元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
1年経てばクラスメイトの扱いに差別が生まれる。
「ギ、ギリギリセーフ〜!」
騒がしい男(ハーレム願望部員)は、新学期早々に時間ギリギリで教室にやって来た。
窓際の新しい席でそれを眺めていた俺だが、顔ごと視線を左右に向けて席に座る俺を見つけた途端、そのまま一直線に……こっちに来やがった。
「聞いたぞ友よ!? 巨乳の可愛い妹と愛らしい後輩を侍らせて、しかもパーティーまで組んだって本当か!? 何故教えてくれなかったんだ!? 是非紹介してくれ友よ! いや、同士よ!」
「誤解を招く言い方するな。後輩は愛らしくないし妹には絶対に会わせない。あと金輪際友とか同士とか呼ぶな。同類と思われたくないから」
「朝から辛辣っ!? そのゴミを見る目なんか鷹宮姉さんみたいなんだけど!?」
そこで鷹宮の名前を出さないでほしい。内容を聞かれたら俺まで制裁に巻き込まれるだろう。
幸い鷹宮本人は自分の席で座って真面目に勉強しており、こちらの会話が聞こえた感じはない。1年経ってさらに大和撫子感に鋭い斬れ味が出ていたが、クラスメイトとの交流は殆どなかった。
「クラス1の危険人物が相手なら真っ当な対処法だ。後輩はどうでもいいが、妹には手を出すどころか声を掛けようとした時点で終わると思え」
「表情は全然変わらないのになんか威圧感がある! せ、せめてお茶会だけでも……?」
「毒殺」
「不穏な単語を口にしないでっ!?」
入って来るなり叫んでばかりだが、クラス大半はもう気にしておらず会話を楽しんでいる。クラスは同じ面子で去年と同じEクラス。個人としては何人か学園のルールの下にクラスアップ出来なくもなかったが、まだ誰もクラスアップはしていない。
一応言っておくが、最下位であるEクラスはやはり将来的には不利なクラスだ。暗黙の了解でクラスのランク扱いは伏せられているが、周知の事実であるので意味ないと俺は思う。
間違いなく何人かは上のクラスを狙っていると思っていたが。クラスごとの入れ替え狙いかそれとも大物食いのAクラス狙いかの2択であろうが、頼むから俺まで巻き込まないでほしい。
「ったく。お前が大丈夫だって言うから勧誘の仕事を任せたって言うに、来てみれば部長以外は誰もいない。予想はしていたからお前だけは」
「いやぁー朝の件はホントにスマン。寝坊しないように目覚まし掛けたんだが、どうにも調子が悪いのか気持ち良く鳴らなくてな」
「気持ち良くって……どんな目覚まし時計なんだ?」
「アイドルボイス!」
「一生起きなければ良いんじゃないか?」
1年も経てば馴染む相手も出来る。時一の対応が雑気味になったのは、本人の自業自得だが、時一以外にも話す相手は普通にいた。
話していると、いつもの4人グループが話しかけて来た。
「朝から元気だな2人とも」
「俺は気怠るぞ」
大柄な体育会系は犬井智。
4人の中でリーダー的な存在である男子。フレンドリーな人柄でEクラス以外のクラスとも交流を持っている。
「進級していきなり遅刻ギリギリか時一? また佐倉先生にボコられるぞ?」
呆れたように時一に話し掛けたのは柏木健斗。
眼鏡と掛けた見た目通りの知性男子。いつもクールな雰囲気で智のフォローに回る苦労者だ。
「いやいや、寧ろそれはご褒美でしかな――グギャ!?」
「ヤッホー大地クン! 2年目もヨロシク!」
「ああ、よろしくな。古賀か」
「お、おはよう幸村君」
「西條もおはよう」
馬鹿なことを言い掛けた時一の頭を肘で打ったのは古賀愛佳。
女子にしては高身長なスポーツ系女子。智のように男女問わず仲良くしているが、下ネタが嫌いらしく時一だけは天敵扱いだった。
その後ろでおどおど挨拶して来たのは、西條小春。
引き込み気味な文系女子。活発な印象のある愛佳とは真逆のタイプであるが、中学からの親友らしく一緒に受験して合格したそうだ。
