元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
意図しない質問が時に核心を突く。
『能力の育成学校』と言っても一般的な授業も当然存在する。一応は国が管理している教育機関なので、外に出ても問題ない程度の知識は必須なのだ。
ただし、能力者それぞれの個人評価によって、その扱いは異なってくる。
能力者として貢献すればある程度の成績も許される。高ランクの能力者であれば、成績免除もしくは最低限の成績さえ残せば授業自体もある程度休めれる。
「はい、今日の授業はここまで。各自しっかり予習するように」
「はぁ……」
だから俺みたいに真面目に全科目参加している生徒は本当に珍しい。いや、真面目な優等生ならしっかり受けている者もいるが、さすがに毎日は無理だ。どれだけ生真面目な……それこそあの風紀委員の氷使いですら何回かは必ず休んでいたりする。
それだけ能力者と学生の両立が非常に難しい。だから学園側も貢献度によってサービスしてくれる。俺もサポート部の貢献度が結構あるので何回か休んでも困るほどではない。テストだってある程度許してくれる予定だった。
「ちゃんと負傷扱いが証明されたら良かったのになぁ。体調崩しただけじゃ二週間は無理だろうな」
「るせぇ……」
なんとなく察したのか、一緒に受けていた時一が呆れた目で近付いて来た。
こっちは授業と試合でグッタリしてんだから、あんまり話しかけないでほしい。
「筆記テストは良かったんだろう?」
「平均レベルよりちょい上でな。お陰で助かったが、やっぱり四獣戦の後で休み過ぎたのが重かった」
授業を終えた俺は教科書をさっさとバックにしまう。嫌な話だがこの後にもまた試合がある。生憎と試合が出来る時間は朝一か昼休み、もしくは放課後のみに限る。あとは休日も可能だが、こちらに関しては本気で異議を唱えたかった。
「試合が……多い」
「懲りないな。優等生チーム」
なんだよ優等生チームって?
いや、否定はしない。未来のプロ能力者になるかもしれない集団だ。言われても恥ずかしくないレベルの持ち主ばかりだ。
うちの後輩にボッコボッコにされてモブまで格下げされるまではな。
「けど、そろそろ向こうだって本命が動くんじゃないか? もう1週間以上続いているし」
「ああ、D〜Cはほぼ全滅した。Cクラスのそもそも乗り気じゃない方だったから、後日こっそり話し合いをしたら退いてくれた」
「Dクラスは……昨日やったんだっけ?」
「ああ、麻衣の機嫌が悪いタイミングだったが、お陰でスムーズに済んだ」
向こう側の代償は決して低くないようだが、Cクラスよりも文句言ってきたからこちらもどうしようもなかった。ひとランク差が理由か教師同士のいざこざか、トップクラスを除けばあそこが一番攻戦的であった。
けどそのDクラスも昨日の件でやっと大人しくしてくれそうだ。
ずっと穏便な方向で戦いを進めたが相手が諦めなかった原因。ちょうど連戦続きのストレスで堪忍袋の尾がちょっと切れた麻衣の威圧が抗議していたDクラスの代表たちを落ち着かせたらしい。
「試合場の隅で参加者たちが代表の男子に泣きながら縋ってたからな。さすがにもうないと思ったよ」
「最初からそうすれば良かったんじゃないか?」
「Cクラスの連中が精神的に病んでなかったら、な! 横を通っただけで小鹿みたいなプルプルされるんだぞ? 俺は何もしてないのに……!」
「相手が女子だったらもう犯罪臭しかしない光景だな」
実は女子もいたとか言えない! 体だけで許してとか金払うからとか命乞いみたいに言われたけど!
「はぁ……ていうかお前も大丈夫なのか時一よ。モンスター討伐どころか部活の方も参加してないから、評価の方がかなり低いんじゃないか?」
「オレは平和主義者なんでね。基本は非戦闘主義でもあるんだ。ま、ナイスバディーな美少女から頼まれたらその限りではないがな」
「前半はともかく後半は最低だな。……あ、バディーで思い出した」
こいつが巨乳好きなのは今さらだと、疲れたような息を吐いていたが、何気なく口にした時一の言葉を聞いてふと思い出したことがあった。
「時一ってさ……」
「ん? なんだ?」
言いそうになったが、正直言い辛い。だってキョトンとした時一に対して、非常におかしな質問をすることになりそうだから。
―――ま、でも大丈夫か、どうせ麻衣の勘違いだろうし。
そう思って俺は軽い気持ちで尋ねてみた。
「俺の後輩の麻衣とさ? もしかして会ったことあたりする?」
言ってみてなんか恥ずかしくなった。
何訊いての俺は? これでこいつが調子に乗ったらどうすんだ!? 責任取れんのか!? いや、あんなのを貰ってくれるなら寧ろ歓迎だけど! 先輩としてアイツの将来がマジで不安だし!
……けど、さすがに急な話だよな? 本当に時一が騒いで近寄ったら奇妙な苦手意識があるという麻衣に申し訳ない。……いくら個人的に可愛くない後輩でもこいつはないよな。うん、反省反省。
「あ、ごめん。やっぱり忘れてくれ。ちょっと気になることがあって訊いてみたかっただけだから」
だから慌てず騒がず落ち着いて冗談だと告げることにした。残念がられるかもしれないが、変な質問をした俺の所為で余計な問題が発生しても困る。
多少残念に思われる程度で済むならそれでいいと―――その時は思った。
「…………」
ギョッとした顔で固まっている時一を見るまでは。
て、あれ?
