オリジナルマスター
第16話 圧倒。
「だが、まだ慣らそうか……『零極・千の掌』」
呟くとジークは手を振い、彼女に向かって手の形をした巨大な手が出現させた。
その手は意思でもあるかのように中に浮び、彼女に向って殴りかかってきた。
「カァァァッ!」
気合いの篭った声を上げ、手を操り彼女を殴りにいくジーク。
「ヤァァァッ!!」
ジークからの正面攻撃に受けて立つ姿勢の彼女
両手剣に魔力をさらに込めて威力を上げる。
「『光剣舞の型』!! ────いくわッ!!」
光属性の剣強化魔法を掛ける彼女はその勢いで迫る巨大な拳を二刀流で迎え撃った
「『零極・千の拳』!!」
「『剣聖の審判』ッッ!!!!」
巨人の拳と双刀の大剣が激突。
衝撃でぶつけ合う両者地盤が大きく穿つ。
「ァァァァーーー!!」
「ハァァアアアーーー!!」
均衡し合う二人の技。
だが、それも長くは続かない。
ジークの拳が徐々に彼女を押し出し始めていた。
「う、くっ……!」
全力で自慢の剣技でジークに向かう彼女だが、解放されて威力が遥かに跳ね上がったジークの魔法に対しは少しの間しか保たせることができず、既に押し負けてしまっていた。
「フッ!」
「───う、きゃぁっ!?」
均衡は長く続かず、彼女の体が大きく後方へ吹き飛ばされてしまう。
「終わりだ!」
体勢が崩れてしまった瞬間を見逃さず、ジークは攻めにいく。
殴った拳をそのまま飛ばして、倒れる伏せる彼女を掴もうと動き出した。
「くっ! ─────か、駆け抜け! 『光速の馬脚』ッ!」 
捕らえようと迫ってくる手に対し、スピードを底上げする魔法を使用して彼女は回避するが。
「あまいな─────増えるし加速するぞソレは」
「な!?」
回避する彼女に向けてジークはもう片方の手から巨大な手を発現させ、さらに操作スピードを倍近くまで上げて、彼女の速さ追い付けるまで速くした。
「さて……捉えたぞ?」
魔法の両手のスピードを彼女のスピードに合わせて、ニコリと笑み作りジークが言う。
(回避は……不可!)
────逃げ場なし。
そう判断した彼女は回避を諦め、両手の剣で捕らえようとしてくる強大な手を斬ることにした。
「───剣を握り舞れ! 『精霊剣舞の型』!」
自身が持っている剣術に合わせて、精霊の力が備わった補助魔法を発動させた。
「む、そこッ───ハァッ!」
タイミングを見計らい、剣舞の技で掴み取ろうとしてくる手を斬り裂いてみせた。
舞う毎に彼女の体からキラキラと無数の光粒子が舞う。
光の身体強化の光と相まって周囲からは幻想的に映っていた。
「────やっぱり斬られるよな……けど、想定内だ」
「っ!?」
が、その結果ジークに対する警戒が少しの合間であるが、緩んでしまった……。
先ほどから距離を置いていたはずのジークの声がすぐ側で聞こえたのだ。
(し、しまっ、シルバーはどこに!?)
