元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
準備はやはりマトモな人と相談しよう。
四獣覚醒の話は朝教室に入った時点で既に広まっていた。
何処から漏れたかは考えてもしょうがないが、恐らく新聞部であろう。あそこは新鮮なネタがあれば新鮮なうちに売り捌いて利益を得ようとする。情報の拡散リスクなんてほぼお構いなしだから、度々注意を受けている厄介な部であったが。
「集まっているな。早速だが、『暗黒島』から急報だ」
朝礼が始まった途端、いつも以上に表情を引き締めた佐倉先生がザワついていた生徒たちを眼力で黙らせて話し始めた。
「四獣が目覚めたそうだ。よって大規模な討伐参加者の募集を行う」
そして、配られたのは参加申請の用紙で直筆のサインが必要である。学園側の責任問題にならないように、こういった大規模戦に関しての書類関連は細かいところまで徹底させていた。
教員たちの緊急の会議があることから、午前は実習と告げられると静かだった教室がまたザワつき出した。
もっとも慣れていた為に深刻な雰囲気は一切なく、大半がどうするかといった様子で話していた。
「去年と同じで今年も2年が率先して行うのかー」
「つまり今年はオレらか」
「なに言ってるの。どうせ今年もAクラスとBクラスが中心でしょう」
「生徒会副会長の松井さんと書記の花園さんがいるしな」
「あと風紀委員の鬼副委員長もいるし。下っ端なオレらには関係ないか」
「ああ、こういうイベントをまとめるのは、大体生徒会か風紀委員会だからな」
などなど会話から察すると思うが、Eクラスの俺たちに重要な役回りはない。参加する奴らは何人かいるようだが、どうせ雑魚狩りがメインだ。大物狩りは期待できないと思われるが。
「だからこそやる価値があるわ。今度こそ四獣の首を取りましょうか」
何故かやる気満々な鷹宮が集まっているメンバーに言っている。ていうか首を取ろうと……マジな方の首なんだろうなぁ。
ちなみに集まっているメンバーとは、アイドル女子の橘、イケメン男子の藤原……なんか今日は視線を感じるけど、まさかそっち系か? そっちの趣味は俺にはないからな!
あと読書好きの白岡もいるが、ずっと無言のまま読書しているだけ。誰も注意していないが明らかに浮いている気がする。なんであのチームに入ったんだろう?
鷹宮を含めた4人が正式なチームらしい。偶に他のクラスメイトを臨時で誘うことがあるが、スカウトまでにはいっていない。何人かの男子は下心全開で希望していたようだが、全員が鷹宮からバッサリ排除された。……俺を除いては。
一通りの話を終えた鷹宮が俺の席まで尋ねて来た。
「橘さんから聞いたけど今回は貴方も出るそうね?」
「去年も参加した筈だが?」
「影でコソコソしていただけでしょう? 虫の時はあんなに――」
「参加するからちょっと行こうか?」
「大地が鷹宮姉さんを外に誘ってる!? 大地! お前いつからそんなプレーボーイに……」
余計なことを言われる前にさっさと教室から連れ出した。あとそれまで空気だった時一が良からぬことを言っていたので、しばらく口も聞かないことにしよう。
「あの話はしないって約束だったよな?」
「具体的な話はするつもりはなかったわよ?」
――どうだかな。連れ出すと人気のない廊下の隅で話す。遠目から見たら恋人同士の密会にも見えなくもないが、この際それも仕方ないと割り切った。こっちも鷹宮に問い質したいことがあった。
「昨日橘が俺に近付いている間、妹たちに接近したな? 何が目的だ?」
「ちょっとした挨拶よ。気になる男子の妹や後輩さんなんだから、しっかり顔合わせはしないとね?」
ただの挨拶で異世界という単語で揺さぶりを掛けないでほしかった。
「気になる理由が恋愛関係なら嬉しいけど」
「あら? モテたいの? 面倒そうなイメージがあるから意外だったわ」
「モテたくない男子はいない。ただ周りに運命を感じさせる子がいないだけ」
決して無駄に色欲の塊である残念後輩ではない。汚れを知らない清楚で麗しく可憐で巨乳な黒髪女性が良い! ちょうど鷹宮さんから殺気と刃を引いたような感じの人です。
「運命って……どんな運命を求めてるのよ」
鷹宮さんを割った感じの人です! なんて言えないけど。
「藤原の半分以下くらいがいいな。アイツのレベルだと常に背中に死がありそうで怖いから」
「その彼……今日は妙に貴方に注視していたようだけど、昨日何かあったの?」
「何かって……もしかして隣の教室に隠れたのは藤原だったのか? あのイケメン男子」
橘が教室に入って来た時点で気配があったが、何のために待機させてたんだ?