人見知りなタイプで男子は特に苦手であるが、結構慕われている。
よく一緒に連んで実戦でもチームを組んでいたりする。同じクラスということもあってか、『サポート部』の立場として度々助っ人に入っていた。
「何の話をしてたんだ? 女子以外でテンションが高い時一なんて珍しい」
「いや、新入生に可愛い子が居て時一の禁断症状が」
「時一クン、サイテー」
古賀のテンションが一気に下がった。時一限定であるが、冷たい眼差しを見ているとこっちまで悪いことした気分になる。対象が後輩と妹だからついぼかしてしまった。
「間違ってない気がするけど部分的に捏造しないで!? 大地が1年の可愛い子達とチーム組んだから、驚いて合コンのセッティングを求めたんだよ!」
当然のように時一が突っ込んだが、後半は明らかに違う。合コンまで発展させる気だったか。
時一が余計なことを言ってくれた所為で、4人の興味先が俺に向いてしまった。
「え? お前がチームに入った? いや、作ったのか? 依頼以外で誘われても組まなかったお前が?」
「そうだが、問題か?」
「あ、いや、問題はないが……」
時一の発言に最初に食い付いたのは智。不思議そうに首を傾げながらチラリと西條を横目で見る。健斗もクール顔が少々崩れて、困惑しつつも同じく西條に視線が移っている。
自然と俺の視線も西條に移動すると、視線が合った途端強張った西條が何故か涙目になった。何でか? 人見知りだけど知り合いならだいぶ平気になったと思ったが。
「西條? どうかした?」
「あ、え、あ……」
「あ〜大地クン? ちょっと訊いてもいい?」
「ん? 何だ?」
「その可愛い1年の子達ってやっぱり女子なんだよね? 今まで何処のチームにも入らなかった大地クンだけど、ぶっちゃけその子達とはどんな関係なの?」
気まずそうに頬を掻く古賀が訊いてくる。確かに1年の頃『サポート部』が影響してか割と誘いが多くて智達からも誘われて断ったが、まさかその件根に持ってる?
「関係って言われても……妹とその友達の後輩だけど。以前から入学出来たら組もうって言われてたからな」
とりあえず用意していた話を口にして予防線を張っておく。部長の時と同様に前々から言っていたので、そんなに驚かれるとちょっと困るんだけど。何度も言っていた意味がなかったか?
「もしかして前から言ってた予約済みの話? 何度も言うからてっきり意固地になってるのかと思ってた」
「だよなー」
意地っ張りとか思われていたのか? 智までうんうん同意しているし。部長の時もそうだけど、何度も言い過ぎて組めない言い訳だと思われていたってことか。
適当過ぎたと反省する中、聞き手だった健斗が疑問符を浮かべた顔で会話に入ってきた。
「しかし、大地がそのことを言っていたのは1年のすぐじゃないか? よくそんな前からの約束が通ったな」
確かに健斗の疑問は納得出来る。予防線を張る為とはいえ入学してすぐ言うには、この学園の入学基準は決して緩くない。
「その子達って天然の能力者とかだったのか? いくら兄弟でも覚醒前じゃ合格の保証なんて無い等しいが、元々が能力者ならお前が断り続けた理由にも納得はいく」
「ここは残念と言うべきか、2人とも未覚醒の素質持ちだ。疑問に思う健斗の気持ちも分かるが、他に選択の余地がなかった」
古賀に倣《なら》って俺も気まずそうに視線を逸らす。他の3人の視線が集まると溜息を吐いて……。
「組む条件を飲まないと故郷が俺の安息地じゃなくなる。具体的には俺の学園生活が淫らな感じで親や知り合い達に拡散される」
「……本当に組んで大丈夫なのか?」
「大丈夫、しっかり鎖は付けておく。余計な真似は絶対させん」
「目がマジだな大地。ちなみに危険なのは両方か?」
「1000パーセント後輩の方だ。ついでに時一にも忠告しておくが、後輩はマジで狂気に歪んだ性格してるから合コンは本気でやめとけ。財布どころか通帳レベルで破産されるぞ」
「あの可愛い後輩ちゃんは金の亡者か何かか?」