いつの間にか、ジークが立っていた位置から姿を消えていること遅れて気がついた彼女は慌ててあたりを見回すが、当のジークが見つからない。
「こっちさ」
「ッ!?」
ポンと背中を叩かれる。
素早く首だけ動かし視界を背後へ移すと……ジークがいた。
「よぉ?」
「し、シル──」
「そっちで呼ぶな。取り乱し過ぎだろう」
ジークが手を背中に当てて苦笑を浮かべていた。
彼女は驚愕の顔で目を見開くが、そこまで認識した時には彼の準備が整ってしまっていた。
「ゼロ距離だな、いくぞ……!」
苦笑顔から真剣味を帯びた顔へ変貌するジーク。
これで決めるつもりのジークは先ほどまでよりも数段上の魔力を注いだ技を彼女の無防備な背にぶつけた。
「『零極・三千の衝撃』っ!」
「くッ! ──『守護精霊の盾』ッ!」
咄嗟に精霊魔法で防御しようと彼女は動いたが、それよりも速くジークの魔法が届いた。
三千回分の衝撃魔法を集めた強力な衝撃波が彼女の背中から全身へ駆け巡り、会場に大きな衝撃を与えた。
ジークの『零極・三千の衝撃』が彼女を背後から襲った影響で、彼女が立っていた場所を中心に大きなヒビ割れが起きていた。
そしてジークの魔法を受けてしまった彼女の方は─────
「耐えたか」
「と、当然です……!」
もろに攻撃を受けてしまい膝をつく彼女を見下ろしながらジークは片方の手に魔力を集め追撃の準備を整える。
「っう……!」
思ったより重いダメージなのか起き上がろうとする膝に力が入っておらず、プルプルと震えているのがジークには見えていた。
「やっぱ精霊の力は厄介だなぁ……ん?」
そうしてダメージに苦しむ彼女を窺っていると、不意にジークが彼女に起き始めている異変に気づいてしまう。
(これは……)
ジークが困ったような面倒そうな顔でいると、そんな彼の様子に気がついたのか彼に向かって訝しげな顔で問い質した彼女。
「な、何を見てるの……!?」
すっかり形勢が逆転したためか、苛立ちの顔で彼女が息を乱しながら問う。
すると顔色を変えないままジークは躊躇いがちに口を開いた。
「ん〜いやぁ……そろそろやめにしないか? 付けた仮面が……綻び始めてるぞ?」
「……ッ」
ジークに言われて、彼女はハッとした顔で自分の顔に手をあてる。
そしてヒビ割れた感触が顔から感じ取り、彼の言ってることが事実だと知るや深刻な顔になって眉をひそめてしまう。
彼が言った通り、彼女が使用していた変装魔法は今の攻撃で崩れ出していた。
「なあ、アレって……」
「顔が……割れてる?」
「え? え?」
さすがにこれには周囲の者達も違和感を持ち始めてた。
二人とも視線こそ向けてはいないが、外野からまた新たなざわつき声があがり始めていた。
現に審判をしている者は突然ミルルの顔が一部崩れ出していることに一度は驚愕の顔をするが、次には疑惑の眼差しをしてジッと彼女の方を見据えていた。
だからジークは提案したのである。
一部の者にバレて試合が強制的に終わるのはいいが、全員にバレて会場内が大騒ぎなってしまうのは避けたいのだ。
「ま、まだ……!」
「?」
だが当の相手である彼女の方はここで試合が終わってしまうのが嫌なのか、不満な様子で彼の提案をはね除けてしまう。
「まだよ。まだわたくしの力はこんなものではない……!」
低い声でジークに言う彼女だが、先ほどの攻撃で光の身体強化や精霊魔法が解けてしまっている状態では無謀以外のなにものでもなかった。
唯一聖剣のオリジナルは解けずに残っているが、持ち主が受けているダメージのせいか、その剣の輝きは弱々しく、大剣であったのが、ただの剣のサイズまで落ちてしまっていた。
「強気なところ悪いが、魔法じゃ俺を倒せないのは知っているだろ? そのオリジナルでも例外じゃない。通じそうな精霊魔法、精霊の力もそうだが、どれも決め手にかけてる。それに……お前も知ってると思うが、その剣術も見切ってるぞ」
ガーデニアンが語っていたが、彼女が扱う剣術は聖国エリューシオンに伝わる剣術である。
彼女はそれを極めて、自身の魔法と組み合わせた特殊な剣術を編み出したのだ。
もちろんジークもその剣術については知っているので、厄介になる近接戦は控えようと考えていた。
ちなみにそのガーデニアンは突如攻撃的になったジークに目を見開くほど驚愕しており、今にも試合に乱入しかねないほどヒヤヒヤと焦っていた。
隣のリグラもジークがあそこまで攻めにいくとは思ってなかったようで、心なしか浮かべている笑みが引き攣っていた。
(うるさくなってきた……。そろそろ終わらせないと。……あれ?)
