元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
別ルートB――物語は【????】へ続く。
「あの時は連絡が取れなくて悪かった。色々取り込み中で返事をする暇がなかった」
「いや、俺に言われても困るんですが……」
「アハハハハ、そうかー」
困惑した様子の大地に龍崎の師であるジーク・スカルスは笑い声で誤魔化した。
場所は何処かの図書館のようなところだ。
龍崎を通して招かれた大地はテーブル席に座っていたジークと対面。
魔導神でもある彼を前に緊張した様子で自己紹介をしたが、いきなり会話の手鼻を挫かれた気がした。
「あの……あんまりからかうのは無しでお願いしたいんですが……」
「少しでも緊張を和らげばと思ったが……余計だった?」
「本題に移りたいです」
「あー了解した」
気を悪くした訳ではないが、早く帰りたいのはヒシヒシと感じた。
苦笑い混じりにジークも本題に入ることにした。
「魔導王の力を持つ後輩の訓練をしてほしいんだよな?」
「はい、同じ……というかご本人でもある貴方なら……なんとかなりませんかね?」
「なんとなく察した」
要するに使いこなせてないのだ。
カード化した魔導王の力が増したか、異世界の時よりも扱いが難しくなったようだ。
力の恐ろしさをよく知っているジークはすぐに理解したが、その被害規模は少々自分の想像よりも深刻だった。
「本人も本意ではないらしいんですが、あんまり破壊活動が続くとそろそろ国を追放されそうで……」
「け、結構重大な悩みだな」
自分も似たような経験があるから他人事のように思えない。
浮かんでいた笑みを痙攣させながら、一旦落ち着こうとコーヒーを飲む。
「ふぅー、おおよそ把握した。まぁオレが直接指導するものやぶさかではないが……」
「分かってます。貴方が忙しい立場にいることは承知の上です」
雰囲気が変わって真剣な眼差しを向けるジークに対して、大地は構わないと告げる前から条件を飲んでいた。
「龍崎から聞いてます。人材を集めてることも」
「手伝ってくれるならこちらも嬉しい限りだが、本当にいいのか? ヘタすると自由時間がほぼ無くなるかもしれないし、面倒なことに余計突っ込むことになるぞ」
「零さんもそうでした。自分のこととは関係ないのにあの異世界で俺を助けてくれました。俺の世界でも龍崎と一緒に何度も俺たちを助けてくれた」
覚悟を問うような彼の言葉に大地は背筋を伸ばして自分の気持ちを伝える。
目の前の人からしたら少し経験があるだけの子供でしかないだろう。
彼の覚悟なんてジークからしたらまだまだ脆いのかもしれない。
「助けられてるばかりじゃ嫌なんです! お願いします! 俺に機会をください!」
けど、半端者でないことは伝わってほしい。
自分に出来る精一杯な態度で神であるジークと向き合うと……。
「そうか……じゃあ、お願いしようかな」
「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
優しい笑みで彼の気持ちに応える。
少し心配そうな目をしているが、子供でも彼も戦士なのだと納得する。
ただし、当分はなるべく大丈夫そうな任務に絞ろと、彼には悪いが密かに決めることにした。
「ん、そういえば……あの世界の件があったな」
「あの世界とは?」
「あ、いや、オレが今潜入しているところのことなんだが、ジンたちと連絡が出来なかったのもそこの騒動が関係してな」
そして握手を交わして話を進める中、どんな任務が良いか考えていた為か、ふと自分が関わっている世界のことを思い出す。
決して安全とは言い難い。
何せ魔神が関わっている上、一度世界を滅ぼしかけた失敗がある。
現在、自分が弱っている原因でもあり、龍崎たちを派遣しようか悩んでいた案件だが……
「どうかな? もし良かったらオレが担当する世界を手伝ってみないか? もちろんサポートはオレが自らやろう」
「え、ジークさんの担当する世界ですか?」
「ジンたちには隠してるんだが、実は訳あって今のオレは実質力が半減してるんだ。心配されると思うから黙ってたんだが、担当する世界の状況が日に日に酷くなってな。そろそろ厳しいと思ってたところなんだ」
「はぁ……」
半減とはどういうことか、疑問符を浮かべる大地だが、ジークも深く訊かれたくないのでそこを隅に置くように話を進めていく。
この時点では四割本気で六割は冗談だった。
「それにオレがいる世界に居れば世界移動が簡単に出来る。常にとは状況によって言えないが、オレが一緒の世界なら結構保険が――」
「やります」
「即答!?」
途中で十割本気になった大地の宣言で決定した。
色々と説明不足な点は否めないが、そこは追々告げればいいとジークも頷く。
こうして新たな戦力として『勇者』幸村大地が加わることになった。
ちなみに――
「その世界とはどういうところなんですか? ていうか俺は何をすれば?」
「世界は君の世界よりは表向き普通だよ。その代わり裏では魔法関係のトラブルが起きているから基本はオレと一緒に活動しつつ、とある人物の監視かな」
「なるほど……で、そのとある人物と言うのはどういう人ですか?」
「ああ、彼は――いや、彼と彼女はというべきか」
少しだけ可笑しそうに顔でジークは大地に告げた。
「世界を滅ぼした魔神の血を引いた人間の監視さ」
「…………はい?」
まるで黒歴史でも語っているような苦い顔で、まるで子供の話でもするような面白そうな顔で。
なんて表現すればいいか複雑な表情をしたジークの言葉に対し、大地もなんと返せばいいか分からず、しばし困惑した様子のまま固まってしまっていた。
