オリジナルマスター
第6話 昼食。
「試合……始め!」
「っ、は、はぁあああ!!」
「……」
ジークの第二試合が始まった。
対戦相手は同学年の女子生徒。
長剣を持ちの近接タイプのようで、合図とともに突っ込んできた女子を黙したまま眺める。
(勢いで倒そうって感じか、声は少し震えてるけど)
実は弱腰な女子生徒だと判断したジーク。
どうやらさきの戦いを見て、ジークのことが恐ろしく見えたのだろう。
(一応強化されているようだけど、全然覇気がないな)
一気に振り下ろす瞬間、彼女の目が泳いでいるのをジークは見逃さなかった。
「はぁー」
剣を振る時に目を泳がせてどうするのだと、一度息を吐きながら心の中で呟くと。
(それっ)
突っ込んできた女子生徒の一振りを片手で流すようにして軌道を逸らした。
「キャっ!?」
ついでもう片方の手で肩を掌打を当て後ろへ転がした。……その拍子でスカートの中が見えた気がしたが特に気しないジーク。
「───っ」
「はい、おしまい」
「……!」
そしてハッと慌てて起き上がろうとした女子生徒の頭部に手を当て動きを封じたのだ。
───あっという間に決着はついた。
「そこまで! 勝者ジーク・スカルス!」
「っ……!」
(ハァー)
審判の宣言を聞いて座り込んだまま悔しそうにする女子生徒を置いて、ジークは心の中でため息を吐く。
(改めて思うが……楽過ぎる)
トオル戦ではそこまで苦ではなかったが、二回戦目に入って自分と学園の生徒達とのレベル差を改めて自覚してしまった。
(これじゃあ大の大人が子供と戦ってる────いや、遊んでいるみたいだ)
まったく勝負にならないのである。
本人も分かっていた筈なのだが、
もう勝負を通り越してイジメてる気分であるジークであった。
(なんかツラいな……それに)
そのまま周囲をチラリと見る。
「「「「(ジー……)」」」」
(視線がうっとおしい。なにこの状況?)
周囲から飛んでくる視線に心の中で不機嫌になるジーク。
今までのような蔑むような視線も一応はあるが、以前に比べるとかなり弱々しい。
代わりに好奇心にも似た視線が多い。
(あぁ〜うっとおしい)
視線を合わせないようにしながらも確かに感じ取っていた。
(まあヘタに踏み込んでこない分まだマシかな)
これでもまだいい方なのだと強引に納得するや、昼休み時間に入りそうなので、昼飯でも食べようかと食堂に向かったのだった。
◇◇◇
「「「「(チラ、チラ)」」」」
「……」
視線に晒される中、食堂に着いたジーク。
その無遠慮な視線を無視して近く席で座り込んだ。
手元には来る途中に買ったパンがある。
「食べるか」
そうしてパンを口にしようとしたところで遠くから声が。
「ジークくーん!」
振り返ると橙色の髪が視界に入る。
それを見てジークは記憶の片隅から……女性の記憶を…………記憶を……
「…………お〜〜! ミルクか!」
「は〜い……ってミルルだよっ!」 
笑顔で駆け寄ってきた女子生徒にジークが軽く挨拶をすると一変、怒ったような顔して怒鳴ってきた。
一瞬なにを怒っているのかと疑問を浮かべるジークだが、ふと引っかかりを覚え記憶の片隅から奇跡的に名前を呼び起こした。
「あ? ──あぁ……ミルルか」
「なんで思い出したみたいな顔をするの? 私友達でしょ?」
「……え? あ、そうだね?」
「なんで疑問系?」
「あ、いやぁ〜……あはははははは」
「誤魔化すな!」
失礼極まりないジークの対応に憤慨する女子。
彼女もまたトオルと同じくジークの知り合いである同じクラスメイトのミルルだ。
橙色の髪を揺らして、いかにも活発そうな雰囲気のある女子生徒であるが、
「しくしく……、改めて覚えられてないって自覚すると結構へこむ」
「だって最近話してない気がするし」
「ぐっ!?  ……グスっ」
怒りは鎮めてたようであるが、ショックだったのか涙目で肩を落としてしまった。
(うまうま)
ちなみにジークはそんなミルルのことなど無視して、パンを食べることに集中していた。
「はぁー……相席いい?」
気を取り直し、ジークに話しかけ相席を希望するミルル。
