元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
魔王復活と勇者帰還 その7。
「作戦を伝える。と言ってもそこまで複雑じゃないから流れで合わせてくれ」
魔王と接触前、龍崎が俺と鷹宮に説明を始めた。
「幸村君の我儘を通す形だが、正直に言うと普通に倒した方が楽だ」
分かってる。けど、それじゃ困るんだよ。
「と言うわけで鷹宮さんの情報も加えて作戦を立ててみた」
そして龍崎の説明を簡潔にまとめると以下の通り。
目標は機械と合体した魔王の体内からカード化した麻衣の力を取り戻すこと。
余計な消耗を避けて俺はギリギリまで待機。申し訳ないが、他の3人に隙を作ってもらうことになった。
「魔石で強化するつもりようだが、昼の疲労はまだ残ってるんだろ? 戦闘に参加したら長くは保たない」
うっ、おっしゃる通りです……。
未だに反対気味な様子だが、龍崎も一応考えてくれているようだ。
「鷹宮さんの話の通りならオレたち3人で魔王を追い詰めれば、『滅亡の侵略者《ドレッド・レイダー》』の防衛システムとやらが働くようだ。会場でのは偶々だったが、零さんの登場が余程想定外だったのか?」
「私にも分からないけどあの兵器には識別機能もある。たぶん1番危険だと判断されたんだと思う」
確かに魔法や類するスキル対策に特化した機械兵だ。
異能使い零さんを1番の脅威だと判断してもおかしくないか。
「とにかく追い詰めて攻撃パターンが切り替わった瞬間だ。そこを幸村君には狙ってもらう。戦神の力で外装を突破しろ」
「『戦神』なら魔王の力で幹部のカードを使える。持っている魔石で強化すれば魔王の奴は餌に喰い付く。その間に麻衣のカード2枚を体内から回収する」
龍崎の説明に俺も頷いて濁り切った魔石の山を見せる。この際全て使うつもりだ。多過ぎる程度が寧ろちょうどいい。
そこで魔石を見ていた零さんがふと尋ねてきた。
「魔王の力は魔石とカードでどうにか出来るかもしれないが、どうやって引きずり出すつもりだ? 奴の体内は恐らく瘴気の塊で1分でも危ういぞ?」
「零さん『戦神』は戦神の力が1番強く出てる。なら同じ戦神の力で生まれた麻衣の能力も引き寄せれると思うんです。それに魔導神の力も……」
そう、麻衣の力が込められた『魔法使い』を使えばいける。
かなりリスクが高い賭けであるが、そうでもしないと……!
「力を貸してくれるみんなに申し訳ないんです」
「危険なことに変わりはないぞ?」
それでもやる。改めて零さんに強い眼差しで告げると難しい顔であるが、確かに頷いてくれた。
く、喰われる! もう麻痺が解けて腕が喰われそうだ! 範囲攻撃も解除されて少しほっとしたのに!
龍の顎門の装甲を鎧の腕で突っ込んで、魔王の肉体まで侵入出来たまではよかったが、少しずつ麻痺が解けたか魔王と機械が抵抗を始めようとした!
『ギィィィィィィィィィィ!』
「グッッーー!」
直前で取り込んでいた大量の魔石の所為で肉体が異常を起こしているみたいだ。
そのお陰で魔王のスキル【リミットブレイク】が使えて、限界までステータスを引き上げた状態から3枚の幹部カードを使用した。
『暗黒騎士』
『剛炎鬼神』
『黒魔導師』
【スキル・コンタクト】で右腕に込めて、全ての魔王の力と共に打ち込んでいた。
「そこだァァァァァ!」
そして体内に蠢いている瘴気の中から、奴にとっては異物の存在を感じ取る。吸収し切れずまだ体内で持て余していたか、感じ取れる2つの力へ俺は腕が喰われてしまう覚悟で手を伸ばしてッ!
「――ウッ!?」
う、で、が! 噛み千切られ……!
『――ブゥッ!?』
寸前、突然魔王から息苦しそうな声が漏れた。
龍の顎門まで伝わったのか、鎧越しに腕を噛みちぎろうとした顎門の圧力が弱まって……。
「ああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
掴み取ったそれらと一緒に勢いよく腕を引っこ抜いた! ボロボロの鎧の血塗れの腕が見えたが、まだ完全に喰い千切られていなくて心底安堵した。感覚も残っているしこれなら治せる筈!
