を見ていた所為であり、多少の異常事態にも耐性が付いてしまった観客達。
内心、この試合には期待を抱いてない者も少なくはなかった。
『『…………』』
だが、始まってみれば観客席には大きな沈黙が生まれている。
皆、起きていることに言葉を失っていた。
たった一人の生徒の戦いに。
「想定外と言う以外ありませんね……」
そして、それは観客の者達だけでない。
実際に試合をしてその者と対決していた一人でもあった、クロウ────《復讐の壊滅者》も呻くようにして惨状を眺めた。
「いや、本当に信じ難い光景です……」
ついつい目を疑いたくなる。
疑心暗鬼な様子で彼の視界には信じらない、氷の世界が出来上がっていた。
「あなたは……何者ですか……いったい」
参加した強者達は揃いも揃い、彼女の絶氷に圧倒されてしま敗れ。残ったのはただ一人の《復讐の壊滅者》もまた、手も足も出ず立ち尽くすだけ。
「ふふふっ」
対象的に相手は氷属性の魔力のオーラを吹き荒らして、ただ微笑だけを向けて《復讐の壊滅者》を見据える。
広がる世界に相応しい氷の女王のような風格を纏う。
「──────『凍結された幽閉世界』」
規格外な学生となったサナ・ルールブが《復讐の壊滅者》と対峙した。
◇◇◇
─────試合開始、直後に遡る。
「……」
開始直後に突如、サナは警戒する面々を無視して歩き出した。
そうして中心に立つと、困惑する周囲に向かって、微笑を。
────クス
『─────っ!!』
瞬間、参加者全員の背筋に氷の刃が突き刺さる。
周囲を一瞥するような彼女の微笑みにも似た冷笑は、彼らの戦闘態勢を強制的にオンにする。
「────氷よ来たれ」
周りの変化と同時にサナは空へと手をかざした。
「『雹絶王の絶対領域』」
《冥女》を上回る展開速度とジークに匹敵する放出力で、舞台を一瞬で氷の世界へと造り変える。
『─────!!!!』
一転する世界に皆、息を呑み心臓を握られたような、強烈な圧迫感に見舞われる。
今までにない未知なる強敵を前に、皆、自然と戦うべき相手が一人に絞った。
初めに動き出そうとしたのは、クロウと同じウルキア学園の風紀委員長、妖刀使いでもあるシオン・ミヤモトであった。
「『裏八式───」
予選試合でも見たことのないサナの様子と、変えられた氷の世界に危機感を覚えたシアン。
厄介と思い早々に片付けようと妖気を解放させて、斬りかかろうと構えた─────ところであった。
「え……?」
気付けば視界からサナは消える。
「こちらですよ?」
そして気配もなく背後に回られていた。
背後から聞こえた声にシオンの心臓は跳ね上がり、体が硬直しそうになるが、
「……ぐ」
解放した妖気のお陰で振り切れた。
体を駒のように反転させると、止めそうになった剣技が発動した。
「───っ血乱れ青桜』ッ!!」
「『凍結時間』」
しかし、タイムラグなしで発現された原初の氷結魔法によって阻まれる。恐ろしいことに素手でサナは妖刀を受け止めてみせた。
妖気が解放された彼女の妖刀を、サナの手から放出された魔法で防ぐ。信じ難いことに刀っだけでなく、シオンの妖気さえも凍結させたのだ。
その現象にシオンは狼狽の色をさらに強めて、両目を大きく見開いて凍り付いていく刀を凝視した。
「こ、これは……っ! オリジナル……!?」
「正解────そして終わりです」
答える必要のない質問にに答えると、サナは終わりを告げる。
妖気と刀を凍らせた魔法を広げて、シオンの腕から体まで凍らせに掛かる。
「────っ!?」
「戸惑いは油断に繋がります」
そして止まり戸惑っているシオンの胸元、両肩、両足に氷のナイフが突き刺していた。
「だから、こうも簡単に通るんです」
「は……」
(は、速すぎる……!)
精神ダメージに変換され、シオンが気付いた時には手遅れであった。全身に突き刺さったナイフによるダメージが彼女の動きを制限させる。
(どうなっているのっ……? こんな戦い方、以前の彼女にはなかった……まさか偽者??)
