元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
安いお肉でも選ぶ者次第で化ける。
急な話であるが、時一がユキちゃんまたはシロと呼んでいる彼女、白岡有希は小柄な見た目のわりに大食漢である。
好物はお肉、猫っぽいが魚よりも断然お肉が大好きな子猫ちゃんなのだ。
「お肉の恨みは命で償え……!」
「べ、弁護士を呼んでくれ! オレの所為じゃない!」
「わたしが買った! わたしのお肉なのに!」
倒れている時一のお腹に乗って威嚇するようにナイフとホークを構える。無表情であるが、メラメラと憤怒の炎を燃やしており、お怒りなのは時一でなくてもよく分かってしまった。
「ジンの奴が勝手に持ってたんだ! オレは悪くない!」
「この紙は何?」
パッ有希が見たのは刃が残した書き置きであるが、問題はその内容である。まさかといったギョッとした様子の時一が恐る恐る読んでみると……
『調子も戻ったので勝手ですみませんが、ちょっと彼らに会ってきます。あと冷蔵庫の中のお肉を借りて行きますね? 冷蔵庫の物は何でも使っていいと言ってたので』
「何か言うことは?」
「か、金貸しとけばよかっt――ぁぁぁぁァァァァァ!?」
言い終わる前にグサグサの刑に処された。猫のご機嫌取りは機敏でなくてはならないと痛感した。
「スゴイお肉だよぉ〜。一枚一枚が選び抜かれてるぅ!」
「実を言うとね。これ高級食材とかじゃないんだ。騙した感じでごめんね?」
「え、うそ! ホントですか?」
「知り合いの目利きな子がスーパーで買ったらしい。挨拶の品としては失礼かと思ったんけどね。素人目からでも凄い美味しそうだったんで、彼氏さんからも好きに使っていいって言われてたから、ついこれにしてみたんだ」
「大正解です! 是非、目利きのコツを教えて欲しいくらいです!」
「今度聞いてみるよ。オレも当分はここにいる予定だから」
出来上がったスキ焼きのお肉を妹の空が美味しそうに頬張っている。キラキラした目で微笑んでいる彼を見て尋ねていた。話を聞いてた俺も結構ビックリするくらい美味しい肉であるが、正直言ってあまり余裕はなかった。
「もぐ……もぐ……」
否、後輩はもっと重傷である。
嬉しそうな空とは正反対にお通夜みたいな暗い顔をして食べている。不謹慎だけど気持ちはよく分かるので何も言わない。おわかりはしっかりしているから、体調は全然オーケーなようだし。
「じゃあ、龍崎さんも異世界出身なんですか?」
「なんだ、君も知っている側だったんだ。異世界と言っても正確にはダンジョンだけで住んでいるところは、この世界の別の地球なんだ」
「あー! 空だけ除け者にするつもりだったんですね! このお肉さまを囮に!」
「ふ、バレてしまったか。その通りもう一枚どうかな?」
「いただきまーす!」
わざわざ小声で言う必要はなかったよ、と苦笑いすると空も笑顔で答えている。コミュ力が高い妹が居てくれてホント助かったが……なんだろう。兄として色々と不安になる光景に……
「君を見てると昔の妹を思い出すなぁ」
「妹さんが居るんですか?」
「君と同じくらいのね。けど家と色々あって今じゃほぼ他人扱い。オレに笑ってくれたのなんて何年も昔だ。冷たい方の笑みが何度かあるくらい嫌われてる。好きだった幼馴染にもね」
途中で彼の好きな人の話が混ざったのでちょっと安心する俺がいる。同時に意外とシスコンなのだと自分に少々驚いていると……
「何があったかは聞きませんが、絶対にその妹さんが悪いです! ……好きだった幼馴染さんも?」
「婚約者だったんだけどね。魔法の才能がゼロだから解消されて、今では一方的には敵扱いかなぁ」
つ、辛い。婚約者とか気になる単語が含まれるが、好きな人に敵として認識されてるとか、普通に可哀想だし魔法の才能の有る無しで解消とか極端過ぎないか?