『――ッ!?』
「――ッ!?」
その瞬間、強烈な衝撃が俺と魔王との間に発生する。
抗えないほど強力で俺も魔王も大きく吹き飛ばされてしまい、衝撃で魔力操作か能力が麻痺を起こしたか『戦神』の変身が解けてしまった。
その前に察知して離れていた他の3人が駆け寄ってくる中、俺はボロボロの手のひらにある物を見て気持ちを抑え切れず笑みが溢れていた。
「大丈夫か幸村君!」
「な、なんとか……」
「――ッ! 大地、あれを見ろ!」
だが、それだけじゃ終わらなかった。龍崎に返事していると零さんから驚きの声が聞こえてくる。振り向くと鷹宮も驚いた様子で零さんと同じ方向を見ている。俺も釣られて2人の視線の先を見てみると……。
『ギィィィィィ……!』
さっきの衝撃で少し鎧にヒビが入った魔王が1体。
何故か機械の鎧でなく本来の姿に戻っているが、その答えたは隣の物体を見れば一目瞭然であった。
『――ッ!』
この世界に襲来した五体の『滅亡の侵略者《ドレッド・レイダー》』が合体した姿がそこにはあった。
見た目はさっきの魔王に装備していた姿に近く、魔王の肉体の代わりに龍の機械兵が中心となって全身に他の機械兵を装着している状態だった。
破壊した筈なのにさりげなく復活していることに正直文句を言いたいが、さらに隣で膝を付いている知っている男に俺も鷹宮も意識を奪われていた。
「ガホッ! ク、クソォォォォ……あのカス風情が小賢しい真似を……!」
「お前は……」
「藤原君……」
名前は確か藤原浩司。個人的にあまり絡むことはないが、鷹宮は同じチームにいる。唖然とした様子で何か詰まっているのか吐いている彼を見ている。
「そうか、お前が使者だったのか」
「ゲホッ! ハァッ! まさか融合自体が解除されるとは思わなかったよ……! 不完全な状態の所為かそれともいきなり残りのカードと魔王の因子を取り込んだ所為か、いずれにしてもやってくれたな、貴様!」
クラスで見せる普段のイケメンスマイルはそこにはなかった。苛立った顔付きで俺と睨み付ける。手を伸ばすと何もないところから金属の杖らしき物が出現した。
……魔力を感じる魔法の杖。やはり使者はコイツか。
「よくも実験を台無しにしてくれたが、この状況は僕にとっても悪くない」
今にも攻撃されそうな鋭い殺気を向けられていたが、怒りの形相に冷静さが戻って視線が顔ごとズレて隣の零さんを凝視した。
「死神――貴様は我が主人の仇! 貴様だけは僕の手で倒す!」
「あの悪霊もどきの主人とはお前もイカれてるな」
半笑い気味だが、零さんも受けて立つつもりだ。
融合が解除されたのは予想外だったが、魔王の戦力は確実に分散されている。このチャンスを逃す訳にはいかない。
「零さんがあの使者とやるなら、合体したレイダーはオレがやるしかないか。相性がいい訳じゃないが、君らよりはマシか」
『ッ!』
合体した機械兵の前にいつの間にか龍崎が立ち塞がっていた。
確かに俺や鷹宮じゃ勝機は薄いが、それは魔法使いの龍崎も変わらない筈。試合場で圧倒したあの力が使えないのなら不利なのは一緒だと思うが……。
「色々考えても俺はこっちに用があるからいいんだけどな」
『ギィィィィィィィィ!』
何処からともなく禍々しいあの時の魔剣を取り出す魔王。
俺の中の魔王の力と残りのカードを取り戻した影響だろう。思考回路こそ異常なままだが、魔剣を振るう動作は以前相対した奴の動きそのものである。
「力取り戻して調子良いところ悪いが、ここからは俺の反撃タイムだ」
しかし、金色と銀色のカードを取り戻した俺もさっきまでとは一味違う。
本来なら自然の治癒程度のオートスキルでは、すぐ治せない筈の回復した手から能力の本を取り出す。 そして全身から噴き出す『銀のオーラ』。俺には宿っていない麻衣の魔力が俺の中に収まった瞬間、俺の自身へ凄まじい量の魔力が還元されていた。
「さっきの間に俺を倒せなかったことを――後悔しろ」