ダメージのせいで思考が安定しないシオンは、その状態でも懸命に打開策を───
「ですが良い腕でした。その腕なら将来は《無双》にも届くかもしれませんね」
与えられる筈もなく、サナに正面から見つめられる。
まるで指導者のような目で告げると、もう身動きも取れない状態となったシオンの顔も凍らせて、
「ですが、この試合は私の勝ちです」
あっという間に氷の肖像を作り上げたのだった。
シオンもなんとか不意の攻撃にも反応し魔法に対しても健闘をしたが、覆らない圧倒的な格の違いによって呆気なく敗北した。
「次はあなたです」
「……排除、『短距離移動』────」
次に狙われたのは聖国の王都の生徒であり、リヴォルトとグレリアの実験により、シルバーの魔法を模倣するカルマ・ルーディスであるが、感情が欠落しているカルマは動じない。
「排除」
突如リタイアしたシオンとその異常な氷魔法に動揺するかと思えば、感情が欠落している為に一切動揺の色を見せず、不意を突こうと空間移動で彼女の背後に回り『絶対切断』の手刀を打ち込もうした。
「そう来ることは、分かってましたよ?」
「……っ?」
だが、その彼の行動を読んでいたのか、移動と同時に背後に出現したカルマに掌底を打つ。
強くないただの掌底であったが、カルマの体は後ろに下がり、展開していた氷の捕縛魔法に捕まった。
「まずは魔法を封じさせて貰います。『白き薔薇の呪い』」
『絶対切断』の手刀を拘束魔法とはまた違う、別の氷結魔法を発現する。
「ある意味あなたが一番面倒ですからね。これで動けませんし魔法も使えません」
「……!!」
白き氷の薔薇の蔓がカルマの腕ごと、彼を凍らして拘束する。何かしらの封印、吸収効果があるのか、掴まれ手に纏っていていた『絶対切断』が霧散するように消失した。
「魔力が……吸収? 封印?」
「人形と化している以上、状況処理が追い付かなくなれば簡単に崩れます」
原初魔法が消された現象に戸惑い、カルマは目を左右に動かして混乱している。予期せぬ状況に動けなっていた。
だが、シオンの時のような全体凍結によるトドメは刺さない。
「あなたは後で用があるので、そのままでいてください」
「な、に……? グウッ───!!」
捕縛魔法と薔薇の蔓で身動きを取れなくした後、理解が追いつかないカルマの頭部めがけて手刀を。
サナは魔力を込め、意識を刈り取る一撃を浴びせた。
彼女がカルマの意識が飛んだのを確認した直後であった。
────視界の端から青髪がチラつくと刃が迫る。気配も消されたタイミングも良い、奇襲攻撃であった。
「良い攻撃ですが、氷のフィールド内では意味ありませんでしたね」
「っ」
だが、その領域を支配しているサナに驚きはなかった。分かっていたのか、迫ってきた刃を顔を逸らすだけ躱して、剣士の刃も空を切るだけに終わった。
代わりとばかりに驚く相手に膝蹴りを打ち込み。バランスを崩しにかかるが、奇襲を仕掛けた剣士の方も素早く動く。
「ぐ……!」
背中からの膝蹴りを逃げるように前に飛んで躱すと、追い打ちを掛け迫った相手が間合いに入ったところで、体を反転させて一閃。
白き霧を帯びた細剣の袈裟斬りを浴びせる。
「ふふっ」
しかし、その剣もまた空を切るだけ。
余裕の動作で体を逸らしただけで躱された。
「「……」」
そこでようやくお互いに動きを止めた。
「これを躱すんですか……」
「《無双》……彼女のお弟子さんですか」
剣で仕掛けたのは、中立国セナリア学園のシズク・サカモトだ。
シオンに並ぶ剣士でもある彼女だが、SSランク《無双》の弟子でもあり、《天魔》と同じ底知れない雰囲気を纏っていた。
その彼女も白い細剣を抜いた状態で踏み込もうとはしない。奇襲が失敗した途端に距離を取って、警戒していた。
「良い守備ですが、まだ足りませんね。少なくとも」
「────っ!?」
だが、その警戒も虚しくサナはシズクの視界から消える。
突然の消失に驚くシズクであったが、その表情もすぐに一変する。
「これぐらいは対応できなくては」
「っ」
すぐ側で声がしたと思いきや、巨大な氷の刃が体を射抜いた。