「隠れてたのには気付いていたのね。無傷だったから戦うまでには至らなかったようだけど、向こうは何か思うところがあったみたい?」
「は? 戦う? 何で俺と藤原が戦う展開になるんだよ」
「元々それが狙いだったのよ。彼の性格を考えるなら狙ってる女性と2人っきりの男子なんて敵以外の何者でもない。彼を更正させるには都合が良いと思ったのに」
まさかこの女、俺を利用して高いプライドの持ち主であるイケメンを潰させるつもりだったのか? クラスで一番モテているが、その分プライドも非常に高い。自分のクラスだけでなく他所のクラス男子ともトラブルを起こして、最終的に模擬戦で相手を重傷に追いやったほどだ。……魅了の能力でもあるかそれで離れた女子は一部のみで、今でも普通に女子が集まっている。結局顔ということか。
「困ってるなら追い出せばいいだろう。リーダーはお前なんだから」
「出来るけどあと始末が悪いのよ。彼のことだから絶対に条件を付けてくるわ。勝てないとは言わないけど相手をするには厄介だから。……はぁ、誘った時に実力しか見てなかったのが裏目に出たわ」
「だからって関係ない俺になすり付けるなよ。チームの問題だろう」
「いずれ私のところに来るんだから、貴方も立派な関係者でしょう?」
入るなんて言ってない。約束の件を言っているのだろうが。
「ランキング戦で当たって俺に勝ったら……だろ?」
「あら? 勝てる? 公衆の面前で?」
隠したい筈なのにいいの? と目で語っているが、悪いが後輩が入学した時点で俺の安らぎは消えている。
ああ、さらば穏やかな日常よ。
「どういう形式の試合になるか知らないが、アイツのチームに入った以上はちゃんとやるさ。それが鷹宮……お前が相手でもな」
そして、ようこそ嵐のような日常よ。
鷹宮と話しながら変わり果てた現実に目から涙が出そうになる。実際には出ないけど。
ついでにチーム同士で手を組まないかと言われたが、こっちは暴走後輩で手一杯だと拒否させてもらった。
何故なら、
「ふふふふふっ! 獲物が来ますか」
こっちは既にやる気満々過ぎて山火事でも起きそうな雰囲気だった。
「話をまとめると四獣とやらは4つのゲートそれぞれから出ようとするようですね。大体は近場から出るので種類だけならある程度把握が可能と……」
12本の中でも怖ーい黒杖(マジックワイド)を棒代わりにして地図を指す。呪いの杖をそんな乱暴に扱わないでほしいんだが。
「あの2人は私が見ましょう。機動力の高い私なら他のゲートにもすぐ移動出来ますし」
こういう時だけ頭の回転が異常に速く、1人でブツブツ呟いていると不敵な笑顔で俺の方を見つめた。……怖い。
「私たちなら二体以上は確実に取れますね」
たちって俺も含まれてるんですよねー。
「そろそろデビューの時期ですよ、センパイ。試合でも良かったですが、どうせなら遠慮する必要がないモンスターの方が楽ですからね。派手にやっても大丈夫そうですし」
「あー言っておくが、相手が強いモンスターだからって本気でやったら周囲の影響が大き過ぎるから加減だけは忘れるなよ? 万が一『暗黒島』が崩壊したら責任レベルじゃ済まないからな」
「ふふふふふっ! 勿論分かってますよ、セ・ン・パ・イ」
あー可愛らしくウィンクしているけど恐怖しか感じないや。
呪いの杖の影響か彼女の周りでドス黒いオーラが見える気がするが。
頼むから呪い系も勘弁してくれよ?