言いたいことはまだあったのだが、とりあえず一度落ち着きたいと思ったのである。
あと今後もそんな悲劇を起こさせないためにも。
忘れられていたという現実は思った以上にミルルには堪えたのだ。
「ん〜構わないぞ」
ジークの方は特に気にした様子を見せず、パンを食べながら軽く了承した。
そしてジークの了承を確認したあと、向かいの席に座るミルル。
「ん?  食堂のランチか」
ミルルの手元にあるおぼんを見てそう呟くジーク。
どうやらミルルの方は食堂のランチを食べるようだと、どうでもいいことを考えるジークである。
「そうだよ。ジーク君は……硬パンか」
今度はミルルの方がジークが食している物をに視線を向け……そこにある丸っこく焦げついたパンを見て、急に哀しげな表情をすると同情の色のある声で呟いた。
「なんだその可哀想な子を見る目は?」
「いやだって……」
値段は安いが、学園の中で人気のないパンを食べるジークを見ていると、なにか言いたくなるミルルである。
「まあ、いいのかな?」
本人が気にしてない以上、自分がどうこう言ってもしょうがないと自分の食事に集中することにした。
と昼食を進めていると、ミルルが料理に伸ばしていた手を止めとニヤニヤした顔でジークに声を─────
「そういえば聞いたよ? サナさんの妹と──」
「去れッ!」
「えぇ!?」
言いきる前にジークに遮られてしまった。
というか失せろを言い切られた。
「くどいんだよ。何回も合わせれるか」
「合わせ……!?」
吐き捨てるように口にするジークに愕然とした表情をするミルル。
いつもなら軽ノリで『羨ましいだろう?』とか答えてくれると期待していた分この返答は驚きだった。
(ようやく忘れかけてた話を……!  )
しかし、ミルルの予想とは裏腹に現在のジークは大変ご立腹であった。
────ストレスが溜まりすぎて
理由は三つある。
一つはさっきから彼に視線を向けてくる周囲の生徒達。
さすがにこうずっと視線を向けられ続けれると、普段大抵のことには気にしない主義のジークでも、イラつきを覚えてしまうのである。
二つ目は、第二試合が行われる前にまた会ったガーデニアンからの用件である。
なんと『妖刀』を使ってもう失格でヘタしたら学園から追放されると思っていたのが、なぜが自分選択で失格云々を決めないけないと、意味の分からない話を聞かされ、どうしたもんかと悩むジーク。
……ヘタに予選会に残すと、また暴走するんじゃないのかと危惧しているからである。
三つ目は、いま話題に出たリナとの恋愛云々についてである。
『それはそれとスカルスよぉ? ルールブ妹はどうするんじゃ?』
『違うと言いましたよね……!?』
ついでにまたガーデニアンからからかわれてしまい、いい加減リナとの関係について追及されるのは嫌になってきたジークなのであった。
この時もガーデニアンの言葉を聞いて笑みが静かな怒りの薄い笑みに変わった程に。
それなのに目の前のミルルは不用意に言ってしまったので、ジークは絶賛お怒り中なのである。
「もう誤解を説くのが面倒いんだよ。……あと合わせるのが疲れるから」
「だからその意味の分からない文句はなに!? ていうか誰に聞かれたのさ!」
ジークの理由にどうしても納得のいかないミルルであったが、結局話をしても無視されてしまうばかりだったので、早々にこの話からは離れるようにしたのであった。
「でもちょっと意外だったな」
「意外?」
『何が?』と疑問符を浮かべるジークであったが、
「だってアイリスさんの件で周りにヒドイ目にあったのに、あんな可愛い子と噂になってるんだもん。いつものジーク君なら絶対そんな状況、起こらないように全力で回避してたと思って」
「……俺もそう思うよ。けど不思議だよ。起こらないよう手を打ったことが全部悪手になるんだよなぁ……」
「なんか、いろいろ大変だったんだね」
ミルルの言葉に頷かずにはいられなかったジーク。
そうして過去を振り返り、若干憂鬱になるのであった。
ミルルの方もそんなジークの心情をなんとなく察したのか、これ以上、問い掛けようとはせず話題を別のに変えることにした。
「っ、は、はぁあああ!!」
