話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。

ルド@

プロローグは最終戦だった。

 テンプレ異世界モノは結構知っていたが、まさか自分が体験するとは思わなかった。
 丈夫な赤と黒のロングコートと愛用の剣を握り締めていると、ふとそんなことを考えた。

『コザカシィィィ! 小僧ガァァァァァ!』

「先輩! っ……魔力が!」

 キレた魔王・・が喧しく騒ぐと、生意気な後輩の焦り声が重なる。

 途端、目の前に数えるのもバカらしい程の『暗黒の魔弾』が降り注ぐ。加減なしの火力攻めだ。
 すかさず魔法使いの後輩が杖から障壁を展開させようとするも、既に相当な魔力を消耗しており発動が遅れていた。


「大丈夫だ。魔法反射――【リフレクション・バリア】」


 降り注ぐ魔弾の前に持っていた剣で孤を描く。魔力で出来た円型の鏡が障壁のように空間に張る。
 魔弾が鏡の障壁に直撃すると、鏡面に吸収されて光り輝く。魔弾の雨が止まるのを見計らい俺は、剣を振り上げて展開していた円型の鏡に吸収された魔力を解放した。

「ハッ!」

 剣を振り下ろしたことで鏡面が輝き、光に変換された魔弾が雨の如く魔王に降り注いだ。本来は広範囲に魔法を跳ね返す魔法であるが、相手は魔王1体。拡散せず集中放火させた。

『グ、オオオオオオッ!』

 剣越しに障壁を展開させ受け止める魔王。避けることも出来ただろうが、魔王としての誇りか、この魔王は何事も正面から受けて立つ姿勢だった。


「一点突破――【ブラスト・アタック】!」

『――ッ! ナメルナァッ!』


 すかさず紅蓮の炎を纏めて駆け出し追撃に掛かる。爆炎系の貫通魔法が付与された強烈な突きをお見舞い。

 魔王が張っている暗黒の障壁が立ち塞がったが、爆炎を帯びた貫通系の剣先が障壁内部の半分まで貫通させると貫いた内側の剣先から紅蓮の爆発が起きた。

『ガァアアアアアアア!?』

「輝くは月の一撃――【ルナ・ストライク】!!」

 守りに入っていた魔王を吹き飛ばすと、いつの間にか魔法の準備を整えていた後輩の麻衣まいが一撃必殺の大火力魔法で叩き込んだ。

 上空から落とされた極太の魔力砲が魔王の姿を掻き消したが。

「そんな……」

「大して効いてないか」

 徐々に晴れていく土煙の中で、俺や麻衣の直撃を受けた魔王の奴がピンピンしているのが分かる。魔力を感じ取れる俺達には、全く乱れていない魔王の魔力が土煙越しでもハッキリと見えていた。

「先輩、逃げましょう! これはもうダメですよ!」

「いつも強気なお前が珍しく弱気だな」

「こっちの魔力がほぼ尽きかけてます! これ以上の強化・・されたらもう耐え切れません!」

「確かに厄介な能力だ。限界を超え続ける――【リミットブレイク】か。魔王らしい無茶苦茶なスキルだ」

「言ってる場合ですか! アレがある限り魔王は無敵なんですよ!」

 八つ当たり気味に怒鳴られても困るんだが。というか絶望的な状況ほど冷静さが大事だと教官の執事騎士さんも言ってただろう? ……このしばらく負けなしだったから無理もないが。

「逃げてもしょうがないだろう。ここで止めないと俺達を呼び出した王国がヤバい」

「どうして増援が来ないか分かりますか? 怪我した部隊をアイテムの転移で逃してから随分経ってるのに、周辺に全く気配すらないのが答えではありませんか?」

「ま、そうだろうな」

 流石にそこまで鈍くはなかった。いや、後輩や妹曰く充分に鈍い方らしいが、この世界に来てから3年も経てば嫌でも察してしまう。重傷を負った王国の精鋭部隊を逃すのは成功したが、どうやら王国はこの事態を俺達に丸投げしたようだ。

「王女さんは性格的にあり得ないから、国王とか王子とか……」

「財務大臣、大公大臣、宰相大臣などなど王国の異物共ですね」

「ハッキリ言ってやるなよ」

 分かっているが、アレらの人も居ないと困るからなぁ、あの国は。俺に『勇者のジョブ』を授ける儀式の時でさえ、超反対して最後まで超渋々だったが、王女さんのゴリ押しでなんとかなった。

 気の強い王女さんの説得がなかったらチャレンジ儀式すら絶対無理だったが、成功したらしたで後日散々言い寄られた。すっごい上から目線だったからほぼ全部流したがな。

 ――それはいいとして魔王討伐だよな。
 普通なら麻衣の言う通りに散々利用してくれた国なんて見捨てて逃げるべきだろうが、あの王女さんが居る王城が目的地ある以上は……。