「魔法の名家にとっては天才しか喜ばれないんだ。秀才でギリギリ、それ以下はろくに見られず落ちこぼれは居るだけで害にしかならない」
別世界だけど本当に同じ地球の話か? 確かにこっちでも天然の能力者の家系で色々とトラブルのネタがあると聞いたことはあるが、長男で目立つからって息子を捨てるか普通?
「まぁ、そのお陰で今の自分がいるから今なら素直に感謝はしてる。あの二人は置いても親の方は色々思うところがあったようだし」
複雑な事情は何処にでもあるということか。鍋も平らげてお腹も良い具合に膨れたところでお茶を飲んでいた龍崎が話を切り出した。
「ふぅー、そろそろ本題に入ろうか?」
「そのようだな」
最初の挨拶で敬語は不要となった。同い年に見えるが、なんだか年上の雰囲気があるから敬語で話そうとしたが。
『お互い見た目通りの年齢じゃないんだ。気にせず話さないか?』
その言い方で分かったのは。
それは俺の正体……というか年を誤魔化しているのを知っていること。
そして、もう一つは半信半疑であったが、彼もまた見た目通りの年齢ではないということだ。
「二人の前でも大丈夫か?」
「R18に引っ掛からないなら……含まれるなら麻衣はともかく妹は絶対にダメだ」
「センパイ、私も可愛い後輩なんですからダメな方に入れてくださいよぉー」
可能なら参加したくないって顔をしているが、悪いけど退場は認めない。
「嫌そうにしているが、肉もたらふく食ったんだ。魔法関係なら専門のお前がいないと俺じゃ付いて行けない。R18だろうが残ってもらうぞ?」
「くっ」
彼の魔力を感じてからこんな感じである。お肉の魔力で渋々残っていたが、何かと理由を付けて離れようとしている。そんなに嫌か。
「なんか申し訳ないな。こっちの正体を教える為にあの時に近いこっちの魔力を流してたんだが……そっちの子にはお気に召さなかったらしい」
「問題ない。縛っても残すから」
ちなみにR指定はないと言う。
内容はいきなり彼がこの世界に来た訳から始まった。
好物はお肉、猫っぽいが魚よりも断然お肉が大好きな子猫ちゃんなのだ。
「お肉の恨みは命で償え……!」
「べ、弁護士を呼んでくれ! オレの所為じゃない!」
「わたしが買った! わたしのお肉なのに!」
倒れている時一のお腹に乗って威嚇するようにナイフとホークを構える。無表情であるが、メラメラと憤怒の炎を燃やしており、お怒りなのは時一でなくてもよく分かってしまった。
「ジンの奴が勝手に持ってたんだ! オレは悪くない!」
「この紙は何?」
パッ有希が見たのは刃が残した書き置きであるが、問題はその内容である。まさかといったギョッとした様子の時一が恐る恐る読んでみると……
『調子も戻ったので勝手ですみませんが、ちょっと彼らに会ってきます。あと冷蔵庫の中のお肉を借りて行きますね? 冷蔵庫の物は何でも使っていいと言ってたので』
「何か言うことは?」
「か、金貸しとけばよかっt――ぁぁぁぁァァァァァ!?」
言い終わる前にグサグサの刑に処された。猫のご機嫌取りは機敏でなくてはならないと痛感した。
「スゴイお肉だよぉ〜。一枚一枚が選び抜かれてるぅ!」
「実を言うとね。これ高級食材とかじゃないんだ。騙した感じでごめんね?」
「え、うそ! ホントですか?」
「知り合いの目利きな子がスーパーで買ったらしい。挨拶の品としては失礼かと思ったんけどね。素人目からでも凄い美味しそうだったんで、彼氏さんからも好きに使っていいって言われてたから、ついこれにしてみたんだ」
「大正解です! 是非、目利きのコツを教えて欲しいくらいです!」
「今度聞いてみるよ。オレも当分はここにいる予定だから」
出来上がったスキ焼きのお肉を妹の空が美味しそうに頬張っている。キラキラした目で微笑んでいる彼を見て尋ねていた。話を聞いてた俺も結構ビックリするくらい美味しい肉であるが、正直言ってあまり余裕はなかった。
