元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
魔王復活と勇者帰還 その5。
麻衣から受け取ったカードの端と裏面の魔法陣に金色が混じる。
さらに絵柄も変化してかつての魔法使いの俺と麻衣の姿が写っている。背中を合わせたちょっとカッコつけた感じだが、これほど頼りになる切り札はない。
「ありがとう」
「いえいえ……」
受け取った俺は礼を述べる。
もう眠りそうな麻衣の頭を撫でると耳元へ静かに告げた。
「お前の力は必ず取り戻す。だから待ってろ」
「は、い……」
「用意はいいのか?」
「はい、俺は準備OKですが……」
マンションの屋上で待っていた零さんたちと合流する。不用意にマンションの外に出ると誰に見られるか分からないので、ここから直接向かうことに特に疑問はないが。
「なんで鷹宮がいるんだ」
「一緒に行くからに決まってるでしょう?」
何故か制服越しで装備を整えた鷹宮も待っていた。何でいるんだといった俺のジト目も気にした風もなく当たり前のように主張する。……いや、ホント何でいるの?
「小森さんを運んでくれたのは彼女なんだ。ついでに言うと協力はオレたちも了承済みだ」
魔力を練り始める龍崎が俺に告げる。確かにあの時近くにいたのは覚えているが、まさか麻衣を運んでてくれたとは。そういえばさっき零さんが話中に部屋とクラスメイトの話をしていたな。
「けどなんで彼女の同行を許可したんだ? いや、そもそも鷹宮がこの件に介入する理由があるのか? ていうか知っているのか? 俺たち今から危険状態になってる暗黒島に行くんだけど」
「分かってるわ。あの兵器と合体した訳の分からない存在を倒しに行くんでしょう? だったら尚さら行かせて」
……勘違いじゃない。彼女もまた何か理由があってあの魔王に用があるというのか。
「勿論運んで介抱しただけで同行を求めるほど図々しくないわ。ちゃんと貴方達にもメリットがあることよ」
「それが零さんたちが了承した理由か」
察した。どういうメリットか知らないが、余程の有意義なことでない限り2人が承諾するわけがなかった。
「さっき聞いてクラスメイトの知り合いのようだが、一度ちゃんと自己紹介をした方がいいじゃないか? 刃の準備にはもう少し掛かるようだからさ」
「自己紹介ですか?」
なんで今さら? 俺が首を傾げていると鷹宮が頷いて俺と向き合ってきた。
「改めて名乗るは私は鷹宮朱音――別世界で剣士をしていた転生者よ」
「……唐突のカミングアウトだなオイ」
予想していたとは言わないでおく。一年の時からのやり取りでもしかしてという部分はいくつもあった。けどこれで確信を得られたから別に問題はないが……。
「あの合体したゴーレム……貴方達はドレッド・レイダーと呼んでる。アレ、私の世界を滅ぼした魔法殺しの兵器なんだけど」
「え、そうなの? ――って!?」
機械兵のことを知っている? まさかと零さんたちに視線を向けると2人ともコクリと頷く。
2人の反応、俺の考えてる通りならつまり……!
「もし合体しだけならあの兵器に備わっている無数の魔法対策には、作り上げた者も知らないと思う弱点がある」
魔法に対して無敵に近い今の魔王だが、思わぬ形で突破口が見えた気がした。
「準備いいか? ここから暗黒島まで一気に移動するぞ」
そう言って龍崎が前へ出る。集中した様子で周りに立っている俺たちに呼びかけると、何もない空間に手を触れた。
「天地魔法・発動――『逆転の羅針盤』、『入れ替わる運命』」
真上の夜空に光る羅針盤が映り出す。
クルクルと回って矢印の針先が暗黒島の方を指した瞬間、景色が反転した。
天地がひっくり返ったような気分で眩暈がしそうなるが、すぐに治まるといつの間にか俺たちは全員で森の中にいた。
「こ、此処って」
「島の内部だ」
「嘘……」
呆然としているのは俺と鷹宮だけ。零さんは気にせず周囲を警戒している。
いったいどういう魔法か全然分からなかったが、どうやら俺たちは暗黒島の内部まで移動したらしい。しかも一瞬にして守りを固めているというモンスターたちを無視していた。
「全方位敵だらけのようだが、近くにはとくに気配はないな」
「情報通り魔物の大半が門の方に行ってるみたいですね。けど空間転移を察知された可能性があるのでさっさと動いた方がいいかと」
何処までも平常通りの2人。頼もしいけど少しは戸惑っているこちらもフォローしてほしい。
龍崎は目を閉じて周囲を探る。するとすぐ探知したのか目を見開いて森の奥を指した。
「魔王の気配はどうやらあっちのようです。探ってみると存在感もだいぶ増しているようだ。急ぎましょう」
「瘴気も濃くなってる。吸い過ぎないよう注意しろ」
まるで軍人のような判断能力と行動力だよ、2人とも。
とりあえず唖然とする鷹宮をポンポンと叩いて正気に戻す。ここまで来て置いてかれないように駆け出す2人の後を追った。
さらに絵柄も変化してかつての魔法使いの俺と麻衣の姿が写っている。背中を合わせたちょっとカッコつけた感じだが、これほど頼りになる切り札はない。
「ありがとう」
「いえいえ……」
受け取った俺は礼を述べる。
もう眠りそうな麻衣の頭を撫でると耳元へ静かに告げた。
「お前の力は必ず取り戻す。だから待ってろ」
「は、い……」
「用意はいいのか?」
「はい、俺は準備OKですが……」
マンションの屋上で待っていた零さんたちと合流する。不用意にマンションの外に出ると誰に見られるか分からないので、ここから直接向かうことに特に疑問はないが。
「なんで鷹宮がいるんだ」
「一緒に行くからに決まってるでしょう?」
何故か制服越しで装備を整えた鷹宮も待っていた。何でいるんだといった俺のジト目も気にした風もなく当たり前のように主張する。……いや、ホント何でいるの?