「……」
ジークの第二試合が始まった。
対戦相手は同学年の女子生徒。
長剣を持ちの近接タイプのようで、合図とともに突っ込んできた女子を黙したまま眺める。
(勢いで倒そうって感じか、声は少し震えてるけど)
実は弱腰な女子生徒だと判断したジーク。
どうやらさきの戦いを見て、ジークのことが恐ろしく見えたのだろう。
(一応強化されているようだけど、全然覇気がないな)
一気に振り下ろす瞬間、彼女の目が泳いでいるのをジークは見逃さなかった。
「はぁー」
剣を振る時に目を泳がせてどうするのだと、一度息を吐きながら心の中で呟くと。
(それっ)
突っ込んできた女子生徒の一振りを片手で流すようにして軌道を逸らした。
「キャっ!?」
ついでもう片方の手で肩を掌打を当て後ろへ転がした。……その拍子でスカートの中が見えた気がしたが特に気しないジーク。
「───っ」
「はい、おしまい」
「……!」
そしてハッと慌てて起き上がろうとした女子生徒の頭部に手を当て動きを封じたのだ。
───あっという間に決着はついた。
「そこまで! 勝者ジーク・スカルス!」
「っ……!」
(ハァー)
審判の宣言を聞いて座り込んだまま悔しそうにする女子生徒を置いて、ジークは心の中でため息を吐く。
(改めて思うが……楽過ぎる)
トオル戦ではそこまで苦ではなかったが、二回戦目に入って自分と学園の生徒達とのレベル差を改めて自覚してしまった。
(これじゃあ大の大人が子供と戦ってる────いや、遊んでいるみたいだ)
まったく勝負にならないのである。
本人も分かっていた筈なのだが、
もう勝負を通り越してイジメてる気分であるジークであった。
(なんかツラいな……それに)
そのまま周囲をチラリと見る。
「「「「(ジー……)」」」」
(視線がうっとおしい。なにこの状況?)
周囲から飛んでくる視線に心の中で不機嫌になるジーク。
今までのような蔑むような視線も一応はあるが、以前に比べるとかなり弱々しい。
代わりに好奇心にも似た視線が多い。
(あぁ〜うっとおしい)
視線を合わせないようにしながらも確かに感じ取っていた。
(まあヘタに踏み込んでこない分まだマシかな)
これでもまだいい方なのだと強引に納得するや、昼休み時間に入りそうなので、昼飯でも食べようかと食堂に向かったのだった。
◇◇◇
「「「「(チラ、チラ)」」」」
「……」
視線に晒される中、食堂に着いたジーク。
その無遠慮な視線を無視して近く席で座り込んだ。
手元には来る途中に買ったパンがある。
「食べるか」
そうしてパンを口にしようとしたところで遠くから声が。
「ジークくーん!」
振り返ると橙色の髪が視界に入る。
それを見てジークは記憶の片隅から……女性の記憶を…………記憶を……
「…………お〜〜! ミルクか!」
「は〜い……ってミルルだよっ!」 
笑顔で駆け寄ってきた女子生徒にジークが軽く挨拶をすると一変、怒ったような顔して怒鳴ってきた。
一瞬なにを怒っているのかと疑問を浮かべるジークだが、ふと引っかかりを覚え記憶の片隅から奇跡的に名前を呼び起こした。
「あ? ──あぁ……ミルルか」
「なんで思い出したみたいな顔をするの? 私友達でしょ?」
「……え? あ、そうだね?」
「なんで疑問系?」
「あ、いやぁ〜……あはははははは」
「誤魔化すな!」
失礼極まりないジークの対応に憤慨する女子。
彼女もまたトオルと同じくジークの知り合いである同じクラスメイトのミルルだ。
橙色の髪を揺らして、いかにも活発そうな雰囲気のある女子生徒であるが、
「しくしく……、改めて覚えられてないって自覚すると結構へこむ」
「だって最近話してない気がするし」
「ぐっ!?  ……グスっ」
怒りは鎮めてたようであるが、ショックだったのか涙目で肩を落としてしまった。
(うまうま)
ちなみにジークはそんなミルルのことなど無視して、パンを食べることに集中していた。
「はぁー……相席いい?」
気を取り直し、ジークに話しかけ相席を希望するミルル。
言いたいことはまだあったのだが、とりあえず一度落ち着きたいと思ったのである。
