元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
異次元から襲来と来訪者 その4。
まさか『能力ジャマー系』の装置が搭載されているとは夢にも思わなかった。学園にもいくつ似たような能力や装置があるのは知っているが、ここまでの性能の物は知らない。
「ソラちゃんたちは会場の外に行きました!」
「みたいだな。麻衣は鷹宮と秋党たちを外に連れ出せ」
事態は急展開に正直まだ戸惑っているが許してほしい。あの機械もだが鷹宮の乱入も本当に予想外だった。
「幸村君……」
「下がってろ」
言って聞くような相手ではないが、だいぶ痛め付けられたようだ。膝を付いたまま動けない彼女を置いて俺は歩き出す。
「派手にやり過ぎだと思わないのか? このプラモデル」
『ッ!』
返答はまた口からの光線だった。ほとんど溜めていないからか、弾みたいなのが発射されたが、既に【マスター・ブック】で冒険者姿の『戦士』になっていた。
「甘いわ」
専用武器『踏破した冒険者の証』の短剣の【心刃】で光線を切り裂く。基本系のスキル【瞬速】で間合いを詰めると刃の嵐を浴びせた。
『――ッ!』
しかし、頑丈な金属で出来ているようで切り傷しか与えられない。左腕に付いている十字の盾を振ってきたので躱すと、機械は上体を下げて背中のミサイル口をこちらに向けてきた。
「……!」
1秒後、発射される数十発のミサイル。魔力が込められたそれにはそれぞれに誘導機能があるのか、避けようと【瞬速】で横に移動した俺にスピードを上げて追って来る。すぐにスキルレベルを上げた【瞬速レベルⅡ】に切り替えたが、ミサイルを振り切れず確実に俺を捉えて……
「させませんッ!」
遅れて龍化した麻衣の魔力球――【龍玉】が行く手を阻んだ。大地を狙っているすべてのミサイルを撃ち落とす。
「【ドラゴンクロー】ッ!」
『――ッ!』
機械と同じくらいのサイズとなった麻衣が上空から鉤爪で叩き込む。もっと大きくなれるが、まだ周囲に人が多過ぎる為、最低限のサイズで戦っていた。
『ッ!』
「硬いから何なんですか!」
さらに鉤爪で叩き付ける。機械も抵抗するが、殆ど背中に乗しかかっている感じだから重量的にかなり動きに……
「ガルルルルルルルルっ!」
「スミマセン! 真面目に援護します!」
龍の目で思いっきり睨まれました。超怖え……
魔力を操作して麻衣が巻き込まれない前側から攻撃を仕掛けた。
「【ライト・クラス・ショット】!」
「【ドラゴンファング】!」
俺が放つ十字の光線に合わせて麻衣も強靭な牙で噛み付く。アレが妹と同い年の娘とはとても思えないが、ツッコんでいると俺の方に飛び火が来るので懸命に援護します。
『―――』
けど気の所為だろうか? こいつ麻衣が飛び乗ってから何か殆ど動かなくなっているような……
「いや、マズイってあれは……」
「どうするよマスター? 参戦か援護はしないのか?」
「死なせなくたないからしたいけど……アレが相手じゃなぁ」
その様子を見ていた時一が引き攣った顔で口にする。第三者にバレないように見渡せる屋根から見ていたが、状況はかなり拙い方向に進んでいると分かり、いよいよ加勢をしなくてはと焦り始めていた。……凄く嫌だから中々踏み込めないが。
「あの分厚い装甲じゃ、生半可の攻撃なんか意味がねぇ。オレの攻撃も全然効かないと思うぞ?」
「確かに表面をいくら傷付けても内側はノーダメージのようだ。……マスター、あれってやはり」
「『魔神サイド』の殲滅兵器だろうな。オレたちの標的がこの世界に呼び込んだのか? ホント面倒なことをしてくれる!」
しかも、よりにもよって監視対象である大地と……あの麻衣が対峙している。まだ不完全な大地がやられても困るが、彼の魔力を宿している麻衣がアレと接触するのは危険過ぎた。
「間違いなく魔力を吸われてる。しばらくすれば気付くだろうが、魔神の兵器がアイツの魔力を取り込んだりしたら……」
などと言っている間に試合場の状況も一転する。大地たちと同じで時一もタイミングを逃していた。
「っ!」
おいおい、これってまさか……!
