オリジナルマスター
第8話 実況と解説。
軽い口調のジークに対して、それはないだろうとカリアはツッコミを入れてきた。
『他に何かあるでしょう!? もっと頑張って下さいよぉ!』
『仕方ないだろう。急に解説やれって言われて戸惑ってるんだ。そもそもこんなの慣れてないんだよ』
『だからって適当にしないでくださいよぉ!』
いきなり解説担当などを任せられて、未だ困惑気味に抗議する。これで大会出場がほぼ決まっているとはいえ、やはり戸惑うものがあった。
『ハァー! 仕方ありませんね。本当でしたら学園一の魔法専門家であるガーデニアン先生に見て頂きたいですが、急用だと断られましたし』
そうしたジークの抗議を受けて、渋々納得して進め出すカリア。なぜならそんな不満を投げている間にも、最初の試合が進行しようとしていた。
審判員の呼び掛けで生徒六人が審判の元に集まっていた。
『お、皆さんが来ましたね。今回は午前と午後合わせて半分ずつ、一人二試合行われます』
『一試合で勝ち上がれるのは残った二名のみ。その二名は同じく勝ち上がったところと試合をし、残りは負けた者達と改めて試合を行なう……だったっけ?』
『ハイ! 一日目の試合も含め、これで参加出来るメンバーが決まります!』
予選会のルールを再度確認しあったところで、審判が一試合目の開始を口にした。
(まぁ、個人的にもあの組み合わせは興味あるけどな)
◇◇◇
「どういうことリナちゃんっ!?」
「お、落ち着いてアリスさん!」
試合が始まる出す中、観戦席の一部で激しい動揺が生まれていた。周囲の観戦者もついそちらへ向けてしまう。
勿論、発生源はアイリスである。視線を向ける者達はそこに居たリナに驚くが、隣の彼女には『誰だアイツは?』みたいな視線で集まっていた。
「で、でも……!」
「とにかく落ち着いて……! 唯でさえ今のアリスさんは目立つんだから、少しは静かにしないと」
「だ、だ、だってぇぇぇ!?」
戸惑いのあまり挙動不審になるアイリスに対して、リナは少しでも周囲から隠すようにして落ち着くように促す。
サナとリナの説得でどうにか部屋から出て、学園までやって来たアイリス。
しかし、まだ人まで顔を晒すような真似がどうしても無理だと、体を縮こませてばかりで、なかなか部屋から出れなかった。
そこでサナは妥協案として、アイリスの目立つ髪や顔を隠すために、どこからか用意して来た猫のお面とフードで隠すことにした。……余計に目立っている気がするが。
なので今現在アイリスの姿は首から下は二年生の制服の女子。逆に首から上は黒いフードの白猫のお面である。……ちなみに教員などから止められなかったのは、隣のリナと先ほどまで一緒に居たサナのおかげである。でなければ間違いなく呼び止められて職員室送りであろう。
「ううっ〜〜」
お面のおかげで羞恥が少しは紛れるが、それでも想定外な事態に今にも部屋にダッシュで戻りたい。
(ああ〜〜! でも、サナちゃんやリナちゃんに申し訳ないよぉ……!)
せっかくサナとリナが作ってくれた機会だ。これを機に元の学生生活に戻りたいのも本音である。
(が、がんばらないと……! うう……!)