さて、逆襲の回を始めようか。
魔王と接触前、龍崎が俺と鷹宮に説明を始めた。
「幸村君の我儘を通す形だが、正直に言うと普通に倒した方が楽だ」
分かってる。けど、それじゃ困るんだよ。
「と言うわけで鷹宮さんの情報も加えて作戦を立ててみた」
そして龍崎の説明を簡潔にまとめると以下の通り。
目標は機械と合体した魔王の体内からカード化した麻衣の力を取り戻すこと。
余計な消耗を避けて俺はギリギリまで待機。申し訳ないが、他の3人に隙を作ってもらうことになった。
「魔石で強化するつもりようだが、昼の疲労はまだ残ってるんだろ? 戦闘に参加したら長くは保たない」
うっ、おっしゃる通りです……。
未だに反対気味な様子だが、龍崎も一応考えてくれているようだ。
「鷹宮さんの話の通りならオレたち3人で魔王を追い詰めれば、『滅亡の侵略者《ドレッド・レイダー》』の防衛システムとやらが働くようだ。会場でのは偶々だったが、零さんの登場が余程想定外だったのか?」
「私にも分からないけどあの兵器には識別機能もある。たぶん1番危険だと判断されたんだと思う」
確かに魔法や類するスキル対策に特化した機械兵だ。
異能使い零さんを1番の脅威だと判断してもおかしくないか。
「とにかく追い詰めて攻撃パターンが切り替わった瞬間だ。そこを幸村君には狙ってもらう。戦神の力で外装を突破しろ」
「『戦神』なら魔王の力で幹部のカードを使える。持っている魔石で強化すれば魔王の奴は餌に喰い付く。その間に麻衣のカード2枚を体内から回収する」
龍崎の説明に俺も頷いて濁り切った魔石の山を見せる。この際全て使うつもりだ。多過ぎる程度が寧ろちょうどいい。
そこで魔石を見ていた零さんがふと尋ねてきた。
「魔王の力は魔石とカードでどうにか出来るかもしれないが、どうやって引きずり出すつもりだ? 奴の体内は恐らく瘴気の塊で1分でも危ういぞ?」
「零さん『戦神』は戦神の力が1番強く出てる。なら同じ戦神の力で生まれた麻衣の能力も引き寄せれると思うんです。それに魔導神の力も……」
そう、麻衣の力が込められた『魔法使い』を使えばいける。
かなりリスクが高い賭けであるが、そうでもしないと……!
「力を貸してくれるみんなに申し訳ないんです」
「危険なことに変わりはないぞ?」
それでもやる。改めて零さんに強い眼差しで告げると難しい顔であるが、確かに頷いてくれた。
く、喰われる! もう麻痺が解けて腕が喰われそうだ! 範囲攻撃も解除されて少しほっとしたのに!
龍の顎門の装甲を鎧の腕で突っ込んで、魔王の肉体まで侵入出来たまではよかったが、少しずつ麻痺が解けたか魔王と機械が抵抗を始めようとした!
『ギィィィィィィィィィィ!』
「グッッーー!」
直前で取り込んでいた大量の魔石の所為で肉体が異常を起こしているみたいだ。
そのお陰で魔王のスキル【リミットブレイク】が使えて、限界までステータスを引き上げた状態から3枚の幹部カードを使用した。
『暗黒騎士』
『剛炎鬼神』
『黒魔導師』
【スキル・コンタクト】で右腕に込めて、全ての魔王の力と共に打ち込んでいた。
「そこだァァァァァ!」
そして体内に蠢いている瘴気の中から、奴にとっては異物の存在を感じ取る。吸収し切れずまだ体内で持て余していたか、感じ取れる2つの力へ俺は腕が喰われてしまう覚悟で手を伸ばしてッ!
「――ウッ!?」
う、で、が! 噛み千切られ……!
『――ブゥッ!?』
寸前、突然魔王から息苦しそうな声が漏れた。
龍の顎門まで伝わったのか、鎧越しに腕を噛みちぎろうとした顎門の圧力が弱まって……。
「ああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
掴み取ったそれらと一緒に勢いよく腕を引っこ抜いた! ボロボロの鎧の血塗れの腕が見えたが、まだ完全に喰い千切られていなくて心底安堵した。感覚も残っているしこれなら治せる筈!