「もぐ……もぐ……」
否、後輩はもっと重傷である。
嬉しそうな空とは正反対にお通夜みたいな暗い顔をして食べている。不謹慎だけど気持ちはよく分かるので何も言わない。おわかりはしっかりしているから、体調は全然オーケーなようだし。
「じゃあ、龍崎さんも異世界出身なんですか?」
「なんだ、君も知っている側だったんだ。異世界と言っても正確にはダンジョンだけで住んでいるところは、この世界の別の地球なんだ」
「あー! 空だけ除け者にするつもりだったんですね! このお肉さまを囮に!」
「ふ、バレてしまったか。その通りもう一枚どうかな?」
「いただきまーす!」
わざわざ小声で言う必要はなかったよ、と苦笑いすると空も笑顔で答えている。コミュ力が高い妹が居てくれてホント助かったが……なんだろう。兄として色々と不安になる光景に……
「君を見てると昔の妹を思い出すなぁ」
「妹さんが居るんですか?」
「君と同じくらいのね。けど家と色々あって今じゃほぼ他人扱い。オレに笑ってくれたのなんて何年も昔だ。冷たい方の笑みが何度かあるくらい嫌われてる。好きだった幼馴染にもね」
途中で彼の好きな人の話が混ざったのでちょっと安心する俺がいる。同時に意外とシスコンなのだと自分に少々驚いていると……
「何があったかは聞きませんが、絶対にその妹さんが悪いです! ……好きだった幼馴染さんも?」
「婚約者だったんだけどね。魔法の才能がゼロだから解消されて、今では一方的には敵扱いかなぁ」
つ、辛い。婚約者とか気になる単語が含まれるが、好きな人に敵として認識されてるとか、普通に可哀想だし魔法の才能の有る無しで解消とか極端過ぎないか?
「魔法の名家にとっては天才しか喜ばれないんだ。秀才でギリギリ、それ以下はろくに見られず落ちこぼれは居るだけで害にしかならない」
別世界だけど本当に同じ地球の話か? 確かにこっちでも天然の能力者の家系で色々とトラブルのネタがあると聞いたことはあるが、長男で目立つからって息子を捨てるか普通?
「まぁ、そのお陰で今の自分がいるから今なら素直に感謝はしてる。あの二人は置いても親の方は色々思うところがあったようだし」
複雑な事情は何処にでもあるということか。鍋も平らげてお腹も良い具合に膨れたところでお茶を飲んでいた龍崎が話を切り出した。
「ふぅー、そろそろ本題に入ろうか?」
「そのようだな」
最初の挨拶で敬語は不要となった。同い年に見えるが、なんだか年上の雰囲気があるから敬語で話そうとしたが。
『お互い見た目通りの年齢じゃないんだ。気にせず話さないか?』
その言い方で分かったのは。
それは俺の正体……というか年を誤魔化しているのを知っていること。
そして、もう一つは半信半疑であったが、彼もまた見た目通りの年齢ではないということだ。
「二人の前でも大丈夫か?」
「R18に引っ掛からないなら……含まれるなら麻衣はともかく妹は絶対にダメだ」
「センパイ、私も可愛い後輩なんですからダメな方に入れてくださいよぉー」
可能なら参加したくないって顔をしているが、悪いけど退場は認めない。
「嫌そうにしているが、肉もたらふく食ったんだ。魔法関係なら専門のお前がいないと俺じゃ付いて行けない。R18だろうが残ってもらうぞ?」
「くっ」
彼の魔力を感じてからこんな感じである。お肉の魔力で渋々残っていたが、何かと理由を付けて離れようとしている。そんなに嫌か。
「なんか申し訳ないな。こっちの正体を教える為にあの時に近いこっちの魔力を流してたんだが……そっちの子にはお気に召さなかったらしい」
「問題ない。縛っても残すから」
ちなみにR指定はないと言う。
内容はいきなり彼がこの世界に来た訳から始まった。
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