元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
魔王復活と勇者帰還 その3。
「大丈夫か? 立てるか?」
「あ、ああ……」
機械兵を倒した後、瓦礫の下敷きになってる学生や警備の人たちを掘り起こしていた。
普通なら二次被害の可能性があるので危険な行為だが、全員能力者で肉体の強度は一般人とは違う。一番レベルが低い人でも完全に潰れることはまずない。
「動けるなら他の埋もれてる人たちを頼む。治癒系の能力者がいたから怪我が治ってるはずだ」
「え……ホントだっ! 怪我がない!」
さらに龍崎が結界と一緒に全方位に治療魔法を掛けた。結界魔法の意図も薄々予想はつく。治療魔法の後から荒れている奴の異質な魔力を感じ取っていた。
しかし、龍崎も零さんも救助活動に専念しているだけ。
明らかに奴の魔力は何かと戦闘しているようだが、2人とも加勢に行こうとしなかった。
だが、時間もそんなにある訳じゃない。近くで気絶している人を運んでいる零さんに問いかけた。
「零さん! この結界はいつまで必要何ですか? そろそろ外の方が騒がしくなりそうだけど、もしまだ掛かるなら俺たちも加勢に行った方が……」
「心配ない。もうそろそろ終わる筈だ。そうだろ刃?」
「ええ、こっちでも感知しました。用心深いあの人なら上手くやるでしょうし、あと5分だけ待ってみましょうか」
龍崎は結界を維持しながら大の大人を6人も抱えて移動している。6人分の重さなら筋力アップした俺でもできると思うが、器用に3人以上落とさずなると結構大変だ。
「少しは調子は戻ったか?」
「ぶっちゃけ全然ですねぇ。今度は魔力吸収こそされませんでしたが、私の大技はどれも反動が大きいので魔力に余裕があってもキツイのが現実です。いくら補助魔法で肉体を補っても限度があります。……肝心なところでホントすみません」
座り込んでいる麻衣は申し訳なさそうに謝る。1人でも救助の助けが欲しいところなのに魔法の反動でまともに動けなくなったのだ。
治療・回復魔法でカバーしようとするが、魔力の操作機能もグンと落ちているらしい。魔法が暴発する危険があるから大人しくしていた。
「幸村君! ちょっといいかしら!」
「って鷹宮? まだ避難してなかったのか」
お疲れの後輩と話していると別方から声が掛かる。振り返ると先ほど偶々助けた鷹宮が駆け寄って来る。何か焦っている顔、俺は結界のことだと察して思わず視線を逸らしかけたが、逸らした先で龍崎と零さんがゴメンと手を合わせてる。……なるほど勝手にやっておいて最後は俺に丸投げですか!
「プププププっ!」
ついでに後輩があちゃーって手を口に当てて……満面な笑みを浮かべているが。
どうで見てもこの状況を面白がってる顔だわっ!
「あの後輩めぇ」
「幸村君ってば!」
「はい、何でしょうか?」
もうヤケだよ! 麻衣を見習って満面な笑みで誤魔化してやろうとした。
「ふざけてる場合じゃないの! 気持ち悪い笑みはいいから訊いて!」
ハイ、気持ち悪い判定を頂きました! 別にふざけてるつもりはないのに叱られた……。
後輩がブフッって吹いているから後で絶対シメてやるとして、いつになく焦っている鷹宮に流石の俺も笑顔をやめて訊いてみた。
「さっきの機械たちに吹き飛ばされた藤原君とBクラスの松井君を探して、貴方達が戦ってる間に見つけたんだけど……」
チラリと視線が座り込んでる後輩、マズイと少しずつ離れる零さんと龍崎に移る。見ない2人に違和感を覚えているが、本題はそこではないようだ。
ただ自分の記憶が怪しいのか、少々躊躇った様子で話してくれた。
「2人とも傷だらけだったからとりあえず応急手当てを行おうとしたんだけど、急に降り注いだ綺麗な光が松井君や他の人たちの怪我を癒したと思ったら…………藤原君の体が突然霧のように消えたの」
「え、消えた……だと」
治療魔法で消えた? 何故?