あまり騒ぎが酷いと試合を無事に終えてもその後で面倒になりそうだと判断したジークは彼女の実力も大体把握できたので、それに合わせてちょうどいい魔法を練ろうとした。
が、ここにきて、さらなる問題が発生してしまった。
(これは……!)
異質な魔力を体に宿し扱うジークには視えてしまい感じ取ってしまった。
ガーデニアンも視えるようなことを言っていたが、おそらくジークほどしっかりとは見えてないであろう。
ジークが全身の感覚器官が一斉に警報を鳴らし、彼の瞳にその正体を教えていた。
(マズイ、遠慮なしにやり過ぎた! 戦場と違うからやってしまった……!)
攻めに回った際に放った力の塊の魔法が周囲に粒子のように蠢き、この会場、この地をまるで汚染するかのように浸透し出している光景を……。
崩れ出しているのだ。ジークの魔力の影響で試合場が。
実は魔力を解放する前からジークには試合会場の守り具合に一抹の不安があった。
正直なところジークの全開状態の魔力をコントロールして発現しても観戦者達に対する被害が出ないとはとても思ってなかった。
ガーデニアンが張ってくれた結界があっても、その考えは変わらなかった。
なぜなら解放された時に周囲の生徒達に影響が出ていたから……ガーデニアンの結界でもジークの魔力は防げれないのだ。
だからジークは最大限の安全を得るため、……疲れる《消し去る者》を使用した。
(逆に言えば《消し去る者》を使ってもこの会場レベルの強度には強力過ぎるのか……)
できれば、あと一撃ほどで決着つけるべきなのだろうが、……視界に映る汚染度を見た限り、彼女を倒せれるぐらいの一撃を使うとすれば─────自分達二人がいる試合エリアどころか、会場その物が危険であった。
だが威力を抑え、長期戦へ移すのもそれはそれで問題であった。
厄介な剣術と魔法を使ってくる上、そもそも手加減して倒せれるような相手ではないのだ。
(となると、……)
ジークは囲われているガーデニアンの結界を見ながら策を練る。
(……アレしかないか……だがな)
……思考時間が短かったが、なぜか躊躇ってしまうジークであった。
呟くとジークは手を振い、彼女に向かって手の形をした巨大な手が出現させた。
その手は意思でもあるかのように中に浮び、彼女に向って殴りかかってきた。
「カァァァッ!」
気合いの篭った声を上げ、手を操り彼女を殴りにいくジーク。
「ヤァァァッ!!」
ジークからの正面攻撃に受けて立つ姿勢の彼女
両手剣に魔力をさらに込めて威力を上げる。
「『光剣舞の型』!! ────いくわッ!!」
光属性の剣強化魔法を掛ける彼女はその勢いで迫る巨大な拳を二刀流で迎え撃った
「『零極・千の拳』!!」
「『剣聖の審判』ッッ!!!!」
巨人の拳と双刀の大剣が激突。
衝撃でぶつけ合う両者地盤が大きく穿つ。
「ァァァァーーー!!」
「ハァァアアアーーー!!」
均衡し合う二人の技。
だが、それも長くは続かない。
ジークの拳が徐々に彼女を押し出し始めていた。
「う、くっ……!」
全力で自慢の剣技でジークに向かう彼女だが、解放されて威力が遥かに跳ね上がったジークの魔法に対しは少しの間しか保たせることができず、既に押し負けてしまっていた。
「フッ!」
「───う、きゃぁっ!?」
均衡は長く続かず、彼女の体が大きく後方へ吹き飛ばされてしまう。
「終わりだ!」
体勢が崩れてしまった瞬間を見逃さず、ジークは攻めにいく。
殴った拳をそのまま飛ばして、倒れる伏せる彼女を掴もうと動き出した。
「くっ! ─────か、駆け抜け! 『光速の馬脚』ッ!」 
捕らえようと迫ってくる手に対し、スピードを底上げする魔法を使用して彼女は回避するが。
「あまいな─────増えるし加速するぞソレは」
「な!?」
回避する彼女に向けてジークはもう片方の手から巨大な手を発現させ、さらに操作スピードを倍近くまで上げて、彼女の速さ追い付けるまで速くした。
「さて……捉えたぞ?」
魔法の両手のスピードを彼女のスピードに合わせて、ニコリと笑み作りジークが言う。
(回避は……不可!)