 無敵でもなんとかしないとな。これが最後の戦いなんだから。

「以前帰還の話をした際のこと覚えてるか?」

「え? あ、ああー確か死んだフリして、こっそり城内にある帰還の魔法陣を…………先輩? 何を考えてるんですか?」

 おお、すっごい睨んでる。具体的に言ってもいいが、反対されるのが目に見えてるからな。どのみち奴に勝つには多少のリスクも踏み込まないといけない。

「俺が動けなくなったらお前が実行してくれ。王女さんには悪いが、勝っても挨拶なしで元の世界に帰るぞ」

「勝手に話を進めないでください! 先輩まさか……!」

 ああ、そのまさかだ。
 有害な瘴気を纏う魔王相手では危険だと散々注意されていた――真っ向勝負。『勇者の聖剣ブレイブ・カリバー』に宿っている魔力を全て解放させた。
 一時的な強化スキルもフルに発動させて、煙の中から姿を現した魔王へ虹色のオーラを纏った剣で特攻を駆けた。

 ――この時だけ、俺は光になった。

「【ソードダンス】ッ! 切り裂け――【ウィンド・ストリーム】ッ!」

『ム……!』

 強化された脚力を活かした急加速。それと剣スキルと風の斬撃も混ぜた振りかぶりで叩っ斬るが、復活強化のスキルでとことん頑丈な奴には全然効いていない。
 擦り傷もなく衝撃で体が揺れた程度であるが、俺は気にせず畳み掛けた。

「ラァッ! ハッ! サァッ!」

『グッ……!』

 勇者の剣がもう鈍器代わりであるが、左右に振って魔王を殴打していく。勢いを止めず振り上げから振り下ろしで渾身の斬撃を浴びせていくが、ここまで何度も復活強化されている魔王が相手では、本気の斬撃も通り辛くなっていた。

『カァッ!』

「ッ」

 強引な魔王の横薙ぎ。禍々しい魔王の剣からドス黒いオーラが斬撃となって、後退した俺に襲い掛かって来る。
 虹のオーラを纏った聖剣でガードするが、そこから連続で魔王の斬撃が飛んで来た。

「【フリーズタイム】ッ!」

 すかさず青白い魔力の波動が斬撃を飲み込む。麻衣が扱う停止系の魔法が空間ごと斬撃を停止させた。魔力を殆ど使い切ってしまったか、息を切らした後輩がこちらに向かって叫んだ。

「倒すならさっさと倒してくださいよ! この馬鹿センパイっ!」

「っ……馬鹿とは失礼な後輩だな!?」

 どう見てもヤケクソ感しかないが、せっかくのお膳立てを無駄にするわけにはいかない。
 根性出した後輩の魔法の影響で動きを止めている魔王に、俺は魔力の全てを聖剣に込めて必殺スキルを使用した。

「解放せよ、虹色に輝く勇者の光……」

刃に纏った虹色のオーラを剣先で操りに大きな円を描く。さらに中心に虹色の魔法陣が描かれて『勇者ジョブ』特大の一撃が発動可能になった。

「闇を打ち消せ――【ブレイブオーバー・カリバー】ァァァァァッッ!!」

『グォォオォォォォォォッ!?』

 浄化の力が込められた虹の一撃。
 放出された聖なる光で魔王が浄化されて肉体が消えていく。元々がドス黒い瘴気の塊であった魔王である為、この一撃は復活強化のスキルがあっても厳しかったのだ。

 聖なる光を抑え切れず徐々に瘴気が削られて肉体も崩壊し始めた。

『ガッ――ガアアアアァァァァァ!?』

 魔王の断末魔がその地に響き渡る。唯一の残っていた後輩は、声を出すことも出来ず祈るように両手を握り締めている。
 使い切った魔力が回復していない以上、ここでの彼女の助力は無理だった。

 だから――

『クッ、まだダ! このままデハ終わらンゾォォォォ!』 

「っ! 間に合え……!」

 超火力に意識を全集中させている俺なんて、気付いても回避すら出来なかった。
 なんとかその前に仕留めようと必死に魔力を注ぎ続けていたが。

 やはりと言うべきか、薄々感じてはいたが、間に合わなかった。

「先輩っ!?」

 伸びて来たのは魔王の剣は禍々しい一振り。虹の光を放出する無防備な俺の胸元へ深々と突き刺さった。

 後輩の悲鳴が聞こえた気がしたが、その時点で俺の意識はほぼ途絶えてしまった。


「元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く