聞いていた智が引き攣った顔で呟き、時一が恐ろしげに尋ねる。古賀も口にはしないが何か言いたそうな顔をしており、西條は涙目から安心した感で息を吐いていた。今の話の何処に安堵する要素があったのか疑問だったが。
そこでやっと厄介な話が終わったが、そろそろ担任が来る時間になったところで健斗が思い出したように告げた。
「そういえばまた例の騒ぎがあった」
「ん? 例の異常種の『パニックエラー』のことか?」
「ああ、島の西エリアに生息する中級の群れが異常種になって暴れたそうだ。生徒会長と大学組が一掃して大事にはならなかったが、新入生が入ったばかりだから学園側から警戒が余計に厳しくなりそうだ」
モンスター討伐はポイント稼ぎになるから、上のクラスを狙っている健斗は鬱気味に溜息を吐く。逆に討伐が苦手な西條は不安そうにしていたが、溜息を吐く健斗の言葉を聞いて若干嬉しそうにしていた。
そう、俺達が入学からしばらくしてすぐのことだ。
モンスターが出現する島で異常種が大量に発生する事件が起きた。
異常種とは普通のモンスターが突然変異したタイプ。
それぞれ変化は異なるが、弱体化することはまずなく厄介な能力や強化されたタイプが多い。
「ま、仕方ないさ。なんならその間に1年のスカウトを狙ってみたらどうだ? 同じEクラスの1年なら交渉余地や掘り出し物の可能性あるし」
実は主犯を知っている俺は、そういう風に話を逸らして済ませた。
正体を知っている訳ではないが、それらが人為的に起こされていると言えば、当然のように説明を求められるので面倒だった。
「明日になれば他のクラスの勧誘もあるだろう。不利だろうが動くだけ動いてもいいと思う」
「……そうだな。難しいかもしれないが、討伐が厳しいなら見て回るのも」
「有りだな。今度見に行って見るか」
「賛成ー!」
「う、うん、いいよ」
そうして4人が話をまとめていると、担任の佐倉先生が教室に入って来た。
と言っても本日は授業はなく説明や宿題の回収がメインだった。半日で終わるので昼頃に解散となってクラスメイトが教室を出る中、俺は佐倉先生に1つ頼みごとがあった。
そして次の日。
予想通り騒ぎを起こした後輩によって、俺は落ち着いた学生生活の終了を感じた。
騒がしい男(ハーレム願望部員)は、新学期早々に時間ギリギリで教室にやって来た。
窓際の新しい席でそれを眺めていた俺だが、顔ごと視線を左右に向けて席に座る俺を見つけた途端、そのまま一直線に……こっちに来やがった。
「聞いたぞ友よ!? 巨乳の可愛い妹と愛らしい後輩を侍らせて、しかもパーティーまで組んだって本当か!? 何故教えてくれなかったんだ!? 是非紹介してくれ友よ! いや、同士よ!」
「誤解を招く言い方するな。後輩は愛らしくないし妹には絶対に会わせない。あと金輪際友とか同士とか呼ぶな。同類と思われたくないから」
「朝から辛辣っ!? そのゴミを見る目なんか鷹宮姉さんみたいなんだけど!?」
そこで鷹宮の名前を出さないでほしい。内容を聞かれたら俺まで制裁に巻き込まれるだろう。
幸い鷹宮本人は自分の席で座って真面目に勉強しており、こちらの会話が聞こえた感じはない。1年経ってさらに大和撫子感に鋭い斬れ味が出ていたが、クラスメイトとの交流は殆どなかった。
「クラス1の危険人物が相手なら真っ当な対処法だ。後輩はどうでもいいが、妹には手を出すどころか声を掛けようとした時点で終わると思え」
「表情は全然変わらないのになんか威圧感がある! せ、せめてお茶会だけでも……?」
「毒殺」
「不穏な単語を口にしないでっ!?」
入って来るなり叫んでばかりだが、クラス大半はもう気にしておらず会話を楽しんでいる。クラスは同じ面子で去年と同じEクラス。個人としては何人か学園のルールの下にクラスアップ出来なくもなかったが、まだ誰もクラスアップはしていない。
一応言っておくが、最下位であるEクラスはやはり将来的には不利なクラスだ。暗黙の了解でクラスのランク扱いは伏せられているが、周知の事実であるので意味ないと俺は思う。