攻撃を中止した俺は慌てて駆け出す。近距離で攻撃をする為ではない。どうしようもない鈍い後輩を引きずり落とすためだ。
「あれ……? 魔力が……?」
「気付けバカ! 魔力が吸われてるぞ!」
形態変化の代償か? 魔力を感じ取れる知覚系が鈍くなってやがる! 結構な魔力を吸われてやっと気付いたが、フラフラして抜け出すのにモタついていた。
『ッ!』
そこでようやく沈黙していた機械が活動を再開した。本当は俺の言葉が分かっているのか? 龍化した麻衣を逃さないように背中の翼のみたいなもので拘束した! なんでもありか!
「せんぱーい……へるぷみー」
「ホント闘争心を萎えさせるなーお前は!」
バカなのか。ガミガミ噛んでいる間も吸われていたということは、相当な量を持ってかれている。気の所為じゃないなら機械の方もどこか生き生きして……
『ッ!』
全身の赤黒い球体を光らせた! 嫌な魔力が活性化しているのが分かる。十中八九さっきの能力麻痺の衝撃波の技だ!
「クソ!『魔法使い』――解放せよ! 刻み込まれた魔術師の魂!」
即座に『戦士』から切り替える。最も魔法に特化したスタイルになると服装も変わり真っ黒なローブと帽子と身に付ける。
「――オープン!【マジック・ブースト】【オーバー・フロー】」
左右の手に魔法文字が刻まれたネックレスが巻き付けられると、刻み込まれている術式を起動する。2種類の魔法で無理やり暴走状態に入って、決して多くない魔力が急上昇させた。
「間に合え!【スキル・コンタクト】ッ!」
「せんぱーい?」
脳裏に『魔法使い』と『戦士』を合わせる。
あまり得意な分野ではないが、魔法を強化した【スキル・コンタクト】を発動させた。
『――ッッ!』
「――【マジシャンズ・ディフェンダー】ッッ! 許せ麻衣!」
「ちょ!? センパーイっ!! なんでその不穏なセリフh―――」
奴とついでに麻衣を全方位から囲うように五枚の魔法陣が展開された。麻衣がなんか叫んでいたが、超集中している俺の耳はもう届いていなかった。
次の瞬間、機械から解放された電磁波が囲っている魔法陣と衝突。
激しく衝突し合い魔法陣がギシギシと軋み、そしてヒビが入って広がっていく。壊れるのも時間の問題だが、とにかく魔力操作に意識を集中して解放されるエネルギーを外に出さないよう努めた。
そして、激しい爆発が起きて、すべての魔法陣が割れる。
すると唯一攻撃を受けて変身が解けた麻衣が衝撃でこちらに放り込まれる。煙上げているけど多分無事だろうな、と思いつつ一応片手でキャッチして横に置いた。
「ふぅー、なんとか防げたか……」
「センパイ、私が致命傷です」
「なんて奴だ。吸収した麻衣の魔力をこんな風に使うとは」
「先輩……殴っていいですか? 乙女の大事な物が大きく損なわれたんで」
別にギャグのつもりはないが、頭がちょっと爆発している後輩がすっごい睨んでくる。うん、確かに大事な何かが損なわれてるわ。
けどそんなことを言っている場合ではない。こっちは魔力を使い過ぎて、もう限界が近い。麻衣の方も能力が使えなくなっただけじゃない。魔力も殆ど持ってかれたようで、立つことも出来ない様子だ。麻衣の場合、一度魔力が大量に消耗すると回復にはかなりの時間を要するし……どうする? アレだけの怪物だと教員が来て厳しい気が……
――ピキピキ……
「ん?」
とその時、上空でまた違和感を感じ取った俺は不意に空を上げる。
ヒビ割れた空はそのままであるが、何か……別の力が割込んでいる気配を感じ取り……
『―――ッ!』
割れた空の隙間から『暗黒の落雷』が飛来する。まるで意思でも宿っているかのように巨大な機械へと一直線に落ちて来た。機械は直撃を受けると横転して全身から煙を上げていた。
「今度はなんだ?」
そして空から飛来した何かを時一は訝しげに睨んでいたが、感じ取った魂の気配に表情は一変する。キョトンとした顔で小首を傾げた。
「なんで居るの? よりにもよって……彼が」