────逃げ場なし。
そう判断した彼女は回避を諦め、両手の剣で捕らえようとしてくる強大な手を斬ることにした。
「───剣を握り舞れ! 『精霊剣舞の型』!」
自身が持っている剣術に合わせて、精霊の力が備わった補助魔法を発動させた。
「む、そこッ───ハァッ!」
タイミングを見計らい、剣舞の技で掴み取ろうとしてくる手を斬り裂いてみせた。
舞う毎に彼女の体からキラキラと無数の光粒子が舞う。
光の身体強化の光と相まって周囲からは幻想的に映っていた。
「────やっぱり斬られるよな……けど、想定内だ」
「っ!?」
が、その結果ジークに対する警戒が少しの合間であるが、緩んでしまった……。
先ほどから距離を置いていたはずのジークの声がすぐ側で聞こえたのだ。
(し、しまっ、シルバーはどこに!?)
いつの間にか、ジークが立っていた位置から姿を消えていること遅れて気がついた彼女は慌ててあたりを見回すが、当のジークが見つからない。
「こっちさ」
「ッ!?」
ポンと背中を叩かれる。
素早く首だけ動かし視界を背後へ移すと……ジークがいた。
「よぉ?」
「し、シル──」
「そっちで呼ぶな。取り乱し過ぎだろう」
ジークが手を背中に当てて苦笑を浮かべていた。
彼女は驚愕の顔で目を見開くが、そこまで認識した時には彼の準備が整ってしまっていた。
「ゼロ距離だな、いくぞ……!」
苦笑顔から真剣味を帯びた顔へ変貌するジーク。
これで決めるつもりのジークは先ほどまでよりも数段上の魔力を注いだ技を彼女の無防備な背にぶつけた。
「『零極・三千の衝撃』っ!」
「くッ! ──『守護精霊の盾』ッ!」
咄嗟に精霊魔法で防御しようと彼女は動いたが、それよりも速くジークの魔法が届いた。
三千回分の衝撃魔法を集めた強力な衝撃波が彼女の背中から全身へ駆け巡り、会場に大きな衝撃を与えた。
ジークの『零極・三千の衝撃』が彼女を背後から襲った影響で、彼女が立っていた場所を中心に大きなヒビ割れが起きていた。
そしてジークの魔法を受けてしまった彼女の方は─────
「耐えたか」
「と、当然です……!」
もろに攻撃を受けてしまい膝をつく彼女を見下ろしながらジークは片方の手に魔力を集め追撃の準備を整える。
「っう……!」
思ったより重いダメージなのか起き上がろうとする膝に力が入っておらず、プルプルと震えているのがジークには見えていた。
「やっぱ精霊の力は厄介だなぁ……ん?」
そうしてダメージに苦しむ彼女を窺っていると、不意にジークが彼女に起き始めている異変に気づいてしまう。
(これは……)
ジークが困ったような面倒そうな顔でいると、そんな彼の様子に気がついたのか彼に向かって訝しげな顔で問い質した彼女。
「な、何を見てるの……!?」
すっかり形勢が逆転したためか、苛立ちの顔で彼女が息を乱しながら問う。
すると顔色を変えないままジークは躊躇いがちに口を開いた。
「ん〜いやぁ……そろそろやめにしないか? 付けた仮面が……綻び始めてるぞ?」
「……ッ」
ジークに言われて、彼女はハッとした顔で自分の顔に手をあてる。
そしてヒビ割れた感触が顔から感じ取り、彼の言ってることが事実だと知るや深刻な顔になって眉をひそめてしまう。
彼が言った通り、彼女が使用していた変装魔法は今の攻撃で崩れ出していた。
「なあ、アレって……」
「顔が……割れてる?」
「え? え?」
さすがにこれには周囲の者達も違和感を持ち始めてた。
二人とも視線こそ向けてはいないが、外野からまた新たなざわつき声があがり始めていた。
現に審判をしている者は突然ミルルの顔が一部崩れ出していることに一度は驚愕の顔をするが、次には疑惑の眼差しをしてジッと彼女の方を見据えていた。
だからジークは提案したのである。