ただし、能力者それぞれの個人評価によって、その扱いは異なってくる。
能力者として貢献すればある程度の成績も許される。高ランクの能力者であれば、成績免除もしくは最低限の成績さえ残せば授業自体もある程度休めれる。
「はい、今日の授業はここまで。各自しっかり予習するように」
「はぁ……」
だから俺みたいに真面目に全科目参加している生徒は本当に珍しい。いや、真面目な優等生ならしっかり受けている者もいるが、さすがに毎日は無理だ。どれだけ生真面目な……それこそあの風紀委員の氷使いですら何回かは必ず休んでいたりする。
それだけ能力者と学生の両立が非常に難しい。だから学園側も貢献度によってサービスしてくれる。俺もサポート部の貢献度が結構あるので何回か休んでも困るほどではない。テストだってある程度許してくれる予定だった。
「ちゃんと負傷扱いが証明されたら良かったのになぁ。体調崩しただけじゃ二週間は無理だろうな」
「るせぇ……」
なんとなく察したのか、一緒に受けていた時一が呆れた目で近付いて来た。
こっちは授業と試合でグッタリしてんだから、あんまり話しかけないでほしい。
「筆記テストは良かったんだろう?」
「平均レベルよりちょい上でな。お陰で助かったが、やっぱり四獣戦の後で休み過ぎたのが重かった」
授業を終えた俺は教科書をさっさとバックにしまう。嫌な話だがこの後にもまた試合がある。生憎と試合が出来る時間は朝一か昼休み、もしくは放課後のみに限る。あとは休日も可能だが、こちらに関しては本気で異議を唱えたかった。
「試合が……多い」
「懲りないな。優等生チーム」
なんだよ優等生チームって?
いや、否定はしない。未来のプロ能力者になるかもしれない集団だ。言われても恥ずかしくないレベルの持ち主ばかりだ。
うちの後輩にボッコボッコにされてモブまで格下げされるまではな。
「けど、そろそろ向こうだって本命が動くんじゃないか? もう1週間以上続いているし」
「ああ、D〜Cはほぼ全滅した。Cクラスのそもそも乗り気じゃない方だったから、後日こっそり話し合いをしたら退いてくれた」
「Dクラスは……昨日やったんだっけ?」
「ああ、麻衣の機嫌が悪いタイミングだったが、お陰でスムーズに済んだ」
向こう側の代償は決して低くないようだが、Cクラスよりも文句言ってきたからこちらもどうしようもなかった。ひとランク差が理由か教師同士のいざこざか、トップクラスを除けばあそこが一番攻戦的であった。
けどそのDクラスも昨日の件でやっと大人しくしてくれそうだ。
ずっと穏便な方向で戦いを進めたが相手が諦めなかった原因。ちょうど連戦続きのストレスで堪忍袋の尾がちょっと切れた麻衣の威圧が抗議していたDクラスの代表たちを落ち着かせたらしい。
「試合場の隅で参加者たちが代表の男子に泣きながら縋ってたからな。さすがにもうないと思ったよ」
「最初からそうすれば良かったんじゃないか?」
「Cクラスの連中が精神的に病んでなかったら、な! 横を通っただけで小鹿みたいなプルプルされるんだぞ? 俺は何もしてないのに……!」
「相手が女子だったらもう犯罪臭しかしない光景だな」
実は女子もいたとか言えない! 体だけで許してとか金払うからとか命乞いみたいに言われたけど!
「はぁ……ていうかお前も大丈夫なのか時一よ。モンスター討伐どころか部活の方も参加してないから、評価の方がかなり低いんじゃないか?」
「オレは平和主義者なんでね。基本は非戦闘主義でもあるんだ。ま、ナイスバディーな美少女から頼まれたらその限りではないがな」
「前半はともかく後半は最低だな。……あ、バディーで思い出した」
こいつが巨乳好きなのは今さらだと、疲れたような息を吐いていたが、何気なく口にした時一の言葉を聞いてふと思い出したことがあった。
「時一ってさ……」
「ん? なんだ?」
言いそうになったが、正直言い辛い。だってキョトンとした時一に対して、非常におかしな質問をすることになりそうだから。
―――ま、でも大丈夫か、どうせ麻衣の勘違いだろうし。
そう思って俺は軽い気持ちで尋ねてみた。
「俺の後輩の麻衣とさ? もしかして会ったことあたりする?」
言ってみてなんか恥ずかしくなった。
何訊いての俺は? これでこいつが調子に乗ったらどうすんだ!? 責任取れんのか!? いや、あんなのを貰ってくれるなら寧ろ歓迎だけど! 先輩としてアイツの将来がマジで不安だし!
……けど、さすがに急な話だよな? 本当に時一が騒いで近寄ったら奇妙な苦手意識があるという麻衣に申し訳ない。……いくら個人的に可愛くない後輩でもこいつはないよな。うん、反省反省。
「あ、ごめん。やっぱり忘れてくれ。ちょっと気になることがあって訊いてみたかっただけだから」
だから慌てず騒がず落ち着いて冗談だと告げることにした。残念がられるかもしれないが、変な質問をした俺の所為で余計な問題が発生しても困る。
多少残念に思われる程度で済むならそれでいいと―――その時は思った。
「…………」
ギョッとした顔で固まっている時一を見るまでは。
て、あれ?
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