――呪いなんて魔王の奴のだけで間に合ってるからな。
何処から漏れたかは考えてもしょうがないが、恐らく新聞部であろう。あそこは新鮮なネタがあれば新鮮なうちに売り捌いて利益を得ようとする。情報の拡散リスクなんてほぼお構いなしだから、度々注意を受けている厄介な部であったが。
「集まっているな。早速だが、『暗黒島』から急報だ」
朝礼が始まった途端、いつも以上に表情を引き締めた佐倉先生がザワついていた生徒たちを眼力で黙らせて話し始めた。
「四獣が目覚めたそうだ。よって大規模な討伐参加者の募集を行う」
そして、配られたのは参加申請の用紙で直筆のサインが必要である。学園側の責任問題にならないように、こういった大規模戦に関しての書類関連は細かいところまで徹底させていた。
教員たちの緊急の会議があることから、午前は実習と告げられると静かだった教室がまたザワつき出した。
もっとも慣れていた為に深刻な雰囲気は一切なく、大半がどうするかといった様子で話していた。
「去年と同じで今年も2年が率先して行うのかー」
「つまり今年はオレらか」
「なに言ってるの。どうせ今年もAクラスとBクラスが中心でしょう」
「生徒会副会長の松井さんと書記の花園さんがいるしな」
「あと風紀委員の鬼副委員長もいるし。下っ端なオレらには関係ないか」
「ああ、こういうイベントをまとめるのは、大体生徒会か風紀委員会だからな」
などなど会話から察すると思うが、Eクラスの俺たちに重要な役回りはない。参加する奴らは何人かいるようだが、どうせ雑魚狩りがメインだ。大物狩りは期待できないと思われるが。
「だからこそやる価値があるわ。今度こそ四獣の首を取りましょうか」
何故かやる気満々な鷹宮が集まっているメンバーに言っている。ていうか首を取ろうと……マジな方の首なんだろうなぁ。
ちなみに集まっているメンバーとは、アイドル女子の橘、イケメン男子の藤原……なんか今日は視線を感じるけど、まさかそっち系か? そっちの趣味は俺にはないからな!
あと読書好きの白岡もいるが、ずっと無言のまま読書しているだけ。誰も注意していないが明らかに浮いている気がする。なんであのチームに入ったんだろう?
鷹宮を含めた4人が正式なチームらしい。偶に他のクラスメイトを臨時で誘うことがあるが、スカウトまでにはいっていない。何人かの男子は下心全開で希望していたようだが、全員が鷹宮からバッサリ排除された。……俺を除いては。
一通りの話を終えた鷹宮が俺の席まで尋ねて来た。
「橘さんから聞いたけど今回は貴方も出るそうね?」
「去年も参加した筈だが?」
「影でコソコソしていただけでしょう? 虫の時はあんなに――」
「参加するからちょっと行こうか?」
「大地が鷹宮姉さんを外に誘ってる!? 大地! お前いつからそんなプレーボーイに……」
余計なことを言われる前にさっさと教室から連れ出した。あとそれまで空気だった時一が良からぬことを言っていたので、しばらく口も聞かないことにしよう。
「あの話はしないって約束だったよな?」
「具体的な話はするつもりはなかったわよ?」
――どうだかな。連れ出すと人気のない廊下の隅で話す。遠目から見たら恋人同士の密会にも見えなくもないが、この際それも仕方ないと割り切った。こっちも鷹宮に問い質したいことがあった。
「昨日橘が俺に近付いている間、妹たちに接近したな? 何が目的だ?」
「ちょっとした挨拶よ。気になる男子の妹や後輩さんなんだから、しっかり顔合わせはしないとね?」
ただの挨拶で異世界という単語で揺さぶりを掛けないでほしかった。
「気になる理由が恋愛関係なら嬉しいけど」
「あら? モテたいの? 面倒そうなイメージがあるから意外だったわ」
「モテたくない男子はいない。ただ周りに運命を感じさせる子がいないだけ」
決して無駄に色欲の塊である残念後輩ではない。汚れを知らない清楚で麗しく可憐で巨乳な黒髪女性が良い! ちょうど鷹宮さんから殺気と刃を引いたような感じの人です。
「運命って……どんな運命を求めてるのよ」
鷹宮さんを割った感じの人です! なんて言えないけど。
「藤原の半分以下くらいがいいな。アイツのレベルだと常に背中に死がありそうで怖いから」
「その彼……今日は妙に貴方に注視していたようだけど、昨日何かあったの?」
「何かって……もしかして隣の教室に隠れたのは藤原だったのか? あのイケメン男子」
橘が教室に入って来た時点で気配があったが、何のために待機させてたんだ?