『――ッ!?』
「――ッ!?」
その瞬間、強烈な衝撃が俺と魔王との間に発生する。
抗えないほど強力で俺も魔王も大きく吹き飛ばされてしまい、衝撃で魔力操作か能力が麻痺を起こしたか『戦神』の変身が解けてしまった。
その前に察知して離れていた他の3人が駆け寄ってくる中、俺はボロボロの手のひらにある物を見て気持ちを抑え切れず笑みが溢れていた。
「大丈夫か幸村君!」
「な、なんとか……」
「――ッ! 大地、あれを見ろ!」
だが、それだけじゃ終わらなかった。龍崎に返事していると零さんから驚きの声が聞こえてくる。振り向くと鷹宮も驚いた様子で零さんと同じ方向を見ている。俺も釣られて2人の視線の先を見てみると……。
『ギィィィィィ……!』
さっきの衝撃で少し鎧にヒビが入った魔王が1体。
何故か機械の鎧でなく本来の姿に戻っているが、その答えたは隣の物体を見れば一目瞭然であった。
『――ッ!』
この世界に襲来した五体の『滅亡の侵略者《ドレッド・レイダー》』が合体した姿がそこにはあった。
見た目はさっきの魔王に装備していた姿に近く、魔王の肉体の代わりに龍の機械兵が中心となって全身に他の機械兵を装着している状態だった。
破壊した筈なのにさりげなく復活していることに正直文句を言いたいが、さらに隣で膝を付いている知っている男に俺も鷹宮も意識を奪われていた。
「ガホッ! ク、クソォォォォ……あのカス風情が小賢しい真似を……!」
「お前は……」
「藤原君……」
名前は確か藤原浩司。個人的にあまり絡むことはないが、鷹宮は同じチームにいる。唖然とした様子で何か詰まっているのか吐いている彼を見ている。
「そうか、お前が使者だったのか」
「ゲホッ! ハァッ! まさか融合自体が解除されるとは思わなかったよ……! 不完全な状態の所為かそれともいきなり残りのカードと魔王の因子を取り込んだ所為か、いずれにしてもやってくれたな、貴様!」
クラスで見せる普段のイケメンスマイルはそこにはなかった。苛立った顔付きで俺と睨み付ける。手を伸ばすと何もないところから金属の杖らしき物が出現した。
……魔力を感じる魔法の杖。やはり使者はコイツか。
「よくも実験を台無しにしてくれたが、この状況は僕にとっても悪くない」
今にも攻撃されそうな鋭い殺気を向けられていたが、怒りの形相に冷静さが戻って視線が顔ごとズレて隣の零さんを凝視した。
「死神――貴様は我が主人の仇! 貴様だけは僕の手で倒す!」
「あの悪霊もどきの主人とはお前もイカれてるな」
半笑い気味だが、零さんも受けて立つつもりだ。
融合が解除されたのは予想外だったが、魔王の戦力は確実に分散されている。このチャンスを逃す訳にはいかない。
「零さんがあの使者とやるなら、合体したレイダーはオレがやるしかないか。相性がいい訳じゃないが、君らよりはマシか」
『ッ!』
合体した機械兵の前にいつの間にか龍崎が立ち塞がっていた。
確かに俺や鷹宮じゃ勝機は薄いが、それは魔法使いの龍崎も変わらない筈。試合場で圧倒したあの力が使えないのなら不利なのは一緒だと思うが……。
「色々考えても俺はこっちに用があるからいいんだけどな」
『ギィィィィィィィィ!』
何処からともなく禍々しいあの時の魔剣を取り出す魔王。
俺の中の魔王の力と残りのカードを取り戻した影響だろう。思考回路こそ異常なままだが、魔剣を振るう動作は以前相対した奴の動きそのものである。
「力取り戻して調子良いところ悪いが、ここからは俺の反撃タイムだ」
しかし、金色と銀色のカードを取り戻した俺もさっきまでとは一味違う。
本来なら自然の治癒程度のオートスキルでは、すぐ治せない筈の回復した手から能力の本を取り出す。 そして全身から噴き出す『銀のオーラ』。俺には宿っていない麻衣の魔力が俺の中に収まった瞬間、俺の自身へ凄まじい量の魔力が還元されていた。
「さっきの間に俺を倒せなかったことを――後悔しろ」
さて、逆襲の回を始めようか。
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