新たな増援だと素直に喜ぶべきだが、色々と困った事情を知っている彼はどうしても素直に喜べなかった。
複雑な心境でもう加勢は必要ないと、この成り行きを見守ることにした。
「ソラちゃんたちは会場の外に行きました!」
「みたいだな。麻衣は鷹宮と秋党たちを外に連れ出せ」
事態は急展開に正直まだ戸惑っているが許してほしい。あの機械もだが鷹宮の乱入も本当に予想外だった。
「幸村君……」
「下がってろ」
言って聞くような相手ではないが、だいぶ痛め付けられたようだ。膝を付いたまま動けない彼女を置いて俺は歩き出す。
「派手にやり過ぎだと思わないのか? このプラモデル」
『ッ!』
返答はまた口からの光線だった。ほとんど溜めていないからか、弾みたいなのが発射されたが、既に【マスター・ブック】で冒険者姿の『戦士』になっていた。
「甘いわ」
専用武器『踏破した冒険者の証』の短剣の【心刃】で光線を切り裂く。基本系のスキル【瞬速】で間合いを詰めると刃の嵐を浴びせた。
『――ッ!』
しかし、頑丈な金属で出来ているようで切り傷しか与えられない。左腕に付いている十字の盾を振ってきたので躱すと、機械は上体を下げて背中のミサイル口をこちらに向けてきた。
「……!」
1秒後、発射される数十発のミサイル。魔力が込められたそれにはそれぞれに誘導機能があるのか、避けようと【瞬速】で横に移動した俺にスピードを上げて追って来る。すぐにスキルレベルを上げた【瞬速レベルⅡ】に切り替えたが、ミサイルを振り切れず確実に俺を捉えて……
「させませんッ!」
遅れて龍化した麻衣の魔力球――【龍玉】が行く手を阻んだ。大地を狙っているすべてのミサイルを撃ち落とす。
「【ドラゴンクロー】ッ!」
『――ッ!』
機械と同じくらいのサイズとなった麻衣が上空から鉤爪で叩き込む。もっと大きくなれるが、まだ周囲に人が多過ぎる為、最低限のサイズで戦っていた。
『ッ!』
「硬いから何なんですか!」
さらに鉤爪で叩き付ける。機械も抵抗するが、殆ど背中に乗しかかっている感じだから重量的にかなり動きに……
「ガルルルルルルルルっ!」
「スミマセン! 真面目に援護します!」
龍の目で思いっきり睨まれました。超怖え……
魔力を操作して麻衣が巻き込まれない前側から攻撃を仕掛けた。
「【ライト・クラス・ショット】!」
「【ドラゴンファング】!」
俺が放つ十字の光線に合わせて麻衣も強靭な牙で噛み付く。アレが妹と同い年の娘とはとても思えないが、ツッコんでいると俺の方に飛び火が来るので懸命に援護します。
『―――』
けど気の所為だろうか? こいつ麻衣が飛び乗ってから何か殆ど動かなくなっているような……
「いや、マズイってあれは……」
「どうするよマスター? 参戦か援護はしないのか?」
「死なせなくたないからしたいけど……アレが相手じゃなぁ」
その様子を見ていた時一が引き攣った顔で口にする。第三者にバレないように見渡せる屋根から見ていたが、状況はかなり拙い方向に進んでいると分かり、いよいよ加勢をしなくてはと焦り始めていた。……凄く嫌だから中々踏み込めないが。
「あの分厚い装甲じゃ、生半可の攻撃なんか意味がねぇ。オレの攻撃も全然効かないと思うぞ?」
「確かに表面をいくら傷付けても内側はノーダメージのようだ。……マスター、あれってやはり」
「『魔神サイド』の殲滅兵器だろうな。オレたちの標的がこの世界に呼び込んだのか? ホント面倒なことをしてくれる!」
しかも、よりにもよって監視対象である大地と……あの麻衣が対峙している。まだ不完全な大地がやられても困るが、彼の魔力を宿している麻衣がアレと接触するのは危険過ぎた。
「間違いなく魔力を吸われてる。しばらくすれば気付くだろうが、魔神の兵器がアイツの魔力を取り込んだりしたら……」
などと言っている間に試合場の状況も一転する。大地たちと同じで時一もタイミングを逃していた。
「っ!」
おいおい、これってまさか……!