あと今後もそんな悲劇を起こさせないためにも。
忘れられていたという現実は思った以上にミルルには堪えたのだ。
「ん〜構わないぞ」
ジークの方は特に気にした様子を見せず、パンを食べながら軽く了承した。
そしてジークの了承を確認したあと、向かいの席に座るミルル。
「ん?  食堂のランチか」
ミルルの手元にあるおぼんを見てそう呟くジーク。
どうやらミルルの方は食堂のランチを食べるようだと、どうでもいいことを考えるジークである。
「そうだよ。ジーク君は……硬パンか」
今度はミルルの方がジークが食している物をに視線を向け……そこにある丸っこく焦げついたパンを見て、急に哀しげな表情をすると同情の色のある声で呟いた。
「なんだその可哀想な子を見る目は?」
「いやだって……」
値段は安いが、学園の中で人気のないパンを食べるジークを見ていると、なにか言いたくなるミルルである。
「まあ、いいのかな?」
本人が気にしてない以上、自分がどうこう言ってもしょうがないと自分の食事に集中することにした。
と昼食を進めていると、ミルルが料理に伸ばしていた手を止めとニヤニヤした顔でジークに声を─────
「そういえば聞いたよ? サナさんの妹と──」
「去れッ!」
「えぇ!?」
言いきる前にジークに遮られてしまった。
というか失せろを言い切られた。
「くどいんだよ。何回も合わせれるか」
「合わせ……!?」
吐き捨てるように口にするジークに愕然とした表情をするミルル。
いつもなら軽ノリで『羨ましいだろう?』とか答えてくれると期待していた分この返答は驚きだった。
(ようやく忘れかけてた話を……!  )
しかし、ミルルの予想とは裏腹に現在のジークは大変ご立腹であった。
────ストレスが溜まりすぎて
理由は三つある。
一つはさっきから彼に視線を向けてくる周囲の生徒達。
さすがにこうずっと視線を向けられ続けれると、普段大抵のことには気にしない主義のジークでも、イラつきを覚えてしまうのである。
二つ目は、第二試合が行われる前にまた会ったガーデニアンからの用件である。
なんと『妖刀』を使ってもう失格でヘタしたら学園から追放されると思っていたのが、なぜが自分選択で失格云々を決めないけないと、意味の分からない話を聞かされ、どうしたもんかと悩むジーク。
……ヘタに予選会に残すと、また暴走するんじゃないのかと危惧しているからである。
三つ目は、いま話題に出たリナとの恋愛云々についてである。
『それはそれとスカルスよぉ? ルールブ妹はどうするんじゃ?』
『違うと言いましたよね……!?』
ついでにまたガーデニアンからからかわれてしまい、いい加減リナとの関係について追及されるのは嫌になってきたジークなのであった。
この時もガーデニアンの言葉を聞いて笑みが静かな怒りの薄い笑みに変わった程に。
それなのに目の前のミルルは不用意に言ってしまったので、ジークは絶賛お怒り中なのである。
「もう誤解を説くのが面倒いんだよ。……あと合わせるのが疲れるから」
「だからその意味の分からない文句はなに!? ていうか誰に聞かれたのさ!」
ジークの理由にどうしても納得のいかないミルルであったが、結局話をしても無視されてしまうばかりだったので、早々にこの話からは離れるようにしたのであった。
「でもちょっと意外だったな」
「意外?」
『何が?』と疑問符を浮かべるジークであったが、
「だってアイリスさんの件で周りにヒドイ目にあったのに、あんな可愛い子と噂になってるんだもん。いつものジーク君なら絶対そんな状況、起こらないように全力で回避してたと思って」
「……俺もそう思うよ。けど不思議だよ。起こらないよう手を打ったことが全部悪手になるんだよなぁ……」
「なんか、いろいろ大変だったんだね」
ミルルの言葉に頷かずにはいられなかったジーク。
そうして過去を振り返り、若干憂鬱になるのであった。
ミルルの方もそんなジークの心情をなんとなく察したのか、これ以上、問い掛けようとはせず話題を別のに変えることにした。
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