「小森さんを運んでくれたのは彼女なんだ。ついでに言うと協力はオレたちも了承済みだ」
魔力を練り始める龍崎が俺に告げる。確かにあの時近くにいたのは覚えているが、まさか麻衣を運んでてくれたとは。そういえばさっき零さんが話中に部屋とクラスメイトの話をしていたな。
「けどなんで彼女の同行を許可したんだ? いや、そもそも鷹宮がこの件に介入する理由があるのか? ていうか知っているのか? 俺たち今から危険状態になってる暗黒島に行くんだけど」
「分かってるわ。あの兵器と合体した訳の分からない存在を倒しに行くんでしょう? だったら尚さら行かせて」
……勘違いじゃない。彼女もまた何か理由があってあの魔王に用があるというのか。
「勿論運んで介抱しただけで同行を求めるほど図々しくないわ。ちゃんと貴方達にもメリットがあることよ」
「それが零さんたちが了承した理由か」
察した。どういうメリットか知らないが、余程の有意義なことでない限り2人が承諾するわけがなかった。
「さっき聞いてクラスメイトの知り合いのようだが、一度ちゃんと自己紹介をした方がいいじゃないか? 刃の準備にはもう少し掛かるようだからさ」
「自己紹介ですか?」
なんで今さら? 俺が首を傾げていると鷹宮が頷いて俺と向き合ってきた。
「改めて名乗るは私は鷹宮朱音――別世界で剣士をしていた転生者よ」
「……唐突のカミングアウトだなオイ」
予想していたとは言わないでおく。一年の時からのやり取りでもしかしてという部分はいくつもあった。けどこれで確信を得られたから別に問題はないが……。
「あの合体したゴーレム……貴方達はドレッド・レイダーと呼んでる。アレ、私の世界を滅ぼした魔法殺しの兵器なんだけど」
「え、そうなの? ――って!?」
機械兵のことを知っている? まさかと零さんたちに視線を向けると2人ともコクリと頷く。
2人の反応、俺の考えてる通りならつまり……!
「もし合体しだけならあの兵器に備わっている無数の魔法対策には、作り上げた者も知らないと思う弱点がある」
魔法に対して無敵に近い今の魔王だが、思わぬ形で突破口が見えた気がした。
「準備いいか? ここから暗黒島まで一気に移動するぞ」
そう言って龍崎が前へ出る。集中した様子で周りに立っている俺たちに呼びかけると、何もない空間に手を触れた。
「天地魔法・発動――『逆転の羅針盤』、『入れ替わる運命』」
真上の夜空に光る羅針盤が映り出す。
クルクルと回って矢印の針先が暗黒島の方を指した瞬間、景色が反転した。
天地がひっくり返ったような気分で眩暈がしそうなるが、すぐに治まるといつの間にか俺たちは全員で森の中にいた。
「こ、此処って」
「島の内部だ」
「嘘……」
呆然としているのは俺と鷹宮だけ。零さんは気にせず周囲を警戒している。
いったいどういう魔法か全然分からなかったが、どうやら俺たちは暗黒島の内部まで移動したらしい。しかも一瞬にして守りを固めているというモンスターたちを無視していた。
「全方位敵だらけのようだが、近くにはとくに気配はないな」
「情報通り魔物の大半が門の方に行ってるみたいですね。けど空間転移を察知された可能性があるのでさっさと動いた方がいいかと」
何処までも平常通りの2人。頼もしいけど少しは戸惑っているこちらもフォローしてほしい。
龍崎は目を閉じて周囲を探る。するとすぐ探知したのか目を見開いて森の奥を指した。
「魔王の気配はどうやらあっちのようです。探ってみると存在感もだいぶ増しているようだ。急ぎましょう」
「瘴気も濃くなってる。吸い過ぎないよう注意しろ」
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