攻撃を中止した俺は慌てて駆け出す。近距離で攻撃をする為ではない。どうしようもない鈍い後輩を引きずり落とすためだ。
「あれ……? 魔力が……?」
「気付けバカ! 魔力が吸われてるぞ!」
形態変化の代償か? 魔力を感じ取れる知覚系が鈍くなってやがる! 結構な魔力を吸われてやっと気付いたが、フラフラして抜け出すのにモタついていた。
『ッ!』
そこでようやく沈黙していた機械が活動を再開した。本当は俺の言葉が分かっているのか? 龍化した麻衣を逃さないように背中の翼のみたいなもので拘束した! なんでもありか!
「せんぱーい……へるぷみー」
「ホント闘争心を萎えさせるなーお前は!」
バカなのか。ガミガミ噛んでいる間も吸われていたということは、相当な量を持ってかれている。気の所為じゃないなら機械の方もどこか生き生きして……
『ッ!』
全身の赤黒い球体を光らせた! 嫌な魔力が活性化しているのが分かる。十中八九さっきの能力麻痺の衝撃波の技だ!
「クソ!『魔法使い』――解放せよ! 刻み込まれた魔術師の魂!」
即座に『戦士』から切り替える。最も魔法に特化したスタイルになると服装も変わり真っ黒なローブと帽子と身に付ける。
「――オープン!【マジック・ブースト】【オーバー・フロー】」
左右の手に魔法文字が刻まれたネックレスが巻き付けられると、刻み込まれている術式を起動する。2種類の魔法で無理やり暴走状態に入って、決して多くない魔力が急上昇させた。
「間に合え!【スキル・コンタクト】ッ!」
「せんぱーい?」
脳裏に『魔法使い』と『戦士』を合わせる。
あまり得意な分野ではないが、魔法を強化した【スキル・コンタクト】を発動させた。
『――ッッ!』
「――【マジシャンズ・ディフェンダー】ッッ! 許せ麻衣!」
「ちょ!? センパーイっ!! なんでその不穏なセリフh―――」
奴とついでに麻衣を全方位から囲うように五枚の魔法陣が展開された。麻衣がなんか叫んでいたが、超集中している俺の耳はもう届いていなかった。
次の瞬間、機械から解放された電磁波が囲っている魔法陣と衝突。
激しく衝突し合い魔法陣がギシギシと軋み、そしてヒビが入って広がっていく。壊れるのも時間の問題だが、とにかく魔力操作に意識を集中して解放されるエネルギーを外に出さないよう努めた。
そして、激しい爆発が起きて、すべての魔法陣が割れる。
すると唯一攻撃を受けて変身が解けた麻衣が衝撃でこちらに放り込まれる。煙上げているけど多分無事だろうな、と思いつつ一応片手でキャッチして横に置いた。
「ふぅー、なんとか防げたか……」
「センパイ、私が致命傷です」
「なんて奴だ。吸収した麻衣の魔力をこんな風に使うとは」
「先輩……殴っていいですか? 乙女の大事な物が大きく損なわれたんで」
別にギャグのつもりはないが、頭がちょっと爆発している後輩がすっごい睨んでくる。うん、確かに大事な何かが損なわれてるわ。
けどそんなことを言っている場合ではない。こっちは魔力を使い過ぎて、もう限界が近い。麻衣の方も能力が使えなくなっただけじゃない。魔力も殆ど持ってかれたようで、立つことも出来ない様子だ。麻衣の場合、一度魔力が大量に消耗すると回復にはかなりの時間を要するし……どうする? アレだけの怪物だと教員が来て厳しい気が……
――ピキピキ……
「ん?」
とその時、上空でまた違和感を感じ取った俺は不意に空を上げる。
ヒビ割れた空はそのままであるが、何か……別の力が割込んでいる気配を感じ取り……
『―――ッ!』
割れた空の隙間から『暗黒の落雷』が飛来する。まるで意思でも宿っているかのように巨大な機械へと一直線に落ちて来た。機械は直撃を受けると横転して全身から煙を上げていた。
「今度はなんだ?」
そして空から飛来した何かを時一は訝しげに睨んでいたが、感じ取った魂の気配に表情は一変する。キョトンとした顔で小首を傾げた。
「なんで居るの? よりにもよって……彼が」
新たな増援だと素直に喜ぶべきだが、色々と困った事情を知っている彼はどうしても素直に喜べなかった。
複雑な心境でもう加勢は必要ないと、この成り行きを見守ることにした。
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