一部の者にバレて試合が強制的に終わるのはいいが、全員にバレて会場内が大騒ぎなってしまうのは避けたいのだ。
「ま、まだ……!」
「?」
だが当の相手である彼女の方はここで試合が終わってしまうのが嫌なのか、不満な様子で彼の提案をはね除けてしまう。
「まだよ。まだわたくしの力はこんなものではない……!」
低い声でジークに言う彼女だが、先ほどの攻撃で光の身体強化や精霊魔法が解けてしまっている状態では無謀以外のなにものでもなかった。
唯一聖剣のオリジナルは解けずに残っているが、持ち主が受けているダメージのせいか、その剣の輝きは弱々しく、大剣であったのが、ただの剣のサイズまで落ちてしまっていた。
「強気なところ悪いが、魔法じゃ俺を倒せないのは知っているだろ? そのオリジナルでも例外じゃない。通じそうな精霊魔法、精霊の力もそうだが、どれも決め手にかけてる。それに……お前も知ってると思うが、その剣術も見切ってるぞ」
ガーデニアンが語っていたが、彼女が扱う剣術は聖国エリューシオンに伝わる剣術である。
彼女はそれを極めて、自身の魔法と組み合わせた特殊な剣術を編み出したのだ。
もちろんジークもその剣術については知っているので、厄介になる近接戦は控えようと考えていた。
ちなみにそのガーデニアンは突如攻撃的になったジークに目を見開くほど驚愕しており、今にも試合に乱入しかねないほどヒヤヒヤと焦っていた。
隣のリグラもジークがあそこまで攻めにいくとは思ってなかったようで、心なしか浮かべている笑みが引き攣っていた。
(うるさくなってきた……。そろそろ終わらせないと。……あれ?)
あまり騒ぎが酷いと試合を無事に終えてもその後で面倒になりそうだと判断したジークは彼女の実力も大体把握できたので、それに合わせてちょうどいい魔法を練ろうとした。
が、ここにきて、さらなる問題が発生してしまった。
(これは……!)
異質な魔力を体に宿し扱うジークには視えてしまい感じ取ってしまった。
ガーデニアンも視えるようなことを言っていたが、おそらくジークほどしっかりとは見えてないであろう。
ジークが全身の感覚器官が一斉に警報を鳴らし、彼の瞳にその正体を教えていた。
(マズイ、遠慮なしにやり過ぎた! 戦場と違うからやってしまった……!)
攻めに回った際に放った力の塊の魔法が周囲に粒子のように蠢き、この会場、この地をまるで汚染するかのように浸透し出している光景を……。
崩れ出しているのだ。ジークの魔力の影響で試合場が。
実は魔力を解放する前からジークには試合会場の守り具合に一抹の不安があった。
正直なところジークの全開状態の魔力をコントロールして発現しても観戦者達に対する被害が出ないとはとても思ってなかった。
ガーデニアンが張ってくれた結界があっても、その考えは変わらなかった。
なぜなら解放された時に周囲の生徒達に影響が出ていたから……ガーデニアンの結界でもジークの魔力は防げれないのだ。
だからジークは最大限の安全を得るため、……疲れる《消し去る者》を使用した。
(逆に言えば《消し去る者》を使ってもこの会場レベルの強度には強力過ぎるのか……)
できれば、あと一撃ほどで決着つけるべきなのだろうが、……視界に映る汚染度を見た限り、彼女を倒せれるぐらいの一撃を使うとすれば─────自分達二人がいる試合エリアどころか、会場その物が危険であった。
だが威力を抑え、長期戦へ移すのもそれはそれで問題であった。
厄介な剣術と魔法を使ってくる上、そもそも手加減して倒せれるような相手ではないのだ。
(となると、……)
ジークは囲われているガーデニアンの結界を見ながら策を練る。
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