アレは向こうの神父やシスターたちが使う癒しの魔法に似ていた。龍崎も治療だと言っていたから間違いない。
しかし、その治療魔法で消えた奴がいる。本来なら傷の方が消えるはずの魔法で。
……それはつまり藤原という男が――ドオォォォォォンッ!!
「先輩っ!」
「ッ! 鷹宮!」
「――っ!」
答えに行き着こうとしたが、激しい爆発音。そして麻衣の鋭い呼び掛けと背筋に感じ取った冷えるような殺気が俺の思考を止めた。
反射的に鷹宮を押し倒すように伏せた。まったく分かっていない鷹宮はすぐパニックを起こすだろうが、俺は自分の危機察知の勘に従う。
『ッ!』
すると何かが俺たちが立っていた場所を通過する。
真っ黒な何かだと分かったが、速過ぎる太い黒い線に見えたそれは観戦席の方から斜め下へ、地面を穿つようにこちらへ突っ込んで来たのだ。
「な、何が飛んで来た?」
「今のは……」
いつまでも押し倒している場合ではない。さっさと退くと鷹宮を驚いた顔で落ちた何かを捉えた直後――。
「っ! チッ!」
あの異質な魔力が闇と光となって混ざり合った暗黒の魔力。
俺たちが立っているボロボロの舞台に降り注ぐ。さっきの龍崎の治療の光とはまるで逆だ。ただし舞台に限定した時点で目的は異なっている。
「ウ、オオオオオオオオオオッ!」
「幸村君!」
「先輩っ!」
俺はこの魔法を知ってる。だから手順を無視して『魔法使い』のカードを突き出し無理やり魔法を使用する。
障壁用の魔法陣を無数に展開して、降り注ぐ暗黒の魔力から自分と周りを守った。
「先輩! 魔力が……!」
「ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」
急激な魔力消耗に意識が飛びかけて倒れそうになる。鷹宮が支えてくれなかったらヤバかった。障壁は消えてカードは自動で本に戻る。いきなり攻撃をしてきた向こう側は全くお構いなしだ。
迫って来たそいつの標的は俺らしい。鷹宮に寄り掛かっている中、視界に入った黒い影から鋭い殺気を感じ取った。
「え?」
横に突き飛ばした鷹宮から驚いた顔を向けられる。
申し訳ないと内心謝罪するが、いちいち口で言う余裕なんてない。
「『戦士』っ!」
もう何分変身していられるかも怪しいので、専用武器の短剣のみを呼び出す。服装を変えない代わりに全身を戦士の魔力で強化した。
「はぁぁぁぁぁ!」
もう眼前まで迫っている。黒い影へスキル【心刃】を叩き込むが……。
「っ!」
そいつは素早い動きで短剣を握る俺の腕を取ってきた。幽霊のようにゆらりとした読み難い動きで引っ張る。さらに異常な万力がミシミシと俺の腕の骨を砕こうとした。
「ぐ……ラァァァァァッ!」
潰される前に体を捻って蹴りを顔面へ打ち込む。引っ張られた反動も利用して少しでも腕の拘束を弱らせたかったが、蹴りが奴の顔に届くことはなかった。
「ああー、しまった……」
直撃寸前で掴んだ脚と、そして腕を持ち上げてくる。咄嗟に空いている腕と脚で真下の奴を攻撃するが、全然効いていない。何故か全身がボロボロの状態なのにまるで鉛のような装甲をして…………死の予感が全身に駆け巡った。
「――っ」
ヤバいと直感が警報を喧しいほど鳴らした時には、暗黒のオーラを纏った奴は勢いよく俺を地面へ――クレーターが出来るレベルで叩きつけた。
……あれ?