「隠れてたのには気付いていたのね。無傷だったから戦うまでには至らなかったようだけど、向こうは何か思うところがあったみたい?」
「は? 戦う? 何で俺と藤原が戦う展開になるんだよ」
「元々それが狙いだったのよ。彼の性格を考えるなら狙ってる女性と2人っきりの男子なんて敵以外の何者でもない。彼を更正させるには都合が良いと思ったのに」
まさかこの女、俺を利用して高いプライドの持ち主であるイケメンを潰させるつもりだったのか? クラスで一番モテているが、その分プライドも非常に高い。自分のクラスだけでなく他所のクラス男子ともトラブルを起こして、最終的に模擬戦で相手を重傷に追いやったほどだ。……魅了の能力でもあるかそれで離れた女子は一部のみで、今でも普通に女子が集まっている。結局顔ということか。
「困ってるなら追い出せばいいだろう。リーダーはお前なんだから」
「出来るけどあと始末が悪いのよ。彼のことだから絶対に条件を付けてくるわ。勝てないとは言わないけど相手をするには厄介だから。……はぁ、誘った時に実力しか見てなかったのが裏目に出たわ」
「だからって関係ない俺になすり付けるなよ。チームの問題だろう」
「いずれ私のところに来るんだから、貴方も立派な関係者でしょう?」
入るなんて言ってない。約束の件を言っているのだろうが。
「ランキング戦で当たって俺に勝ったら……だろ?」
「あら? 勝てる? 公衆の面前で?」
隠したい筈なのにいいの? と目で語っているが、悪いが後輩が入学した時点で俺の安らぎは消えている。
ああ、さらば穏やかな日常よ。
「どういう形式の試合になるか知らないが、アイツのチームに入った以上はちゃんとやるさ。それが鷹宮……お前が相手でもな」
そして、ようこそ嵐のような日常よ。
鷹宮と話しながら変わり果てた現実に目から涙が出そうになる。実際には出ないけど。
ついでにチーム同士で手を組まないかと言われたが、こっちは暴走後輩で手一杯だと拒否させてもらった。
何故なら、
「ふふふふふっ! 獲物が来ますか」
こっちは既にやる気満々過ぎて山火事でも起きそうな雰囲気だった。
「話をまとめると四獣とやらは4つのゲートそれぞれから出ようとするようですね。大体は近場から出るので種類だけならある程度把握が可能と……」
12本の中でも怖ーい黒杖(マジックワイド)を棒代わりにして地図を指す。呪いの杖をそんな乱暴に扱わないでほしいんだが。
「あの2人は私が見ましょう。機動力の高い私なら他のゲートにもすぐ移動出来ますし」
こういう時だけ頭の回転が異常に速く、1人でブツブツ呟いていると不敵な笑顔で俺の方を見つめた。……怖い。
「私たちなら二体以上は確実に取れますね」
たちって俺も含まれてるんですよねー。
「そろそろデビューの時期ですよ、センパイ。試合でも良かったですが、どうせなら遠慮する必要がないモンスターの方が楽ですからね。派手にやっても大丈夫そうですし」
「あー言っておくが、相手が強いモンスターだからって本気でやったら周囲の影響が大き過ぎるから加減だけは忘れるなよ? 万が一『暗黒島』が崩壊したら責任レベルじゃ済まないからな」
「ふふふふふっ! 勿論分かってますよ、セ・ン・パ・イ」
あー可愛らしくウィンクしているけど恐怖しか感じないや。
呪いの杖の影響か彼女の周りでドス黒いオーラが見える気がするが。
頼むから呪い系も勘弁してくれよ?
――呪いなんて魔王の奴のだけで間に合ってるからな。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,659
-
1.6万
-
-
9,538
-
1.1万
-
-
9,329
-
2.3万
-
-
9,152
-
2.3万
コメント