既に心の中では泣きベソ状態である中、試合は着実に進行していった。
◇◇◇
『おお〜、どう見えますかスカルス先輩』
『どうって、まあ順当じゃないか? 水球を巧く障害として利用して、死角から奇襲を加える。それなりに操作技術がないと失敗するからなぁ』
試合が六試合目まで進んでいった。試合が進むにつれ、会場内もそれなりに歓声や熱気に包まれている。
実況のカリアもテンション高く試合の流れを口にしては、隣のジークが参加者が使用した魔法の解説を行う。慣れない解説であったが、得意な魔法関連であったので、それなりに分かり易く説明できた気がした。
(まあ、俺からしたら内容はそれほど派手じゃないけど、学生レベルだと考えればそれなりに出来てるよな、みんな)
やはりガーデニアンのような魔法のエキスパートな教員がいるおかげで、出場者している大半が外でも通じるぐらい、磨きかけた者達ばかりであった。
そうして試合を進めていくと、ジークの知り合い達の試合も始まり出した。……彼も注目する興味深い試合である。
(サナが出てミルルにトオルもか……あとガルダ先輩に生徒会の……名は知らんが誰かいる)
他にも三年生徒が一人いるが、このメンツからしたら薄い存在である。
そんなことよりも昨日色々とトラブルがあったミルルとトオルが無事に出ているのを見て、ジークは心の中で安堵していた。
(何とか間に合ったようだ。どっちもギリギリだったからな)
トオルはジークが何も処罰なしと言っておいたので、問題なく出れると思っていたが、ミルルに関しては少し心配であった。ティアの暴走のせいで強制的に戦えれなくなり、さらには服まで奪われてしまったのだ。
(普通に考えたら事件だけど、そこは王女権限と温厚なミルルのお陰でどうにかなったようだな)
盗んだティアはちゃんと返すと言っていたが、気絶して服まで奪われたショックで出れなくなる危険は確かにあった。……様子を見る限り、その心配はなかったようだが。
(まあ、その場合は有無言わせず、ティアの奴に謝罪を言わせに行かせたがな)
内心王女に容赦ないことを言う。
『おお〜〜!  スゴイ組み合わせですねーー!!』
『『『オオオォォォーーー!!』』』
隣のカリアがそう口にする。彼女もまた、この組み合わせに興奮している様子だ。会場にいる者達も同じく。
そしてこれから対決をする者達も視線をぶつけ合っていた。
「手加減しないわよミルル。それにトオルも」
視線を交差させる中、やる気満々な表情でサナが初めに口した。
最愛のリナやアイリスが見ているのだ。絶対に無様な姿は晒せない。
「ハハハ、ちょっと怖いかな……。なんか知らない間に勝ち進んでることになってるし」
向けられてる片方のミルルは苦笑を浮かべる。ミルルの方は昨日のジークの試合を含めて二試合も出れなかった。
最後の試合はともかく、ジークとの試合……教員や同級生から聞かされたが、自分そっくりの誰かが、彼ととんでもない戦いを見せたと聞いて、信じられない気持ちで一杯であった。
(その辺りは、今度ジーク君あたりに問い質すけどね)
そうして気を引き締めるミルルは、腰のホルダーに挿してあるナイフを手を添えた。
「オレはガルダさんがいいな。派生属性の金剛魔法……見せてもらいますよ?」
腰に挿す二刀に手を添えて、トオルはガルダを見据えて口にする。
やはり女性と戦うより、も同性の相手であれば遠慮せず戦えれる。それにこの中でも一番強いのは間違いなく風紀委員のガルダだ。トオルは他のメンバーを無視してでも彼と戦いたいのである。
「僕は誰でも構わない。先輩として、そして風紀を背負う者として君達の相手しよう。───ついでに貴様もな生徒会」
「なっ!」
トオルからの挑戦とも取れる言葉に対し、ガルダは落ち着いた顔と口調で答える。そして風紀委員からしたら敵対関係でもある生徒会の者にも一言言っておく。
挑発的でついでとして扱われていることに、生徒会の男子生徒は怒りで顔を赤くする。反撃とばかりに射抜くようにガルダを睨むが、本人もう興味をなくしたのか男子生徒よりもトオルの方を一瞥していた。彼にとってこの場にいる生徒会役員など取るに足らない小物であった。
……あともう一人、三年の男子生徒がいるが、完全に空気状態。今にも消えてしまうほどこの場に混じれていなかった。
『それでは皆、準備はいいか?』
「「「「「「……」」」」」」
しばらくして審判から声が掛かる。
その声に反応して皆、それぞれ構えを取り視線を交差させていく。
一日目とは違う、バトルロイヤル形式だ。何が起こるか判断がつかない。
『始めッ!』
そんな複雑極まりない試合が……今、始まった。
◇◇◇
「ふっ!」
「───!」
初めに動いたのはトオルである。
抜刀の要領で抜いた長刀で横薙ぎし、ガルダに一閃、与えようとした。
「『部分鉄化』───ハッ!」
ガルダの腕から灰色のオーラが発現される。
その攻撃に対して、腕の部分を派生属性で鉄化させたガルダは、素早い横の一閃を強度を増した硬化魔法の腕で受け止めてみせた。
「「……!!」」
刀と鉄の衝撃で激しい金属音がその場に轟く。