意識が、ぼんやりとする。
「せ、せんぱい?」
トマトが破裂したように血飛沫を上がる。俺の血だと思う。
曖昧なのは言うほど痛みがなかったからだ。出血が酷いのか冷たさしか感じ取ることができなかった。
「せん、ぱい」
視界の端で焦ったような零さんたち見える。唖然とした鷹宮や救助した奴らも見える。視野が広がっている感じだ。全身のリミッターでも外れたか、不思議な感覚だ。
『ギィ……』
ぼんやりとした奴の姿も見えている。灰色のボサボサした長い髪にヒビ割れた白い仮面、全身は昔と同じカラスような黒い鎧であるが、何故か鎧が遠目で分かるくらいボロボロになっている。羽のような外套もところどころ千切れて何処かゾンビのようにも見えていた。
――魔王。
そう呼ばれていた存在。
かつて俺が奇跡的に倒せた筈の正真正銘の化け物だ。
そいつが何故かゾンビもどきのように蘇ったのだ。
「せんぱい、せんぱい」
っ……ああ、分かってる。けど残念なことに返事が出来ない。思考は働いているのに口が……体の言うことがまったく利かなかった。
呆然とした後輩がこちらを見ながら何度も呼びかける。光を失った目で、危うい色をした黒い瞳で……。
「せ、ん、ぱ、い……」
徐々に麻衣の精神が歪んでいく。危険な状態だ。
やがて何も反応を示さない俺から視線が移動する。光を失った暗闇の目はゆっくりとゆっくりと……人形のように立つ魔王へと向いた。
「あ、あああ、あああああ……せ、せんぱぁぁぁぁぁぁいいいいいいッッ!」
奴の姿を目にした瞬間、麻衣の精神は臨界点を超えてしまった。
噴き出し始める憤怒の魔力に動けない筈の体が悲鳴をあげているが、理性が崩壊した彼女は抑えない。
「コロシテヤルッッ! コノ害虫がァァァァァァァ!」
怒り狂う彼女の感情に誘発されて『魔神の因子』と『魔導神の因子』が共鳴を起こす。
憤怒の声を漏らすと全身から血のように赤く、そして漆黒の闇が融合した濁り切った魔力が意思を宿したかのように荒れ狂い出した。
「あ、ああ……」
機械兵を倒した後、瓦礫の下敷きになってる学生や警備の人たちを掘り起こしていた。
普通なら二次被害の可能性があるので危険な行為だが、全員能力者で肉体の強度は一般人とは違う。一番レベルが低い人でも完全に潰れることはまずない。
「動けるなら他の埋もれてる人たちを頼む。治癒系の能力者がいたから怪我が治ってるはずだ」
「え……ホントだっ! 怪我がない!」
さらに龍崎が結界と一緒に全方位に治療魔法を掛けた。結界魔法の意図も薄々予想はつく。治療魔法の後から荒れている奴の異質な魔力を感じ取っていた。
しかし、龍崎も零さんも救助活動に専念しているだけ。
明らかに奴の魔力は何かと戦闘しているようだが、2人とも加勢に行こうとしなかった。
だが、時間もそんなにある訳じゃない。近くで気絶している人を運んでいる零さんに問いかけた。
「零さん! この結界はいつまで必要何ですか? そろそろ外の方が騒がしくなりそうだけど、もしまだ掛かるなら俺たちも加勢に行った方が……」
「心配ない。もうそろそろ終わる筈だ。そうだろ刃?」
「ええ、こっちでも感知しました。用心深いあの人なら上手くやるでしょうし、あと5分だけ待ってみましょうか」
龍崎は結界を維持しながら大の大人を6人も抱えて移動している。6人分の重さなら筋力アップした俺でもできると思うが、器用に3人以上落とさずなると結構大変だ。
「少しは調子は戻ったか?」
「ぶっちゃけ全然ですねぇ。今度は魔力吸収こそされませんでしたが、私の大技はどれも反動が大きいので魔力に余裕があってもキツイのが現実です。いくら補助魔法で肉体を補っても限度があります。……肝心なところでホントすみません」
座り込んでいる麻衣は申し訳なさそうに謝る。1人でも救助の助けが欲しいところなのに魔法の反動でまともに動けなくなったのだ。
治療・回復魔法でカバーしようとするが、魔力の操作機能もグンと落ちているらしい。魔法が暴発する危険があるから大人しくしていた。
「幸村君! ちょっといいかしら!」
「って鷹宮? まだ避難してなかったのか」
お疲れの後輩と話していると別方から声が掛かる。振り返ると先ほど偶々助けた鷹宮が駆け寄って来る。何か焦っている顔、俺は結界のことだと察して思わず視線を逸らしかけたが、逸らした先で龍崎と零さんがゴメンと手を合わせてる。……なるほど勝手にやっておいて最後は俺に丸投げですか!