物語は【世界を滅ぼした魔神の娘に取り憑かれた】へ続く。
「いや、俺に言われても困るんですが……」
「アハハハハ、そうかー」
困惑した様子の大地に龍崎の師であるジーク・スカルスは笑い声で誤魔化した。
場所は何処かの図書館のようなところだ。
龍崎を通して招かれた大地はテーブル席に座っていたジークと対面。
魔導神でもある彼を前に緊張した様子で自己紹介をしたが、いきなり会話の手鼻を挫かれた気がした。
「あの……あんまりからかうのは無しでお願いしたいんですが……」
「少しでも緊張を和らげばと思ったが……余計だった?」
「本題に移りたいです」
「あー了解した」
気を悪くした訳ではないが、早く帰りたいのはヒシヒシと感じた。
苦笑い混じりにジークも本題に入ることにした。
「魔導王の力を持つ後輩の訓練をしてほしいんだよな?」
「はい、同じ……というかご本人でもある貴方なら……なんとかなりませんかね?」
「なんとなく察した」
要するに使いこなせてないのだ。
カード化した魔導王の力が増したか、異世界の時よりも扱いが難しくなったようだ。
力の恐ろしさをよく知っているジークはすぐに理解したが、その被害規模は少々自分の想像よりも深刻だった。
「本人も本意ではないらしいんですが、あんまり破壊活動が続くとそろそろ国を追放されそうで……」
「け、結構重大な悩みだな」
自分も似たような経験があるから他人事のように思えない。
浮かんでいた笑みを痙攣させながら、一旦落ち着こうとコーヒーを飲む。
「ふぅー、おおよそ把握した。まぁオレが直接指導するものやぶさかではないが……」
「分かってます。貴方が忙しい立場にいることは承知の上です」
雰囲気が変わって真剣な眼差しを向けるジークに対して、大地は構わないと告げる前から条件を飲んでいた。
「龍崎から聞いてます。人材を集めてることも」
「手伝ってくれるならこちらも嬉しい限りだが、本当にいいのか? ヘタすると自由時間がほぼ無くなるかもしれないし、面倒なことに余計突っ込むことになるぞ」
「零さんもそうでした。自分のこととは関係ないのにあの異世界で俺を助けてくれました。俺の世界でも龍崎と一緒に何度も俺たちを助けてくれた」
覚悟を問うような彼の言葉に大地は背筋を伸ばして自分の気持ちを伝える。
目の前の人からしたら少し経験があるだけの子供でしかないだろう。
彼の覚悟なんてジークからしたらまだまだ脆いのかもしれない。
「助けられてるばかりじゃ嫌なんです! お願いします! 俺に機会をください!」
けど、半端者でないことは伝わってほしい。
自分に出来る精一杯な態度で神であるジークと向き合うと……。
「そうか……じゃあ、お願いしようかな」
「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
優しい笑みで彼の気持ちに応える。
少し心配そうな目をしているが、子供でも彼も戦士なのだと納得する。
ただし、当分はなるべく大丈夫そうな任務に絞ろと、彼には悪いが密かに決めることにした。
「ん、そういえば……あの世界の件があったな」
「あの世界とは?」
「あ、いや、オレが今潜入しているところのことなんだが、ジンたちと連絡が出来なかったのもそこの騒動が関係してな」
そして握手を交わして話を進める中、どんな任務が良いか考えていた為か、ふと自分が関わっている世界のことを思い出す。
決して安全とは言い難い。
何せ魔神が関わっている上、一度世界を滅ぼしかけた失敗がある。
現在、自分が弱っている原因でもあり、龍崎たちを派遣しようか悩んでいた案件だが……
「どうかな? もし良かったらオレが担当する世界を手伝ってみないか? もちろんサポートはオレが自らやろう」
「え、ジークさんの担当する世界ですか?」
「ジンたちには隠してるんだが、実は訳あって今のオレは実質力が半減してるんだ。心配されると思うから黙ってたんだが、担当する世界の状況が日に日に酷くなってな。そろそろ厳しいと思ってたところなんだ」
「はぁ……」
半減とはどういうことか、疑問符を浮かべる大地だが、ジークも深く訊かれたくないのでそこを隅に置くように話を進めていく。
この時点では四割本気で六割は冗談だった。
「それにオレがいる世界に居れば世界移動が簡単に出来る。常にとは状況によって言えないが、オレが一緒の世界なら結構保険が――」
「やります」
「即答!?」
途中で十割本気になった大地の宣言で決定した。
色々と説明不足な点は否めないが、そこは追々告げればいいとジークも頷く。
こうして新たな戦力として『勇者』幸村大地が加わることになった。
ちなみに――
「その世界とはどういうところなんですか? ていうか俺は何をすれば?」
「世界は君の世界よりは表向き普通だよ。その代わり裏では魔法関係のトラブルが起きているから基本はオレと一緒に活動しつつ、とある人物の監視かな」
「なるほど……で、そのとある人物と言うのはどういう人ですか?」
「ああ、彼は――いや、彼と彼女はというべきか」
少しだけ可笑しそうに顔でジークは大地に告げた。
「世界を滅ぼした魔神の血を引いた人間の監視さ」
「…………はい?」
まるで黒歴史でも語っているような苦い顔で、まるで子供の話でもするような面白そうな顔で。
なんて表現すればいいか複雑な表情をしたジークの言葉に対し、大地もなんと返せばいいか分からず、しばし困惑した様子のまま固まってしまっていた。
物語は【世界を滅ぼした魔神の娘に取り憑かれた】へ続く。
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