【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

13.旦那様(ニセ)、鈍感嫁(ニセ)にプロポーズ大作戦です!・その3

 
「伊織。これからの事だが、話をしても良いか?」

「うん」

「こんな目に遭わせておいて、私にこんな事を言う資格が無い事くらい、承知している。しかし、敢えて言わせてもらう」

 一矢がしっかりと私を見据える。リムレスフレームの眼鏡の奥の美しい瞳に吸い込まれそうになった。

「伊織、私の本当の妻になってくれないか。私と、正式に結婚をして欲しい」

 予想外の言葉に、私は息を呑んだ。


 ・・・・け、っこん?

 正式に結婚って言った、今!?



「え・・・・っと。ちょっと、意味が・・・・解らない」

「何も難しい事は言っていない。意味が解らないという伊織の切り返しの方が、意味が解らんぞ」

「あ、いやその・・・・これって、契約婚じゃなかったっけ? あのいやその・・・・? 期間限定で結婚しろってコト? あ、それが契約婚だよねぇー」

 軽く脳内パニックを起こしてしまった。

「期間限定ではない。生涯だ」

 ショウガイ――すぐに単語の脳内変換ができず、傷害保険とかそういうのが頭に浮かんでしまった。

「お前の一生を、私にくれないか。ずっと大切にする」

「はいぃ?」

 予想もしなかった一矢の言葉に、何だか泣けてきた。「意味わかんないよぉ・・・・」

「何故泣くのだ!? 泣くほど私と正式に結婚するのが嫌なのか?」

 一矢が焦りだした。

「違うっ!!」目の前の旦那様(ニセ)が、自分の涙で歪んだ。「だって、一矢は最初から偽装結婚しようとか言い出すし! 期間限定だけど・・・・少しでも一矢の傍にいられるかなって・・・・いい思い出にして、色々諦めなきゃって・・・・」

「伊織の言い分はよく解らん。つべこべ言わずに、黙って私の話を聞け」

 口元に人差し指をそっと置かれた。


「伊織」


 見ると、一矢も緊張した顔になっている。そっと唇に触れた指がくすぐったい。
 一体、何を伝えてくれるつもりなの・・・・?

「今日、お前の横でスピーチをしたことは、中松が描いたシナリオなんかではない。全て私の本心だ」

 真剣な眼差しが、私を射抜く。


「伊織。私は幼い頃からお前を愛し、結婚をするなら伊織しかいないと思っていた。本家との確執もあるから、様々お前に苦労を強いることは承知していたから、お前が好きだとすら言い出せなった。しかし、グリーンバンブーの借金の時はチャンスだと思った。お前の弱みにつけ入るような卑怯な真似をしてしまったが、こちらも必死でな。すまなかった。ストレートに伝えても、きっと断られると思っていたから・・・・」


 幼い頃からお前を愛し、結婚をするなら伊織しかいないと思っていた?


 嘘だ・・・・そんな、一矢がまさか・・・・私の事を本気で・・・・?


 一矢を見つめながら、涙が溢れた。

「【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く