元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
異次元から襲来と来訪者 その1。
試合場の上空から飛来した赤黒い光が会場全体を震わせてすぐのことだ。
異変に気付いた時一は一緒にいた江口と共に、試合場を目指して駆けていた。本気なら飛ぶ勢いで1分の足らずで間に合うが、生憎とまだ校舎内だ。何処に人の視線があるか分からない以上は目立つような速度は出せなかった。
『ヴィット見えてる? 試合場の空が……』
「ああ、見えてるよ!」
急遽連絡した相手からの言葉に焦らず答える時一。慌てているがしっかり走っている。ヒビ割れた赤黒い空も目視しており、何が起きているか薄々予想は出来ていた。
「この気配は……考えたくないが、最悪のケースのようだ」
「『魔神』……! マスター、どうする?」
『ヴィット?』
「……」
走りながら思考を巡らせる。と言っても江口の言う通り『魔神』の気配を纏う存在であるのなら、もうなりふり考えている場合ではない。
「美咲ちゃんは撒いたよな?」
「ん、音は大分離れてる。オレも意識を外すとマークから外れる距離だ」
「騒ぎに気付いて戻ってくる前に動きたいが……」
『いいの? 会場まだ結構人がいるよ?』
「ははは、だよな」
電話越しで彼を心配する女の子の声に、時一は乾いた笑みで同意する。ヘタに介入すれば間違いなく大地のように時一まで目立つことになる。
「マスター、ならオレかネコが参戦すれば……!」
「アース、今すぐ周囲を探知しろ」
「マスター?」
「試合場までの監視カメラの位置は把握している。人の目がないことが分かり次第、見渡せる屋根まで跳ぶぞ!」
冗談ではない、本気の目だ。
必要なら強制介入もするつもりなのだ。
「10秒くれ! すぐやる!」
ただし、そのやり方はかなり強引なものなのは、アースと呼ばれた江口は瞬時に察して迷わず頷いた。
『ちなみにヴィット? あのしつこい橘美咲をどうやって撒いたの?』
「ん? わざと速度を落として並んで走ったら、ビックリして勝手に消えてくれたよ。ふふふ、流石はオレだな」
『へぇー……アース』
「全然違う。マスターが揺れてる橘の胸を凝視したから身の危険を感じて逃げたんだよ」
『ホント、ヴィットは大きいおっぱいが好きだねぇー。シロはペッタン子だから関係ないよねぇー。……ルナ姉たちにチクろうかなぁー』
「あ、あはははは……」
深刻な状況の筈なのに何故か味方から蔑まれている気がした。スピーカーから聞こえるいつも以上の無感情な声音に、時一は苦笑いで誤魔化すしかなかった。
(頼むアース! 早く探知を終えてくれぇ〜!)
その内心集中している相棒に早く終わるよう祈りながら、電話の相手としばし無言のやり取りが続いた。
「そんな……あの兵器は……」
煙の中から飛来した物体を出て来た瞬間、偶々見ていた鷹宮朱音が絶句した。飛来したソレが未確認物体とかモンスターなのかとか関係ない。
「どうして私の世界を滅ぼした兵器がこの世界に……!」
忘れたことなど一度たりともない。何せ自分が死んだのもあの兵器の所為なのだから。
『―――』
ソイツは全身が機械のような二足歩行の金属兵器。三メートルはある幅も広い金属の塊のようだ。顔は龍のような顎門と紅い眼光が光を発して、ゆっくりと試合場に立っている4人を見下ろした。落下した衝撃で皆体勢を崩していたが、しばらくすると起き上がり呆然とした顔で巨大兵器を見上げて……警戒も何もしてなかった。
「――マズイ! 逃げてッッ!!」
『――ッ!』
試合場に立つ皆へ彼女が叫ぶが、同時に兵器も動き出した。
顎門を開いて赤黒い光が集中する。ハッとした様子で4人が動こうとしたが、それよりも顎門から雷のような光線が放たれた。
「あ、あの攻撃は!」
思い出したくもない『破壊の力』。
言葉通り触れた物質やエネルギーを壊していく禁忌の力だ。
「「ッ!」」
その攻撃に対して咄嗟に動いたのは剣士の子と槍使いの子だ。目配せして頷くと互いの武器をクロスさせてガードしようとする。……その様子を遠くから見た鷹宮の脳裏に残酷な過去の結末が蘇ると……。
「それに触れたらダメだッ!」
「「――ッ!?」」
声が届いたのか一瞬硬直する2人。瞬時に危険を察知したようで、素早くその場で伏せて兵器の攻撃を避けた。
兵器が放ったエネルギー攻撃はそのまま会場の壁を破壊する。幸い着弾地点の近くにいた者たちは少なく、寸前で回避していたので直撃した者はいなかったが、衝撃余波によって吹き飛ばされた者が壁などに叩きつけられていた。
遅れて女子たちの悲鳴や男子の叫び声が会場を響かせる。大半がモンスターとの戦闘経験のある能力者たちだが、本来此処に居ない筈のモンスターと思われる存在の襲来。少なからず身に付いた冷静さを失ってしまい、連鎖的にパニックを引き起こしていた。
『ッ!』
そんな会場へ追撃を行おうとする巨大兵器。背中にある翼のような射出口から火を噴かせると、戦闘機が搭載してそうなミサイル十数発を全方位へ発射させた。