腹に突き刺さった氷の刃に、シズクは呆然と立ち尽くした。
あのジークの試合を見ていた所為であり、多少の異常事態にも耐性が付いてしまった観客達。
内心、この試合には期待を抱いてない者も少なくはなかった。
『『…………』』
だが、始まってみれば観客席には大きな沈黙が生まれている。
皆、起きていることに言葉を失っていた。
たった一人の生徒の戦いに。
「想定外と言う以外ありませんね……」
そして、それは観客の者達だけでない。
実際に試合をしてその者と対決していた一人でもあった、クロウ────《復讐の壊滅者》も呻くようにして惨状を眺めた。
「いや、本当に信じ難い光景です……」
ついつい目を疑いたくなる。
疑心暗鬼な様子で彼の視界には信じらない、氷の世界が出来上がっていた。
「あなたは……何者ですか……いったい」
参加した強者達は揃いも揃い、彼女の絶氷に圧倒されてしま敗れ。残ったのはただ一人の《復讐の壊滅者》もまた、手も足も出ず立ち尽くすだけ。
「ふふふっ」
対象的に相手は氷属性の魔力のオーラを吹き荒らして、ただ微笑だけを向けて《復讐の壊滅者》を見据える。
広がる世界に相応しい氷の女王のような風格を纏う。
「──────『凍結された幽閉世界』」
規格外な学生となったサナ・ルールブが《復讐の壊滅者》と対峙した。
◇◇◇
─────試合開始、直後に遡る。
「……」
開始直後に突如、サナは警戒する面々を無視して歩き出した。
そうして中心に立つと、困惑する周囲に向かって、微笑を。
────クス
『─────っ!!』
瞬間、参加者全員の背筋に氷の刃が突き刺さる。
周囲を一瞥するような彼女の微笑みにも似た冷笑は、彼らの戦闘態勢を強制的にオンにする。
「────氷よ来たれ」
周りの変化と同時にサナは空へと手をかざした。
「『雹絶王の絶対領域』」
《冥女》を上回る展開速度とジークに匹敵する放出力で、舞台を一瞬で氷の世界へと造り変える。
『─────!!!!』
一転する世界に皆、息を呑み心臓を握られたような、強烈な圧迫感に見舞われる。
今までにない未知なる強敵を前に、皆、自然と戦うべき相手が一人に絞った。
初めに動き出そうとしたのは、クロウと同じウルキア学園の風紀委員長、妖刀使いでもあるシオン・ミヤモトであった。
「『裏八式───」
予選試合でも見たことのないサナの様子と、変えられた氷の世界に危機感を覚えたシアン。
厄介と思い早々に片付けようと妖気を解放させて、斬りかかろうと構えた─────ところであった。
「え……?」
気付けば視界からサナは消える。
「こちらですよ?」
そして気配もなく背後に回られていた。
背後から聞こえた声にシオンの心臓は跳ね上がり、体が硬直しそうになるが、
「……ぐ」
解放した妖気のお陰で振り切れた。
体を駒のように反転させると、止めそうになった剣技が発動した。
「───っ血乱れ青桜』ッ!!」
「『凍結時間』」
しかし、タイムラグなしで発現された原初の氷結魔法によって阻まれる。恐ろしいことに素手でサナは妖刀を受け止めてみせた。
妖気が解放された彼女の妖刀を、サナの手から放出された魔法で防ぐ。信じ難いことに刀っだけでなく、シオンの妖気さえも凍結させたのだ。
その現象にシオンは狼狽の色をさらに強めて、両目を大きく見開いて凍り付いていく刀を凝視した。
「こ、これは……っ! オリジナル……!?」
「正解────そして終わりです」
答える必要のない質問にに答えると、サナは終わりを告げる。
妖気と刀を凍らせた魔法を広げて、シオンの腕から体まで凍らせに掛かる。
「────っ!?」
「戸惑いは油断に繋がります」
そして止まり戸惑っているシオンの胸元、両肩、両足に氷のナイフが突き刺していた。
「だから、こうも簡単に通るんです」
「は……」
(は、速すぎる……!)
精神ダメージに変換され、シオンが気付いた時には手遅れであった。全身に突き刺さったナイフによるダメージが彼女の動きを制限させる。
(どうなっているのっ……? こんな戦い方、以前の彼女にはなかった……まさか偽者??)