「プププププっ!」
ついでに後輩があちゃーって手を口に当てて……満面な笑みを浮かべているが。
どうで見てもこの状況を面白がってる顔だわっ!
「あの後輩めぇ」
「幸村君ってば!」
「はい、何でしょうか?」
もうヤケだよ! 麻衣を見習って満面な笑みで誤魔化してやろうとした。
「ふざけてる場合じゃないの! 気持ち悪い笑みはいいから訊いて!」
ハイ、気持ち悪い判定を頂きました! 別にふざけてるつもりはないのに叱られた……。
後輩がブフッって吹いているから後で絶対シメてやるとして、いつになく焦っている鷹宮に流石の俺も笑顔をやめて訊いてみた。
「さっきの機械たちに吹き飛ばされた藤原君とBクラスの松井君を探して、貴方達が戦ってる間に見つけたんだけど……」
チラリと視線が座り込んでる後輩、マズイと少しずつ離れる零さんと龍崎に移る。見ない2人に違和感を覚えているが、本題はそこではないようだ。
ただ自分の記憶が怪しいのか、少々躊躇った様子で話してくれた。
「2人とも傷だらけだったからとりあえず応急手当てを行おうとしたんだけど、急に降り注いだ綺麗な光が松井君や他の人たちの怪我を癒したと思ったら…………藤原君の体が突然霧のように消えたの」
「え、消えた……だと」
治療魔法で消えた? 何故?
アレは向こうの神父やシスターたちが使う癒しの魔法に似ていた。龍崎も治療だと言っていたから間違いない。
しかし、その治療魔法で消えた奴がいる。本来なら傷の方が消えるはずの魔法で。
……それはつまり藤原という男が――ドオォォォォォンッ!!
「先輩っ!」
「ッ! 鷹宮!」
「――っ!」
答えに行き着こうとしたが、激しい爆発音。そして麻衣の鋭い呼び掛けと背筋に感じ取った冷えるような殺気が俺の思考を止めた。
反射的に鷹宮を押し倒すように伏せた。まったく分かっていない鷹宮はすぐパニックを起こすだろうが、俺は自分の危機察知の勘に従う。
『ッ!』
すると何かが俺たちが立っていた場所を通過する。
真っ黒な何かだと分かったが、速過ぎる太い黒い線に見えたそれは観戦席の方から斜め下へ、地面を穿つようにこちらへ突っ込んで来たのだ。
「な、何が飛んで来た?」
「今のは……」
いつまでも押し倒している場合ではない。さっさと退くと鷹宮を驚いた顔で落ちた何かを捉えた直後――。
「っ! チッ!」
あの異質な魔力が闇と光となって混ざり合った暗黒の魔力。
俺たちが立っているボロボロの舞台に降り注ぐ。さっきの龍崎の治療の光とはまるで逆だ。ただし舞台に限定した時点で目的は異なっている。
「ウ、オオオオオオオオオオッ!」
「幸村君!」
「先輩っ!」
俺はこの魔法を知ってる。だから手順を無視して『魔法使い』のカードを突き出し無理やり魔法を使用する。
障壁用の魔法陣を無数に展開して、降り注ぐ暗黒の魔力から自分と周りを守った。
「先輩! 魔力が……!」
「ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」
急激な魔力消耗に意識が飛びかけて倒れそうになる。鷹宮が支えてくれなかったらヤバかった。障壁は消えてカードは自動で本に戻る。いきなり攻撃をしてきた向こう側は全くお構いなしだ。
迫って来たそいつの標的は俺らしい。鷹宮に寄り掛かっている中、視界に入った黒い影から鋭い殺気を感じ取った。