二人とも衝突した衝撃に顔を歪めたが、お互いまだまだ止まる様子はなかった。
「『六式・霧雨』」
長刀をぶつけ合わせて、片手で短刀を逆手持ちで抜いたトオルは、水の斬撃を浴びせようとする。
「『純鉄の装鎧』」
抜いた勢いで発生した斬撃の雨がガルダを襲い掛かり、それにガルダは体全体を鉄に強度へ変化させる硬化魔法を発動させた。今度は体全体から灰色のオーラが溢れ出た。
「斬り込みに来るのはいい。だが、それでは足りないな─────ハァッ!」
無数の斬撃をガルダは特に動揺なく受け切ってみせると、至近距離からトオルを殴り飛ばす。
「くっ」
咄嗟に刀を盾にして防ぐが、ガルダの攻撃は重く、体を後ろの方へ飛ばされたトオルは転がるようにして受け身を取った。
「次はこちらからいくぞ、後輩」
「───っ!」
硬化魔法を発動させたまま、身体強化を発動させ素早く飛ばれたトオルの方へ迫ったガルダは、ハッとして顔を上げたトオルの頭部めがけて、両手を握りハンマーのように叩きつけ、追撃として低くなった頭部にさらに踵落としを喰らわせた。
「がァ!? ───っっ!」
呻き声と共に頭を叩きつけられ、地面にうつ伏せになるトオル。頭部の衝撃によって数秒意識が混濁してしまうが、混濁する中でもどうにかその場から跳ね起きた。……すぐさま離れることができたのは、やはり前回の試合でジークと戦った経験であろう。
「クソヤバかった……」
混濁状態から立ち直ろうと歯切りし、首を左右に何度も振って無理矢理覚ました。
「ほお? やるな後輩。今のは結構本気だったが」
「はッ、だてにあのジークにボコボコされてませんよ。───もう一度やってやる」
距離感を見極め再度特攻を仕掛けようとするトオルに、ガルダは好戦的な彼の闘気に刺激されたか、僅かに楽しげな微笑みを浮かべ小さく構える。
「……」
「……」
どちらが先に動くか、思案顔の両者であったが。
「私がいるのも忘れないでくれないかしら……!」
均衡を破る愚か乱入者が現れた。
その瞬間に、彼らの周囲の気温か下がったのを彼らは確かに感じ取った。
「───氷千の刃よ、敵を切り裂け『氷の千本刀』」
ガルダとトオルを襲うようにサナは、空中から氷魔法が降り注いだ。
開始早々、戦いは混乱が蔓延していた。
『他に何かあるでしょう!? もっと頑張って下さいよぉ!』
『仕方ないだろう。急に解説やれって言われて戸惑ってるんだ。そもそもこんなの慣れてないんだよ』
『だからって適当にしないでくださいよぉ!』
いきなり解説担当などを任せられて、未だ困惑気味に抗議する。これで大会出場がほぼ決まっているとはいえ、やはり戸惑うものがあった。
『ハァー! 仕方ありませんね。本当でしたら学園一の魔法専門家であるガーデニアン先生に見て頂きたいですが、急用だと断られましたし』
そうしたジークの抗議を受けて、渋々納得して進め出すカリア。なぜならそんな不満を投げている間にも、最初の試合が進行しようとしていた。
審判員の呼び掛けで生徒六人が審判の元に集まっていた。
『お、皆さんが来ましたね。今回は午前と午後合わせて半分ずつ、一人二試合行われます』
『一試合で勝ち上がれるのは残った二名のみ。その二名は同じく勝ち上がったところと試合をし、残りは負けた者達と改めて試合を行なう……だったっけ?』
『ハイ! 一日目の試合も含め、これで参加出来るメンバーが決まります!』
予選会のルールを再度確認しあったところで、審判が一試合目の開始を口にした。
(まぁ、個人的にもあの組み合わせは興味あるけどな)
◇◇◇
「どういうことリナちゃんっ!?」
「お、落ち着いてアリスさん!」
試合が始まる出す中、観戦席の一部で激しい動揺が生まれていた。周囲の観戦者もついそちらへ向けてしまう。
勿論、発生源はアイリスである。視線を向ける者達はそこに居たリナに驚くが、隣の彼女には『誰だアイツは?』みたいな視線で集まっていた。
「で、でも……!」
「とにかく落ち着いて……! 唯でさえ今のアリスさんは目立つんだから、少しは静かにしないと」
「だ、だ、だってぇぇぇ!?」
戸惑いのあまり挙動不審になるアイリスに対して、リナは少しでも周囲から隠すようにして落ち着くように促す。
サナとリナの説得でどうにか部屋から出て、学園までやって来たアイリス。
しかし、まだ人まで顔を晒すような真似がどうしても無理だと、体を縮こませてばかりで、なかなか部屋から出れなかった。
そこでサナは妥協案として、アイリスの目立つ髪や顔を隠すために、どこからか用意して来た猫のお面とフードで隠すことにした。……余計に目立っている気がするが。
なので今現在アイリスの姿は首から下は二年生の制服の女子。逆に首から上は黒いフードの白猫のお面である。……ちなみに教員などから止められなかったのは、隣のリナと先ほどまで一緒に居たサナのおかげである。でなければ間違いなく呼び止められて職員室送りであろう。
「ううっ〜〜」
お面のおかげで羞恥が少しは紛れるが、それでも想定外な事態に今にも部屋にダッシュで戻りたい。
(ああ〜〜! でも、サナちゃんやリナちゃんに申し訳ないよぉ……!)