異変に気付いた時一は一緒にいた江口と共に、試合場を目指して駆けていた。本気なら飛ぶ勢いで1分の足らずで間に合うが、生憎とまだ校舎内だ。何処に人の視線があるか分からない以上は目立つような速度は出せなかった。
『ヴィット見えてる? 試合場の空が……』
「ああ、見えてるよ!」
急遽連絡した相手からの言葉に焦らず答える時一。慌てているがしっかり走っている。ヒビ割れた赤黒い空も目視しており、何が起きているか薄々予想は出来ていた。
「この気配は……考えたくないが、最悪のケースのようだ」
「『魔神』……! マスター、どうする?」
『ヴィット?』
「……」
走りながら思考を巡らせる。と言っても江口の言う通り『魔神』の気配を纏う存在であるのなら、もうなりふり考えている場合ではない。
「美咲ちゃんは撒いたよな?」
「ん、音は大分離れてる。オレも意識を外すとマークから外れる距離だ」
「騒ぎに気付いて戻ってくる前に動きたいが……」
『いいの? 会場まだ結構人がいるよ?』
「ははは、だよな」
電話越しで彼を心配する女の子の声に、時一は乾いた笑みで同意する。ヘタに介入すれば間違いなく大地のように時一まで目立つことになる。
「マスター、ならオレかネコが参戦すれば……!」
「アース、今すぐ周囲を探知しろ」
「マスター?」
「試合場までの監視カメラの位置は把握している。人の目がないことが分かり次第、見渡せる屋根まで跳ぶぞ!」
冗談ではない、本気の目だ。
必要なら強制介入もするつもりなのだ。
「10秒くれ! すぐやる!」
ただし、そのやり方はかなり強引なものなのは、アースと呼ばれた江口は瞬時に察して迷わず頷いた。
『ちなみにヴィット? あのしつこい橘美咲をどうやって撒いたの?』
「ん? わざと速度を落として並んで走ったら、ビックリして勝手に消えてくれたよ。ふふふ、流石はオレだな」
『へぇー……アース』
「全然違う。マスターが揺れてる橘の胸を凝視したから身の危険を感じて逃げたんだよ」
『ホント、ヴィットは大きいおっぱいが好きだねぇー。シロはペッタン子だから関係ないよねぇー。……ルナ姉たちにチクろうかなぁー』
「あ、あはははは……」
深刻な状況の筈なのに何故か味方から蔑まれている気がした。スピーカーから聞こえるいつも以上の無感情な声音に、時一は苦笑いで誤魔化すしかなかった。
(頼むアース! 早く探知を終えてくれぇ〜!)
その内心集中している相棒に早く終わるよう祈りながら、電話の相手としばし無言のやり取りが続いた。
「そんな……あの兵器は……」
煙の中から飛来した物体を出て来た瞬間、偶々見ていた鷹宮朱音が絶句した。飛来したソレが未確認物体とかモンスターなのかとか関係ない。
「どうして私の世界を滅ぼした兵器がこの世界に……!」
忘れたことなど一度たりともない。何せ自分が死んだのもあの兵器の所為なのだから。
『―――』
ソイツは全身が機械のような二足歩行の金属兵器。三メートルはある幅も広い金属の塊のようだ。顔は龍のような顎門と紅い眼光が光を発して、ゆっくりと試合場に立っている4人を見下ろした。落下した衝撃で皆体勢を崩していたが、しばらくすると起き上がり呆然とした顔で巨大兵器を見上げて……警戒も何もしてなかった。
「――マズイ! 逃げてッッ!!」
『――ッ!』
試合場に立つ皆へ彼女が叫ぶが、同時に兵器も動き出した。
顎門を開いて赤黒い光が集中する。ハッとした様子で4人が動こうとしたが、それよりも顎門から雷のような光線が放たれた。
「あ、あの攻撃は!」
思い出したくもない『破壊の力』。
言葉通り触れた物質やエネルギーを壊していく禁忌の力だ。
「「ッ!」」
その攻撃に対して咄嗟に動いたのは剣士の子と槍使いの子だ。目配せして頷くと互いの武器をクロスさせてガードしようとする。……その様子を遠くから見た鷹宮の脳裏に残酷な過去の結末が蘇ると……。
「それに触れたらダメだッ!」
「「――ッ!?」」
声が届いたのか一瞬硬直する2人。瞬時に危険を察知したようで、素早くその場で伏せて兵器の攻撃を避けた。
兵器が放ったエネルギー攻撃はそのまま会場の壁を破壊する。幸い着弾地点の近くにいた者たちは少なく、寸前で回避していたので直撃した者はいなかったが、衝撃余波によって吹き飛ばされた者が壁などに叩きつけられていた。
遅れて女子たちの悲鳴や男子の叫び声が会場を響かせる。大半がモンスターとの戦闘経験のある能力者たちだが、本来此処に居ない筈のモンスターと思われる存在の襲来。少なからず身に付いた冷静さを失ってしまい、連鎖的にパニックを引き起こしていた。
『ッ!』
そんな会場へ追撃を行おうとする巨大兵器。背中にある翼のような射出口から火を噴かせると、戦闘機が搭載してそうなミサイル十数発を全方位へ発射させた。
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