「え?」
横に突き飛ばした鷹宮から驚いた顔を向けられる。
申し訳ないと内心謝罪するが、いちいち口で言う余裕なんてない。
「『戦士』っ!」
もう何分変身していられるかも怪しいので、専用武器の短剣のみを呼び出す。服装を変えない代わりに全身を戦士の魔力で強化した。
「はぁぁぁぁぁ!」
もう眼前まで迫っている。黒い影へスキル【心刃】を叩き込むが……。
「っ!」
そいつは素早い動きで短剣を握る俺の腕を取ってきた。幽霊のようにゆらりとした読み難い動きで引っ張る。さらに異常な万力がミシミシと俺の腕の骨を砕こうとした。
「ぐ……ラァァァァァッ!」
潰される前に体を捻って蹴りを顔面へ打ち込む。引っ張られた反動も利用して少しでも腕の拘束を弱らせたかったが、蹴りが奴の顔に届くことはなかった。
「ああー、しまった……」
直撃寸前で掴んだ脚と、そして腕を持ち上げてくる。咄嗟に空いている腕と脚で真下の奴を攻撃するが、全然効いていない。何故か全身がボロボロの状態なのにまるで鉛のような装甲をして…………死の予感が全身に駆け巡った。
「――っ」
ヤバいと直感が警報を喧しいほど鳴らした時には、暗黒のオーラを纏った奴は勢いよく俺を地面へ――クレーターが出来るレベルで叩きつけた。
……あれ?
意識が、ぼんやりとする。
「せ、せんぱい?」
トマトが破裂したように血飛沫を上がる。俺の血だと思う。
曖昧なのは言うほど痛みがなかったからだ。出血が酷いのか冷たさしか感じ取ることができなかった。
「せん、ぱい」
視界の端で焦ったような零さんたち見える。唖然とした鷹宮や救助した奴らも見える。視野が広がっている感じだ。全身のリミッターでも外れたか、不思議な感覚だ。
『ギィ……』
ぼんやりとした奴の姿も見えている。灰色のボサボサした長い髪にヒビ割れた白い仮面、全身は昔と同じカラスような黒い鎧であるが、何故か鎧が遠目で分かるくらいボロボロになっている。羽のような外套もところどころ千切れて何処かゾンビのようにも見えていた。
――魔王。
そう呼ばれていた存在。
かつて俺が奇跡的に倒せた筈の正真正銘の化け物だ。
そいつが何故かゾンビもどきのように蘇ったのだ。
「せんぱい、せんぱい」
っ……ああ、分かってる。けど残念なことに返事が出来ない。思考は働いているのに口が……体の言うことがまったく利かなかった。
呆然とした後輩がこちらを見ながら何度も呼びかける。光を失った目で、危うい色をした黒い瞳で……。
「せ、ん、ぱ、い……」
徐々に麻衣の精神が歪んでいく。危険な状態だ。
やがて何も反応を示さない俺から視線が移動する。光を失った暗闇の目はゆっくりとゆっくりと……人形のように立つ魔王へと向いた。
「あ、あああ、あああああ……せ、せんぱぁぁぁぁぁぁいいいいいいッッ!」
奴の姿を目にした瞬間、麻衣の精神は臨界点を超えてしまった。
噴き出し始める憤怒の魔力に動けない筈の体が悲鳴をあげているが、理性が崩壊した彼女は抑えない。
「コロシテヤルッッ! コノ害虫がァァァァァァァ!」
怒り狂う彼女の感情に誘発されて『魔神の因子』と『魔導神の因子』が共鳴を起こす。
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