せっかくサナとリナが作ってくれた機会だ。これを機に元の学生生活に戻りたいのも本音である。
(が、がんばらないと……! うう……!)
既に心の中では泣きベソ状態である中、試合は着実に進行していった。
◇◇◇
『おお〜、どう見えますかスカルス先輩』
『どうって、まあ順当じゃないか? 水球を巧く障害として利用して、死角から奇襲を加える。それなりに操作技術がないと失敗するからなぁ』
試合が六試合目まで進んでいった。試合が進むにつれ、会場内もそれなりに歓声や熱気に包まれている。
実況のカリアもテンション高く試合の流れを口にしては、隣のジークが参加者が使用した魔法の解説を行う。慣れない解説であったが、得意な魔法関連であったので、それなりに分かり易く説明できた気がした。
(まあ、俺からしたら内容はそれほど派手じゃないけど、学生レベルだと考えればそれなりに出来てるよな、みんな)
やはりガーデニアンのような魔法のエキスパートな教員がいるおかげで、出場者している大半が外でも通じるぐらい、磨きかけた者達ばかりであった。
そうして試合を進めていくと、ジークの知り合い達の試合も始まり出した。……彼も注目する興味深い試合である。
(サナが出てミルルにトオルもか……あとガルダ先輩に生徒会の……名は知らんが誰かいる)
他にも三年生徒が一人いるが、このメンツからしたら薄い存在である。
そんなことよりも昨日色々とトラブルがあったミルルとトオルが無事に出ているのを見て、ジークは心の中で安堵していた。
(何とか間に合ったようだ。どっちもギリギリだったからな)
トオルはジークが何も処罰なしと言っておいたので、問題なく出れると思っていたが、ミルルに関しては少し心配であった。ティアの暴走のせいで強制的に戦えれなくなり、さらには服まで奪われてしまったのだ。
(普通に考えたら事件だけど、そこは王女権限と温厚なミルルのお陰でどうにかなったようだな)
盗んだティアはちゃんと返すと言っていたが、気絶して服まで奪われたショックで出れなくなる危険は確かにあった。……様子を見る限り、その心配はなかったようだが。
(まあ、その場合は有無言わせず、ティアの奴に謝罪を言わせに行かせたがな)
内心王女に容赦ないことを言う。
『おお〜〜!  スゴイ組み合わせですねーー!!』
『『『オオオォォォーーー!!』』』
隣のカリアがそう口にする。彼女もまた、この組み合わせに興奮している様子だ。会場にいる者達も同じく。
そしてこれから対決をする者達も視線をぶつけ合っていた。
「手加減しないわよミルル。それにトオルも」
視線を交差させる中、やる気満々な表情でサナが初めに口した。
最愛のリナやアイリスが見ているのだ。絶対に無様な姿は晒せない。
「ハハハ、ちょっと怖いかな……。なんか知らない間に勝ち進んでることになってるし」
向けられてる片方のミルルは苦笑を浮かべる。ミルルの方は昨日のジークの試合を含めて二試合も出れなかった。
最後の試合はともかく、ジークとの試合……教員や同級生から聞かされたが、自分そっくりの誰かが、彼ととんでもない戦いを見せたと聞いて、信じられない気持ちで一杯であった。
(その辺りは、今度ジーク君あたりに問い質すけどね)
そうして気を引き締めるミルルは、腰のホルダーに挿してあるナイフを手を添えた。
「オレはガルダさんがいいな。派生属性の金剛魔法……見せてもらいますよ?」
腰に挿す二刀に手を添えて、トオルはガルダを見据えて口にする。
やはり女性と戦うより、も同性の相手であれば遠慮せず戦えれる。それにこの中でも一番強いのは間違いなく風紀委員のガルダだ。トオルは他のメンバーを無視してでも彼と戦いたいのである。