間違いなく何人かは上のクラスを狙っていると思っていたが。クラスごとの入れ替え狙いかそれとも大物食いのAクラス狙いかの2択であろうが、頼むから俺まで巻き込まないでほしい。
「ったく。お前が大丈夫だって言うから勧誘の仕事を任せたって言うに、来てみれば部長以外は誰もいない。予想はしていたからお前だけは」
「いやぁー朝の件はホントにスマン。寝坊しないように目覚まし掛けたんだが、どうにも調子が悪いのか気持ち良く鳴らなくてな」
「気持ち良くって……どんな目覚まし時計なんだ?」
「アイドルボイス!」
「一生起きなければ良いんじゃないか?」
1年も経てば馴染む相手も出来る。時一の対応が雑気味になったのは、本人の自業自得だが、時一以外にも話す相手は普通にいた。
話していると、いつもの4人グループが話しかけて来た。
「朝から元気だな2人とも」
「俺は気怠るぞ」
大柄な体育会系は犬井智。
4人の中でリーダー的な存在である男子。フレンドリーな人柄でEクラス以外のクラスとも交流を持っている。
「進級していきなり遅刻ギリギリか時一? また佐倉先生にボコられるぞ?」
呆れたように時一に話し掛けたのは柏木健斗。
眼鏡と掛けた見た目通りの知性男子。いつもクールな雰囲気で智のフォローに回る苦労者だ。
「いやいや、寧ろそれはご褒美でしかな――グギャ!?」
「ヤッホー大地クン! 2年目もヨロシク!」
「ああ、よろしくな。古賀か」
「お、おはよう幸村君」
「西條もおはよう」
馬鹿なことを言い掛けた時一の頭を肘で打ったのは古賀愛佳。
女子にしては高身長なスポーツ系女子。智のように男女問わず仲良くしているが、下ネタが嫌いらしく時一だけは天敵扱いだった。
その後ろでおどおど挨拶して来たのは、西條小春。
引き込み気味な文系女子。活発な印象のある愛佳とは真逆のタイプであるが、中学からの親友らしく一緒に受験して合格したそうだ。
人見知りなタイプで男子は特に苦手であるが、結構慕われている。
よく一緒に連んで実戦でもチームを組んでいたりする。同じクラスということもあってか、『サポート部』の立場として度々助っ人に入っていた。
「何の話をしてたんだ? 女子以外でテンションが高い時一なんて珍しい」
「いや、新入生に可愛い子が居て時一の禁断症状が」
「時一クン、サイテー」
古賀のテンションが一気に下がった。時一限定であるが、冷たい眼差しを見ているとこっちまで悪いことした気分になる。対象が後輩と妹だからついぼかしてしまった。
「間違ってない気がするけど部分的に捏造しないで!? 大地が1年の可愛い子達とチーム組んだから、驚いて合コンのセッティングを求めたんだよ!」
当然のように時一が突っ込んだが、後半は明らかに違う。合コンまで発展させる気だったか。
時一が余計なことを言ってくれた所為で、4人の興味先が俺に向いてしまった。
「え? お前がチームに入った? いや、作ったのか? 依頼以外で誘われても組まなかったお前が?」
「そうだが、問題か?」
「あ、いや、問題はないが……」
時一の発言に最初に食い付いたのは智。不思議そうに首を傾げながらチラリと西條を横目で見る。健斗もクール顔が少々崩れて、困惑しつつも同じく西條に視線が移っている。
自然と俺の視線も西條に移動すると、視線が合った途端強張った西條が何故か涙目になった。何でか? 人見知りだけど知り合いならだいぶ平気になったと思ったが。
「西條? どうかした?」
「あ、え、あ……」
「あ〜大地クン? ちょっと訊いてもいい?」
「ん? 何だ?」
「その可愛い1年の子達ってやっぱり女子なんだよね? 今まで何処のチームにも入らなかった大地クンだけど、ぶっちゃけその子達とはどんな関係なの?」
気まずそうに頬を掻く古賀が訊いてくる。確かに1年の頃『サポート部』が影響してか割と誘いが多くて智達からも誘われて断ったが、まさかその件根に持ってる?