ダメージのせいで思考が安定しないシオンは、その状態でも懸命に打開策を───
「ですが良い腕でした。その腕なら将来は《無双》にも届くかもしれませんね」
与えられる筈もなく、サナに正面から見つめられる。
まるで指導者のような目で告げると、もう身動きも取れない状態となったシオンの顔も凍らせて、
「ですが、この試合は私の勝ちです」
あっという間に氷の肖像を作り上げたのだった。
シオンもなんとか不意の攻撃にも反応し魔法に対しても健闘をしたが、覆らない圧倒的な格の違いによって呆気なく敗北した。
「次はあなたです」
「……排除、『短距離移動』────」
次に狙われたのは聖国の王都の生徒であり、リヴォルトとグレリアの実験により、シルバーの魔法を模倣するカルマ・ルーディスであるが、感情が欠落しているカルマは動じない。
「排除」
突如リタイアしたシオンとその異常な氷魔法に動揺するかと思えば、感情が欠落している為に一切動揺の色を見せず、不意を突こうと空間移動で彼女の背後に回り『絶対切断』の手刀を打ち込もうした。
「そう来ることは、分かってましたよ?」
「……っ?」
だが、その彼の行動を読んでいたのか、移動と同時に背後に出現したカルマに掌底を打つ。
強くないただの掌底であったが、カルマの体は後ろに下がり、展開していた氷の捕縛魔法に捕まった。
「まずは魔法を封じさせて貰います。『白き薔薇の呪い』」
『絶対切断』の手刀を拘束魔法とはまた違う、別の氷結魔法を発現する。
「ある意味あなたが一番面倒ですからね。これで動けませんし魔法も使えません」
「……!!」
白き氷の薔薇の蔓がカルマの腕ごと、彼を凍らして拘束する。何かしらの封印、吸収効果があるのか、掴まれ手に纏っていていた『絶対切断』が霧散するように消失した。
「魔力が……吸収? 封印?」
「人形と化している以上、状況処理が追い付かなくなれば簡単に崩れます」
原初魔法が消された現象に戸惑い、カルマは目を左右に動かして混乱している。予期せぬ状況に動けなっていた。
だが、シオンの時のような全体凍結によるトドメは刺さない。
「あなたは後で用があるので、そのままでいてください」
「な、に……? グウッ───!!」
捕縛魔法と薔薇の蔓で身動きを取れなくした後、理解が追いつかないカルマの頭部めがけて手刀を。
サナは魔力を込め、意識を刈り取る一撃を浴びせた。
彼女がカルマの意識が飛んだのを確認した直後であった。
────視界の端から青髪がチラつくと刃が迫る。気配も消されたタイミングも良い、奇襲攻撃であった。
「良い攻撃ですが、氷のフィールド内では意味ありませんでしたね」
「っ」
だが、その領域を支配しているサナに驚きはなかった。分かっていたのか、迫ってきた刃を顔を逸らすだけ躱して、剣士の刃も空を切るだけに終わった。
代わりとばかりに驚く相手に膝蹴りを打ち込み。バランスを崩しにかかるが、奇襲を仕掛けた剣士の方も素早く動く。
「ぐ……!」
背中からの膝蹴りを逃げるように前に飛んで躱すと、追い打ちを掛け迫った相手が間合いに入ったところで、体を反転させて一閃。
白き霧を帯びた細剣の袈裟斬りを浴びせる。
「ふふっ」
しかし、その剣もまた空を切るだけ。
余裕の動作で体を逸らしただけで躱された。
「「……」」
そこでようやくお互いに動きを止めた。
「これを躱すんですか……」
「《無双》……彼女のお弟子さんですか」
剣で仕掛けたのは、中立国セナリア学園のシズク・サカモトだ。
シオンに並ぶ剣士でもある彼女だが、SSランク《無双》の弟子でもあり、《天魔》と同じ底知れない雰囲気を纏っていた。
その彼女も白い細剣を抜いた状態で踏み込もうとはしない。奇襲が失敗した途端に距離を取って、警戒していた。
「良い守備ですが、まだ足りませんね。少なくとも」
「────っ!?」
だが、その警戒も虚しくサナはシズクの視界から消える。
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