「僕は誰でも構わない。先輩として、そして風紀を背負う者として君達の相手しよう。───ついでに貴様もな生徒会」
「なっ!」
トオルからの挑戦とも取れる言葉に対し、ガルダは落ち着いた顔と口調で答える。そして風紀委員からしたら敵対関係でもある生徒会の者にも一言言っておく。
挑発的でついでとして扱われていることに、生徒会の男子生徒は怒りで顔を赤くする。反撃とばかりに射抜くようにガルダを睨むが、本人もう興味をなくしたのか男子生徒よりもトオルの方を一瞥していた。彼にとってこの場にいる生徒会役員など取るに足らない小物であった。
……あともう一人、三年の男子生徒がいるが、完全に空気状態。今にも消えてしまうほどこの場に混じれていなかった。
『それでは皆、準備はいいか?』
「「「「「「……」」」」」」
しばらくして審判から声が掛かる。
その声に反応して皆、それぞれ構えを取り視線を交差させていく。
一日目とは違う、バトルロイヤル形式だ。何が起こるか判断がつかない。
『始めッ!』
そんな複雑極まりない試合が……今、始まった。
◇◇◇
「ふっ!」
「───!」
初めに動いたのはトオルである。
抜刀の要領で抜いた長刀で横薙ぎし、ガルダに一閃、与えようとした。
「『部分鉄化』───ハッ!」
ガルダの腕から灰色のオーラが発現される。
その攻撃に対して、腕の部分を派生属性で鉄化させたガルダは、素早い横の一閃を強度を増した硬化魔法の腕で受け止めてみせた。
「「……!!」」
刀と鉄の衝撃で激しい金属音がその場に轟く。
二人とも衝突した衝撃に顔を歪めたが、お互いまだまだ止まる様子はなかった。
「『六式・霧雨』」
長刀をぶつけ合わせて、片手で短刀を逆手持ちで抜いたトオルは、水の斬撃を浴びせようとする。
「『純鉄の装鎧』」
抜いた勢いで発生した斬撃の雨がガルダを襲い掛かり、それにガルダは体全体を鉄に強度へ変化させる硬化魔法を発動させた。今度は体全体から灰色のオーラが溢れ出た。
「斬り込みに来るのはいい。だが、それでは足りないな─────ハァッ!」
無数の斬撃をガルダは特に動揺なく受け切ってみせると、至近距離からトオルを殴り飛ばす。
「くっ」
咄嗟に刀を盾にして防ぐが、ガルダの攻撃は重く、体を後ろの方へ飛ばされたトオルは転がるようにして受け身を取った。
「次はこちらからいくぞ、後輩」
「───っ!」
硬化魔法を発動させたまま、身体強化を発動させ素早く飛ばれたトオルの方へ迫ったガルダは、ハッとして顔を上げたトオルの頭部めがけて、両手を握りハンマーのように叩きつけ、追撃として低くなった頭部にさらに踵落としを喰らわせた。
「がァ!? ───っっ!」
呻き声と共に頭を叩きつけられ、地面にうつ伏せになるトオル。頭部の衝撃によって数秒意識が混濁してしまうが、混濁する中でもどうにかその場から跳ね起きた。……すぐさま離れることができたのは、やはり前回の試合でジークと戦った経験であろう。
「クソヤバかった……」
混濁状態から立ち直ろうと歯切りし、首を左右に何度も振って無理矢理覚ました。
「ほお? やるな後輩。今のは結構本気だったが」
「はッ、だてにあのジークにボコボコされてませんよ。───もう一度やってやる」
距離感を見極め再度特攻を仕掛けようとするトオルに、ガルダは好戦的な彼の闘気に刺激されたか、僅かに楽しげな微笑みを浮かべ小さく構える。
「……」
「……」
どちらが先に動くか、思案顔の両者であったが。
「私がいるのも忘れないでくれないかしら……!」
均衡を破る愚か乱入者が現れた。
その瞬間に、彼らの周囲の気温か下がったのを彼らは確かに感じ取った。
「───氷千の刃よ、敵を切り裂け『氷の千本刀』」
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