「関係って言われても……妹とその友達の後輩だけど。以前から入学出来たら組もうって言われてたからな」
とりあえず用意していた話を口にして予防線を張っておく。部長の時と同様に前々から言っていたので、そんなに驚かれるとちょっと困るんだけど。何度も言っていた意味がなかったか?
「もしかして前から言ってた予約済みの話? 何度も言うからてっきり意固地になってるのかと思ってた」
「だよなー」
意地っ張りとか思われていたのか? 智までうんうん同意しているし。部長の時もそうだけど、何度も言い過ぎて組めない言い訳だと思われていたってことか。
適当過ぎたと反省する中、聞き手だった健斗が疑問符を浮かべた顔で会話に入ってきた。
「しかし、大地がそのことを言っていたのは1年のすぐじゃないか? よくそんな前からの約束が通ったな」
確かに健斗の疑問は納得出来る。予防線を張る為とはいえ入学してすぐ言うには、この学園の入学基準は決して緩くない。
「その子達って天然の能力者とかだったのか? いくら兄弟でも覚醒前じゃ合格の保証なんて無い等しいが、元々が能力者ならお前が断り続けた理由にも納得はいく」
「ここは残念と言うべきか、2人とも未覚醒の素質持ちだ。疑問に思う健斗の気持ちも分かるが、他に選択の余地がなかった」
古賀に倣《なら》って俺も気まずそうに視線を逸らす。他の3人の視線が集まると溜息を吐いて……。
「組む条件を飲まないと故郷が俺の安息地じゃなくなる。具体的には俺の学園生活が淫らな感じで親や知り合い達に拡散される」
「……本当に組んで大丈夫なのか?」
「大丈夫、しっかり鎖は付けておく。余計な真似は絶対させん」
「目がマジだな大地。ちなみに危険なのは両方か?」
「1000パーセント後輩の方だ。ついでに時一にも忠告しておくが、後輩はマジで狂気に歪んだ性格してるから合コンは本気でやめとけ。財布どころか通帳レベルで破産されるぞ」
「あの可愛い後輩ちゃんは金の亡者か何かか?」
聞いていた智が引き攣った顔で呟き、時一が恐ろしげに尋ねる。古賀も口にはしないが何か言いたそうな顔をしており、西條は涙目から安心した感で息を吐いていた。今の話の何処に安堵する要素があったのか疑問だったが。
そこでやっと厄介な話が終わったが、そろそろ担任が来る時間になったところで健斗が思い出したように告げた。
「そういえばまた例の騒ぎがあった」
「ん? 例の異常種の『パニックエラー』のことか?」
「ああ、島の西エリアに生息する中級の群れが異常種になって暴れたそうだ。生徒会長と大学組が一掃して大事にはならなかったが、新入生が入ったばかりだから学園側から警戒が余計に厳しくなりそうだ」
モンスター討伐はポイント稼ぎになるから、上のクラスを狙っている健斗は鬱気味に溜息を吐く。逆に討伐が苦手な西條は不安そうにしていたが、溜息を吐く健斗の言葉を聞いて若干嬉しそうにしていた。
そう、俺達が入学からしばらくしてすぐのことだ。
モンスターが出現する島で異常種が大量に発生する事件が起きた。
異常種とは普通のモンスターが突然変異したタイプ。
それぞれ変化は異なるが、弱体化することはまずなく厄介な能力や強化されたタイプが多い。
「ま、仕方ないさ。なんならその間に1年のスカウトを狙ってみたらどうだ? 同じEクラスの1年なら交渉余地や掘り出し物の可能性あるし」
実は主犯を知っている俺は、そういう風に話を逸らして済ませた。
正体を知っている訳ではないが、それらが人為的に起こされていると言えば、当然のように説明を求められるので面倒だった。
「明日になれば他のクラスの勧誘もあるだろう。不利だろうが動くだけ動いてもいいと思う」
「……そうだな。難しいかもしれないが、討伐が厳しいなら見て回るのも」
「有りだな。今度見に行って見るか」
「賛成ー!」
「う、うん、いいよ」
そうして4人が話をまとめていると、担任の佐倉先生が教室に入って来た。
と言っても本日は授業はなく説明や宿題の回収がメインだった。半日で終わるので昼頃に解散となってクラスメイトが教室を出る中、俺は佐倉先生に1つ頼みごとがあった。
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